[KATARIBE 28318] [HA06P] エピソード:『科学と非科学』

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Date: Mon, 24 Jan 2005 23:30:55 +0900
From: Motofumi Okoshi <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28318] [HA06P] エピソード:『科学と非科学』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。
自キャラでEP書きました。

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エピソード『科学と非科学』
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登場人物
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 榎愛菜美(えのき・まなみ)
  :中学3年、元・野球部マネージャー。実はアンドロイド。
 御法川美香(みのりかわ・みか)
  :中学2年、部活無所属。実は抜け首一族。


事件は起こった
--------------
 1月も終わりに差し掛かったある日のこと。

 愛菜美    :「うわー、すっかり暗くなっちゃったなー」

 高校への推薦入学を決めた愛菜美は、夏まで所属していた野球部を手伝って
いた。
 後輩のマネージャーが転校して辞めてしまい、愛菜美の後任がいなくなって
しまったのである。

 愛菜美    :「でも、私も3月で卒業だし……何とかしないと……」

 考えながら歩く愛菜美。

 愛菜美    :「……うーん、1年生が入ってくれるといいんだけど……」

 とはいえ、新1年生の入部は流動的である。やはり、現1・2年生から勧誘
するのが一番確実だろう。

 ?      :「あぶなーい、どいてーっ」
 愛菜美    :「……え?」

 急に聞こえてきた声に反応し、思考を止めて前方を見ると……。

 ?      :「どいてってばーっ」
 愛菜美    :「……ええっ!?」

 すぐ目の前に、女の子の姿。突っ込んできている!

 SE      :どっかーん

 正面衝突してしまった愛菜美は、なす術もなく後方に吹っ飛んだ。


首が……
--------
 愛菜美    :「きゃっ!」

 後方に吹っ飛んだ愛菜美。受身も取れず、頭を強く打ってしまった。

 愛菜美    :「ううう……痛いよぉ……」

 頭をおさえようとする愛菜美。しかし……手が頭に当たらない。
 何度も頭に手を当てようとしても、その手は空を切るばかり。

 愛菜美    :「えっ……まさか」

 立ち上がってみる。しかし、視線はまったくうごかない。
 身体はしっかりと立ち上がっているのに、頬にアスファルトの感触がある。
 つまり、この状況で考えられることはひとつ。

 愛菜美    :「(たいへんだ! 私の首……外れてるんだ!)」

 愛菜美は人間ではなく、人間型のロボット、アンドロイドである。
 彼女の首は取り外し可能であり、破損を防ぐために衝撃によって外れること
があるのだ。
 今、まさにその機能が働いていた。しかし……

 愛菜美    :「(ぶつかった人に見られた!)」

 彼女がアンドロイドであることは秘密である。見られるとまずい!

