[KATARIBE 25340] [HA20H] 『入学式の朝:辻健の場合』

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Date: Wed, 15 Jan 2003 19:06:00 +0900
From: "Motofumi Okoshi" <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 25340] [HA20H] 『入学式の朝:辻健の場合』
To: "Kataribe ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。「あなたならどうする」の西生駒版を流してみます。
勝手にお題作っちゃったけど、勘弁してください&ついてきてください(礼)。

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あなたならどうする『入学式の朝・辻健の場合』
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登場人物
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 辻健(つじ・たける)
  :退魔師の血を受け継ぐ高校新入生。


いつもと違う朝
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 滝川町内の某アパート。周りの民家を含め、ほとんどの人たちが普段どおり
の朝を迎えようとする中、一室だけいつもと違う朝を迎える少年がいた。

 健      :「ん〜……まだ6時前じゃないか」

 その少年、辻健は、目覚まし時計が鳴る前に目の覚める自分に多少の嫌悪を
感じながらも、二度寝するわけにもいかないので、ゆっくりと体を伸ばした。

 健      :「くぅ〜〜〜〜っ……と」

 そのまま布団を跳ね上げ、洗顔、歯磨き、髭剃り……という順番で身支度を
整えていく。

 健      :「いよいよ入学式……俺も高校生だな」

 健は、今日から西生駒高校に通い始める新入生である。今日早く目覚めたの
も、普段とは違う緊張感があったからに他ならない。


母からの電話
------------
 健      :「よし、メシだメシだ」

 一通りの身支度を終えると、今度は朝食の準備に取り掛かる。健は、これま
で朝食を欠いたことはない。182cmという恵まれた体格も、この規則正しい生
活の賜物かもしれない。と、そこへ。

 SE      :Trrrr………
 健      :「ん、電話?」

 受話器を取る。

 健      :「はい、辻です」
 母親     :「健、起きてる?」
 健      :「なんだ、母さんか」

 健は、両親と同居していない。高校生にして一人暮らしの身である。別に両
親の仕事の都合とか、家出したとか、そういう理由ではないのだが。

 健      :「起きてるよ。ていうか、いつもより早く起きたよ」
 母親     :「ならいいけど。初日から遅刻なんてみっともないから
        :ね」
 健      :「ちゃんと、いつもどおり早寝早起きしてるよ」
 母親     :「入学式に行けなくてすまないね」
 健      :「小学生じゃないんだから」

 などという会話をしていたが、突如、母親の口調が固くなる。

 母親     :「いいね、何があっても、決して取り乱してはいけないよ。
        :取り乱せば、魔は必ず付け込んでくる。大きな魔に遭遇し
        :たら、絶対に無理をせず私たちに相談するんだよ」
 健      :「うん、心得てるよ」

 健の両親は、いずれも少々名の知れた(といっても表舞台には立たないが)
退魔師である。その血を受け継ぐ健は、生まれつき霊感が強かったため、幼い
ころから魔に負けないように訓練を積んできた。一人暮らしは訓練の最終段階
で、親の助けを借りずに自らを、そして友人達を守り抜くことで、晴れて「卒
業」となるわけである。

 健      :「それじゃ、今食事の途中だから」
 母親     :「くれぐれも粗相のないようにね」
 健      :「わかってるよ、それじゃ」

 受話器を置いた健は、あることに気付く。

 健      :「ん?なんか焦げ臭くないか?……あ!」

 あわててコンロの火を止め、フライパンの中を見ると……黒く円い物体がそ
こにあった。

 健      :「あちゃあ、目玉焼き、焦がしちまった……」

 辻健。ひとつのことに集中すると、周りが見えなくなる単純な男であった。


いざ、学校へ
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 気を取り直して朝食を済ませると、真新しい学生服に袖を通す。着替え終わ
ると、鏡に映った自分の姿を見て、高校生になったことを実感する。

 健      :「決して無理をせず、3年間、自分を守り抜く……」

 母親の言葉を反芻しながら、すべての身支度を終え、玄関の扉を開く。

 健      :「よし、じゃあ、行ってきます!」

 誰に言うわけでもないが、元気よく挨拶をして家を出る健。こうして、健の
高校生活は幕を開けたのであった。

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Motofumi Okoshi

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