[KATARIBE 28234] [HA06N] 小説『泣き酒』

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Date: Sat, 15 Jan 2005 17:41:15 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28234] [HA06N] 小説『泣き酒』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年01月15日:17時41分14秒
Sub:[HA06N]小説『泣き酒』:
From:久志


 ちは、久志です。

 幸久荒れてます、お兄ちゃんも大変ですね。
通りすがりで桜木さんを借りてみました。

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小説『泣き酒』
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登場キャラクター 
---------------- 
 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
     :霊感葬儀屋さん、最近フラれたばっか。もうボロボロ。
 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :幸久の兄、のほほんお兄さん。酒豪。
 桜木達大(さくらぎ・たつひろ)
     :通りすがったエンジニアさん。

寒い日に
--------

 吹利市内、夜も更けて。
イブの夜に降った雪が、三日たった今もまだ消えずに残っている。

「やれやれ」

 なんだってこんな寒い日に、わざわざ公園のベンチにシートを広げて酒飲ん
でるかなあ。

「ちきしょおぉぉっ!」

 あーはいはい、叫ばない叫ばない。ご近所迷惑だからね、幸久。
 しかしまた散々な目にあったもんだね、まったく。

「うー」

 ほら雪の上寝ない、風邪ひくってば。
 ひょいと首根っこ引っつかんでベンチに座らせる。
 ああ、まだちょっぴり顔腫れてるねえ。しかしまあ、よくやりかえさなかっ
たもんだね、うちら兄弟でも一番血の気の多いはずのお前が。まあ、そんだけ
ショックが大きかったってことなのかなあ。

「……ちきしょお」

 これまた重症だなあ。
 しかし、前にいれあげてたバツイチ女社長といい、今回の横恋慕といい。
 つきあう前にフラれることわかろうよ、弟よ。

「う……」

 はいはいよしよしシート敷いてるとこで泣きなさいよ、あとタオル。
 とくとくと、そばにおいてある酒瓶からお酒を紙コップに注ぐ。まあこれで
も飲んどきなさい。ほらほらそんなに一気に飲まない。

「げほっ」

 ほら、むせた。
 まあ、頭で理解できてても、そうそう上手く立ち回れないってのはお前らし
いよねえ。仕事とか他では要領いいのに、なんで恋愛ごとだけはからっきしな
んだろうねえ、まったく。
 コップのお酒を一口。
 おいしいお酒なのに、そんなの飲み方じゃ酒が泣くぞ。

 と、遠巻きに僕らを不思議そうに見てる人が一人。

「こんばんは」
「あ、すいません、つい見てしまって」
「いえいえ、こちらこそすいません、こいつうるさかったですか?」

 かくかくと頭を揺らす。もーそろそろでつぶれるからも少し我慢かな。

「いえ、どうしたのかと思って」
「いや、ちょっと手ひどくフラてしまったぽくて」
「なるほど」

 やれやれ、騒いでもうるさくないよう人目につかないように公園で飲んでた
けど、やっぱり無理があるよねえ

「よかったら一杯だけ飲んでいかれます?」
「え?」

 正直、相手がいなくてヒマだったってのもあるけど。

「では、一杯だけ」
「ぜひぜひ、どうぞ」

 とくとくと、紙コップに注ぐお酒。

「おいしいですね」
「ええ、銘酒らしいです」

 いいお酒、こんな飲み方してたらバチがあたりそうで。なんとなく、他の人
に飲んでみて欲しかったってのもある。

「しかし、なんだってこんな夜に外で?」
「いや、本人、かなりキツイみたいなんで」

 もうほとんどグダグダの頭をこづく。

「ホント辛くて悲しくて泣きたいのなら、気の済むまでとことん飲ませて泣か
せてやろうかと思いましてね。お店とか家とかだと、やっぱ迷惑かな、とか」
「なるほど。モテそうに見えますけどねえ」
「これがなかなか要領の悪い子で」

 まったくほんとに要領が悪いやつだよねえ。

「でも経験上、もうそろそろつぶれます」
「随分なれてるんですね」
「ええ、何度となくやってますから」

 ホント、そろそろ卒業して欲しいもんだけど。

「まあ、こいつは昔からよく泣いてよく騒いでよくごねるいい子でしたから」
「いい子、ですか」
「ヘンに溜めて鬱屈するより、騒いでくれたほうがこっちも気が楽ですし」
「ああ、それはありますね」

 なんて話してると。ぺちゃんと、体が沈んだ。

「あ、つぶれた」
「概ね時間どおりかな」

 うん、飲み始めてから大体こんくらい。まあ、いつもどおり。

「寒いのに引き止めちゃってすいません」
「いえ、こちらこそご馳走様でした」

 よっこらせと崩れた体を背負い上げる。

「では、また」
「ええ」

 小さく手を振って。

「う……」
「お前も難儀なやつだよねえ」

 僕の周りはどーしてこう難儀な人であふれてるかな。
 まあ、嫌ではないけどね。

時系列と舞台 
------------ 
 2005年冬、幸久フられて三日後。

解説 
---- 
 ボロボロになって泣いて飲んでる幸久と世話役の史久。
 そこに偶然通りすがった桜木。
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以上

 とりあえず泣いてるゆっきーにフォローするお兄さんです。




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