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Date: Sun, 6 Feb 2005 03:05:48 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28398] [HA06N] 小説『別人の背中』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200502051805.DAA77121@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年02月06日:03時05分48秒
Sub:[HA06N]小説『別人の背中』:
From:久志
ちは、久志です。
とりあえずもちょっと続きます。
普段のぼんやりとちょっぴり違う史久です。
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小説『別人の背中』
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登場キャラクター
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本宮史久(もとみや・ふみひさ)
:吹利県警警察官。のほほんお兄さん。またの名を昼行灯。
:2000年当時、26歳。
卜部奈々(うらべ・なな)
:吹利県警警部の一見キツイ女性。ちょっと最近動揺気味。
:2000年当時、24歳。
史久 〜イメージ
----------------
お昼過ぎ。
あれから現場検証と事情聴取も終わって。鑑識の結果を待つ間の時間。
僕は県警の屋上から外を眺めている。
「しかしまあ、物騒なヤマだよねえ」
今朝の事件現場。
僕も色々と凄惨な現場は見てきたし、遺体にも見慣れているけれど、今日の
はさすがにちょっとひどい。
小さく息を吐き出す。
なんとなく、思い浮かぶのは小さな後姿。
警部、大丈夫かな?
僕もちょっとキツイ言い方だったかなあ。まあ、現場の刑事としてはああで
も言わないことにはなあ。まあ、僕は刑事見習いにすぎないんだけど。
でもまあ、警部は結構気にしやすい人だと思ったから、ちょっと気になる。
うーん、まあ、なんとなくひっかかる。
「はてさて」
両手を下ろして力を抜いて、軽く右足の靴のつま先を三回叩く。
すう、と息を大きく吸い込む。少し息を溜めてゆっくりと細く吐き出す。
イメージする。
僕が立っているのはあの公園、時刻は深夜。
そして僕の右手には一振りの刀。
状況から察するに被害者は全くの無防備だったはず。
出会い頭の凶行か、狙いを定めた待ち伏せか。しかしあの現場の状況から考
えて待ち伏せという状況はちょっと考えにくい。せいぜい、出会い頭に刃物を
持った不振人物に出くわして驚いたといったところか。
まずは。
「よっ」
一刀目。
踏み込んで、斬り下ろす。
最初は右腕。
この時、勢いついたまま右腕は植え込みに落ちた。
そこから間髪いれず切っ先をあげて。
即座に胴を一閃した、と。
そして加害者はここで一旦動きを止めた。何故止めたのかの理由までは僕に
はわかりかねるけど。
この時、被害者は腕を切断され腹を深く斬られた状態、でも死んではいない。
恐らく突然の凶行に錯乱状態に陥ったまま、その場から逃げようとして。
そこから。
一歩、足を踏み込む。
あの足跡はこの時の踏み込みだな、きっと。
そして。
「はっ」
斬りあげるように頭部に一閃。
これが致命傷だ。
僕の身長と被害者の傷の位置と踏み込んだ足の大きさから考えて、恐らく加
害者は僕より多少小さいようだ、大体170弱くらいかな。体型までは限定で
きないけど、この行動から考えると恰幅が良いとは思えない、せいぜい中肉中
背あたりかな。
まあもっとも、僕の推測が間違ってなければの話だけど。
すとん、と体の力を抜く。
もうそこは僕のイメージの中にある現場の公園ではなく、昼もすぎて少しづ
つ日が傾いできた県警の屋上。
しかし、これ……うちで扱いきれるヤマかな?
そのとき、背後にかすかな人の気配を感じた。
「もと……みや……巡査……?」
「あ、警部」
奈々
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ただ、息をのんだ。
目の前にいる見慣れたはずの人が誰なのか、私は一瞬わからなかった。
『史久なら屋上でぼんやりしてるんだろ』
という言葉を聞いて。
とりあえず、今朝の現場でのことを、もっときちんと彼に謝らなければなら
ないと思い、屋上へ来て。
目を疑った。
斬り上げる手。
尋常じゃない体の動き。
そしてすくみ上がるような威圧感を感じる広い背中。
声をかけることもできず。
私は、ただその場に立ち尽くしていた。
「もと……みや……巡査……?」
「あ、警部」
しかし、振り向いた顔はいつものぼんやりとした巡査の顔のままで。
「もうよろしいんですか?」
「ええ、はい……今朝は、本当にすいません」
「いえいえ、ホントそんなに気になさらないでください。先輩なんか貧血起こ
すわ吐くわでヒドイもんなんですよ」
ふわりと笑った顔は、普段のおだやかな彼そのもので。
私はそれ以上言葉が続かない。
「鑑識結果がでたそうです」
「わかりました、行きましょう」
なんなんだろう、この人。
もう、さっぱりわからない。
今の笑顔とさっきの後姿、かみ合わないことだらけだ。
時系列と舞台
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2000年2月頃
解説
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史久と奈々さんの出会いの頃。小説『現場の本音』のあと。
県警屋上で事件をイメージする史久と、まるで別人のような史久の姿に
圧倒される奈々。
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以上。
こーもうちょっとなんかイロが欲しいなあ、なんて。
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