[KATARIBE 27868] [TRPGL]ルールブックに何が楽しいかを記述することの意義

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Date: Sat, 06 Nov 2004 15:01:11 +0900
From: KATARIBE Designer  FURUTANI Shun-ichi <sf@kataribe.com>
Subject: [KATARIBE 27868] [TRPGL]ルールブックに何が楽しいかを記述することの意義
To: "[kataribe-ml]" <kataribe-ml@trpg.net>
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#KR 2003/03/29のログ。
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ルールブックに何が楽しいかを記述することの意義
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ルールブック冒頭の一文
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[Ji-GUY]  先日
      古本屋で
      とあるRPGのルールブックがあったので
      ちと立ち読みしてみたが

[Ji-GUY]  「登場人物になりきって楽しむゲームです」
      と冒頭から説明があった。

この言い回しはどうだろうか
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[Ji-GUY]  別に何を楽しんだってかまわんのですが
      提供する側が楽しめるものの幅が狭いような
      言い回しをしてどうしますか。

[Ji-GUY]  その、なりきる、とやらを楽しそうに思えなかった人は、
      いきなりふるい落とされます。
[Ji-GUY]  広告ならともかく
      取扱説明書で「〜が楽しい」と書くのは、
      よほど臆面の無い行為ではないかと思います。

安易に楽しいと書くのは如何なものか
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[Ji-GUY]  だいたい
      「〜が楽しい」という言い回しは、
      よほど勝算があるときに使えば有効であるが
      ニュートラルあるいは汎用的な説明においては、
      逆効果にすらなることがある。

[Ji-GUY]  「〜が楽しいんだよ」という言い回しは、常に
      「お前はね。俺はそうじゃない」と言う意見と等値になる
[Ji-GUY]  つまり、あらゆる状況において有効な決定打となる言葉には
      成り得ない。

[Ji-GUY]  「楽しい」とは、他人から「これが楽しいんだ」という
      ものをあてがわれて得るものではなく
      ある状況や作業の中で、個人が自発的に感じ取るものなので
[Ji-GUY]  「〜が楽しい」というもの言いは
      所詮、自分語りの域を出るものではなく
      他人に何かを有効的に説明したり
      説得したりするものにはならない。

[Ji-GUY]  結局
[Ji-GUY]  より具体的な作業の説明を行うことで、
      その作業の過程の中の何処かの部分を
      楽しいと感じ取ってもらえるように作っておくしかない。

[Ji-GUY]  そしてその作業過程の何処の部分を楽しいと感じるかは、
      個人によってズレがあってよい
      それぐらいの幅で作っておかないと、待ちは広くならない。

[Ji-GUY]  #「〜が楽しい」と言ってしまうことは、
       ピンポイントでそこしかフォローしないということの
       表明と同じだから。

会話が成立していても必ずしもイメージは共有されない
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[Ji-GUY]  A:「あれやって、これやって、それをやるんだ。楽しいよ」
      B:「ああ、そりゃ楽しそうだね」

[Ji-GUY]  という会話が成立しているときさえ
      AとBが楽しいと思っているポイントが違う可能性は
      常にあるわけです。
[Ji-GUY]  というか、同じである保証は全然無い。

以上の話には少し飛躍がある
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[sf]    それはさすがに、考えすぎというか、過敏過ぎる反応だと思うぞ

[sf]    少なくとも「登場人物になりきって楽しむゲームです」と
      あったのであれば、別に他の楽しみがあることを否認する
      ものではないでしょう。
[sf]    日本語読解的にはね。
[Ji-GUY]  その通りです

目的ではなく、手段・スタンスの解説ではないか
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[sf]    「登場人物になりきることを楽しむゲームです」なら、
      なりきることが目的であり楽しむための作業でしょうけど。
[sf]    「登場人物になりきって楽しむゲームです」だと、
      なりきることは心の持ちようであり、
      ゲームの手順や目標には、そのぶんの時点では
      触れていないということになる。

[sf]    まあ、全体の流れがどうだったのかにもよるわけですが。

ルールブックは取扱い説明書。なら「楽しい」は余計では
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[Ji-GUY]  「登場人物になりきって楽しむゲームです」という
      言い回しを否定するのは、同様の文脈で
[Ji-GUY]  「戦略的思考で楽しむゲームです」も否定しているわけで
[sf]    よくわかんない

