[KATARIBE 26857] [HA06P] 『夢幻の如く』

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Date: Wed, 15 Oct 2003 02:27:17 +0900
From: gombe <gombe@gombe.org>
Subject: [KATARIBE 26857] [HA06P] 『夢幻の如く』
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 ごんべです。

 学天則3号・4号のお話、たまにはエピソードにて。


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エピソード『夢幻の如く』
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登場人物
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学天則3号 (がくてんそく3ごう):
    出奔・潜伏中の少女型アンドロイド。観測&演算担当。
学天則4号 (がくてんそく4ごう):
    出奔・潜伏中の少年型アンドロイド。戦闘担当。


時系列等
--------

 2003年10月中旬、自分たちの作り主に関する情報を探していた2体のアンド
ロイドは、とあるIRCサーバのアングラチャンネルで、情報提供者への符丁と
なる謎かけを示され、それを解くため、翌日図書館に現れる。


本文
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 学天則3号  :「……平家(へいけ)……か。その標章、つまり紋章として、
        :"認識"されている『しるし』……12世紀当時の実際の使用
        :状況には諸説ありながら、因果を平家の血統に求める後世
        :の野心家たちによってそう見なされ、特別な意味を持った
        :紋。それが……」

 吹利中央図書館。
 歴史のコーナーで日本史の書を読みふけっている、学天則3号。

 学天則3号  :「……揚羽蝶紋。つまり、shivaの謎かけの答は『あげは』?」

 そして別のコーナーへ。

 学天則3号  :「普通の店舗なら、この国なら電話帳か何かに……あった」

 「あげは」の店舗情報、ゲット。

 学天則3号  :「……4号、終わったわよ……4号?」

 学天則4号は、所在なげにソファーに埋もれて何かを読み続けている。

 学天則3号  :「……何を読んでるの? ……ねむりきょうしろう?」
 学天則4号  :「ああ」
 学天則3号  :「他にも平易な読み物がたくさんあるのに。何が面白いの?」
 学天則4号  :「主人公が自分に正直なところがいい」
 学天則3号  :「なるほどね」

 別に嫌みではなく忌憚のない疑問の言葉に、率直な回答と、続いていかにも
得心した様子の受け答えとが続いて……ふと。

 学天則3号  :「…………それ、実際にあった話?」
 学天則4号  :「いや。小説……フィクションの棚に入っていた」
 学天則3号  :「どうかしら」
 学天則4号  :「?」
 学天則3号  :「その棚の標識は、誰が付けたの?」
 学天則4号  :「……3号?」
 学天則3号  :「もしかしたら、本当にあった話かも知れない」
 学天則4号  :「……」
 学天則3号  :「この間も、あったわね。カートゥーンアニメの記述を、
        :本当のことだと信じてたわよね」
 学天則4号  :「あれは……文字情報だけだと判断がしづらかったのさ」
 学天則3号  :「そう、私の方が少し判断材料を多く早く持っていたから、
        :私は間違えずに済んだ。でも、もしそれがなかったら、私
        :でもフィクションだと気付いたかしら?」
 学天則4号  :「多分無理だな」
 学天則3号  :「そうね。もし……」

 4号の持つ本をそっと取り上げ、つぶやく。

 学天則3号  :「……もし、
        :歴史や社会と書いてある棚の本が実は全てフィクションで、
        :小説と書かれた棚の本が実は全て本当にあったことで……
        :でも、そのことを誰も知らされていないとしたら?
        :誰も、置き換えられたことに気付かなかったら?」
 学天則4号  :「……仮定の話ばかりだぞ、3号」
 学天則3号  :「思考実験の一つよ(くす)」
 学天則4号  :「もしそんなことがあったとして、信用できる判断基準を
        :どこに置くんだ」
 学天則3号  :「どこにもないかもしれないわね。
        :参考資料も、導いた結論も、全ては幻の上に築いた夢でし
        :かないかも知れない。
        :でも、それすら判断できない私たちは、事実と信じて足場
        :にし、前に踏み出すしかない。幻かも知れなくても」
 学天則4号  :「…………」
 学天則3号  :「世界は、そういうことだらけだと気付いたの。あなたも、
        :ゆめ忘れないことね」


解説
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 様々な場での活動や情報収集に明け暮れるうち、提示される情報の恣意性に
気付いてしまい、何事をも相対化して見るメタ的な視野が身についてしまう、
学天則3号。
 白紙の状態で世界に投げ出され、手探りで情報を積み上げていく彼らにとっ
ては、無理からぬ事かも知れない。

 なお、平家の各氏が蝶の紋を用いたことは、実際には一般的に知られる史実。
 ちなみに、織田家も家紋の一つに揚羽蝶紋を用いていた。


$$

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 ごんべの頭の中では既に、ほとんどプチ草薙素子状態です(ぉ>学天則3号

 ではでは。

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