[KATARIBE 26703] [HA06N] 特別企画:いろはお題『ぬ ぬしは逃げた』

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Date: Sun, 14 Sep 2003 20:18:33 +0900 (JST)
From: 月影れあな  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 26703] [HA06N] 特別企画:いろはお題『ぬ ぬしは逃げた』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2003年09月14日:20時18分33秒
Sub:[HA06N]特別企画:いろはお題『ぬ ぬしは逃げた』:
From:月影れあな


 ういっす、今日も今日とて月影れあなです〜
 だんだん出だし部分のネタが尽きてくる

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特別企画:いろはお題『ぬ ぬしは逃げた』
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ぬ ぬしは逃げた
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「予は、この淵の主であるぞ」
 胸を張って宣言する、緑色の皮膚をした全身いぼだらけのひょろりとした大
男に、結夜は「はぁ」と気のない相槌を打った。
「ちなみに、主であるから分類するとたぶん神様の一種であるぞよ?」
 その反応が気に入らなかったのか、自称淵の主はさらに己を誇示する。とり
あえず、何か言わない事には話が進みそうに無いので、結夜はおそらく淵の主
が望んでいるであろう反応を返してみた。
「『うわ〜、すごい。神様なんて、へへ〜参りましたでげす』」
「なんか癪に障るなぁ」
 それでも不満気な淵の主に、結夜は冷たく言い放った。
「っていうか、見た目に説得力ないし」
「うわっ、きっつ〜。予の硝子細工のように脆く儚い心は結構傷付いたぞよ」
「いっそ砕けてしまえ、そんなもん」
 面倒くさそうに手を振る。というか、実際に面倒くさいのだろう。淵の主は
不満気に顔をしかめ、なおも食い下がる。
「いや、予だって昔はもっと神様らしかったんだって」
「へ〜」
「あっ、信じてないな。これがその頃の写真ぞよ」
 と言って、一枚の大判写真を取り出す。何となくお見合い写真みたいだなあ
と思いながら結夜がそれを覗き込むと、そこには神々しいまでに麗しい白皙の
美青年が甘い笑顔を浮かべて優雅に立っていた。
 何処をどう見ても、目の前にある『緑色の』とは結びつかない。疑わしい目
付きでそれを見ていると、自称でも神である、それに気付いて口を出してきた。
「あっ、信じてないな」
「そりゃあ、ねぇ?」
 すっぽんが実は月でしたと言っている様なものだ。
「っていうか、なんでそんな姿になったのですかね?」
 至極最もな疑問を結夜は口にした。
「いや、周りを見ればわかるであろう」
 ぐるりと周りを見渡す。そこには、不法投棄のゴミの山。ゴミ袋から染み出
てきた謎液体で淵は濁り、鼻の曲がるような汚臭を漂わせている。淵と言うよ
りかは沼と言った方がそれらしい。まぁ、確かにこれでは外見があんな事になっ
ても仕方ないかもしれない。
「ここ数年、人間どもが捨てていった物である。これのせいで、淵に住んでい
た物はみんな死んでしまって霊格もずいぶん落ちてしまってのぅ」
「いや、祟れよ」
「下手な事したら水道局とか零課に追いまわされるし。全く、不便な世の中に
なった物ぞよ」
 軽い口調で愚痴を漏らす淵の主の姿は、どこか哀しげだった。結夜は言うべ
き言葉を捜すが、何も出てこない。どちらかと言えば廃棄する方に属する自分
が、軽く慰めれるような事でも無いのかもしれない。
 気まずい沈黙に耐えかねて、恐らく最初に口にすべきだった物であろう本題
に入る事にした。
「で、何の用があって私を呼んだのですか?」
「おお、そうであった」
 淵の主は酷く人間臭い仕草でぽんと手を打った。
「いや、実は淵もこんな状態であるし、数百年の間淵の主をしていて、十分な
徳も溜まった。良い機会ゆえ昇竜して天に昇ろうかと思うたのである」
「……は?」
「で、代わりに淵の主を勤めれるような力の強い物を探していたところ、丁度
そなたが近くを通りかかったので来てもらったのだ。少々水の気が少ない気も
するが、なに、そんな物しばらく主を務めていれば自然にどうにかなる」
 あまりにも身勝手な物言い。結夜は後ずさりながら丁寧に断わりの言葉を発
した。
「謹んでお断り申し上げます」
「いや、無理」
「なぬっ!?」
 急に、足を引っ張られるような感覚。慌てて見てみると、太い霊的な綱が足
と淵とをしっかりと繋いでいる
「さっき話している間に場に縛り付けて置いたから」
「うわっ、酷っ」
 腐っても淵の主と言う事か。全く気がつかなかった。
「それでは、達者でな若いの」
「って、すがすがしい顔で逃げるなっ!」
 凄まじい光が沼の主から迸る。結夜は思わす一瞬目をつぶった。次に目を見
開いた時、沼の主は金色に輝く竜と化して天へと昇っている所だった。
「ひきょーもん! かいしょーなし! 降りてこーいっ!!」
 大声で叫べど、そんな事で降りてくるはずもなく。
 結局結夜は、三日後にSRAの同僚に発見されるまで淵に縛り付けられていた
ままであったと言う。


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# 一日遅れてしまった。
# 結夜くん、ついに神になっちゃいました。今普通に生活していると言う事は、
# まぁ何とかなったんでしょう


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