[KATARIBE 25741] 「 HA06P] エピソード『空の谷間』

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Date: Sun, 23 Feb 2003 01:20:52 +0900 (JST)
From: 月影れあな  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 25741] 「 HA06P] 	エピソード『空の谷間』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200302221620.BAA55938@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 25741

2003年02月23日:01時20分51秒
Sub:「HA06P]エピソード『空の谷間』:
From:月影れあな


 月影れあなです
 なんかちとシリアスっぽいEP

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エピソード『空の谷間』
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本文
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 ずぶりと沈む感触。血は、吹き出さなかった。

 結夜     :「哀れな」

 つい先刻まで、自分がどうあがこうとも太刀打ちできなかった強敵が、今は
足元で死に瀕してのたうっている。愉悦は無かった。どうしようもない遣る瀬
無さが、私の心を支配していた

 結夜     :「何か、言いたい事はあるか?」

 後になっても、何故自分がそんなことを聞いたのかわからない。哀れみでも
ない、余裕でもない。ただ衝動で、その質問が口をついたのだった。

 吸血鬼    :「我は……」

 その吸血鬼は言葉を絞り出す。

 吸血鬼    :「我は、何も間違っていなかった。間違っているのは、狂っ
        :ているのは人間の方だ……」
 結夜     :「…………」

 私は、何も言わずただ言葉に耳を傾ける。

 吸血鬼    :「人間は動物を食う。我々が人間を食う。至極当然の行為を
        :していただけだ。彼らはそれを諾々として受け入れなければ
        :ならないはずだ。少なくとも、それを拒む権利は彼らには無
        :い。何故なら、彼らも自らの傲慢により他の生物を食してい
        :るからだ。彼らが我々を否定すると言う事は、彼ら自身も否
        :定する事であるはずだ。だから、私は……」

 ふいに、手にあった重い感触が消えた。吸血鬼が塵に帰ったのだ。私は、表
面無感情を装って、瓶にその塵をかき集める。
 国語のテストか何かの問題文で『人間は目覚めたヌーである』というような
一文が書いてあった事を思い出した。
 ヌーは逃げる。ライオンという狩猟者が襲い掛かってきた時、ヌーの群れは
一斉に逃げる。ヌーが三頭もいれば、ライオンなどひとたまりも無いというの
にだ。ヌーは狩られるだけで、戦うという事をしない。人間はそうではない。
確かそういう内容だった。たとえば、ヌーがライオンと戦う道を選んだとしよ
う。巨大なヌーの群れに比べて、ライオンの群れは小さいは。たちまちにヌー
はライオンを撲滅する事だろう。狩猟者のいなくなったヌーは減る事も無く増
え続け、やがてはその膨大な数をもって他の生物を圧倒し、食料を食いつくし
自滅する。
 今、吸血鬼と言う狩猟者がいる。人間という獲物がある。獲物はその数をもっ
て狩猟者達を圧倒し、まさに自滅の道を歩んでいる。果たしてこれは正しいの
だろうか。
 そこまで考えると思考を止めざるを得なくなる。考えて、考えた挙句、狩猟
者として真っ当な道へと踏み出し、破滅して言った同属を何人か知っている。
実際に戦った事もある。今日仕留めた、これがいい例だ。そう、小さく溜息を
ついた。
 連絡用の携帯電話から落ち着いたメロディが流れてきた。分かる人が聞けば
思わずにやりと笑うだろう懐かしのファミコン音楽。ファイナルファンタジー
3の水の巫女エリア、私のお気に入りの曲だった。お気に入り故に、少々の間
を置いてそのメロディを堪能してから、電話を取る。

 結夜     :「こちら金眼。任務完了」
 電話     :『電話取るの遅いっ。やられたかと思ったやん』
 結夜     :「残ってたのはとどめだけやったし、流石にそれは無いで
        :すよ。塵も無事回収したし、そっちの負傷者はどうです?」
 電話     :『ん、三人ほど死にかけてるけど、まぁ再生できると思う』
 結夜     :「そら良かった。じゃあ、電話切ります」
 電話     :『こら、ちょ……』

 そこで切ったので、後に続いたであろう先輩吸血鬼の罵倒の声を聞くことは
無かった。

 結夜     :「あー、あたまいてー」

 わざと投げやりな口調を作って、ベンチに仰向けになる。轟々と吹く風が木
々を鳴動させる。私はそれを聞きながら、無言で空を見下ろす。
 知った空だった。昔、私が子供だった頃、上手く乗れないスケボーの練習に
疲れて、ボードに仰向けになってぼんやりと見下ろしたあの空に似ていた。

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 というわけで、結夜公園で落ち込んでます
 何かネタがあったら(無くても)絡んでくれたまえ



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