[KATARIBE 28347] [HA06N] 小説:書を視て思う

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Date: Sat, 29 Jan 2005 23:21:30 +0900
From: Paladin <paladin@asuka.net>
Subject: [KATARIBE 28347] [HA06N] 小説:書を視て思う
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 ぱらでぃんです。

 自キャラばかりでアレですが十周年記念らしいです。

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小説:『書を視て思う』
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登場人物
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 宇多 環   :懐かしいものを見つけた狐。
         http://kataribe.com/HA/06/C/0223/

 ウンカバル・伝欧寺
        :環の旧い悪友。
         http://kataribe.com/HA/06/C/0425/

 宇多 楓   :呑んでいるらしい。
         http://kataribe.com/HA/06/C/0264/

 仕立てのお梅 :同上。
         http://kataribe.com/HA/06/C/0462/

本文
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 深夜に滑鼠を手繰っていると冷えた躰がますます冷たくなる。
 電路を廻って辿りつくものは、古々しい書物とため息一つ。仮想の頁が捲ら
れるごとに、ため息は増える。
「こりゃあ懐かしい」
「勝手に部屋に入らない」
 鼻をすすりながら闖入者を咎めると、部屋で唯一光を放っているものから離
れ、開け放たれた障子の向こうに広がる庭、そして空へと目を転じる。
「師匠の書斎にあったやつだ」
「そうだったっけ。蚤の市で見たのだと思ってた」
「懐かしいよ。何年ぶりだっけ」
 冬の寂に星は何も言わずまたたいている。
「随分と減った」
「ううん」
 割と律儀な闖入者は独り言を聞いていたらしく、唸りながら振り返る。
「星もみんなも」
「そうかあ」
 気の抜けた返事を流しながら、狐は出涸らし尽くしもはや色もろくについて
いない煎茶を急須から注ぐ。
「僕にはないの」
 冷め切った水をそのまま飲み乾す。
「湯呑み持ってきてよ」
 けちだとかああそうだとか言いながら卵男は出て行き、しばし静寂が戻ると
再び急須を傾け中身を出し尽くす。
「感謝はしてる。それなりにね」
 笑い、最後に残っていた湯冷ましを咽喉に通す。
「酒が無い無い無い無い」
「環、持ってこい」
 彼はこの夜最大のため息をつき、もう一人の居候と姉が呑んでいる部屋へと
向かう。
 湯呑みを持ってきた者の足音を聞きながら。

時系列と舞台
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2005年冬、金仙の離れにて。

解説
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懐かしいものを見つけた環と忍び寄る誰か。

関連作品
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$$

 それでは。


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