[KATARIBE 28178] [HA06N] 小説:『天使と狼』

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Date: Tue, 11 Jan 2005 13:35:26 +0900
From: Motofumi Okoshi <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28178] [HA06N] 小説:『天使と狼』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。
今回は自キャラのみを使った小説。

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小説『天使と狼』
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登場人物
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 白神知佳(しらかみ・ちか)
  :天使の白い翼で空を翔ける小学4年生。
 岡啓介(おか・けいすけ)
  :狼の姿で森を駆ける大学3回生。
 新崎智也(しんざき・ともや)
  :知佳と啓介の間に入って橋を架ける大学3回生。


いつもの森で
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 冬は寒いけど、いい天気の日が多い。
 吹利市は盆地の真ん中だから、一年中雨が少ないんだって、社会科の授業で
園子せんせーが言ってたっけ。

 今日もまた、寒いけどいい天気。
 風も弱いから、空を飛んでて気持ちいい。

 私は白神知佳。最近、背中に羽が生えて空を飛べるようになったの。
 それを知ってるのは、親戚の智也おにーちゃん、クラスメイトの桃花ちゃん、
おぺらちゃん、それに私の4人だけ。
 桃花ちゃんとおぺらちゃんは、背中に乗せて飛んであげたりもした。

 今私がいるのは、吹利市の中にある、人があまり来ない森の中。
 人があまり来ないから、ここで空を飛ぶ練習をしてるの。
 桃花ちゃんやおぺらちゃんも、ときどき飛ぶ練習にくるみたい。

 でも、この森はとっても広い。何回か探検して池をみつけたけど、まだまだ
何かありそうな気がする。

 そんなことを思っていると。

 「おーーーーーーーーーーーん」

 うわっ!
 なんだろう、今のすごい鳴き声……

 「おーーーーーーーーーーーん」

 また聞こえた。あっちの方から聞こえたね。
 調べに行こうとした、そのとき。

 「〜〜〜〜〜〜〜♪」

 あっ、ケータイが鳴った。ママからの電話だ。
 電話をポケットから出す。あっ、電話じゃなくてメールだった。
 晩ご飯の時間だから、早く帰ってきなさい、だって。

 鳴き声は気になるけど、晩ご飯抜きになるのはいやだ。
 私は、あわてて家に帰った。


おにーちゃんと
--------------
 「……ってことがあったの」
 「ふーん、謎の鳴き声ねぇ……」

 きのうの鳴き声のことを聞こうと思って、智也おにーちゃんに電話した。
 智也おにーちゃんは、私のお願いを快く聞いてくれた。

 「狼の遠吠えみたいな声だな、それって」
 「えっ、おおかみさん?」

 そういえば、桃花ちゃんの家で、ローザちゃんがおおかみさんに会ったって
話していたっけ。
 桃花ちゃんは、おおかみさんなんていない、ってずーっと言ってたけど。

 「面白そうだ、狼捜しといってみるか」
 「いっしょに行ってくれるのっ!?」
 「ああ、俺の耳があれば捜しやすいだろ」
 「うんっ」

 智也おにーちゃんは、すごく耳がいい。
 私や他のみんなが聴き取れないものまで聴けちゃうんだ。
 そんな智也おにーちゃんといっしょなら、もっと心強い。

 私たちは、さっそくあの森に向かった。


ふたたび、森の中
----------------
 森の入り口。ここまで、智也おにーちゃんといっしょに来た。
 さっそく、智也おにーちゃんを背中に乗せて、森の中へ飛んでいく。

 「木にぶつかったりしないでくれよ」
 「だいじょーぶ、まかせといてっ」

 森の中を飛んで、奥の方まで入っていく。
 でも、何も聴こえない。
 智也おにーちゃんにも、何も聴こえてないみたい。

 「やっぱりいないんじゃないのか?」
 「えーっ、この前たしかに聴いたんだもんっ」
 「わかったわかった」

 ときどき休みながら、森の中を捜しまわる。
 私は、飛ぶのが気持ちいいから飽きない。
 でも、休んでるときの智也おにーちゃんはつまらなさそう。

 時間がどんどん過ぎていく。でも手がかりは何もない。
 おおかみさん、今日はお休みしてるのかなぁ……。


おおかみさんだ!
----------------
 もう日が暮れそう。智也おにーちゃんも、私も、疲れちゃった。
 今日はもう帰ろうと、森の入り口まで戻ってきた。

