この間の事件ね、毒を使って輸送隊を襲った犯人を一応は突き止めたけれど、事件が起こるのは止められなかったということで、責任問題になったの。首都パーヴェロアから貴族出のライナスさんが上司として派遣(左遷?)されてきて、お兄ちゃんたちは事後処理に当たっていたみたいね。
その頃あたしはというと、一人前の魔術師と認められるため、我がアリストル家に代々伝わる呪文を受け継ぐ修行と儀式を行っていたの。だから、しばらくお兄ちゃんと会うことすら許されなかったのね。
儀式はギルシルさんという、お母さんのお師匠の塔で行うことになったわ。ギルシルさんはメイガスである有名な魔法使い。あたしも知らなかったんだけど、実はウチとギルシルさんの塔には直通のワープゾーンが存在したの!
いつも閉じられている小部屋には一体何があるんだろう、って思っていたんだけど、魔法陣が描かれていたわけなのよ。つまり、峠を越えたメロウの街までひとっ飛びってこと。でも、そのワープゾーン、あまり好んで通りたいものではないわね。ひどい馬車酔いみたいになっちゃって、向こうについてから丸一日は何もする気にはなれなかったわ。
その後、儀式は滞りなく終わって、あたしは一人前の魔術師として認められたの。アリストル家に代々伝わる呪文って一体何だと思う?
それがリムーブカースだったのよ。ウチのお母さんたら、冒険に出るあたしにリムーブカースの巻物や呪いの抵抗力があがるプロテクションスカラベのサークレットを持たせるのはどうしてかなぁ、って思ってたんだけど、そういう理由があったのね!
儀式が終わった後、新しいプロテクションスカラベを貰ったの。今までのはブロンズだったんだけど、新しいのはゴールドなのよ。まあ、あまり変わりばえはしないけれどね。
儀式が終わって部屋を出てみると、お兄ちゃんたちもギルシルさんの塔に来ていたの。例の黙示録の件で水晶に映ったことがあって、ギルシルさんに呼ばれたみたい。
暁の黙示録については、それを受け継ぐセインさんがお兄ちゃんたちの部隊に呼ばれていて、その人の話によるとどうも黙示録の石版はあと二つあるらしいのね。そして、ギルシルさんの水晶球に映ったのは、ハロルドさんとエメラルドさんという行路で出会った人たち。この二人に残りの黙示録の石版が関わっているかもしれない、ということ。ギルシルさんが言うんだから、きっと間違いないわね。
ハロルドさんというのは、どうも盗賊の技術を生業としている人みたい。彼、足音が全然聞こえないのよ。やはり本職の人は違うわね。ただ、気になるのは、いつも小袋の中に話しかけてるってこと。一体あの中には何があるというのかしら……。
それから驚いたのは、エメラルドさんという人があたしにそっくりなの! しかも彼女、看板役者なんだって。エメラルドさんはウェービーなロングヘアで、もちろん彼女の方が美人のような気がするけど、悪い気はしないわよね。ところが、エメラルドさんはあたしの顔を見たとたんに、あたしを代役にするって言い出したのよ。
彼女が立つ「緑の小袖」という舞台では代役が立つシーンがあるのだけど、その代役の人がエメラルドさんの恋人役と練習中にもんどり打って倒れて、二人とも怪我してしまったそうなの。しかも、エメラルドさんは恋人役に、なんとジャニスさんを指名!
……一抹の不安。まあ、ジャニスさんの役は裏でセリフを言ってくれる人がいるみたいだし、大丈夫……かなあ?
結局、エメラルドさんは黙示録の件に何か関係あるかもしれないから、お手伝いすることになったの。ハロルドさんは舞台の仕掛けを作るのと吟遊詩人の役に抜擢されたし、お兄ちゃんは大道具に動員されたみたい。セインさんとライナスさんはギルシルさんとお話があるみたいで、塔に残ることになったんだけどね。
劇を公演するは、メロウの街の広場。そこに大きなテントが立てられていて、その中に舞台があるのね。公演時間は明日の夕方から。つまり、たった一日で全てを覚えなければいけないってことよ。
さっそく台本を渡されて読んでいくと、最後に主人公二人が鳩になって飛んでいくというシーンがあるのよね。監督さんに聞くと、舞台演出のフリスさんって女性がクリエイトノーマルモンスターの呪文を使って鳩の幻影を飛ばすんだって。あたし、すごくビックリしちゃった。だって、クリエイトノーマルモンスターって高レベル呪文なのよ。
それでちょっと思い出したんだけど、ギルシルさんが昔一緒に旅をしていた冒険者に、フリステールって女性がいたって話を聞いたような気がするの。もしかしたら、その人なんじゃないかしら、って思ったのよね。
それはともかく、まずは台本を覚えないと。代役とはいえ演劇に出演するなんて初めてだし、たった一日で全てを覚えないといけないんだものね。ああ、緊張するわ。
……ところで、台本を読んで知ったんだけど、ジャニスとエメラルドさんの役って、最後にキスシーンがあるのよね。ジャニスさん、どうするのかなあ。あの人、表情からは感情が読めないからな。
その晩の練習もとりあえず済んで寝静まったころ、騒がしい足音が聞こえたの。ジャニスさんがテントから外を覗き見ると、見知らぬ男が駆け抜けていって、それをさらに二人が追いかけていたらしいわ。ジャニスさんがそいつらの行く先を見ると、なんとあのデブハゲトゲオヤジがいたって言うの!
