この間の冒険から、もう1ヶ月ほど経ったんだけど、その間にお兄ちゃんは騎士として目覚めたというのかしら。妹から見てもほれぼれするくらい、シャキっと動くようになってきたわ。お父さんが言うように、仕事をしていれば、男は変わるものなのね。妹としては、ちょっと寂しい気もするけれど、やっぱり誇らしいわ!
お兄ちゃんは最近、新しい剣を手に入れたのだけれど、その剣はお兄ちゃんとだけ会話が出来るらしいの。お兄ちゃんが言うには、その剣は朝露姫っていう名前なんだって。お兄ちゃんが騎士らしく変貌したのは、その剣のおかげだっていう噂もあるけれど……そんなのはあくまでも噂よね。
そうそう、最近ビックリしたことといえば、この間チラリとお見掛けした北方辺境警備隊の司令官さんって、やっぱりハリス伯父様だったのよ。似てるなあ、とは思っていたのだけど、まさか本人だったとは思わなかったわ!
あとでお父さんに問い詰めたら、ニヤニヤ笑って「言わなかったっけ?」だって。知らなかったのって、あたしだけ?
すごく恥ずかしかったんだから。
今日は警備隊の会議があったの。最近は物資補給の行上を狙う野党が多くて、しかも襲ってくる際の手口は毒矢という、凶悪極まりないものよ。警備隊はより気を引き締めなければならないわね。
その会議が終わり、あたしとお兄ちゃん、家が近いジャニスさんと3人で、たわいもない話なんかをしながら帰っていたのだけど、その街路の先で若い男女が3人の暴漢に襲われているのを目撃したの。暴漢のうち1人は戦士のようで、残り2人は盗賊のように見えたわね。
お兄ちゃんはさすがに騎士らしく、彼らを助けようとしたわ。でも、お兄ちゃんたちは会議に正装の鎧で出席していたからそう速くは走れないし、いかんせん距離があったのよ。
あたしは小鳥に変身して、そいつらの目の前をかすめ飛んで、気をそらそうとしたけれど、一足遅くて、男の人のほうは倒れてしまったのね。
そのうち、お兄ちゃんたちも追いついて、わたしは女の人の前で変身を解いてミラーイメージを出してやったの。さすがにド肝を抜かれていたわね。あたしは女の人に襲いかかった奴にダガーでとどめを刺してやったわ。女性の敵にかけてやる情けなど無いわよ!
お兄ちゃんとジャニスさんにかかれば、その辺の奴らは敵じゃなくて、親玉みたいな戦士はやっつけたんだけれど、もう一人の盗賊っぽい男は逃してしまったのね。逃げ足だけは速いんだから……。
とにかく闘いが終わった後、襲われた男の人の脈を見てみたけれど、すでに事切れていたわ。襲われた女の人が彼、マートルさんの安否を聞いてきたとき、彼女たちの間柄はわからなかったけれど、すごく悲しい気持ちになっちゃった。せめてあたしは、彼女のために親身になろうと思ったの。
彼女の名前はアイジャマルさん。エッセルの街から程近いオールブという村の村長バルバチャーノさんの娘さんとのこと。彼女が切り出した言葉には驚いたわね。「ハリス司令官に会いたい」って。ハリス伯父様に?
それからあたしたちは、アイジャマルさんをとりあえず家まで連れて行ったわ。マートルさんの遺体を抱えたままハリス伯父様に会いに行くわけにはいかないし、もしかしたらまだ暴漢の仲間がいて、行動を見張っているかもしれないものね。
そして、ハリス伯父様に「オールブ村の娘さんが会いたいと来ている」という内容の手紙を書いて、大至急使いをやったのよ。そうしたら、すぐさまハリス伯父様と、エイルス副司令官さん、そしてお父さんまでが飛んできてくれたの。ちょっとあたしもビックリしたわ。
あとから思うに、オールブというのはエッセルの街から重要な位置にある村だったし、ハリス伯父様は重大な事件にかかわっている可能性を読み取ったのでしょうね。
アイジャマルさんが語るには、彼女の父親、つまりオールブ村の村長バルバチャーノさんが軟禁されているとのこと。その相手は、ほんの半年ほど前にオールブ村に移り住んできたソナリという武器商人。
村長さんは、ソナリがバムという毒の原料となる毒草を栽培しているという情報を得て、そのことを糾弾しに行ったまま帰らなくなったというの。しかも、「彼は病気になったので、その治療代として村長の家宝のペンダントを寄越せ」と言い出したというのよ。無茶苦茶ね。
そして、これはお兄ちゃんが言い出したことなんだけど、最近物資を襲う盗賊とソナリは何か通じているんじゃないかって。そうだったわ、その盗賊は毒を使うって言っていたものね。お兄ちゃん、冴えてるわ!
