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Date: Mon, 3 Jan 2005 23:22:59 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28068] [HA06N] 小説『夢見がち』 ( お題もの書き : トリ)
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200501031422.XAA74489@www.mahoroba.ne.jp>
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2005年01月03日:23時22分58秒
Sub:[HA06N]小説『夢見がち』(お題もの書き:トリ):
From:久志
ちは、久志です。
１月のお題もの書き:トリで一つ書いてみました。
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『夢見がち』
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登場キャラクター
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本宮幸久（もとみや・ゆきひさ）
：葬儀社勤務。霊感のある軟派にーちゃん。
辻美絵子（つじ・みえこ）
：幸久の元彼女らしい。
本編
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腕時計を見る。
あいつに指定された時間にはとてもじゃないが間に合いそうにない。
まあ実際、遅れたところで俺が悪びれる理由などないんだが。
むしろ、いきなり何の前触れもなく、どうせ暇なんだから茶につきあえなど
というふざけた電話をいれてくるあいつの方がよっぽど俺に対して失礼だ。
まばらになった改札をでて、待ち合わせした喫茶店まで少なくとも十五分。
一本煙草に火をつける。
どうせあせったところで間に合わないし、わざわざあいつの為に無駄な体力
を消費するのもしゃくだ。
ふと、駅前にずらりと並んだ小学生の一団が一斉に声を上げる。
「赤い羽共同募金にご協力お願いしまーす」
あーはいはい、言わんでも目でわかる。
改札でてぼさっとしてたのがまずかった。
胸ポケットの財布から百円玉を二枚、一番年下と思われるガキの抱えた箱の
中に放り込んだ。
「ご協力ありがとうございましたー」
年長のガキがおぼつかない手つきで俺の胸に赤い羽をピンで留める。
やれやれ。
「遅いっ」
「あのな」
ついて早々これかよ。
「遅いってな、お前なあ。人をいきなり電話で呼びつけておいて」
「だって、十分これる範囲内だったじゃない」
「あーはいはい、悪かったよ、俺がよ」
いきなりのこのやり取りに水を持ってきたウェイトレスの姉ちゃんが俺をあ
いつの顔を見比べておろおろしてる。
「すいません、ブレンドひとつ」
「あ、はい。かしこまりました」
席について一息つく。
「あ」
「なんだよ」
くすくす笑いながら、俺の胸を指差す。
「葬儀屋の胸に赤い羽」
「なんだよ」
「似合わないの」
「うるせえな」
葬儀屋が募金しちゃいけねえのか、こら。
不釣合いがおかしいのか、まだくすくす笑いながら俺を見る。
「ユキって不良ぶってて、実は結構いい人だよね」
「しるかよ」
ブレンドを一口、含む。
「つーか、なんの用だよ」
「んー別段用事があるわけじゃないんだけどね」
そんなこっちゃねえかと思ってはいたけどな。
つまるとこ丁度いいだべり相手がいなかったってことだろうけど。
「白鷺ってさ、一夫一妻を守るって話、知ってる？」
「さあ」
そんな話は初耳だ。
「昔話でね。あるところにつがいの鷺がいて、その片割れを猟師が撃ち殺して
しまったのよ」
「ああ」
「相手が死んでしまっても、雨の日も雪の日もその片割れの鷺はいつまでもい
つまでも相手に寄り添って、ついには弱って死んでしまったの」
「……ふうん」
「猟師は、二羽が二度とはなれないように一緒に手厚く葬ったんだって」
鳥にそんな純愛があるもんなのか。
むしろ人よりは純粋に相手を思ってるのかもしれねえ。
「でもね、ところがね。こないだドキュメンタリー番組で見たんだけどね」
「何をだよ」
「今まで一夫一妻って思われてる鳥でも、実は結構な種類がホントはつがい以
外の相手とのタマゴを生んでるらしい、って話がＤＮＡ鑑定で明らかになった
んだって」
なんか、こう、脱力した。
「……夢がねえ」
「あはは」
研究の為だかなんだか知らねえが、イヤな証明をするもんだ。
「なーんかね、そのドキュメンタリーの最後でね男のコメンテーターの方がへ
こんでるの、夢がないって。女の人の方はけろっとしてるの」
「……俺のこと揶揄してるか」
「なんかね、思っちゃった。こういのって男のほうが夢見がちなのかもね」
「…………」
あきれたというか、言い返せなかったというか。
おそらく、両方。
時系列と舞台
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2003年春吹利市
解説
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１月のお題もの書き:トリ 参加作品
http://www.cre.jp/writing/event/2005/tori.html
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こんな感じ。
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