あなたがた、やりすぎです●ばーさすてろりすと

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 現代オカルト物での話。



 静まりかえる夜の港、不夜城のごとく辺りを照らす船があった。
 甲板には銃を持った男たちが辺りを警戒している。
 三日ほど前から続く警戒、今夜も何事も起きず夜があけると思われた。
 そのとき。
 突如、船の一角が爆発した。
 逃げ惑う船員をあざ笑うがのように、次々と爆発音と煙が立ち昇る。
 彼らはボートを降ろし桟橋へと急ぐ。
 そして、護衛に囲まれ、ひときわ目立つ服装をした男が桟橋に降り立つ。
 彼は大事そうに古びた符が貼られた木箱を抱えていた。
 箱の無事を確認し、彼が連絡を取ろうとした時。
 銃弾と炎が襲いかかり、護衛たちがなぎ倒されていく。
 一瞬の後、動いている者は彼を含め側近の数名。
 前方からは、武装した男たちがこちらへ近づいてくる。
 背後の港には、煙を上げる船。逃げ場はない。
 彼は、懐から符をつかみだし襲撃者に立ち向かった。


 ま、襲撃したのはプレイヤー側なんですけどね。



○シナリオチャート

 1.依頼:いわくありげな壷を取り返して欲しいと依頼される
 2a.情報:奪われた壷は悪魔が封印されていた
 2b.情報:壷を奪ったのは港を牛耳るヤクザな人々
 3.戦闘:敵からの襲撃(銃器系)
 4a.情報:敵には符術士がいるらしい
 4b.情報:敵のアジトは港に浮かぶ船上レストラン
 4c.情報:奪われた壷は船上レストランにある
 5a.戦闘:港の護衛(銃器系)
 5b.戦闘:船の護衛(符術系)
 5c.戦闘:敵のボス(壷からでた悪魔〔交渉次第で敵or味方に〕)
 6.報酬a:依頼人からの報酬
 6.報酬b:アジトに隠されていた宝物

※マスターが想定していたシナリオの流れは、このようなところでした。まあ、あんまり考えていません。コンベンションでもないのでお気楽です。

○石橋を叩いて壊す
 さて、実際のセッションですが、順調過ぎるほどすすみました。
 まあ、順調というよりすっとばされたんですが。

 プレイヤーが依頼を受けて最初に調べたのは、壷がなんであるか、次に奪った連中の正体でした。
 チャート通りなので読み通りと内心ホクホクですが、それはともかく壷については知識系のキャラクターの判定が成功したので「悪魔が封印されてて危険だよー」と伝え、敵についても聞きこみがそれなりに成功したので、法螺を吹き多めの人数を伝えました。
 あんまり少ないと即座に突入されかねなかったので。
 まあ、これが間違いのもとなんですが。
 敵の人数を聞いて、正面突破は無理と考えたPCは本腰をあげて情報収集に励むことになったのでした。

※それまではわりと、本人達はライトなプレイのつもりだったようですが。おそらく素質的に無理がありました。

○ヘタに調べて足がつくよりは……
 とりあえず、チャートの2bまで進んだのでそろそろ戦闘です。
 情報収集している間に、襲われるというあたりが適当かなとタイミングを計り始めました。が、ここでプレイヤーから思わぬ発言が。
「敵のアジトは敵に聞くのが一番と思う、幸い情報収集をしていたのは二人だけだ」
「二人を囮に待伏せか。下準備が必要だな」
 襲いかかった可哀想なちんぴらは、瞬殺→尋問のコンボを食らうことに。ちんぴらくん、脅され魅了され賄賂をわたされ、5a〜5cの情報を流しました。

※残虐描写が含まれるため、尋問の具体的描写は避けます。


○ひゅーまんせきゅりてぃ
 敵のアジトが船上レストランに偽装されていることがわかりました。場所もばっちり。さて、潜入……とはいかず。情報収集はさらに続いたのです。
「船上か、図面があると便利だが」
 アジトのコンピュータに図面はあります。しかし、ハッキング対策をととのえていますので、簡単に情報はわたらないはず。

「では、レストランに改装した業者を洗い出して、そこから図面を引き出そう」
 どうもシステム関係の人々がプレイヤーのせいか、ハッキング先がいやに具体的です。まあ、船の構造が全部知れるわけではないのが救いでしょうか。

「敵の人数も確定したいな」
 ここでアジトにハッキングしてくれると、警戒して警備を増やすとかしようかなと思いましたが。

「では、食品の納入業者を調べて、消費量の増加をチェックしよう」
 さすがに納入元は警戒していませんので、どうにもなりません。
 いや、ファンブルすれば……まあ、しなかったのですけど。

「位置に図面、人数はわかった。さてどうおびき寄せる?」

 どうも本気で攻略されるようです。
 位置関係が前衛、後衛しかないゲームなので、あまりタクティカルに攻められると対応に困るなあと思いつつ。
 まあ、ここまではわりと予想通りです。
 そんなにはみ出していません。

※本格的にいくのはこれからのようですが。


○ぼんばーまん
「そうだ、爆弾を仕掛けよう」
「(うまく壷をもって)逃げ出せばよし、どちらにしろ警備は緩む」
「まあ、仕掛ける時に見つかったら、そのときはそのまま」
「アイテムに手榴弾とスモークグレネードがこれは使える」
 楽しげに破壊工作を計画するプレイヤー。
 皆様どちらのテロリストですか?
 いつのまにか、敵組織の壊滅計画になっているのは気のせいかな?
 壷を取り返すだけでいいんだよ?
 と、心の声が思わずとびだしつつ、ノリはじめてしまいましたので、もう止まりません。

 その後は冒頭の通り、敵はアジトからあぶりだされあえなく轟沈しました。
 真正面から当たれば数百人規模、生き残りが報復戦をというネタもあったのですが。
 全滅では致し方ありません。
 全滅させるなとは、依頼にありませんし。

※このお話はフィクションです。実際はあんなに甘くありません。戦場はさらに過酷に。^ ※著者によって、さまざまな誇張、追加、編集がおこなわれています。^ ※こんなことばかりしている訳ではありません。

さいごに

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月刊TRPG.NET 2003年04月号

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