[KATARIBE 28325] [HA06N] 小説『ユキにぃは心配性』

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Date: Wed, 26 Jan 2005 11:22:20 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28325] [HA06N] 小説『ユキにぃは心配性』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年01月26日:11時22分20秒
Sub:[HA06N]小説『ユキにぃは心配性』:
From:久志


 ちは、久志です。

 窓香の様子を探る公認婿?の幸久。
しかし、初登場から9年ぶりに動く窓香嬢というのもすごいなあ。
ちなみに窓香のイメージはサッカー好きな西野つかさでお願いします。
ついでに登場する今井祐司も9年ぶりの登場です。

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小説『ユキにぃは心配性』
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登場キャラクター 
---------------- 
 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ) 
     :葬儀屋さんで、霊感が強い軟派にーちゃん。女運悪し。
 本宮窓香(もとみや・まどか)
     :幸久の三つ下の従妹。サッカー好きのスポーツ娘。
 前野浩(まえの・ひろし) 
     :幸久の友人、人間コンバータ 
 桜居津海希(さくらい・つみき) 
     :前野の恋人、飛頭蛮一族の姫 
 今井祐司(いまい・ゆうじ)
     :窓香と同じ高校出身のサッカー青年。目つきが若干悪い。

潜入
----

 あれから数日後。仕事をさっさと終わらせて、練習場へと車を走らせる。
 パンフレットの案内にある室内練習場の駐車場は、かなりスペースがあるが
それでも結構な数の車で埋まっていてクラブの人気が伺える。一応用意したス
ポーツウェアの入ったバッグを片手に車を降り、待ち合わせの練習場入り口ま
で向かう。

「ああ、幸久くんこんばんは」
「おう、前野。すまんな」
「やっときたー」

 ひとりで様子を見にきたりしたら、またあのおじさんにいらん期待をさせる、
とのことで声をかけた友人の前野、その彼女のつみきが練習場入り口で待って
いた。

「結構にぎわってんのな」
「そうみたいですね、最近なかなか人気らしいですから」
「はやく、こっちこっち」

 受付で体験コースの案内を受けてると、背後からバカっ高い声が聞こえた。

「あ〜〜!ユキにぃっ!」
「なんだよ窓香、んなデカイ声出さなくても聞こえてるっつの」
「ユキにぃ見学?フットサルやるんだ!」
「あーうん、まあ、最近運動とかしてねーし」
「ホントっ?やった♪」

 こらてめえ、スーツひっぱんなよ。いちいちまとわりつくんじゃねえ。

「こんにちは、窓香さん」
「あ、前野さん……だっけ?こんにちはっ」
「こんにちは、はじめまして」
「えっと」
「桜居津海希です」
「あ、本宮窓香ですっ、よろしく」

 ちびっこい体でぺこん、とお辞儀をする姿はなんつーか変わらねえというか
進歩してねえというか。確かに黙って立ってればそれなりに可愛いくせにどう
にもガキっぽさがさっぱり抜けてねえ。

「ねえねえ、ユキにぃもう体験参加用名簿書いた?」
「今説明聞いてんだよ、後にしろって」
「私の練習してるコートは第二コートだからねっ、こっち見に来てよね」
「わーったから、後でいくからお前さっさと練習行けよ」
「絶対だよー」

 ぶんぶんと手を振って走ってく。

「ったく、いつまで経っても女っ気のねえガキだな」
「でも、随分懐かれてますね、可愛いじゃないですか」
「なんだよ、その含みは」
「いえ、含みなんてありませんよ」
「ありゃタダの従妹だ、女にはいらねーよ」
「そう言いつつ嬉しそうねえ」

 んだよその笑みは。つーか俺は窓香の奴の探りにきたわけであって遊びに来
てんじゃねえんだよ。

「ったく、手間かけさせやがる」
「でも何だかんだいって引き受けちゃうところが君らしいですね」
「ほっとけ」

 ともかく体験見学コースの名簿に名前を記入して更衣室で着替え、指定され
た第二コートへ向かう。コート中は結構広く、数人が体操で体をほぐしたり、
練習前の走りこみやらをやっている。