 「あれ?」
 「ん?」

 森の入り口に、なにやら荷物が置いてある。それに、人の服が置いてある。
 桃花ちゃんやおぺらちゃんの服じゃない。男の人の服だ。

 「こ、こいつは……!」

 服を見ていた智也おにーちゃんの表情が変わった。そして、次の瞬間。
 智也おにーちゃんが、また森の中へ駆け込んでいった。

 「あっ、おにーちゃん、どこいくのっ」

 私も、あわてて後を追いかけた。空を飛んで。
 そして、木の間をくぐりぬけると……

 「あっ!」

 おおかみさんがいた。
 しかも、智也おにーちゃんと向かい合っている。

 「智也おにーちゃん、おおかみさんにたべられちゃうよっ」

 智也おにーちゃんが危ない。そう思って、私は叫んだ。
 そのとき、おおかみさんがびっくりして私を見てた気がする。

 「啓介の敵だ、覚悟しやがれ!」

 そう言うと、智也おにーちゃんは、ポケットから何か機械を出した。
 その機械のスイッチを入れると……いきなり、おおかみさんが苦しみ始めた。

 「狼にとっての毒音波だ! 気絶させて保健所に引き渡してやる!」

 私にはよくわからないけど、おおかみさんはすごく苦しんでる。

 「待ってくれ智也、誤解だ誤解!」
 「黙れ人喰い狼……って、何!?」

 えっ? 今、おおかみさんがしゃべった!?

 「オレだオレ、オレが啓介本人だよ!」
 「……な?」
 「頼むから、そのスイッチ切ってくれ!」

 間違いない。おおかみさんがしゃべってる。
 智也おにーちゃんも、あっけにとられてた。
 われに返ると、あわてて機械のスイッチを切っていた。


人狼と天使
----------
 「……じゃあ、お前、狼に変身できるってわけか」
 「ああ」

 おおかみさんの話を聞く。
 おおかみさんの正体は、智也おにーちゃんのお友達だった。

 「俺はまたてっきり、啓介が狼に喰われたもんだと思ったぜ」
 「服に血なんて一滴もついてなかっただろーが」
 「そんなこと考える余裕もなかったからな」
 「まったく、死ぬかと思ったぜ……」
 「悪い悪い」

 智也おにーちゃんも、おおかみさん(啓介おにーちゃんっていうんだって)
も、お互い安心したみたい。

 「ところで、そっちは誰だ? お前の彼女か?」

 おおかみさんが、私のほうを見てる。カノジョ、って……

 「バカ言うなよ、親戚の子だ」
 「『子』ってのは失礼じゃないのか」
 「これでも小4だよ、こいつ」
 「げ、マジ?」

 おおかみさん、驚いてる。

 「まあ無理もないな、お前の彼女よりも背高いしな」
 「な……! なんでそこで美琴ちゃんを出すんだよ」

 おおかみさんの顔が赤くなった……ような気がした。

 「でも、天使みたいにきれいな羽だったな……」
 「お前の天使は彼女じゃねーのか?」
 「それはもういいって!」
 「あっはっは」

 智也おにーちゃん、けっこう意地悪さんだなぁ。

 「ま、今日のことは、お互いオフレコで、な」
 「ああ、わかった。約束する」
 「知佳っちも、今日のこと、誰にも内緒だぞ」
 「うん、わかってる」
 「じゃ、俺ら、そろそろ帰るわ。お前は?」
 「もうちょい森の中走ってくるわ」
 「そうか、じゃ、気をつけてな」
 「ああ、そっちもな」

 そう言うと、おおかみさんは、また森の中へと消えていった。

 「さ、知佳っち、帰るぞ」
 「うんっ」

 そして、私たちも、森を出て、家に帰った。
 後ろに、おおかみさんの遠吠えを聴きながら。

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