事態を重く見たハリス伯父様は、あたしたちにその件の調査を依頼したのね。そう、今回のあたしたちの任務は、村長バルバチャーノさんの保護、毒草栽培、そして物資強奪嫌疑の是非を確かめることよ。
あたしたちはハリス伯父様にソナリの身元を調べてもらい、わかり次第通達してもらうことにして、それからジャニスさんの進言で、毒消しの薬も調達してもらうことにしたわ。ソナリって奴は毒を所持している可能性が高いものね。でも、毒消しの薬ってものすごく高いの。原価で2,000gpもするのよ!
次の日の朝、オールブ村に馬で向かったのだけど、その村は馬で朝発てば、夜にたどり着く距離にあるの。軍隊や物資輸送もここに停泊するのよね。そういう意味で、とても重要な村なの。
アイジャマルさんは馬に乗れるので、移動はとても助かったわ。実は彼女、僧侶としての心得があって、前の晩にお兄ちゃんの傷を治してもくれたのよね。美人だし、優しいし、言うことない人だなあ。アイジャマルっていう名前は、「月のような美しさ」という意味なのよ。
村に着いて、あたしたちはさっそくソナリが要求してきたというペンダントを見せてもらったの。村長さんの部屋に巧妙に隠してあったのだけれど、さすがに家宝というだけあって息を呑むようなものだったわ。
なんと、握りこぶし程はある見事な紅い宝石。良く見ると、その宝石はペンダントの台座からはずせるようになっていたのね。この宝石は何らかの魔法がかかっているようだし、もしかすると何か鍵になるような品じゃないかしら。
もう夜も遅かったから、あたしたちは次の日にソナリの家に向かうことにして、あたしはアイジャマルさんと一緒にペンダントをしまってある村長さんの部屋で寝ることにしたの。
その晩、お兄ちゃんとジャニスさんが交代で見張りをしてくれたのだけれど、お兄ちゃんが見張りの時に、2階から忍び込んだやつがいたのよ。あたしたちは1階で寝ていたのだけれど、何も取らずに出て行ったのね。
そのあと、お兄ちゃんの剣、朝露姫が「昔、これと同じようなことがあった」と言ったらしいわ。その時は魔法使いが他の場所にいて、忍び込んだ人へ千里眼の魔法をかけていたらしいの。
翌朝確かめてみると、2階に忍び込んだ奴以外に、確かにもう1人の足跡があることがわかったわ。つまり、あたしたちが行く場所に魔法使いがいる可能性も無視できないということね。万が一のことを考えて、ソナリの家に捜索に出る間、ペンダントはお兄ちゃんが預かっておくことになったわ。
その後、あたしが鳥に変身してソナリの庭を調べてみると、庭はガラスの温室になっていて、青々とした草が茂っていたのね。あたしはすぐに、それがバムって毒草だとわかったわよ。
その温室には商人らしい男がいたわ。趣味の悪い指輪をジャラジャラつけた男よ。恐らくソナリね。そして、頭ははげ上がり、上半身裸にトゲのついた黒い皮サスペンダー、そしてバトルアックスを構えた悪人顔のおデブさんと話をしていたの。
どうやら、その温室のバムを一部刈り取って、証拠を隠滅しようとしているようだったわ。そして、武器売買の話もしていたの。そんな柄の悪い奴と商売の話をしているだなんて、物資強奪の予測もあながち間違っていないようよ。
あたしがソナリの庭を調べている間に、ハリス伯父様から伝令が来ていたみたい。そのソナリって商人の売る武器は、調べてみると出所が不明なんだって。それから、マートルさんの直接の死因は刃物に塗られていた毒だった、とのこと。バムっていうのは無色透明の上、無臭の毒。これは油断できないわね。
そして、お兄ちゃんは前日の打ち合わせ通り、ハリス伯父様への経過報告と、あたしたちのお母さんを通して、師匠メイガス・ギルシルさんにペンダントのことを調べてもらうよう、伝令さんに頼んだようよ。
あたしたちとアイジャマルさんはソナリの家に出向き、家宅捜索に踏み切ったわ。向こうはずいぶんと渋っていたけれど、軍への反逆罪と売買権の剥奪をちらつかせると、やっと重い腰をあげたのね。
けれど、その温室に踏み入ると、朝方に見たバムとは全く違う花が生えていたの。幻覚の魔法でもなさそうだし、地面を調べるとまだ新しく植え替えたような土だったのね。あたしとアイジャマルさんは温室の外の方にまわって調べたわ。
そこで気がついたのだけれど、朝に鳥の姿で見たときは、温室の中の地面は外の地面よりも低い位置にあったはずなのに、今は同じ高さだったの。つまり、この温室は今、上げ底になっているということね!