[Ji-GUY]  楽しいという言葉を使うこと自体が、
      取り扱い説明書のレベルで扱うことが良くないのではないか、
      と考えているわけです。
[Ji-GUY]  フカシが必要な広告ならばともかく。

いわゆるルールブックは規則書+データ+解説他の混交体
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[sf]    TRPGのいわゆるルールブックってのは、規則書だけではなく、
      規則書とデータと解説とがごっちゃになったものなので、
      最初にそうかかれているのは問題ないかと。

[sf]    手順のみに絞った説明はたしかに重要で、
      それがいまいち曖昧になりがちというのは
      問題点としてあるのは確かだけどね。

冒頭の意義
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[sf]    冒頭ってのはまさに、煽りで広告でしょう。
[Ji-GUY]  うーん

[Ji-GUY]  広告というよりは、
      「このゲームは〜」的な言葉からスタートしている時点で
      解説なんですよね。

[Ji-GUY]  それでも、より具体的なこと/作業にふれていて
      で、これらが楽しいという言い回しならば、
      まだマシと思います。

[Ji-GUY]  その辺をすっとばして、「〜が楽しい」とか
      「〜を楽しむ」とか言われても

[Ji-GUY]  「え?」
      としかならないでしょう、と。
[Ji-GUY]  なりきるなら、なりきるで、どうやってなりきるのか、
      が作業として具体的に見えないと
[sf]    現物がわからんのでなんとも言えないけど

冒頭でイメージのみ記述することは無意味ではない
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[sf]    倒置的にあとで具体的に降ろしていく表現かもしれんし。
      最初にイメージとして方向づけて、どうやってなりきるのか、
      なりきってなにをするのか、などに関心を持たせる
      表現かもしれんし。
[Ji-GUY]  ふーむ

[sf]    少なくとも、いきなり手順を説明されても、
      さっぱり関心を持てないと思いますから。
      これこれが楽しいのだというのを示すのは、
      単に手順だけ示すよりは良い手だと思います。

[sf]    既に関心を持ちなんたるかを知っているのであれば、
      あるいは遊んだことがあれば、あるいは遊んでいるのを
      見たことがあれば、手順だけでも
      なんとかなるわけでしょうけど。
[sf]    そうでなければ、まずもって手順からは
      楽しみが見えて来ないのではないでしょうか。


[sf]    初期のウォーゲーマーは
      「TRPGって、どう遊んだものかわからん、
      ルールに有るとおりにやってみたが意味不明だ」というのを
      経由してるわけで。
[Ji-GUY]  んーそれは、>どう遊んだものか

楽しみは作業手順の中から自分で勝手に掘り出すもの
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[Ji-GUY]  いや、その考え方には賛同できません。
      私は、楽しみとは作業の手順の中から
      "個人が勝手に"汲み取るものだと考えますので。

勝手にくみとれ、というのは不親切ではないか
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[sf]    なにもない無垢のところから「勝手にくみとれ」というのは、
      それはそれでできてしまった人には幸せでいいんだろうけど、
      商品としては親切さに欠けるだろうね。
[sf]    少なくとも、その遊びを知らない人間には。

[Ji-GUY]  RPGのルールブックの構成というか、
      その辺の問題だと私は考えます。

 現在我々が「ルールブック」として手にしているものを「ルール手順書」
 「ゲーム攻略ガイド」「ゲームを楽しむためのファンブック」などに分解
 して個別に販売するとかですかね。

どうやってTRPGを遊ぶのかは謎
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[sf]    私だって、最初にファイティングファンタジー(のTRPG)を
      遊んでみて、そのあと、赤箱とロードスリプレイまでは、
      さっぱりでしたよ。
[sf]    目標と手順と手駒を示すだけでも、そりゃあ遊び方を
      自分で考えれば楽しめます。実際まあ、当初のTRPGは、
      今とは色々と違う遊び方もされていたわけで。
[Ji-GUY]  うーん

一般的な遊びの教則本との差異
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[Ji-GUY]  目標と手順を示されただけで、
      自動的に"受け手が勝手に"楽しさを感じる/楽しそうに
      見えるようにできているのが、
      世間では標準だと思うんですよね。
[sf]    例えば?

