[KATARIBE 28470] [HA06N] 小説『知佳のお手伝い』

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Date: Tue, 22 Feb 2005 22:46:35 +0900
From: Motofumi Okoshi <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28470] [HA06N] 小説『知佳のお手伝い』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。
白神家の家業である電器屋さんの仕事を書いてみました。
何人かのPCをお借りしましたのでチェック宜しくお願いします。

なお、PLには電器店の知識がないので、細かい描写のズレについては
ご了承ください。
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小説『知佳のお手伝い』
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登場人物
--------
 白神知佳(しらかみ・ちか)
  :大人顔負けの高身長で力持ち、でもまだまだお子様な小学4年生。
 白神知樹(しらかみ・ともき)
  :知佳の父で電器店の店主。身長208cm。
 龍棟青九郎(たつむね・せいくろう)
  :吹利市内に住む大学生。花粉症もちでゲーム好き。
 閑攣雹(ひまつり・ひょう)
  :龍棟家の居候。青九郎よりもしっかり者。
 前野浩(まえの・ひろし)
  :無道邸使用人。事実上、邸宅の管理者。
 橋本桃花(はしもと・ももか)
  :知佳に負けず劣らず元気な少女。知佳の友達。
 橋本喜一(はしもと・きいち)
  :桃花の父。複雑な年頃の桃花には手を焼いている様子。


荷積み
------
 吹利市内の小さな電器屋、シラカミ電器。
 その倉庫に、経営者である白神知樹と、その娘の知佳がいた。

 「そっちの大きなテレビが1台、洗濯機が1台、あと空気清浄機が1台だな。
 それじゃ、頼むぞ、知佳」
 「は〜いっ」

 知佳は、元気よく返事をすると、言われた商品を、次々と店の軽トラックに
積んでいく。
 どの商品も相当な重量物のはずだが、まるで空箱を持つかのように、軽々と
持ち上げている。

 「終わったよ〜」
 「よし、いつもながら早いな」

 知佳がすべての荷物をトラックに積むと、知樹はそれらを確認し、固定用の
ベルトをかける。

 「OK、それじゃ出かけるぞ、乗りなさい」
 「は〜いっ」

 商品の配送のお手伝い、およそ2週間に一度の知佳の仕事である。
 重量物の多い電化製品の運搬であるが、力持ちの知佳にはお茶の子さいさい
であった。


荷卸し・1件目
--------------
 「1件目は空気清浄機だな。住所は……」
 「吹利本町だね」

 トラックを走らせる知樹と、住所を確認する知佳。
 やがて、目的のお客の家にたどりついた。

 「龍棟さん……ここだな。開業医みたいだな……ずいぶん古い建物だけど」
 「パパ、伝票には病院って書いてないよ」
 「うーん、すると、家のほうで使うのか?」
 「とりあえず、入ってみる?」
 「そうだな、とりあえず行ってみるか」

 適当なところにトラックを停め、外に出る。
 知樹は、病院らしき建物のドアを開け、中へ入っていった。
 中は一見普通の一軒家で、病院らしい感じはない。

 「ごめんください、シラカミ電器です」

 やがて、奥から若い男性が姿を現した。
 かなり背が高く、がっしりした感じの青年だ。知樹には負けるが。

 「あ、ども」
 「シラカミ電器です。ご注文の空気清浄機をお届けに上がりました」
 「あ、はい、テキトーに置いてください」
 「では只今お持ちしますので、少々お待ちください」

 そう言うと、知樹はトラックに戻り、空気清浄機をトラックから下ろす。
 そして、伝票を取り出し、再び階段を上がる。商品を運ぶのは知佳の役目だ。

 「ん?」

 玄関に戻ると、さっきの男性がいない。奥に引っ込んだようだ。

 「すみませーん、商品お持ちしましたが……」
 「その辺に適当に置いといていいっすよー」

 奥から声がする。何か作業でもしているのだろうか。

 「うーん……知佳、とりあえず商品はそのあたりに置いといて、車に戻って
 いいぞ」
 「うん、わかった」

 言われたとおり、商品を置いて下に降りる知佳。
 知樹は、さらに続ける。

 「すみません、伝票に判子かサインを頂きたいんですが」

 返事がない。

 「すみませーん」

 しばらくして、さっきとは別の人物が現れた。

 「はーい」
 「あの、すみません、空気清浄機の受け取り印を……」
 「あら、セイちゃん押さなかったのかしら」
 「?」
 「届けに来たときくらいゲームの手休めればいいのに」
 「……」

 どうやら、話を聞くに、ゲームにハマって気付かなかったらしい。

 「ごめんなさいね。サインでいいかしら?」
 「あ、はい、ではここにお願いします」
 「はいはい。たつむね、っと」
 「ではこちら受領証です。ありがとうございました」
 「どうも〜」

 なんとなく釈然としないものを感じながらも、次の配送があるので、足早に
トラックに戻る知樹だった。


荷卸し・2件目
--------------
 「次は、幡多町だな」
 「うん、むどうさんっていうお家だよ」

 幡多町は、吹利の中心部からやや離れた住宅地である。町の中心部を出て、
やや木々の深い場所へと入っていくと……

 「うわぁ、大きなお家だね」
 「確かにな」

 やや古びているが、大きくて立派な洋館である。
 知佳は、このような大きな家を見るのは初めてなので、少々興奮気味だ。

 「ここは洗濯機だな。ちょっと待ってろ、挨拶してくる」
 「は〜い」

 知樹は車を降り、インターホンを鳴らす。

 「はい」
 「こんにちは、シラカミ電器です。ご注文の洗濯機をお持ちしました」
 「只今門を開けますので、少々お待ちを」

 しばらくすると、黒服角刈りの男性が現れ、門を開け始めた。
 外見だけだとかなり怖いいでたちである。

 「パパ、あのおじさん怖いよ」(ひそひそ)
 「大丈夫大丈夫、見かけは怖いけど中身は普通だから」
 「そ、そうなの……?」

 知佳は基本的に怖がりである。男性の外見だけで美日ってしまったらしい。

 「お待たせしました」
 「では、入らせていただきます」
 「どうぞ」

 トラックは門をくぐり、玄関前で止まる。

 「以前の洗濯機と入れ替えということでよろしいですか?」
 「はい、浴室の隣にお願いします」
 「以前のものは引き取らせていただくということでよろしいですね?」
 「宜しくお願いします」
 「よし、知佳、運ぶぞ」
 「は、は〜い」

