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Date: Mon, 15 Sep 2003 17:48:09 +0900 (JST)
From: 月影れあな <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 26711] [HA06N] 特別企画:いろはお題『か 枯れない花』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2003年09月15日:17時48分09秒
Sub:[HA06N]特別企画:いろはお題『か 枯れない花』:
From:月影れあな
あんまし出来のよくない作品
お題からいったらもうちょっと良い作品も出来たかもしれない
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特別企画:いろはお題『か 枯れない花』
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か 枯れない花
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「ここに一つ、枯れない花がある」
店先にひっそりと飾ってある、組織の象徴とも言える銀色の薔薇を手にとっ
て、男は静かに語り始めた。
「この花は美しく、時によって老い枯れる事もない。永遠に美しいまま咲き誇
る」
握り締めると、しゃんと澄んだ音を立てていとも簡単に砕ける。割れ飛んだ
破片は他ならぬ男自身の掌を傷つけ、緋い雫が腕を伝って木張の床へと滴り落
ちる。
「美しき張子の薔薇より、醜く枯れ散った野薔薇の方が、本当は尊いのではな
いか。最近はそんなことばかり考えるよ」
店に沈んだ影達の中に応えを返す者はない。そう、誰もがそれを知っていた。
知っていながら、小さな希望にすがり付いて永い時を生きながらえる。かける
言葉など、他ならぬ彼ら自身が最も知りたがっていた。
「私は行く。もう、疲れた」
背を向け、外へと通ずる樫の扉を押す。誰もそれを止める事は出来ない。最
も若き者が、ただ一人後姿に声をかけた。
「それでも私達は生きていきます。未だ見知らぬ世界の中に、未だ見知らぬ何
かを求めて」
男は何も応えない。ただ、ふっと微笑ったような気がした。
扉に添えつけられた鐘が、からんからんと空虚な音を立てる。今度こそ、男
を呼び止めるものはいない。影達はただそれを、それぞれ複雑な気持ちで見送
る。
店の奥に添えられたピアノが、静かに葬送の曲を奏でていた。
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# 一日置いたくせにこんなんです。
# 結夜は出て行ったほうじゃなくて、声をかけた若い方です。間違えないよう。
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