[Ji-GUY]  トランプのゲームのルールなんて、
      いちいち何々が楽しいなんて書きませんし
[Ji-GUY]  山行って、温泉入って、美味しいもの食べよう、
      と言われるだけで、勝手に楽しそうと感じますし

一般的な「遊び」はその方法がすでにインストール済
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[sf]    うん、そのあたりは「ありきたりな楽しみかた」が
      幼い頃から学習されてるからね。
[sf]    # でもまあ、山に行くのは「なにが楽しいんだよ」
       という人間も最近は多いか

[sf]    さらに言えば、そんなシンプルなありきたりの遊びでさえ、
      それまで生きていた環境によって楽しみどころがズレていて、
      それが理由で険悪なことになるというのはありがちか。
[Ji-GUY]  そうです

どんな遊びであっても「楽しいところ」は個人差がある
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[Ji-GUY]  だから「楽しいところ」を取り上げるよりも、
      作業を述べるだけで"勝手に楽しそうに感じてもらう"
      (←ポイントが個人でズレるから)方が待ちが広くなる、
      と思うわけです。
[sf]    待ちは広くなるけど、遊んで貰えないと思う
[Ji-GUY]  どうしてですか?

手順書だけでは動機付けが弱く商材となりえない
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[sf]    手順だけが提供されても、まずもって
      それを読む動機づけがされていないから。
      いわんや試してみようなどとは。

[sf]    既に遊んでいる友人がいて、その人と遊ぶために
      手順書を渡される。それならこれは読まれるし
      遊ばれるでしょう。

[sf]    でも、単独のルールブックを
      書店で手にしたときにはどうだろう。
      楽しみかたが明確に書かれていても弱いくらいなのに、
      手順だけあってそれをみて、
      はたして「自分ならこれをこう楽しめる」と認識できるかな?

[sf]    手順をおって実際にやってみれば、
      確かに自分なりの楽しみかたを見つけることはできるだろう。
      だけど、やってみる気になるか。
[sf]    そのあたりがね。

全体像を提示して細部を述べる
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[sf]    「〜を楽しむのです」といわれれば、
      それなりに想像もしやすいし、
      手順を見た時に「じゃあこれが〜をするための手順なのか、
      確かにこれこれが楽しめる」と理解しやすい。多少なりとも。
[Ji-GUY]  「これをこう楽しめる」と
      受け手が自発的に認識できるまで
      "作っておかなくてはならない"でしょう。
[Ji-GUY]  作業手順の解説が。

[sf]    手順をそこまで作り込んでおくと。
[Ji-GUY]  ええ。
[sf]    手順というより、これができる、あれができる、
      というやつかな?

[Ji-GUY]  そうですね。それを成立させる
      必然的な作業のすべてが見えて、
      その作業(の何処かがあるいはいくつか)について、
      受け手がが自発的に「楽しそう」を感じるように。

[Ji-GUY]  #「それ」と言ったのは、もはやゲームに限らず、
       あらゆるものにあてはまると思うからです。
[sf]    # 正直、うまく楽しいと思わせることができるなら、
       学校の勉強を嫌がる子どもは居ないと思うが。
       あれはまさに手順を教える場だし。

[Ji-GUY]  # 待ちを広くしても、全ての人間を巻き込むことは
       無理だと思います。

どちらの方法論も利はある
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[sf]    まあおそらくは、最終的に「これが楽しめる」というのを
      明示して手順を示すのも、手順の中に楽しげな材料を
      うまくし込むのも、ありでないかなあ。

[sf]    どっちがどっちってと、ビジネス方面や心理方面からいえば、
      最初に掴みで方向づけしたほうが成功率は
      確実に高くなるだろうけど。
[sf]    # 商品で利用できる機能を説明するより、
       商品を利用してなにが嬉しいのかをしめしたほうが、
       売り上げが数倍は変わるというやつだ

[sf]    うまく手順で楽しみどころを豊富に
      (っても結局は製作者の趣味により偏った楽しみかたを
      前提とするわけだが)提供できているなら、
      別に問題なく機能するだろうし。