そのことを温室の中のお兄ちゃんたちに伝えようとした瞬間だったわ。温室の横にあった小屋から、フードを目深に被った男が出てきたの。あたしは咄嗟にミラーイメージの呪文を唱えると、間一髪マジックミサイルが飛んできたのよ。その矢の数は3本。つまり、あたしと同じくらいの腕前の魔法使いってことね。マジックミサイルはアイジャマルさんにも飛んで、彼女は一撃で深い傷を負ったわ。
同時に温室のほうにも護衛がなだれ込んできたけれど、あたしたちを不利と見て、お兄ちゃんが入り口で彼らを塞き止め、ジャニスさんが温室のガラスをぶち破って出てきてくれたの。
それを見て、魔法使いは魔法で姿を消したので、あたしたちはアイジャマルさんにどこかの茂みに隠れているように言い、あたしも魔法で姿を消して、油をジャニスさんの周りに細く垂らして撒いてやったわ。彼に近づいたら足跡でわかるようにね。
そのうちに、温室の中で闘っているお兄ちゃんのほうに、朝見たバトルアックスを持つおデブさんが出てきたの。ジャニスさんはあたしたちがもう大丈夫と見て、そちらに参戦したわ。
あたしのほうは、魔法使いがこのまま引き下がるとも思わなかったから、油を撒いた地面を凝視していたの。そうしたら案の定、ジャニスさんが破った温室の穴ほうに近づいて行ったのね。あたしはタイミングを見計らって、ライトニングボルト!
あたし、お母さんからもらったこの杖を使ったのは初めてだったんだけど、ライトニングボルトって、ものすごい威力なのね。魔法使いは黒焦げになって倒れたわ。
温室の中ではお兄ちゃんたちが大勢の護衛たちと闘って、結構苦戦していたみたい。あたしは敵の一人にマジックミサイルを撃ってやったんだけど、そうしたら既に血みどろになっているおデブさんがこっちに向かってきたの。
そいつが近くに寄ってきたところを狙って、ウェブの魔法で絡め取ったんだけど、すぐさま糸をちぎり始めたのよね。もう、どうしてこんな怪力な人ばかりなのかしら。
あたしはそいつにダガーを2本くらい投げつけたところで、フライの呪文で屋根の上まで飛び上がったわ。ウェブを破って温室から出てきたところを狙い、上からさらにダガーを投げてやったの。
それが当たったところまでは良かったんだけど、そいつはいきなり短剣を抜いて、あたしに投げつけたのよ。それはほんのかすっただけだったんだけど、すぐさま痺れが走ったわ。その刃にも毒が塗られていたのね。あたしは屋根に隠れて毒消しの薬を飲んだけれど、お兄ちゃんたちが心配だったわ。きっと他の衛兵たちの剣にも毒は塗られているだろうから。
そのうちに、どこかから合図の笛の音が聞こえてきたの。もしかして、ソナリの部下の盗賊?!
