[KATARIBE 28366] [HA06N]日記『吸血鬼との関係』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 31 Jan 2005 21:10:01 +0900
From: gallows <gallows@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 28366] [HA06N]日記『吸血鬼との関係』
To: ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <20050131204811.888A.GALLOWS@trpg.net>
X-Mail-Count: 28366

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28300/28366.html

gallowsです。
遅れましたが記念日のキャラ日記(?)流します。
もとみーに引っ張られる形で珍しくものを考えている鏡介です。
小狡い男。もはや分身からは遠く離れています。自分誠実ッスから!

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
日記『吸血鬼との関係』
======================
登場人物 
-------- 
 里見鏡介(さとみ・きょうすけ)
     :悪魔と同化した死人使い。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0180/
 本宮和久(もとみや・かずひさ)
     :お人よしで面倒見のいい男。吹利には二年ぶり。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0073/
 兎屋宵姫(うさぎや・よいひめ)
     :なし崩し的に鏡介と同棲している吸血鬼。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0346/

1月某日、小雨
--------------
 たそがれの闇に紛れ、人混みを避けながら街を徘徊する。左手にはいつもの
ようにランタンを提げているがまだ火は入れていない。
 先日交通事故があったという三叉路にしばらく潜んでみるが、期待していた
兆候は何もない。つまり、死人は残っていなかった。
「それならそれでいいんだけどね」
 自分にしか聞こえぬ声で呟いてその場を後にしようとした時、魂が抜けたよ
うな男が通り過ぎる。真実生命活動の停止した木偶人形ならば声をかける口実
も作りやすかっただろうに。ただ胡乱な表情で歩いているだけである彼は、古
い知り合いであった。
「本宮和久……」
 かつて興味本位で近付いたドラキュリーナの恋人だった男。今はその彼女も
いない。二年前吹利から離れたと聞いていたが──帰ってきたのか。
 声をかけるかどうか躊躇する。声をかけたところでうまく話せる自信がない
し、向こうも歓迎はしてくれそうにない。そうして悩んでいるうちについつい
後をつけてしまっていた。
 市街地を抜け、人の流れの空白地帯になったような森に入っていく。こうな
ると逆に追跡は難しい。少し距離を置く。木々がざわついている。森は入って
みるとかなりの広がりを感じる。聖域と言える場所のようで、体の半分以上を
死や魔といった言葉に明け渡している自分には居心地が悪い。
 自分は何をしているのだろう。ただの暇つぶしだが、あまり行儀のいいもの
じゃないな。気になるのか、彼が。或いは、それに連なっていた彼女が。
「吸血鬼と人間の恋なんて、なかなかどうして上手くいかないもんだよ」
 ふいに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 その瞬間、全て見透かされているような視線を感じ我を取り戻す。声の主は
最近ここいらを根城にしている吸血鬼だ。本宮との関係は不明。
 自分に投げかけられたと錯覚した声は本宮に対して放たれたものであったよ
うだ。それでも吸血鬼の感覚相手では見咎められるのも時間の問題である。自
分自身盗み聞きなど本意ではない。
「彼女は、俺を……連れて行ってはくれなかった」
 去り際、風に乗ってそんな声が聞こえてきた。二年ぶりに聞く本宮の声だっ
た。


 自分の部屋に帰りシャツのボタンを外してベッドに腰掛ける。胃のあたりが
むかむかする。感傷的になるとすぐにこうだ。さっさと人をやめてしまえれば
いいのに。
 冷蔵庫から取り出しておいたコーラの蓋を開け、ペットボトルのまま口を付
けて飲む。
「やはりうまくいかなかったのか」
 ひとりごちた。そんな予感はしていたが、本宮とドラキュリーナの恋は終わ
ったのだろう。一つの新しい社会の可能性として期待していただけに残念に思
う。
「帰ってたんですか、鏡介さん」
「おはよう、宵姫」
 ベッドの脇に備え付けてある棺桶から同棲している恋人が起きてきた。彼女
もまたドラキュリーナ。
『可能性として期待していた? 飾るなよ』 自己批判する声が頭に響く。
 そうだとも。認めてやろうじゃないか。今気分が悪いのはもっと生々しい感
情に思考を持って行かれてるからだ。それは例えば自分と本宮を重ねて同情し
ているとか、昔横恋慕した関係が終わっていて複雑な気分だとか、そんなチー
プでありふれた内容だ。
「鏡介さん、なにかあったんですか?」
「いつものように気分が悪いだけだから気にしないで。おいで」
 両腕を開き、恋人を招き入れる。
 素直にやってきた彼女の首を抱きすくめているうちに気持ちも落ち着き、普
段の安定を取り戻す。
『そんなことばかりいつまでもしてるからお前は本家に戻れない。もっと合理
的に動けよ。死人らしく。悪魔的に』
 糾弾の声音が増していく。その意味を考える気にもならないが正しいことを
言ってるんだろう。魂にそういう機能が付いている。
 数百年に及ぶ悪魔との契約。そこから派生する知識の応酬の中で一族が磨い
てきた肉体と霊体と魂を異化する技術。それはもはや魔術というより魔道。自
分の中にもそれは詰まっている。
「宵姫、今幸せ?」
「はい。あ、でも」
「いいよ。幸せでも」
 一族は幸福よりは不幸という言葉を好む。その意味は人によってまちまちだ
が、今はどうでもいい。
 君が喜ぶのならそれでいい。そんな台詞が浮かぶが、口には出来なかった。
そこが里見鏡介としての限界。
 吸血鬼の一生は長い。普通の人間と恋愛関係を結ぶのは確かに彼らにとって
空しい結果になりがちだろう。だが自分はどうだ。生き続けられる。死に続け
られる。その点では本宮より可能性は高いともいえる。
 恋人が喜ぶことを考え、サービス精神たっぷりに付き合うことも自分には可
能だ。
 だが自分にはより優先順位の高い事項があり、競合した時はそちらを選んで
しまうだろう。彼女にとって都合のいい人間にはなれそうにない。
「どうかしましたか?」
 腕の中の彼女が目の中を覗き込む。
「なんでもないよ」
 目を細めて微笑んでみせた。見透かされないように。見損なわれないように。

時系列と舞台 
------------ 
 2005年1月某日。某所。
解説 
---- 
 千影が去った傷心の本宮と久々に顔をあわせた三人。
-- 
gallows <gallows@trpg.net>


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28300/28366.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage