台無し

 渇いた音が駐車場に鳴り響いた。

 男が肩を押さえて地面に倒れる。銃を持っていた手。奴はもう、丸腰だ。

「潮時だな・・・」

 俺は、そうつぶやいて、懐の携帯を取り出した。周囲を見回すが、敵の影は無い。本部に連絡を入れ、男を護送する為の人を呼ぶ。

「・・・あ、俺だ。確保した・・・ああ、応援を頼む。」

 長年追いつめていた男。組織につながる男だ。この男から組織につながる糸を手繰りよせ、組織をつぶさにゃいかん。俺は、その為に振り返るのをやめて今まで走り通してきたんだから。

 ふと、気づくと、同僚の坂井が男のそばに立っていた。

 そうだ。男を確保しないと。どんな隠し玉を持っているかわからない。

 その時、俺は奇妙な違和感を覚えた。その違和感は、坂井の顔を見て確信に変わった。坂井は、無表情だった。いつも笑い、叫び、そして泣いていた、あの感情豊かな熱血漢は、無表情で男を見下ろしていた。

「さ、坂井?」

 渇いた音が再び響いた。続けて三回。

 俺は、何が起こったか理解できなかった。ゆっくりと地面に崩れ落ちる男。無表情の坂井は、硝煙が立ち上る拳銃を握り締め、床の男を眺めていた。

「坂井ぃ!!」

 俺は、叫んだ。全てに繋がる男。組織の糸口を手に入れる為の三年の日々。苦しかった日々と共に坂井の笑い顔、泣き顔、とぼけた顔、まじめな顔、が脳裏に浮かんでは消える。

 疲労で軋む膝に力を入れて坂井に向かって駆け出した。

「・・・そうだよね。彼は許せない。彼を殺すためだけに、生きてたんだからね、坂井君」

 白と黒のコントラストの淡く、ノイズが混じる小さなモニター画面を体を丸くしてのぞいていた男は、そう呟いた。モニターに映像を送信しているカメラは、駐車場に停めてある車に設置されていて、駐車場で起こる物語をあます事無く伝えていた。

 小雨が降りつづけている通りからサイレンの音が次第に強くなっていた。


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