 愛菜美    :「(と、とりあえず、首を拾わなきゃ)」

 視界が開けないので、手探りで首を探す。
 やがて、それらしいものを拾った……が、首の方に触覚がない。

 愛菜美    :「あれ?」

 おかしい。重さといい、手に伝わる肌や髪の感触といい、たしかに首のはず。

 愛菜美    :「おかしいな?」

 首であることを確認しようと、あちこち触ってみると、妙なことに気付いた。
 たしかに肌の感触、髪の感触はある。だが……自分の特徴、ポニーテールが
ないのだ。

 ?      :「ちょっと、私の首触ってるのは誰?」

 不意に、女の子の声が聞こえた。その直後、自分の視点が急に高くなった。
 そこで、初めて状況がわかった。

 愛菜美    :「えええっ?」

 自分の体が、別の女の子の首を持っていたのだ。


非科学
------
 首      :「ちょっとー、これなんなのー」

 首だけでしゃべっている少女がいる。よく見ると、頬をすりむいたのか、血
がついている。

 愛菜美    :「(えっ、人間って首だけじゃいきられないよね、でも、
        :血がついてるからロボットじゃない……ええっ!?)」

 目の前の非科学的状況に、愛菜美の頭がパニックを起こす。

 首      :「あれっ、あなた誰っ!?」
 愛菜美    :「え? え?」
 首      :「私が持ってる生首のあなたよっ」

 この状況で生首といえるのは、しゃべってる彼女を除けば自分しかいない。

 愛菜美    :「あ、あの、えっと」
 首      :「とにかく、私の首かえしてよっ」
 愛菜美    :「え、あ、はい、うん」

 とりあえず、首を持ったまま、自分の身体を目の前に近づけてみると、急に
視点が落ち……痛みが走った。

 愛菜美    :「いたっ」
 ?      :「あ、ごめんごめん」

 どうやら、首が再び下に落ちたらしい。

 ?      :「今、あなたも元に戻すから、ちょっと待って」

 直後、視点の高さが普段どおりに戻った。
 どうやら、首が元通りの位置に収まったようだ。

 ?      :「はい、これでいいでしょ」

 さっきの生首が話していたのと同じ声である。慌てて振り向くと。

 美香     :「ごめんごめん、ぶつかっちゃって。痛かった?」

 さっきの生首と同じ顔の少女。よく考えてみたら、いきなりぶつかってきた
のはこの少女だ。

 愛菜美    :「痛かったどころじゃないよ、普通なら大怪我だよ」
 美香     :「ごめんごめん」
 愛菜美    :「もうっ」
 美香     :「それにしても、まさか仲間だったなんてねー」
 愛菜美    :「仲間?」
 美香     :「そうそう、首の外れちゃう仲間」

 やはり見られていたらしい。

 愛菜美    :「仲間ってことは……キミも?」
 美香     :「うん、さっき見たでしょ?」

 そして、自分が見た生首も幻などではないらしい。


自己紹介
--------
 ひとまず、近くの公園に場所を移す。

 美香     :「私は御法川美香。吹利学校中等部の2年だよ」
 愛菜美    :「私は榎愛菜美。同じ学校の3年生なの」
 美香     :「あ、それじゃ榎センパイだね」
 愛菜美    :「美香ちゃんは、人間なの?」
 美香     :「うーん、一応人間だと思う。心臓は動いてるし、血も流
        :れてるしね。ただ、首が取れちゃうだけ」
 愛菜美    :「私は……人間じゃないからね」
 美香     :「え、人間じゃないの?」
 愛菜美    :「うん……私、ロボットなの。だから、首とか手足とかが
        :外れるの」
 美香     :「信じられないよ〜、人間にそっくりじゃない。外見だけ
        :じゃなくて、しゃべり方とかだってさ」
 愛菜美    :「そう言ってくれると嬉しいな」

 いろいろとしゃべりこむ二人。

 美香     :「ところで、榎センパイって3年でしょ? 受験は?」
 愛菜美    :「あ、もう推薦決まったの」
 美香     :「へぇ〜、頭いいんだ〜、うらやましいな〜」
 愛菜美    :「えへへ……」(照)
 美香     :「でも、どうしてこんな遅くまで学校に残ってたの?」
 愛菜美    :「実は、野球部のマネージャーがいなくてね。私、夏まで
        :マネージャーだったんだけど」

 愛菜美、事情説明。

 美香     :「あー、うちのクラスの洋子ちゃんがマネージャーだった
        :んだ」
 愛菜美    :「それで、お手伝いしてたの」
 美香     :「そっかー。でも榎センパイ、3月で卒業しちゃうんだよ
        :ね」
 愛菜美    :「うん、それで困ってるの。後任がいなくて」
 美香     :「野球ねー……私、やってみてもいいかも」
 愛菜美    :「え、ホント?」
 美香     :「うん、ちょっと興味あるんだ、野球って」
 愛菜美    :「願ってもないことだよ、すっごく助かるー」
 美香     :「ほかならぬ榎センパイの頼みだもんねっ」
 愛菜美    :「(いや、べつに頼んでないけど……)」

 なにはともあれ、喜んで美香に連絡先を教える愛菜美。

 愛菜美    :「じゃ、私はそろそろ帰るから、明日さっそく来てね」
 美香     :「うん、わかったー」
 愛菜美    :「それじゃねー」

 愛菜美は、喜んで帰っていった。

 美香     :「ついでだから、学くんもさそってみようかなー」

 美香も、自分の家に帰ることにした。


時系列と舞台
------------
 2005年1月下旬。吹利市幡多町。


解説
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 首が外れる科学の結晶。一方、非科学的に首が外れる人。

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