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Date: Mon, 03 Jan 2005 17:29:26 +0900
From: gallows <gallows@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 28059] Re: [HA06P] エピソード『到着!里見マンション』
To: kataribe-ml@trpg.net
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gallowsです。やっと正月モード終了しました。さあ書こう。
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エピソード『到着!里見マンション』
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登場キャラクター
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富良名裕也(ふらな・ゆうや)
:一見中学生(中身も?)のお気楽極楽青年。
山本治彦(やまもと・はるひこ)
:戸萌不動産勤務、なぜか不幸の星のもとに生まれてきた人
坂本麻依子(さかもと・まいこ)
:サトミマンション管理人。歌唄いにしてゾンビ。
こっからが始まり
----------------
山本 :「こちらがサトミマンションになります」
フラナ :「うわー」
到着、里見マンション。
錆び付いた鉄の門を通ると、小さな庭に敷かれた煉瓦の道がマンションのエ
ントランスに向かって伸びている。その煉瓦も所々欠けており、隙間から雑草
が伸び放題になりそのまま枯れている。
山本 :「しょ……少々手入れが行き届いていないようですが」
フラナ :「え、そう?」
山本 :「あ、いえ、なんでもございません。ハハハ……」
お客様にネガティブな印象を与えてどうする。私は愛想笑いを浮かべてその
場を凌ごうとした。
その時、一際大きな雷光が閃き、遅れて地を震え上がらすようなギターの悲
鳴が辺りを打つ。……ギターの悲鳴?
SE :「ギュィィィィィィィィーン」
女の声 :「うおーい、どいたどいたーッ」
上空から落下してくる黒い影。手にエレキギターを持ち、アンプを背負って
落下してくるシルエットはまるで背嚢とスコップを携えた軍人のそれ。だがそ
の細身と声から女だと言うことがわかった次の瞬間、彼女は私達の目の前に降っ
てきた。唐突な奇態に私の口は開いたままとなり、額には雨ならぬイヤな汗が
一筋。跳ね上がる煉瓦。飛散る破片。道が荒れるのもムリはない。
機械が壊れ、骨が折れるような派手なノイズと共に着地。いや、目の前の様
子を見るに真実機械は壊れ骨は折れたようだ。膝から突き出した脛の骨は見事
女の肩を貫き、アンプがずるりと落下する。急に視界が狭くなり、私の意識は
雨に溶けるように落ちていった──
女の声 :「……アレ?」
残念失敗やり直し
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麻依子 :「なるほどー。それでうちにねー。本日はよろしくお願い
:しますよ。私、当マンションの管理人の坂本ッス。住民の
:みんなには麻依ちゃんで通ってます。」
フラナ :「うん。よろしくね〜。怪我、もう大丈夫なの?」
麻依子 :「アハハ、あんなのすりむいただけッスヨー。おっ、不動
:産屋さん起きたみたい」
目を覚ますと私はソファに横になっていた。石油ストーブの炎が燃えさかる
音と、二人の話し声が聞こえる。上半身を起こして見回すと古びた洋間だ。お
そらく住み込みだという管理人の部屋だろう。
そうだ。管理人だ。彼女は大怪我をしたはず……
麻依子 :「あ、大丈夫っすか? 背広、少し濡れちゃってたから乾
:かしておきましたよ。イヤな雨で参っちゃいますね。」
山本 :「あ、あなた! 空から女の子が降ってきて骨がぐさっ
:て! それにあんなに血が……」
きょとんとした表情を見せる女。彼女がさっきの女なのだろうか。
麻依子 :「なんですか? ラピュタですか? そんないきなり大惨
:事なシータじゃ話続きませんよぅ。雷で吃驚して記憶混乱
:したのかも?」
心配そうに私の額に手を当てる女。ひんやりと冷たい。さっきのは彼女の言
うとおり夢の記憶なのか、それとも見間違いなのか……
フラナ :「山本さん大丈夫? 急に倒れたりするから僕心配し
:ちゃったよ〜。あ、上着取ってくるね。今日は寒いや」
麻依子 :「あ、すんません。玄関にかけときましたよ」
お客様にご心配をかけるようではプロ失格である。私は自分を鼓舞して仕事
に意識を集中することにした。
麻依子 :「熱とかはないっぽいなあ。立てます? あ、私管理人の
:坂本です。電話では話したことあるけど直接会うのは初め
:てっすよね。よろしくお願いしますー。」
山本 :「は、はい。ご迷惑をおかけしました」
手を貸してもらって立ち上がろうとした。そうしたら、ずるりと女の左腕が
もげた。即座に側頭部を打つ衝撃音。それとギターの弦が震える音。私は何が
起きたのかもわからずに再びソファに倒れ込んだ。
そろそろ進もうテイク3
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フラナ :「山本さん起きないねえ」
麻依子 :「……ちょっと強くたた……いや、心配っすねホント」
目を覚ますとまるでギターで殴打されたかのような頭痛がする。
麻依子 :「あ、起きた。大丈夫?」
山本 :「ひ、ひぃッ」
フラナ :「体調悪い?」
そんな子猫のような目で見られても困ってしまう。
女、坂本さんの腕を見るとしっかりくっついている。富良名様も気にしてい
ないようだしやはり見間違いだったのだろうか。とはいえアレは確かに……
麻依子 :「お茶でも飲んで落ち着きましょ。さ、どぞどぞ」
山本 :「何度もすいません。そういえばここ数日疲れていたよう
:な気もしてきました……」
麻依子 :「たまちゃん特製ハーブティーです。元気でるよ」
たまちゃん……? 戦慄するような過去の記憶が一瞬頭を掠めたが、もらっ
た茶が食道を通り抜けていくと不思議と体が温まり、気持ちも落ち着いてきた。
はて、何を考えていたのだ私は。今は仕事の時間ではないか。
山本 :「ありがとうございます。もう大丈夫。本当にお待たせし
:て申し訳ありませんでした、富良名様」
フラナ :「うん、僕はいいけどー……」
山本 :「さ、参りましょう。なんだか私すっかり元気になってき
:ましたよ」
麻依子 :「いやぁ、よかったねぇ。やっと進めるねぇ。ヒッヒッヒ。
:そんじゃ、お部屋に案内しますよ」
不気味に笑いながら一足先に廊下に出る坂本さん。寒がるくらいならそんな
裂けたジーンズ履かなければよいのに、と思う。
私と富良名様が後に続くと思い出したように振り向き、我々を注視した。そ
の瞳が一瞬赤く光り、一時落ち着いた私の心の暖を剥ぎ取っていく。
麻依子 :「そうそう。くれぐれも当マンション見てまわる時は私と
:一緒にお願いします。ここ、人見知りする住人さんが多い
:んでねぇ」
唐突に廊下いっぱいにざわざわと人が集まり、こちらを観察しているような
錯覚を覚える。
坂本さんは虫を払うようなジェスチャーをしながら階段を上っていく。その
横顔に張り付いたにたにた笑いを私は見逃さなかった。
ようこそ305号室
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麻依子 :「どうです? 西日の差すいい部屋でしょう」
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