[KATARIBE 25822] [IC04N] 小説:『Welcome to コルチキンタワー』(3)

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Wed, 5 Mar 2003 05:19:02 +0900
From: "Motofumi Okoshi" <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 25822] [IC04N] 小説:『Welcome to 	コルチキンタワー』(3)
To: "Kataribe ML" <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <000701c2e28b$4cdbcd00$0200a8c0@VAIO>
X-Mail-Count: 25822

Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/25800/25822.html

MOTOIです。IC小説、第3回です。

**********************************************************************
小説『Welcome to コルチキンタワー』
===================================
登場人物
--------
 久保原新平(くぼはら・しんぺい)
  :とにかく野球をするのが生きがいの高校生。


About Infinity city
-------------------
「えっと、どこまで聞いたんだ?」
「ドアの向こうが、時によって別の場所になるってことだけ」
「なんだよ、まだ『接続変化』の話しかしてねーのか」
「接続?」
「そのドアの向こうが変わることを『接続変化』って言うんだよ」
「へぇ」
「感心してる場合じゃねぇ、次の説明に行くぞ」

 そういえば、まだこの子のこと聞いてなかったよね。
「ねえ、キミは誰なの?」
「あたい? そうか、自己紹介まだだったか。ここのマネージャーやってる、
1年の右田優(みぎた・ゆう)だよ」
「え、マネージャーって?」
「部活にマネージャーがいるのは当たり前だろうが」
「いや、そうじゃなくて……キミって女の子なの?」
「これが男に見えるかよ!」
 男に見えるって言うよりも、小さくてどっちだかわからないような子供に見
えるな。でも、その口調は男の子に聞こえると思うよ。……って言ったら多分
お説教されそうだったから言わなかったけど。

「ところで、これって部活なの? ずいぶん豪華な施設だね」
 仕方ないから、ごまかすために、話を無理やりそらしたんだ。
「フン……まぁ、さっき言った『接続変化』があるから、いつもここで練習で
きるとはかぎらねぇけどな」
「さっき『学園』って言ってたけど、この世界にも学校があるんだ」
「まぁ、授業もあれば部活もあるけどよ、ここでは一人でも部と認められるか
らな、アホみたいな部もたくさんあるわけよ。でも、お前は野球関係の部活に
しか入れねぇだろうな」
「え、どうして?」
「そのファーストミットがすべてを物語ってんだよ」
 そういや、王くんの球を捕ってから、ミットつけっぱなしだったんだよね。
で、優ちゃんが話を続けてきた。
「おそらく、そのミットがお前の核アイテムだろうな」
「かくあいてむって?」
「生徒の特徴を現すアイテムって言えばいいかな。ここでは、その核アイテム
にちなんだ部活にしか入れないようになってんだよ」
「へぇ」
「それと、核アイテムを持ってるやつは、何か一つ変な能力が使えるんだ。お
前の能力は、『相手の攻撃をそのまま投げ返す』ことみてーだな。でもよ、野
球部にもいろいろあるんだよな。うちはまっとうな野球部だけど、殺人野球部
とか撲殺野球部とか破壊野球部とか……」
 そこで、僕はあわてて話をさえぎったっけ。王くんのことも思い出したし。

「ちょっと、ちょっと、ちょっと!野球で人殺すなんてむちゃくちゃだよ! それ
に、あの王くんって、どうして砕け散ったの?」
「あいつの能力がそういう球を投げることだったんだろ」
「人殺しなんかしちゃったら野球どころじゃなくなるじゃない!」
「向こうの世界ではそうだろうよ。でもな、無限都市じゃ人殺してもいいんだ
よ、どうせ生き返るんだからな」
「え、生き返る? そんなバカな……」
「常識は通じねえって、部長に言われなかったか?」
 ……うん、言われた言われた。

「生き返るのは前の午前0時にいた場所だ。だから、午前0時にどこにいたか
は誰にも知られるんじゃねぇぞ。待ち伏せ喰らって、生き返った途端に……」
 と言って、首元に親指で一文字を書く優ちゃん。やっぱり、女の子にしては
言うことが過激すぎるよ……
「……ってことを延々と繰り返されたりするからな」
「……うん、気をつける」


I'll join this club.
--------------------
「さて、それじゃ、これに着替えな」
 いきなり、優ちゃんがユニフォームをくれたんだ。
「これって、ユニフォームじゃない?」
「お前も練習に参加しな」
「え?」
「入部するだろ? うちの野球部に」
 本当に強引過ぎる、ってそのときは思ったよ。でも、「まっとうな野球部」
だし、僕はとにかく野球がやりたいから、断る理由はなかったんだよね。
「……野球部に入っていいの?」
「当たり前だろ、そのために連れてきたんだからな」
「うん!」
 返事するや否や、ユニフォームを受け取って、せっせと着替え始めたんだ。
着替え終わると、優ちゃんに連れられて、部員達の輪の中に入ったよ。

「……というわけで、ルーキーの久保原だ。無限都市自体ルーキーだから、い
ろいろ教えてやってくれ」
 鹿沼さんに紹介されて、いきなり練習に参加することになったんだ。あとで
聞いたんだけど、この「夢幻ドリームス」は、いくつか(鹿沼さんが知ってる
範囲では30くらい)の「まっとうな野球部」の中ではかなりの強豪なんだっ
て。部員は選手20人(あ、僕を入れたら21人か)、マネージャー3人。で、
「まっとうな野球部」同士のトーナメントを年に4回やってるんだってさ。

 準備運動をしたあと、ファーストの守備についてノックを受けたら、みんな
僕の実力に驚いてたみたい。自慢じゃないけど、中学のときは全国大会で優秀
選手に選ばれたこともあるんだからね。いや〜、それにしても、やっぱり野球
の練習は楽しいよねぇ。
「すげえじゃねえか、久保原!」
「お前なら即戦力だぜ!」
「他の野球部にとられなくてよかったな!」
 チームメイトもみんないい人たちだよ、僕のことほめてくれるもん。元の世
界よりも楽しく野球ができそうだ、ってそのとき思ったっけ。でも、ちょっと
甘かったかもしれないなぁ……。

$$
**********************************************************************
ちょっと長くなってますが、次回完結予定です。

motoi@mue.biglobe.ne.jp
Motofumi Okoshi

 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/25800/25822.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage