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セリシア=ヴァナ
(人間・女・20歳・160cm)
父は、オランの貴族、ナヴァエル=ヴァナ。
母は、シャレスという名の、オランに住んでいた平民の女性であった。
父と母は、魔術師ギルドの私塾で知り合った。そして愛し合い、結婚し、セリシアが生まれた。両親は、セリシアを溺愛した。
過保護とも思われる育て方であった。セリシアはそれに反発して12歳の時に家出した。昔から憧れていた冒険者として生きる決心をした。
だが、世の中、そんなには甘くはない。泣きながら家に帰れれば運の良い方で、時には奴隷商人に連れさらわれる事もあるのだ。そして、人生というのは運の良い事よりも悪い事の方が多いものだ。その例に漏れず、セリシアも奴隷商人に捕まったのである。
泣き叫ぶセリシアを、好色そうな笑みを浮かべて抱き抱える奴隷商人。
「かっかっかっ、お嬢ちゃん。世の中を甘くみていたねぇ。世の中を甘くみた代償は、少々高くつきそうだけどもなぁ」
「いやっ!!離して!!誰か〜〜!!」
「こんな所を助けてくれる奴なんかいないよ、お嬢ちゃん。えっへっへっ」
セリシアは、絶望で目の前が真っ暗になった。ここで自分の人生は終わりなのかと、このままこの男のなぐさみ者になってしまうのかと思った。
その時であった。
「いやいや。正義の味方っていうのは、結構いるもんだよ」
「カリディアも、物好きな奴だよなあ。ま、俺達もそうか」
「お、お前らは何者............うげっ!!」
悪者がふっとび、ふと、顔をあげたセリシアの視線は、涙にぼやけながら一人のハーフエルフの存在を認めた。
「大丈夫?あらあら、こんなに汚れて」
そう言って現れた、同じ様なハーフエルフの女性の姿を見つけた瞬間....セリシアは、その女性の胸に飛び込んで、おもいきり泣いていた。
「びえ〜〜ん!!おね〜ぢゃ〜〜ん!!」
セリシアを助けてくれたハーフエルフの精霊戦士、カリディア。
人間の精霊使い、フィラレイン。
グラスランナーの盗賊、シャミノ。
ハーフエルフのお姉さん、エルメス。
ドワーフの神官戦士、カイヤン。
彼らと共に五年の冒険をした。東方諸国を股にかけての大冒険であった。最初は、ただのお荷物のセリシアであったが、エルメスに魔法を教えてもらって、何とかお荷物にならないように努力した。
彼らは、セリシアに何も聞かなかった。
ただ、優しかった。
五年たったある日、六人はオランへと戻ってきていた。
そして、カリディアは、セリシアを前にこう言った。
「セリシア、もう、両親のもとに帰って貴族としての生活に戻ってもいいんじゃないかな?」
「カリディア......どうして?」
「わかるさ......五年間も共に暮らしていれば、隠しているつもりでも、分かってしまうものさ、とっさの言動とかでね」
「でも、カリディア......私....」
「セリシア、実はね。僕達は、これから西方に行くんだ」
「それで、私がじゃまになったの?」
セリシアは、信じられなかった。五年間、心の底から信じていた人達に裏切られると言うのが信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「そうじゃないのよ、セリシア」
「嘘よ!!みんな、私の事が嫌いになったんでしょ!?」
エルメス姉さんの言葉も聞こえなかった。
そんなセリシアの肩に、カリディアは優しく手を置き、声をかけた。
「君も知っての通り、僕達は、南の呪われた島からこのアレクラスト大陸に来た......だけどね、僕以外はその呪われた島、ロードス島の出身なんだけれども、僕は違うんだ。僕は、西方の出身なんだ」
初めて聞く事実だった。いままでカリディアを初めとするみんなは、全員呪われた島の出身だと思っていた。
「西方のね、タラントという国の出身なんだ。そこのカパールというエルフの集落で、僕は生まれたんだ。」
そして、カリディアは語った。カパールで片親に人間を持った為に迫害され、それに耐えきれずにカパールを飛び出して冒険者となった事を。
「でもね、セリシア......僕は帰ろうと思うんだ。僕の故郷であるカパールにね。今ならば、僕は負けない、そう思う。だからセリシア、君も自分の運命に負けずに立ち向かってほしい。今を逃せば、もう、君は立ち向かえないと思うんだ......」
「だいじょ〜ぶだよ、セリシア。何かあったら僕達を呼びな!!何があっても飛んで来るよ、このリュートを片手にね」
横から草原の妖精であるシャミノが、笑いながら声をかけた。
その声を聞きながら、目に涙を浮かべながらもセリシアは微笑んでみせた。
「そうね、カリディアもがんばっているんだもの。私も、がんばってみるわ」
カリディアは、微笑んでセリシアを抱きしめた。
だがしかし、帰ってきたセリシアを迎えたのは、両親ではなかった。父の弟であり、セリシアの叔父にあたるザレス=ルーマンであった。
ザレスからセリシアは重大な事柄を聞いた。
両親が、数日前に謎の事故で死んだ事。妹のイリアが何者かにさらわれて、どうやら西方のドレックノールに奴隷として連れて行かれてしまっていたらしいという事。現在、継承者がいないために、ザレス=ルーマンが財産を管理しているなど。
「おうおう。しかし、セリシアが帰ってきて、ほんと〜に良かった。これで、ヴァナ家も安泰ではあるな。は〜〜、しかし、両親と妹ぎみの事は残念ではあるなぁ。妹は全力を尽くして捜索中ではあるのだがなぁ」
その時、セリシアはこの叔父にひどく嫌なものを感じた。それは、五年間の冒険者家業で培われたカンであったのか......。
その夜、セリシアの枕元に二つの影が立った。白くぼんやりとした影は、はっきりとした声でセリシアにこう告げた。
「セリシア......ここにいてはいけない。セリシア......ここにいてはいけない」
「お、お父さん。お父さんとお母さんなの?」
一方、その頃、ザレスの書斎では。
「ついにセリシアが戻ってきてしまったではないか......一体、貴様らロドーリスの暗殺者はいったいどうなっているのか!!道楽で貴様らを雇っているのではないのだぞ!!」
「し、しかし、オランの盗賊ギルドの守りが強く......」
「だから、わざわざお前達ロドーリスの暗殺者を雇ったのだ!!だがしかし、なぜオランの盗賊ギルドがあんな小娘を......」
「それに、あの五人の者達」
「そう、あのボディーガードきどりの五人。セリシアの素性を知って、金でもせしめてくるかと思ったが、そういう訳ではなかったようだったがな。ともかく、なんとしてでもお前達、あの小娘を殺せ。手段は問わぬ!!」
「御意」
「なんと、西方に行くと申すのか?」
「はい、両親亡き今、貴族としてまだまだ私は世間知らず。それならば見聞を広めるためにも諸国の様子を見て回りたいと思いまして。それに、妹を探し出したいのです」
「ふ〜む、そうか......心配ではあるが、見た所決心は固まっている様子。それでは、これを持っていくが良い」
そうしてセリシアに渡された皮袋には金貨が50枚入っていた。
「叔父様......」
「うむ、セシリア。道中、気をつけるのだよ」
そうして、セシリアは旅に出た。目指すは妹が連れ去られたというドレックノールである。家の門をくぐるセリシアを窓から見ながらザレス=ルーマンは邪悪な笑みを浮かべていた。
「家を自ら出ていくとは、非常に都合が良い。だが、ロドーリスの暗殺者にはそろそろ愛想がつきてきたのぅ」
「それはご安心をザレス様。西方に行くのなら都合良く、現在西方には我がギルドでも、一、二を争う暗殺者、<銀糸>がおりますゆえ......」
「それならば良いがのぅ」
「それにしても、ザレス様も悪ですのぅ」
「それをいうならば、ロドーリスも、最近なにやら良からぬ計画を立てているそうではないか?」
「これはこれはザレス様、お耳が早い」
「のう、そち、山吹色の饅頭でもどうだ?」
「いや、私、饅頭には目がなくて」
「そうか、そうか、あっはっはっはっは!!」
と笑い声が、いつまでもヴァナ家の屋敷に響きわたっていた。
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