[sf]    うまく掴めないよりは、手順にし込んで読み進めることで
      得られたほうが良いわけで。

ただ「楽しめる」と書いてるだけでは問題ありだが
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[Ji-GUY]  掴みにしろ、方向付けにしろ
[Ji-GUY]  「これが楽しめる」よりは
      「これをやる」の方がより具体的に
      イメージし易いと思いますが。
[sf]    「これが楽しめる」とだけ書いてあって
      「これをやる」がまったく書かれてないならね。

[sf]    「これをやる」を読んだ時に「これが楽しめる」と
      書いてあるかどうかでは。
      読み進めた時にそれぞれのパーツが
      どんな意味があるのかの把握しやすさ、
      理解しやすさは、明記されてるほうが上でしょう。

[Ji-GUY]  ええ、「こうやってなりきるのが楽しい」なら
      良いんですけれど、「なりきるのが楽しい」だと、
      いきなり意味不明ですから。
[sf]    冒頭でそう書かれているとという意味?
[Ji-GUY]  ええ、解説で掴みであるなら、
      具体的に何をするのかを、直感で分からせませんと。

いろんな意図を含んだ文章表現
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[sf]    文章技巧としては
      「登場人物になりきって楽しむゲームです」は。
      最初になんとなくのイメージを持たせ、
      楽しむ方法を教えているのだということを示し、
      ではなりきって遊ぶとはどのようにやるのだろうという
      小さな疑問を感じさせることで、
      以降の記述を読む原動力として機能すると分析できます。

[sf]    最初の文で手順を示してしまうというのは、
      頭が重く、説明的で、うまくないやりかただろうかと。

今回の問題意識の根底にあった違和感
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[Ji-GUY]  ああ、そうか
      私の感じた違和感は
      「登場人物になりきって」と「ゲーム」が繋がってなくて
      「楽しい」で断絶されていると感じたからだ。
[sf]    うんまあ、いくつかの読みとり方がある
      曖昧なとこのある文章だとは思う

なりきることがゲーム的要素にはなっていない
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[Ji-GUY]  「登場人物になりきるゲーム」と言われたら、
      普通(というか世間は)「なりきった人が勝ちになるゲーム」
      と感じるだろうと思うわけで
[Ji-GUY]  で、私は、RPGがそんなゲームじゃないことを
      知っているし、ルールの内容を読んでも
      そんなゲームではなかったから
      具体的な内容を示していない、と感じてしまったわけですな。
[sf]    ふみふみ

なりきることは楽しさを増す基本姿勢では
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[sf]    私は「なりきって」は前提として読み取った
      登場人物になりきることによって、
      楽しむことができる/楽しく遊ぶ、ゲームです。
      あたりの解釈。

なりきり、なりきるとき、なりきれば
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[Ji-GUY]  うーむ、やっぱり、
      「登場人物になりきることによって、○○
      (←有利になるとかこういう効果になるとか具体的結果)
      になるゲームです」の方が
[Ji-GUY]  掴みとしても、全体像が見えやすい気がします。
[sf]    うに、そのほうがいいのはたしか

[Ji-GUY]  娯楽なのだから、「楽しい」はあって正解のはずですが
      なにかこー、しっくり来ない。

[sf]    っと
      「登場人物になりきること」はゲーム上の効果を
      目的とするのではなくて、ゲーム上のプレーヤーの
      行動の立ち位置を示すものだから、
      「〜によって」とは、ちょっち違うのかな。
[Ji-GUY]  そうですね

[Ji-GUY]  # 私は、普段「なりきる」(←立場と状況をふまえ思考する)
       こともゲームの趨勢を左右する重要な思考方法と
       考えているものですから、ゲーム上の効果を目的とする、
       としても良いと思っていますが。

[Ji-GUY]  プレイヤーの立ち位置と考えるなら
[Ji-GUY]  「登場人物になりきり、○○をするゲームです」の方が
      しっくりくるかもしれません。

では、また後日
--------------

[Ji-GUY]  この辺の「楽しい論」についてはもうちょっと考えてみます。

[Ji-GUY]  解説あるいは掴みで「楽しい」という言葉を用いるのに
      もっとも適切なタイミングについて、あるいは、
      「楽しい」を用いること自体が適切か否かについても。


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