[KATARIBE 25814] [IC04N] 小説:『Welcome to コルチキンタワー』(2)

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Date: Tue, 4 Mar 2003 15:20:49 +0900
From: "Motofumi Okoshi" <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 25814] [IC04N] 小説:『Welcome to 	コルチキンタワー』(2)
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MOTOIです。IC小説の続きです。

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小説『Welcome to コルチキンタワー』
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登場人物
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 久保原新平(くぼはら・しんぺい)
  :とにかく野球をするのが生きがいの高校生。


Welcome!
--------
「へー、すげぇじゃねえか」

 いきなり後ろから話しかけられたからびっくりしたっけ。あわてて振り返っ
たら、グラウンドコートを着た子供(そのときは子供に見えたんだよ)が、僕
のすぐ後ろにいたんだよね。

「ぼ、僕は何もしてない!ボール返したら勝手に砕けたんだぁ!」
 我ながら、そのときは間抜けな返事をしたもんだよ。まぁ、パニックになっ
てたんだから仕方ないよね? ね?

「あー、その態度からすると、無限都市に来たばかりって訳か。まぁ、これで
も飲んで落ち着けよ」
 といわれて、スポーツドリンクをもらったんだ。
「あ、ありがと……」
 一気に飲み干したら、不思議と気分が落ち着いたよ。いや、今考えると、不
思議じゃないかもね。

「まぁ、とりあえずついて来な。わかる範囲でならいろいろ教えてやるよ」
「えっと、キミは誰なの?」
「いいからついて来いって。自己紹介は後回しだ」
 強引だなぁ、と思ったけど、一人でいても訳わかんないから、とりあえずつ
いていくことにしたよ。途中、ドアの位置が変だなぁ、と思ったんだけど、
「んな些細なこといちいち気にしてんじゃねぇよ」
って言われた。些細なことじゃない、ってそのときは思ったよ。そのときはね。
 
 で、5分くらい廊下を歩いたかな。「2−30」って書いてあるドアのとこ
ろで止まったんだ。
「ふう、無事だったか。さぁ、入れ入れ」
 促されるままにそのドアから中に入ると、そりゃびっくりしたよ。目の前に
広がっていたのは、巨大なドーム球場(雨漏りしてたから、昔のナゴヤドーム
みたいだったかな)だったんだから。
 呆気にとられる僕を尻目に、その子供は、ダッグアウトにいた一人の男の人
と話し始めたんだ。見るからに高校球児、青春真っ盛りって感じだったね。

「部長、新入部員連れてきたぜー」
「ほー、ルーキーか、腕のほうはどうなんだ?」
「あの殺人野球の王を簡単にぶっ飛ばしたからな、腕は確かだと思うぜ」
「ふむ、それじゃ、優の言葉を信じるか」
「ただ、まだここに来たばかりで何もわかってねーみてーだから、教えてやっ
てくれよ」
「そうか、無限都市自体新人か、わかった」
 なんか僕、勝手に新入部員にされてたけど、とりあえず話を聞こうと思って、
その場に残ったんだ。

「さて……無限都市へ、そして我がチーム、夢幻ドリームスへようこそ」
 部長と呼ばれた人(中日ドラゴンズにそっくりのユニフォーム着てた)が、
僕にそう挨拶してくれたんだ。
「……そういえば、まだ名前も聞いていなかったな」
「久保原新平、高校1年生です」
「久保原か。俺は3年の鹿沼隆三(かぬま・りゅうぞう)、ここの部長をして
いる。……さて、まずは何から話したもんかな」
「じゃあ、ここはどこなんですか?」
 率直に、一番聞きたいことを鹿沼さんに聞いてみたよ。そしたら、
「ここは、無限都市といって、今まで君がいた世界の常識が全く通じないとこ
ろだ」
 って答えられたんだ。


What is Infinity city?
----------------------
「無限都市……?」
「そして、この建物は、無限都市内唯一の『学園』の校舎の一つで、『コルチ
キンタワー』という」
「ここって、建物の中なんですか?」
 気がついたらタワーの中だったから、建物に入ったって感覚がなかったんだ
よね。まぁ、ドアとかあるから建物の中だってのは当たり前なんだけどさ。
「君は、『校門』からここに入ったのではないのか」
「気付いたらどっかの部屋の中にいたんです」
「ふむ……では、この塔の外観も知らないか。まぁ、それはどうでもいいか」
 どうでもいいのか……って思ったよ。

「まぁ、無限都市について一言で言うと、『不思議のダンジョン』だな」
「『不思議のダンジョン』? なんですか、それは」
「トルネコの大冒険とかやったことないのか。あの名作ゲームを」
「ゲームは、全然やったことないもんで……」
「う〜む……」
 そのときの鹿沼さん、どう解説しようかめちゃくちゃ悩んでたっけ。

「……では、『ドラえもん』という漫画は知っているか?」
「あ、それだったら子供のころに読んだことがあります」
 そう言ったら、鹿沼さん、めちゃくちゃほっとした表情になったのを覚えて
るよ。
「では、無限都市のドアは、すべて『どこでもドア』だというのが手っ取り早
いだろうな」
「すべて……ですか?」
「すべてだ。だが、漫画の『どこでもドア』は行き先を自由に選べるが、無限
都市ではそうは行かない。行き先は全く風任せだ。例えば、このドア……」
 そう言って、鹿沼さんはさっき僕達が入ってきたのとは違うドアを指差した
んだ。

「このドアの向こうが、時によって違うわけさ」
 と言ってドアを開けると、ドアの向こうはなんかのお店だったっけ。
「う〜む、今日は秋葉原のジャンクショップか……」
 鹿沼さんの台詞から、ジャンクショップって言うお店なのかなって思ったよ。
まあ、どういうお店なのか、いまだにわからないんだけどね。あれ以来そのお
店には行ってないしさ。
「とまあ、こんな具合だ」
「こんな具合って言われても……」
「まぁ、少しの間はジャンクショップが続くが、しばらくするとこの扉の向こ
うは別の場所に変化してしまう」
「しばらくっていうと、どれくらいですか?」
「それは完全に不規則で、俺にも他の誰にもわからん。最高で1ヶ月くらいは
同じ場所に出られるが、最短だともう既に変わっている可能性もある。それに、
出る場所に関しても完全に不規則だ」

 そのとき、さっきの子が声をかけてきたんだ。
「部長、投内連携の練習するから集合しろって」
「ああわかった。でも、彼にはまだ説明の途中なんだが……」
「時間かかりすぎじゃねーのか? まあいいや、あたいが替わってやるよ」
「そうか、じゃあ頼むぞ」

 そう言って、鹿沼さんはマウンドの方へ走って行ったよ。

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Motofumi Okoshi

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