「ユキにぃっ!」
「いちいちデカイ声で呼ぶんじゃねえよ」
「えーいいんじゃんかあ」
「仲いいんですね」
「……ちげえよ」

 ったく、お前、おじさんの回し者かよ。

「ユキにぃ、最近運動してないの?体なまっちゃうよー」
「実家にいた頃さんざんやったからもういい」

 あの、笑う凶器こと史兄貴に稽古なぞつけられた日には命がいくつあっても
たらねえぞ、実際。

「つーかお前、サッカーばっかやってねーで彼氏の一人も作れよ」
「べっつにいいよ、彼氏なんか」
「いきおくれても知らねえぞ、こら」
「そんなのヤバくなったらユキにぃで手を打つし」
「あほか」

 ぐしゃぐしゃと頭をかき回す。つーかなにげに予想はしてたけどやっぱサッ
カー馬鹿かよ、この小娘。

「ちょっとユキにぃ、いたいってばー」
「知るか」


「なんだかんだ言って、兄貴風吹かせまくってるわね」
「お兄さんぶりたいんでしょうね」
「グダグダ言いながら嬉しそうだし」
「でも、なかなかいい雰囲気じゃないですか」


 馬鹿やってると、ふいに鋭いホイッスルの音がなった。

「集中!ウォーミングアップ始めます」

 少し目つきの悪い男が笛を片手にこっちを軽くにらんだ。

「本宮、いつまで遊んでる」
「あ、はーい。ごめんなさいっ」

 んだよこの男、いきなりガンつけやがって。

「体験見学の方ですか?」
「一応」
「ええ、そうです」
「わたしも」

 ざっと俺らを見回して。

「では、ウォーミングアップを一緒に。あとは簡単なルール説明とセットメ
ニューを一緒にやりましょう、あと試合の見学をして雰囲気を見てください」
「わかった」
「はい」
「望むところよ」
「ああ、あと女性は隣のコートの方で練習をしているんですけど」
「え?」

 は?つーか窓香は女じゃねえとでも抜かすのかこのガンつけ野郎。

「こいつはどーなんだよ」

 隣の窓香を指先でこづく。

「私?女性チームじゃ物足りなくって、こっちで混ぜてもらってるんだよ」
「はぁ?」

 窓香、おまえな……男ばっかの練習に女一人で混ざるなよ!
 しかもお前、ジャージじゃなくて単パンに生足むき出しっつーのは年頃の女
としてどうよ。つうか周りの奴ら見てんだろ絶対。


「なんか、あからさまにイラついてるわね」
「心配なんでしょうね。それよりつみきさん女性用のコートいきます?」
「面白そうだからこっちで様子見しておくわ」
「大丈夫なんですか?」
「平気平気」


 練習をはじめながら、周りをざっと見回す。さっき俺を睨んだガンつけ野郎、
遠巻きに見てる奴が二人、こっち見ないフリしてるやつ一人。
 軽く流して四人かよ、思わず心の中で舌打ちする。
 つーか窓香、お前まがりなりにも年頃の女なんだからちったあ警戒しろよ。
おじさんもおじさんだ、少しは娘にクラブの話とか様子とか聞けよ。俺なら
ぜってーこんな所やめさせるぞ。

