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Date: Wed, 16 Feb 2005 17:58:56 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28441] [HA06N] 小説『空即是色』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200502160858.RAA04387@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 28441
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28400/28441.html
2005年02月16日:17時58分56秒
Sub:[HA06N]小説『空即是色』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
ふと、思いついた風景。
……いや、六華もいつもにこにこしてるばかりじゃないんだよーというか何というか。
http://kataribe.com/IRC/kataribe/2005/02/20050215.html#230000
から始まったチャットログ(翌日の2時近くまで)の風景の続き……ですな。
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小説『空即是色』
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登場人物
--------
桜木達大 (さくらぎ・たつひろ)
:
六華(りっか)
:冬女。冬の終わりにかけて記憶鮮明となる。酒豪。
本文
----
色即是空、空即是色。
……ほんにこの世は渡り難い。
**
あとは放り出しておきましょう、と、達大は言った。
「少しは、役に立ったでしょうか」
「まあ……多分」
それならいいです、と、六華は言う。
(幸せに、あのひとたちが、ならないなら、あたしは)
(……ひとでなし、に、なります)
あざやかに。
それ以外の道を示すことの無い言葉。
「……達大さん」
「はい」
「そんじゃ呑みにいきたいです」
冬の終わりは着実に近づく。
記憶はいよいよ鮮明になるという。
酒漬けにしても、記憶は戻るんですよ……と。
「はい、行きましょう」
この近くに、どこかあったかな、と、呟きながら達大は歩いてゆく。
つかず離れずの距離を保ちながら、六華はその後ろを歩いてゆく。
「いろいろ、変わるんですねー」
「……ああ、去年と違いますか」
「なんとなく」
同じ冬の季節なのに、目を覚ますと風景は少しずつ違う。
特に、この辺りはあまり来ない場所である。
六華の視線は、ついついあちこちに飛ぶ。
と。
「……あ」
「え?」
こぼれた声に、達大が振り返る。
視線の先で、六華は黙って硝子の中を見ている。
「……櫛、ですか?」
螺鈿の、見事な文様の入った櫛である。
店からして、多分骨董品なのだろう。
確かに、女性の目を惹く品物ではある……が。
「……?」
長い髪が遮る形で、六華の表情はわからない。ただ、肩の辺りが妙にこわばっ
て見える。
「何か……?」
くすり、と、笑う気配があった。
そして微かに。
紡がれる言葉…………
「空即是色」
何かを嘲笑うかのように、笑いを含んだままの声。
「……ほんにこの世は」
ふわり、と、彼女は振り返った。
ひどくやさしい笑みが、その顔に浮かんでいた。
「渡り難い……」
長い髪を孕んで、鋭い風が吹いた。
「……ふふ」
呑まれたように立っていたのは、恐らく一瞬である。気がつくと六華は、ま
たいつものようににこにこと笑っていた。
「やなこと、思い出しちゃいました」
「それは、災難でしたね」
「ほんとに」
どのような表情も選択出来ない時に、多分人は笑うのだろう。
どのような表情も追いつかない絶望……と。
言葉にすればそれだけの。
「あ、そこ美味しいと思いますよー」
「おや」
色即是空。
冬が終われば消える女は、にこにこと笑って指差した。
時系列
-------
2005年2月。
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この前のログについては、一両日中に何とかします(責任問題(汗))
桜木さん、かなり勘で書いてます。
言葉遣い、等、問題がありましたら、指摘お願い致します>猫屋さん
んではでは。
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