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Date: Fri, 7 Jan 2005 16:32:17 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28104] [HA06N] 小説:『フェイク』 ( 後編)
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200501070732.QAA21449@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28100/28104.html
2005年01月07日:16時32分17秒
Sub:[HA06N]小説:『フェイク』(後編):
From:久志
ちは、久志です。
とりあえず失恋後の話とか書きたいんで、一気にすすめます。
こんな恵まれない幸久に誰か愛の手を(涙)<誰が不幸にしてますか。
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小説:『フェイク』(後編)
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登場キャラクター
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本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
:葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。
:女でいつもイイ目を見ない人。
彼女 :幸久がメロってるらしい人。彼氏がいる。
あの子 :幸久が高校の頃に好きだったらしい女の子。
本宮友久(もとみや・ともひさ)
:幸久の二つ上の兄貴。幸久が高校一年の時事故で死亡。
鈍痛
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あの頃、教室の片隅からあの子が話しているのを見てるだけで、なんとなく
幸せだった。
『幸久くん、急に呼び出しちゃってごめんね』
『ああ、別にいーよ』
初めて見かけたのはクラス分け表を眺めてる時だった。
『あのね、お願いがあるの』
『何だよ』
同じクラスだとわかってすげー嬉しかったのを覚えている。
『この手紙、渡してほしいの。友久さんに』
『……ああ、いいぜ』
俺は、ずっと。
なんつうか、もう。
いつも、こうだ。
嘘
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助手席に座ったまま、やつはずっと黙って窓の外を見てる。
俺も、何も言わずハンドルを握っている。
あの後。
「わからないの……」
「何が?」
「幸久のこと、好きだけど」
「けど?」
「でも、わからないの……」
なにが?と、問おうとしたとき。
聞きなれない電子音が響いた。
抱きしめた腕の中で、やつがびくっと体を震わせるのがわかった。
このまま離さなければ?
鳴り響く音、やつが身じろぎする。
俺は、手を離した。
「もしもし……うん、ごめん。うん」
やつは俺から離れて背を向けた、俺もたまらなくなって顔をそむけた。
電話の向こうに、やつの彼氏がいる。
浮気相手であるの俺の目の前で、やつは彼氏に嘘をついている。
ここで俺が大声をあげれば?
あの電話を奪い取って、やつは帰さないとでもいってみれば?
背を向けたやつから離れて、一本煙草に火をつける。
そんなこと、思ってもできもしねえくせに。こんな時でさえ彼氏からの連絡
を気にかけるやつに何も言えないくせに。
やつが電話を切って振り向く。
「終わったのかよ」
「うん……」
目を伏せる、落ちた視線がうろうろとさ迷う。
「あのね」
「なんだよ」
「あのひと『今日は、オールで飲んでくる』って、言ってたから」
いってたから?
煙草が、音もなく地面に転がった。
落ち着け、落ち着け俺。言い出したのは、俺だろ?
「車……乗れよ」
「うん」
やつを乗せて、走り出す。
どうしようもねえ泥沼に向かって走ってるのはわかっているのに。
引き返す気など、ない。
苦味
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兄貴の訃報は、正月も過ぎた冬のことだった。
俺は、とても現実のことだとも思えずに、ただ呆けてた。
学校の屋上で、深く、煙草の煙を吸い込む。
結局、俺が兄貴から真似できたのは煙草の吸い方ぐらいしかなかった。
『幸久くん』
あの子が、俺に声をかける。
『……何?』
『どうしてるのかと、思って……』
その目には涙がにじんでた。
『ごめんね、幸久くんのほうが辛いはずなのに……』
どっちがどっちにすがっていたのか。
お互いが、お互いに、兄貴がいない喪失感を埋めたかっただけだったんだ
と思う。
『元気だせよ……』
手を握ったのは俺のほうだった。
寄りかかってきたのはあの子だった。
肩を抱き寄せたのは俺だった。
目をつぶったのはあの子だった。
俺のことが好きなわけでもないくせに。
正直、二度と思い出したくない。
俺の正真正銘のファーストキスだった。
女って奴は、好きでもない男と平気でキスできるもんなんのかよ。
後日
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やつが俺の部屋に泊まってから、三日が経った。
「マッカラン、ダブルでロック」
「チェイサーはいかがなさいますか?」
「お願いします」
ぼんやりと、カウンターに座って煙草に火をつける。
自分で誘っておきながら、思う。彼氏がいるくせに、平気で他の男の部屋に
泊まれるのかよ。今日、やつと初めて会った合コン席にいた、やつの知り合い
だという女友達から色々とやつの話をきいた。
あの子、彼氏さん忙しいらしくて、さみしいんだって。
だったらなんだっつうんだ。
あえなくてさみしいと思う彼氏を裏切ってどうして平然としてられんだよ。
さみしいからって、彼氏がいるくせに平気で他の男と寝れるんだな。
ああ、くそっ。
コップを煽る、喉がやけるような感触。
頭では怒り狂ってるはずなのに。
今、俺はどうしようもないほど、やつに会いたい。
時系列と舞台
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2004年秋、吹利市にて。
解説
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幸久恋の泥沼です、だめだめです。
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以上。
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