[KATARIBE 28216] [HA06P] エピソード:『守るべきもの』

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Date: Thu, 13 Jan 2005 18:36:09 +0900 (JST)
From: みぶろ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28216] [HA06P] エピソード:『守るべきもの』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年01月13日:18時36分09秒
Sub:[HA06P]エピソード:『守るべきもの』:
From:みぶろ


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エピソード『守るべきもの』
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 登場人物
  化け川獺と川原の愉快な生き物達。あと忌野くん。

舞台   霞川中流域
時系列  10月上旬 

本文
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 銃声。一斉に飛び立つ水鳥の音。鼻を刺す火薬の匂い。
 仲間が、撃たれた。
 昔は俺の仲間もたくさんいた。みろよこの美しい毛皮。これを取るために人
間は俺達を追い回し、罠にかけ、虐殺したんだ。
「よせ、行くな! あんたもやられるぞ」
「バカヤロウ! あいつはまだ生きているんだぞ!」
 葦の茂みで俺を押しとどめる仲間達。しかし、俺はそれを振り切って飛び出
した。
 茂みをかき分ける音に反応した人間が振り返り、銃口を向ける。しかしマー
ベラスな俺は素早く飛び上がり、日輪を背に急降下した! おたおたする間抜
けな人間の無防備な顎を打ち下ろしの右が打ち抜き、そのまま空中で態勢を替
えて回し蹴りを叩き込む。俺の素敵な左背足の感触が、俺の体重と加速度を存
分に奴の顎に伝えたことを教えてくれる。
 笑いながらその役割を放棄するヤツの両膝。しかし俺はまだまだ手をゆるめ
ない。大地に着地して再び加速を補充し、前のめりに倒れようとする人間に、
今では失われた奥義・フォースオブネイチャーを打ち込んだ! 6発、7発、
8発! 
「大自然のおし……」
ずぎゅうぅぅん。
 コンボの全てを叩き込まれ、物も言わずに倒れ込む人間に、俺がキメぜりふ
を言おうとし
たときだった。新たな銃声が俺の背中から聞こえた。しまった! 仲間がいた
のか!
「うぅ……」
 だが凶弾は俺には当たらなかった。さっき撃たれた仲間がかばってくれたの
だった。
「バカヤロウ! 俺はお前を助けに」
「すまねぇな、へへ……。助けに来てくれて、嬉しかったぜ……お前とは喧嘩
ばかりして
いたが(がく)」
「おい、しっかりしろ! ちくしょう……ちくしょおおぉぉ!!」

 カワウソ   :「てなわーけーで、この俺様の偉大さがわかっただろう」
 ヤマカガシ  :「うわー。カワウソさんの嘘武勇伝はいつ聞いても心が躍
        :るなぁ」
 クイナ    :「これはもうハリウッドものですよ」
 エンマコオロギ:「やべえ。涙出てきた」
 ヌートリア  :「……いや、だからなんなんだよ」
 クイナ    :「お前、今の話を聞いてなんとも思わないのか!? 人間
        :の心ってものが無いのか!?」
 ヌートリア  :「……ねぇよ。ていうか『縄張りを荒らすヤツはゆるさん』
        :とか言って殴りかかってきたあげく、こっちが反撃すると
        :『こんな話がある』とか言ってわけのわからんカコバナさ
        :れた方の身にもなってくれよ」
 カワウソ   :「くくく。既に貴様は我が術中にあり」
 ヌートリア  :「は! これは!」
 カワウソ   :「貴様が俺の素敵な話術に酔いしれた隙に、粋なサワガニ
        :さん達にツタで縛って貰ったのよ」
 ヌートリア  :「馬鹿な! サワガニはお前の餌でもあるはずだ、協力す
        :るはずが」
 カワウソ   :「冬の間狙わないことを条件に協力を頼んだのよ。ビバ砲
        :艦外交イェーイ。そして! 縛りに使ったのはヘクソカズ
        :ラ。悪臭による精神打撃と俺のリアル打撃の二重奏で安ら
        :かに逝けい!」
 ヌートリア  :「うぼああああ」
 ギャラリー一同:「さすがカワウソさん、薄汚いぜ! そこにシビれる、憧
        :れるゥ!」

                 ※                 

 ヌートリア  :「殺さない、のか」
 カワウソ   :「俺は俺の守るべき物を守った。お前の守るべき物まで奪
        :おうとは思っちゃいねぇ」

 夕日に染まる川原にトランペットが鳴り響く。

 ヌートリア  :「あんた……おっきいな」
 カワウソ   :「この川を遡り、ちょいと西に行ったところに農業用ため
        :池がある。行ってみな」
 ヌートリア  :「ありがとう……! ありがとう、かわうそさん」

 既に夜の色となった川面へ足を引きずりながら消えていくヌートリア。

 カワウソ   :「あいつも……毛皮目的で輸入され、今では害獣指定を受
        :けた外来種。ちょっと同情しちゃうぜ。昔からいた俺達カ
        :ワウソはいなくなっちまった。俺達は敵同士じゃねぇ。本
        :当の敵は人間なんだよ……。でも、あいつにはまだ探せば
        :仲間がいるはずだ。きっと頑張れるさ」
 エンマコオロギ:「兄貴、寂しくないッすか」
 カワウソ   :「ふふ、何言ってるんだ。俺はお前らのことを家族と思っ
        :てるんだ、ぜ? 寂しくなんか無いさ」
 ヤマカガシ  :「カ、カワウソはーん(涙)」
 カワウソ   :「すっかり日が暮れちまったな。さ、みんなねぐらに帰ろ
        :うぜ」
 クイナ    :「じゃあそのまえにちょっと腹ごしらえっと(ぱく)」
 ヤマカガシ  :「こいつぅ。ちゃっかりしてらあ」
 カワウソ   :「あはははは」
 クイナ    :「あはははは」
 ヤマカガシ  :「あはははは」

                 ※                 

 カワウソ   :「というようなことがこないだあったのよ。俺もこの川の
        :神的な存在として、頼れる兄貴風なロールプレイに大忙し
        :よー」
 忌野     :「そうか……まあほどほどにな……」


解説
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 ヌートリアと縄張り争いをする川獺。
 語り部はお子様の自然を守る心を育てます。
 



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