あたしはそろそろ魔法も尽きてきたし、ホント言うと、もうダメかなって思ったの。そうしたら、おデブさんが一目散に逃げていくのが見えたわ。
温室を覗いてみたら、お兄ちゃんたちがあらかた護衛を片づけたところだったのね。そして、踏み込んできたのはこの村の衛兵だったの。あたしたちをならず者としてソナリが密告したみたいね。
でも、こちらには当然証拠があるじゃない。ハリス伯父様の手紙と、ジャニスさんが花壇の底にから引っこ抜いたバム。そう、バムを寝かせて上から蓋をし、土を盛って花を植えてあったわけね。
その時、すでにソナリは姿を消していて、毒草栽培の嫌疑は本物となったわけ。そして捜索の結果、村長バルバチャーノさんも無事保護し、物資強奪の証拠も発見。ソナリは反逆者として、軍に追われる身となったわ。
村長さんのお宅へと戻り、お兄ちゃんがペンダントを返すと、村長さんは隠してあった杖を取り出したの。ペンダントの宝石はこの杖にはまるようになっていたのね。
この杖の由来については村長さんもよく知らないそうなのだけれど、ずいぶんと昔、キースティという旅のエルフがオールブの村に訪れた際、この杖のことが来たるべき終末を予言する書というものに記載されていた、と語ったそうよ。
そして村長さんは、あたしたちにこのペンダントと杖を託したの。つまり、これに隠された謎を解いてほしいってことね。宝石はお兄ちゃんが、偽装したペンダントをジャニスさんが持ち、杖はあたしが持つことにしたわ。
ああ、すごくドキドキするわね。冒険者になるときに夢見たのって、こういう浪漫じゃない?
冒険を終えて、気になることが二つ。ソナリの館から出てきた書類の中に、カタパルトみたいな「デスエンジン」というものの設計図が見つかったのよ。その図面ではどういうものかわからないんだけど、それが余計に恐いわね。
そして、もう一つ。怪我をしたお兄ちゃんをまたアイジャマルさんが治してくれたんだけれど、その時に彼女の頬が紅潮していたように思うのよね。これって女の勘かしら。
アイジャマルさんって、お兄ちゃんより一つ年上なのよ。ああ、あたし彼女と上手くやっていけるかなあ。早合点しすぎ?
でも、やっぱり気になるわよねえ。
◆プレイヤー談
この回からキャンペーン開始なのですが、新入会員セッションの時に使ったキャラクターが評判良かったので、急きょ続行してプレイすることになったのです。
マスターもワールドも同じだったので、続行には特に問題なかったのですが、お兄ちゃんティグの能力値があまりにも偏っていたので、それを少々振り直ししています。だから、お兄ちゃんはちょっぴり賢くなったのですね(笑)。
それから、キャンペーンではキャラクターの特殊バックグラウンドをサイコロでランダムに1つもらえたのですが、エレガードはハリス司令官の姪になってしまったのです。当然のごとく、ティグは甥ってことですね。ハリス司令官……こないだ会ってるんですけど〜(笑)。
ティグが振ったのは、高レベル魔法使いのメイガス・ギルシルとのコネ。まあ、これは魔法使いのお母さんの師匠ってことで。これで、エレガードが魔法を覚えるには事欠かないことになりました。でも、魔法1つにつき、Lv.×1000gpもかかるのねー。マスターのイケズ!(苦笑)
それにしても、今回も魔法使いを堪能させていただきました。TRPG歴12年目にして、魔法を使い切るほど遊んでいるのは初めてかもしれません(笑)。
7Lv.魔法使いは、1Lv.魔法が3つ、2Lv.と3Lv.が2つずつ、4Lv.が1つ……と、なんとも絶妙なバランスかもしれません。これ以上魔法の数が増えると強力すぎてつまらないし、少ないとダイナミックさが減少するという。
しかし、こやつは地味にダガーでKillマークを稼いでいるんですね(爆)。どこからともなく現れて、ミラーイメージを盾にダガーでサクサク、というのが、エレガードの基本戦法のような……。HP少ないくせに、いいのかねえ。
そうそう、ティグが手に入れた武器、朝露姫。彼女とティグのウィルパワー対決はなかなか微妙なところです。普段、朝露姫はティグに従っていますが、HPが半分以下になるとティグの乗っ取りを計るのです。
最終戦、戦闘の途中でティグのダメージはHPの半分を越え、朝露姫に乗っ取られてしまいました。「わらわの名は朝露姫。朝の光のようなオパールをわらわに買っておくれ」
……結果、ティグはグルグル眼で朝露姫のために大枚はたいてオパールを買い、剣のツカの部分に埋め込むことになりました(笑)。このままだと、破産するぞ、お兄ちゃん!
ティグ 俺のHPは半分だと思ってくれー!(爆)
play:'99.10.24(日)
update:'99.10.30(土) |