「つみきちゃん、結構やるね」
「まかせて、余裕よっ!」

 おまけに当人が全くそのことを気にしてねえってのが最悪だ。

「そんなにイライラしてると胃に悪いですよ」
「誰がイライラしてんだよ」
「まあ心配なのはわかりますよ。可愛いですしね窓香さん」
「なんだよ、前野」

 なんか含みがある言い方じゃねーか、はっきり言えや。

「タダの従妹だっつの、女じゃねえよ」
「そうですか。でも、周りの人達はそう思ってないみたいですよ」
「つーか、あの小娘ちっとも女の自覚がねえっ」

 あーくそっ、そこの野郎てめえわざとらしく背中とかべたべた触るなよ。
窓香も窓香だ、ちったあ嫌がれよ!セクハラだぞ。調子にのるだろうがっ。


練習終わって
------------

「それでは今日はこれまでです、お疲れ様でした」
「はーい、おつかれさまっ」

 はぁ、やっと終わりかよ。
 久方ぶりに走り回ったせいで結構体にキてる。運動はそんな駄目なほうじゃ
ねえけど、やっぱ普段あまり走りこまない分体力は落ちてんな。

「ユキにぃお疲れっ」

 バラけてさっさと更衣室へ戻る奴、体をマッサージしてる奴がいる中、ひょ
こひょこ寄ってきた窓香の首根っこつかまえる。一瞬、ガンつけ野郎がこっち
を見たが知ったこっちゃねえ。

「お前なあ、何考えてんだ」
「え?」
「え、じゃねえよ、わかってねえなっ」
「まあまあ、落ち着いて」

 あいかわらずわかってねえツラで不思議な顔してやがるし。

「つーかお前、男ばっかの練習に女一人で混ざるなよ」
「え、でも、女性チームだと私みんなと差がつきすぎちゃって」
「そういう意味じゃねえっ!」

 なんで俺がこんな注意しなきゃなんねーんだよ。

「イイ歳した女が男ばっかの練習に混ざるなっ、あぶねえだろがっ」

 しかも生足むき出しでだ。見るなっつうほうが無理だろ、俺なら絶対見る。

「え、そんな、あぶないってひどいよお。みんないい人だよ?」
「いいわるいの問題じゃねえ」
「だってみんな優しいし、練習で遅くなった時車で家まで送ってくれたりとか
してくれるし」
「って、おい!男の車にほいほい乗るんじゃねえよ!」
「え?」

 連れ込まれたりしたらどーすんだ、てめえ。

「遅くなりすぎる前に切り上げて帰れ!親父さん心配してんだろ!家から通え
ねえ距離でもねえんだからチャリ使えよ!」
「ご、ごめんなさい。だって練習楽しくって、つい」

 つい、じゃねえ。チームの男どもしくんでんじゃねえのか、こら。

「まさか、メシとかおごってもらったりしてねえだろうな?」
「え、なんでわかるの?えっと、でもたまにだよ」

 あああ、この小娘がっ。
 ていうか、おじさんよ。遠回りに俺に探り入れさせるまえに娘に話聞けよ。
あぶねえだろ、これ。

「ほら幸久くん落ち着いて、そんなに怒鳴らないで」
「黙ってられっか、この馬鹿娘」
「きゃー痛いってば、やめてー」
「男なんて腹の底で何考えてるかわかんねえだぞ、こら!」
「自分がそうだからね、君の場合」
「うるせえ、前野」
「図星つかれたからって逆切れみっともないわよ」

 大きなお世話だ。

「帰りが遅くなってどうしても車で帰るんだったら、他の女の知り合いと一緒
に乗るか俺に連絡しろ!クラブの顔見知りとはいえろくに知りもしない男の車
にホイホイ乗るんじゃねえ、わかったか?」
「……えっと、うん、わかった」

 つーか、おじさん心労でぶったおれるぞ。んな話聞いたら。


「なんか、はた目だと束縛したがりの口うるさい彼氏よね」
「それだけ可愛くて心配なんでしょう」


「あとむやみにメシも気安くおごってもらうな。いいか、タダより高いメシは
ねえんだぞ」
「……うん、わかった」
「お前もイイ歳の女なんだから、もっとちゃんと自覚しろよ」
「うん」
「わかればいいんだよ、ったく」

 あーくそ、でもしばらく通って様子見ねえと駄目だなこりゃ。めんどくせえ。

「心配かけちゃってごめん、ユキにい」

 ったく、しおらしくしてりゃあ可愛いんだけどな。


時系列と舞台 
------------ 
 2005年1月。フットサルクラブにて。
解説 
---- 
 従妹の窓香の状況を探りにきて、兄貴風ふかせまくりの幸久。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。

ゆっきーを睨んだ男ってのが、今井祐司くんです。彼も9年ぶりの登場。
とりあえず、別の話でまた窓香と一緒に出る、はず。

おじさんの入り婿計画はまだ続きます、たぶん。




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