 心なしか声が震える知佳。

 「そちらは?」
 「娘です。今日は仕事の手伝いで」
 「なるほど、元気そうなお嬢さんですね」
 「元気だけが取り柄ですよ」
 「お嬢さん、はじめまして。この屋敷の使用人の前野です」
 「こ、こんにちは……」

 やっぱり、どうしても怖いらしい。知佳は、知樹の後ろに隠れてしまった。

 「おいおい、知佳」
 「……」(苦笑)
 「スミマセンねぇ、前野さん。あまり人見知りする方じゃないんですけどね」
 「いえいえ」
 「それでは、納入させていただきます」
 「宜しく」

 知樹と知佳は、二人で協力して洗濯機を運んでいく。本当は知佳だけでも運
べるのだが、あまり常識はずれな怪力を見せるのは良くないという知樹の判断
である。

 「終了しました。では、ここに受領印をお願いします」
 「はい……はい、これで」
 「では、こちら受領証です。ありがとうございました、今後ともご贔屓に」
 「こちらこそ宜しく」

 受領印をもらって車に戻る知樹。一方の知佳は、搬入出が終わると、さっさ
と車の中に戻ってしまっていた。

 「(やっぱり、こわいよ〜)」


昼休み
------
 「知佳、さっきはどうしたんだ」
 「だって〜、さっきのおじさん怖いんだもん」

 2件目の納入が終わったところで、丁度昼となったので、二人はレストラン
に入った。
 食事を取りながら二人で話している。

 「あの人は、確かに見た目は怖いけど、性格は怖くないから」
 「う〜ん……」
 「あの家には何度か納入に行ったけど、別に何も怖い目にあってないから」
 「……は〜い」

 ……実は知樹の運がいいのかもしれない。


荷卸し・3件目
--------------
 「さ、ここにテレビ運ぶのが最後だ」

 3件目の家は、ごく普通の一軒家という感じだ。
 だが、知佳はこの家に来るのは初めてではなかった。

 「なんだ、桃花ちゃんのお家か〜」
 「知ってるのか?」
 「ここ、私のお友達のお家だよ〜」

 そう言うと、今度は知佳の方から車を降り、インターホンを鳴らした。

 「はーい」
 「こんにちはー、白神ですー」
 「あ、知佳ちゃん? ちょっと待ってね」

 言われたとおりにちょっと待つと、知佳もよく知っている少女が玄関に姿を
見せた。

 「桃花ちゃん、こんにちはー」
 「今日はどうしたの?」
 「パパのお仕事のお手伝いで、テレビもってきたの」
 「あ、そっか、知佳ちゃんの家、電器屋さんっていってたもんね」
 「うんっ」
 「おーい知佳、盛り上がるのはいいけど、いま仕事中だぞー」
 「あ、ごめん……この人が、うちのパパ」
 「うわー、おっきいねー」

 知樹の身長は208cmである。子供にはもっと大きく見えるだろう。

 「橋本さんだね。お父さんかお母さんを呼んでくれるかな」
 「はーい」

 桃花は、家の中に入っていくと、母親を連れて再び現れた。

 「橋本さんですね。シラカミ電器の白神と申します」
 「ご苦労様です。テレビは、居間へお願いします」
 「かしこまりました。……あ、そうそう、いつもお嬢さんにはうちの知佳が
 お世話になっているそうで」
 「いえいえ、こちらこそ」

 「桃花ちゃんのお家、新しいテレビ買ったんだね」
 「前のが映らなくなっちゃって。うちは家族が多いから、思い切って大きい
 のを買おうってコトになったの」
 「へぇ〜」

 やがて話が終わると、知樹と知佳は大型テレビを居間へと運んでいく。
 すると、居間には男性の影。

 「お父さんっ!」
 「……あ、テレビ来たのか」
 「来たのか、じゃないでしょ! こんなところで寝っ転がってたら邪魔よ!」
 「……わかったよ」

 娘には弱い父である。


仕事終了
--------
 「それでは、こちら受領証です。ありがとうございました」
 「ご苦労様です」

 テレビの搬入を終え、これにて納品はすべて終了である。

 「ねー知佳ちゃん、せっかくだから一緒に遊ばない?」
 「うん、いいよ、あそぼあそぼっ」
 「それじゃ、支度してくるから、一緒に外行こっ」
 「うんっ。パパ、ちょっと遊んでくるねー」
 「わかった。ちゃんと晩御飯までに帰るんだぞ」
 「はーいっ。あと、アルバイト代あとでちょうだいねー」
 「はいはい」

 こうして、知樹は店に戻り、知佳は桃花とともに外へ出て行くのだった。


時系列と舞台
------------
 2005年2月某日。


解説
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 白神家の日常のひとコマ。

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勝手に無道邸出入りの電器屋さんってことにしちゃったけどいいのかね(^^;

motoi@mue.biglobe.ne.jp
Motofumi Okoshi

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