デブハゲトゲオヤジ。なんか酷い言いようだけど、覚えてるかしら。毒を栽培していた商人の家で護衛をしていた男よ。頭には髪の毛が無くて、上半身裸。太ったその身体にビョウの打たれた皮ベルトを巻いて、大きな斧を振り回していたあの男。どうしてこの劇団に忍び込んだのかしら……。
そんなことを考えながら、わたしは再び眠りについたわ。嫌な予感を抱えながら。
次の日、とりあえずあたしは、フリスさんにお話を聞こうと思ったのよね。もしギルシルさんと何も関係なくとも、レベルの高い魔法の使い手であるのは確かだもの。彼女はいつも舞台の裏手にいると聞いて、あたしはそちらに足を運んだわ。
ところが、舞台裏に近づいたとき呪文の詠唱が聞こえたの。詳しくは聞き取れなかったんだけれど、「……がかかるでしょう」って聞こえたわ。覗き見るとそこにはエメラルドさんともう一人の女性。お世辞にも若いとは言えない彼女がおそらくフリスさん。だって、呪文を唱えていたものね。
不審に思いながらも取り繕って話を聞くと、ギルシルさんのことは知らないみたい。そんなに悪い人じゃなさそうなんだけれど、もし呪文をかけたのだとすると、詠唱の内容からしてギアスか何か。なぜエメラルドさんにそんな呪文をかけたのかしらね。
舞台の方に戻ると、昨日怪しい男を追いかけていた二人が顔をつき合わせて相談していたの。どうもこの劇の監督さんと脚本家の人だったみたい。何気なく覗き込むと、その手にはなんと脅迫状が……。たどたどしい文字で「舞台でキスをするとエメラルドは死ぬだろう」というようなことが綴られていたわ。
昨日、あの怪しい男が監督さんのところまでやってきて、この手紙を置いていったらしいの。脚本家と二人で追いかけているところをジャニスさんに見られたのね。あたしは監督さんに、その仲間には例の太った男がいることを話し、危険な人物であろうことを注意したわ。
それにしても、脅迫状らしき文書と怪しい男たち。フリスさんの謎の呪文。そしてエメラルドさんは黙示録の石版に関わっているらしいこと……。例の商人の館から「デスエンジン」という機械の設計図が発見されたのは覚えているかしら。それはどうやら黙示録に何か関わりがあるようだし、あの男たちはエメラルドさんを狙っているのかもしれないわ。
そうなると、やはりフリスさんが怪しいかもしれない。ギアスという呪文で死を強制する命令は出来ないけれど、例えばキスをすることで眠るようにすることはできるんじゃないかしら。エメラルドさんが死ぬ、という予告を出しておけば、少なくとも周りは誤解して混乱を起こすことが出来るものね。
そんなことを考えていたとき、エメラルドさんが練習を抜け出したのに気がついたあたしは、魔法で姿を消して後をつけることにしたわ。彼女は今までも何度となく練習を抜け出していた、という話を共演者たちがしていたの。
彼女はどこに行くのかと思えば、六匹の虎亭という酒場。このメロウの街で、盗賊ギルドに代わる役目を果たしている場所らしいわ。彼女はどうやら合図となるお酒を注文し、カウンターの奥に入っていったの。……ということは、彼女も盗賊であるということ?
とりあえず姿を消したまま酒場の中を見回して、あたしはギョっとしたわ。例の太った男が部下らしい男たちと一緒にいたのよ!
どうやら彼らはここに入り浸っていたみたい。そして、おそらくここに通っていたと思われるエメラルドさん……。これは偶然なのかしら。
ちょうどその時、酒場にハロルドさんが現れたわ。彼もエメラルドさんを不審に思って追っていたようね。エメラルドさんと同じ酒を注文し、カウンターの中に入ろうとしていたから、あたしは姿を消したまま彼の後ろに続いて忍び込もうとしたんだけど、バレちゃった。「お客さん、後ろに二人もつけてきてますよ」って。
後で聞いたら、ジャニスさんも姿を消してつけてきてたみたい。盗賊たちのセキュリティって想像以上にすごいのね。追い立てらるようなことはなかったけれど、ハロルドさんの迷惑になっていないかちょっと心配だったのよね。
ハロルドさんが酒場で仕入れてきた情報としては、あの脅迫じみた手紙は、やはりデブハゲトゲオヤジ……もとい、本当の名前はロイズというらしいんだけれど、あいつの部下の中で一番字の上手い人が書いたんだって。ずいぶん、たどたどしかったけどね。それと、ロイズのさらに上には「白いため息」という女ボスがいるらしいわ。女……それってもしかして……?
