[KATARIBE 28446] [HA06N] 小説『刑事という生き物』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Thu, 17 Feb 2005 15:21:47 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28446] [HA06N] 小説『刑事という生き物』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200502170621.PAA44347@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 28446

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28400/28446.html

2005年02月17日:15時21分47秒
Sub:[HA06N]小説『刑事という生き物』:
From:久志


 ちは、久志です。

 ちなみにツンデレの続きではありません(おい)

 へろっと思いついた史久と先輩の会話です。
五年前の警部がくるちょっと前の会話ということで。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
小説『刑事という生き物』
========================

登場キャラクター
----------------
 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :吹利県警巡査。のほほんお兄さん。またの名を昼行灯。
     :2000年当時、26歳。
 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警巡査。ヘンな先輩。またの名をおネエちゃんマスター
     :2000年当時、28歳。

県警食堂にて
------------

 うどんを手繰る。
 少し時間をずらしたせいもあって県警の食堂は結構空いている。
 このところ、とくにめぼしい事件も一斉取り締まりもなく、めずらしく余裕
があったりする。まあ刑事稼業命の先輩は暇でしょうがないらしいけど。
 でも、何も事件がおきなければ、僕としてはそれはそれでいいように思う。

「たとえばの話よ、お前」
「なんですか?」

 きつねうどんの油揚げをつまんで、退屈そうに先輩がつぶやく。

「こう自分がめっちゃ惚れてて入れ込んでるおネエちゃんがいたとする」
「はい」

 いきなり何を言い出すのやら。

「けどまあ、これが実はヤクの売人で、しかもそれが自分の本位でなくてよ、
脅されてしかたなくやってるとする」
「はい……」
「そんなとき、お前どうする?」

 ふむ、難しいとこですね。
 けどまあ、僕としては答えはひとつかな。

「なんとしてでも彼女を説得して自首させますね、僕なら」
「しなかったら?」
「なんと言おうと逮捕します」
「ほほう」
「先輩はどうしますか?」
「俺か?俺ならなあ」

 あごを撫でながらにやりと笑う。その顔は笑ってるけど目が笑ってない。

「絶対黙ってるからと言っておネエちゃんを安心させて抱き込んで信用させて
おいて、仕入れ先と販売ルートを残らずひっぱりだしてから、おネエちゃんご
と販売網を一網打尽にするな」

 ああ、はいはい。先輩なら笑いながらやってのけそうですよね。
 ていうかそれ、先輩の普段の常套手段じゃないですか。

「どうしようもなく惚れてる人を?」
「そりゃもう惚れてる女だからこそ、徹底的に」
「……なるほど」

 なんていうか、なあ。

「でも、それちょっとだけ違いますね」
「あん、何がだ?」
「先輩、惚れたことないでしょう」
「……お前鋭いね」

 そりゃまあ、つき合い長いですから。
 昔っからおネエちゃん好きの女たらし気取ってるけれど、先輩が本気でのめ
りこんだ所などついぞ見たことがない。

「ま、それはそれで。史久よお」
「なんですか?」
「お前なんで刑事になろうと思った?」
「先輩が引き込んだようなもんじゃないですか」
「いやあ、警察に引き込んだのは俺だが、刑事課に志願したのはお前だろう」
「そうですけどね」
「交番勤務、気に入ってたんじゃないのか?」
「ええ、楽しかったですよ」

 交番勤務は僕にとっては、楽しかったしやりがいもあった。
 なんで刑事課に志願したか。
 まあ、零課にスカウトされたからってのが一番大きいんだけど。けど、正面
から何故と問われると正直ちょっとわからない。

「なんででしょうね?僕は正直言うと刑事稼業はあまり好きではないんです。
でも、なんて言うか、こう、なんだか性に合ってます」
「やっぱアレだね、腹黒は刑事にしかなれんってことだなあ」
「……僕を腹黒呼ばわりするのやめてください」

 それ先輩が言えたことじゃないでしょう。

「先輩はやっぱり太陽にほえろが元ですか?」
「おうよ、俺は生涯一刑事として死ぬつもりだ」
「……さすがですね」
「死ぬときは二階級特進と決めてるしな」
「いや、それはやめてください」

 コンビ組んだ同僚に殉職されたらこっちはたまりませんよ。

「どっかにいい事件は転がってないもんかな」
「警察官が事件を期待しないでくださいよ」
「とりあえず何もないと俺が腐る、いっそ他課のヤマでもいいからなんかない
もんかね」

 腐るのはわかりますが、物騒なこと言わないでください。ていうか他課にま
で首突っ込まないでくださいよ。

「でもそれ手柄になりませんよ」
「手柄とかそーいうんじゃないんだよなあ」
「じゃあなんですか」
「史久。俺はさあ、哺乳類公僕目警察科の刑事っつう生物なわけよ」

 なんですか、その生き物。

「で、主食に事件食って生きてるわけ」
「……はい」
「飯食わないと死んじゃうだろ、生き物はよ」
「……ええ」
「俺にとってはそういうこと」

 なんだかなあ。

「そりゃまあ手柄だったら美味い飯だけどな」
「まあ、確かに」
「それ以前に事件って飯食わないと生きてけないんだよ」
「……はい」
「おネエちゃん食わなくても生きてけるけど、飯食わないと死ぬだろ」

 命と同じって奴ですね。

「俺、そういう生き物なの。捜査でちょっとおネエちゃん手玉にとるのも生き
るためにはしゃあないでしょ?」
「……ひとでなしですね、先輩」

 刑事でしか、生きられない人なんですよね。
 人のこと腹黒腹黒いうけど。ホント、この人にだけは言われたくない。


時系列と舞台 
------------ 
 2000年1月頃 
解説 
---- 
 刑事見習いの頃の史久と先輩の会話。刑事という生き物だと豪語する先輩。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。

 色々先輩のネタがうずまいていて大変です。
ツンデレ事件簿を早く終わらせないとなあ。



 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28400/28446.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage