[KATARIBE 28352] [HA06N] 小説『墓前での遭遇』

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Date: Sun, 30 Jan 2005 15:55:23 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28352] [HA06N] 小説『墓前での遭遇』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200501300655.PAA70059@www.mahoroba.ne.jp>
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2005年01月30日:15時55分22秒
Sub:[HA06N]小説『墓前での遭遇』:
From:久志


 久志です。

 とりあえず作者を悩ませまくるこの二人。
思いつくままに書いてみる。方向性なんて見えぬ。

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小説『墓前での遭遇』
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登場キャラクター
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 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :吹利県警警察官。のほほんお兄さん。またの名を昼行灯。
     :2000年当時、26歳。
 卜部奈々(うらべ・なな) 
     :吹利県警警部の一見キツイ女性。ちょっと最近動揺気味。
     :2000年当時、24歳。
 小池国生(こいけ・くにお)
     :小池葬儀社社長。本宮家とは昔から縁がある。

史久 〜報告
------------

 突き抜けるように、というか。ホント雲ひとつない青空。
 もう六年も経つのかあ、なんか年寄りくさいけどホント時間が流れるのは早
いもんだ。
 友久、お前の命日は毎年毎年快晴だよねえ、おかげでこっちは助かるよ。
 父さん母さんは後で一緒にこっちくるみたいだし、幸久もなんだかんだ言っ
てるけど絶対くると思うよ、あいつが一番お前に懐いてたしね。そうそう和久
からは今年いけなくてごめんて電話あったよ、よろしく言っておいてって言わ
れてる。
 墓前に置いたコップに酒を注ぐ。
 やっぱお前がいないと、家庭内飲み会で生存者がいっつも僕一人だけになっ
ちゃうからつまらないんだよね。まあ、お前と飲んでた頃はお互い学生だった
んだけどね。このごろは幸久と和久も僕らと一緒に飲むようになったけど、
やっぱり僕と父さんのペースにはついて来れないみたいだね。ああ、なんか
さっきからお酒の話ばっかだな。
 こっちはみんな普通にやってるよ、父さん母さんは相変わらずいつまでたっ
ても新婚気分が抜けてないし。ああ、幸久は小池さんとこの葬儀社に就職する
みたい、ずっとバイトで働いてたし結構がんばってるよ。和久は僕や幸久と同
じ紅雀院大で学生ライフをエンジョイしてる、なんかホントあっという間だよ。
 とくとくと、自分用のコップに酒を注ぐ。
 とにかく、まあそんな感じ。唯一心配と言えば幸久の女運くらいかな。お前
さんの女性相手の要領の良さとかもうちょっとあいつにわけてやってよ。


奈々 〜報告
------------

 父さん。ただいま、です。
 久しぶりに吹利に戻ってきました。なんだか街並みも色々変わってしまいま
したね。12年も経っているんだから、しょうがないかもしれませんけど。

 私が警察官になったと知ったら……父さんはなんて言うでしょうか?


史久 〜そこにいたのは
----------------------

 さあて、僕はそろそろ帰るよ。
 へろへろと立ち上がって腕を伸ばしてのびをひとつ。今日は寒いけど、ホン
トいい天気。空を見上げてみる。あいつの目の色に似たつきぬけるような青が
目にちょっと痛い。

 それじゃ、また、来年ね。

 墓前を後にして、ふと、見覚えのある後姿が遠目に見えた。

「ん?」

 ちょっと小柄で、きりっとまっすぐな髪を肩まで伸ばしてて、それにあの見
覚えのある薄茶のコート。

「……あれ?」

 なんで、警部がこんなとこに?
 声をかけようとして、止まる。
 なんというか、その後姿はとても小さくて。こんな風に思うのは失礼だけれ
ど、すごくさみしそうに見えた。声をかけるのも、はばかられるくらいに。
 ためらいながら、口を開く。

「……卜部警部?」

 はじかれるように振り向いて、僕の顔をみて目を丸くする。

「も、本宮巡査?!」

 じりっと、なぜか後じさりする。何もそんなにいやがらなくても(汗)
 何故か僕の顔をみてちょっとあせったような顔になる。

「変わったところでお会いしますね、警部」
「ええ、そう、ですね。あなたもお参りですか?」
「はい、今日は弟の命日なんで」
「弟さん?」
「はい、事故で。今年になって六年目ですかね」
「そう、ですか」
「警部はどなたのお参りですか?」
「……父です」

 お父さん、亡くなられてたんですね。

「そうなんですか」
「それでは、私はこれで」

 すっと、それきり身を反して立ち去っていく。

 うーん。
 あなたもお参り、というのは間違ってない。
 でも。なんというか、警部に僕とは何か違うものを感じる。

 僕は、六年間という時間の中で、友久の死という事実を受け入れて、飲み込
んで、思い出としてきちんと心の棚にしまってある。
 けど、なんでだろう。あの人に感じるこの感じ。
 釈然としきれないような、飲み込んで受け入れきれない何かを抱えているよ
うな、そんな感じ。
 別段僕が特に鋭いわけでも特別な何かが見えたり感じたりできるわけじゃあ
ない。これはただの勘であり推測に過ぎないんだけど。
 この間、酔っ払った警部を自宅に送った時。
 警部は僕のことを抱きしめて『お父さん』とつぶやいた。
 だんだん小さくなっていく背中を見送りながら。ぼんやり考える。

 警部、なにがあっただろう?


 ふと、警部の行く先に、初老の喪服の男の人が立っているのが見えた。通り
かかった警部が小さく頭を下げる、その相手も小さく頭を下げ、警部はそのま
ますれ違い遠ざかっていく。

 その喪服の男性は僕のよく見知った人だった。

「小池さん?」
「おや、史久くん」

 小池さん。僕らの両親の大学時代からの先輩で、本宮本家とも交流があり、
僕らにも昔から馴染みが深い人でもある。弟の幸久はこの人の葬儀社で、高校
時代からずっとバイトを続けている。

「小池さん、卜部警部のことご存知なんですか?」
「ああ、深山巡査のお嬢さんですか」
「みやま?」

 警部の苗字は卜部だったはずじゃ?
 深山巡査のお嬢さん。お父さん警察官だったんですね。

「母方の親戚に引き取られた際に姓が変わったんです」
「そうなんですか」
「よくおぼえていますよ、さみしいお葬式でした。父一人娘一人の仲の良いご
家族でしたから、あの頃はまだ小さいお嬢さんでしたし」
「亡くなられた、と。おっしゃいますと?」

 少し声のトーンが下がる。
 なんていうか、ちょっと予想がついたような気がした。

「深山……巡査部長が亡くなられたのは今から12年前の事です」

 ああ、なるほど。
 その意味がわからないほど僕も間抜けじゃない。

「深山さんとは、まあ職業上というのも縁起でもありませんが、何度か仕事で
のお会いしましてね、それでお嬢さんとも縁があるんです」
「そうでしたか」

 お父さん、殉職なさったんですね。

「今でも時々こちらへ来てるのをお見かけしますよ。やっぱり小さい頃に育っ
た故郷ですから」
「そう、なんですか」

 警部のお父さんが亡くなられたのは12年前。でも、死を忘れるのは時間だ
けじゃあない。時間は心を癒してくれるけど、すべてを癒せるわけじゃない。
 それくらい、僕でもわかる。

 警部が何を思って墓前に佇んでいたのか。

 『お父さん』かあ。

 うーん。
 なんていうか、ちょっと気になる。
 なんでだろ。


時系列と舞台 
------------ 
 2000年1月頃
解説 
---- 
 史久と奈々さんの出会いの頃。
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以上。

史久もちょっと違う意味で興味をひかれてみました。
違う興味もあるっぽいですが。

この先が見えない。
どーすっかね。



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