みんなと相談して、あたしが舞台に立っているときはお兄ちゃんがフリスさんを見張り、ジャニスさんは万が一のことを考えてキスシーンはフリだけにしておくことにしたの。
夕方になって、とうとう開演のベルが鳴ったわ。心配の種だったジャニスさんの演技もナカナカのもの。調子に乗って自分でセリフ言ってるシーンとかもあったもの。本番に強いのかしらね。
「緑の小袖」は悲恋もののお芝居。緑の小袖が似合う村長の娘ポーラと、敵対する村の村長の息子ジャス。彼らは密かに愛し合うのだけれど、村人たちに引き裂かれ、ジャスは奴隷として船に乗せられて、はかなく命を落とすのよね。その最期にポーラの元に戻ってきて愛を誓い合うと、二人は白い鳩になって飛び立っていく、というお話なの。
ハロルドさんは吟遊詩人の役として出ているときに、歌詞に「白いため息」と加えてエメラルドさんの反応を見たりしていたわ。舞台袖にいたフリスさんも特に反応は無かったみたい。
そうこうしているうちに、あたしの出番も何とか終わり、クライマックスのキスシーン。エメラルドさんがムンっと気合いを入れて迫ってくるのを、ジャニスさんはムンっと避けたのよね。ロマンのかけらもないったら……。
でも、それを境に戦いの火蓋が斬って落とされたのよ。
舞台袖にいたフリスさんが、はめていた指輪をかざしてエメラルドさんに電撃を飛ばしたの。そばにいたお兄ちゃんは、あたしが以前ライトニングの呪文を使ったのを見ているから、咄嗟に彼女を押さえつけて電撃の軌道を変えたの。電撃はエメラルドさんをかばったジャニスさんをかすめて、傍目で見てもわかる程のダメージをジャニスさんに与えたわ。そして、舞台には炎が……。
それと同時に舞台裏にいたハロルドさんが、演出用の煙幕をひいてエメラルドさんたちを救出に走ったのだけれど、客席のほうからロイズたちが歩いてくるのが見えたわ。お兄ちゃんはさっきまでとは形相の違うフリスさんからライトニングの指輪を奪い取ったんだけど、もうひとつはめていたホールドパーソンの指輪で身動きを封じられたの。……これって、最悪の状況じゃない?
あたしはフリスさんに近づいてウェブの呪文で絡め取ったのだけど、盗賊二人に囲まれてしまったわ。ロイズともう一人の魔法使いらしい男は、エメラルドさんを追って奥に向かったのだけれど、固まっているお兄ちゃんを放っておくわけにもいかないじゃない。
ダメもとでスリープを唱えたけれど全然効かないし、とりあえずはフライの呪文で手の届かないところまで飛び上がったの。そうしたらそいつらもエメラルドさんを追いかけていったので、慌ててマジックミサイルを打ち込んでやったんだけど、大したダメージは与えらえなかったみたい……。
追いかけて奥を覗いてみると、エメラルドさんが後ろから殴られた瞬間だったわ。エメラルドさんはかき消されるように姿を消し、ロイズたちは目的を果たしたからか、早々に退散してしまったの。
そう、いくつもの謎を残して……。
◆プレイヤー談◆
前回のシナリオを休んでしまったために、ちょっぴりお話が飛んでいます。この時に加入したキャラクターは、貴族出の僧侶ライナスと、暁の黙示録の守護者セイン。この二人は今回都合が合わなかったため、エレガードはまだ会ったことがないんですね。
やっと僧侶が来たと思ったのに、またいないのだ。ちなみにセインは戦士。……戦士ばかりが三人もいるパーティーって、なんかメッチャ偏ってるんじゃないか?(笑)
今回新たに加わったのは、盗賊ハロルド。小袋の中で何かを飼っているらしいのですが、それが何かというのもシナリオに関係あるのかな?
秘密の多いキャラクターです(笑)。
今回はちょっと反省の多い回になってしまいました。体調が悪かったために頭の回転が遅くて……というより本領発揮?
呪文を使う順序を間違えたり、情報収集がいまいちピントずれたり、とにかく空回りしちゃった気がします。
今更ながら思うのは、ギルシルさんにフリスさんの話を聞きに行けば良かったカナってこと。舞台の開演時間が迫っていたので躊躇したんですが、時間が間に合うかどうかだけでも聞けば良かったですね。
それと、これからディスペルマジックは常備しよう、と誓いました。お兄ちゃん、また固まっちゃったんだもん(笑)。何もしてあげられない、というのは辛いですね。クレリックがいないのも辛い。アイジャマルさ〜ん、仲間にならんか〜(笑)。
今回、エレガードが知らない会話としては、ジャニスがエメラルドを庇った時の会話です。
エメラルド わたしを助けてくれるの?
ジャニス 向こうが怪しかったということがわかったからな
エメラルド キスを拒んだことで、もうわかったんだと思ったわ
……というようなことを話していたのですね。ん〜? ってことはやっぱりエメラルドさんも怪しいのか。謎を残したまま、続く!
play:'99.12.19(日)
update:'00.2.14(月) |