エレガードの日記

 わたしはエレガード・アリストル。19歳の女の子の魔法使いよ。お母さんも魔法使いで、小さい頃から魔法を教えてもらったわ。若いからって侮ったら痛い目に合うわよ。
 3歳年上のお兄ちゃんの名前はティグ。わたしたちのお父さんは戦士で、その血を受け継いで、お兄ちゃんはヴェリステール王国の素晴らしい戦士として成長しつつあると思うわ。これって、妹の欲目かしら。ただ、いつもどこかボーっとしているのよね。
 この間も警備隊の司令官さんからお呼び出しがあったというのに、お兄ちゃんったら危なく寝過ごすところだったし、鎧だってベルトが緩んで曲がったまま着ていたの。わたしがいないと、いつまで経ってもダメね。お兄ちゃんのことが心配で、わたしをついて行かせたお母さんの判断は正解だったと思うわ。

 最近、国境近くにあるキールっていう村が、敵国ガーランド帝国に全滅させられたんだけれど、そこに生き残りの子供たちがいたらしいの。ただし、その子たちを保護しに行った兵隊さんは全滅。2回目に派遣した時も、ほうほうのていで逃げ帰ってきたんだって。10人からなる小隊だったというのに!
 司令官さんに呼ばれたのは、その村の子供たちの保護と、襲ってきた者たちの正体を暴いて欲しい、ということだったわ。もしかしたら敵国の残党かもしれないものね。

 逃げ帰ってきた小隊の人に話を聞くと、確かに村には子供たちがいたみたい。ところが、小隊は村に入れてもらえなかったらしいの。次の日も交渉してみようと、村の外で野営したその夜。数人の男たちに襲われて、小隊はなす術も無く逃げ帰ったんですって。
 襲ってきたのは小柄な人物で、しかも両手に武器を持っていたらしいわ。その話を聞いた時、わたしはおかしいと思ったの。だって、うちのお兄ちゃんだって、両手に武器を持って戦うのは難しいと思うわ。それなのに、小柄な人がそんなこと出来るのかしら。
 わたしが最初に疑ったのは「人間じゃないのではないか」ということ。人間によく似たモンスターもいるでしょ。残念ながらそれに該当するモンスターについて、特定はできなかったのだけれど。

 とりあえず、わたしたちは馬車に子供たちのための食料を積んで、その村に向かったの。ちなみに、わたしとお兄ちゃんと一緒にその任務にあたったのは……
 まず、リーダー格のアルベルトさんね。結構なお歳になるようだけれど、格好良い髭をはやした熟練の僧侶さんよ。子供たちのために食料を要求したのは彼。さすがよね。
 それから、もう1人の僧侶のキフドシュさん。彼は捕らえどころがないおじさんね。自然を愛してらして、よく散歩をしていたわ。ヘビになる杖も持っているの。
 戦士のジャニスさんは、うちのお兄ちゃんとは違って、結構はっきりと話すタイプの人ね。悪ぶっているけれど、本当はそんなに悪い人じゃないみたい。
 盗賊のリブケイドさんは、口数は少ないけれど、仕事をきっちりこなす人、っていうイメージだったわ。だから盗賊でも仲間から信用してもらえるんでしょうね。
 それから、ドワーフのストルチオさん。とても個性的な口調と顔よ。うっかり目を直視したら自白しそうになるわ。そうそう、とても変わった斧を装備していたわね。

 数日が過ぎ、わたしたちはキールの村の近くまでたどり着いたわ。そして、そこで野営していたときのこと。見張りをしていたジャニスさんが、森の中に敵が潜んでいることに気がついたのね。
 その時、残りのわたしたちは深い眠りの真っ最中。ジャニスさんの声でわたしは起きたけれど、横で寝ていたお兄ちゃんはやっぱり寝てるのよ。んもう、お兄ちゃんったらダメね。もちろん、わたしが揺り起こしたわよ。
 お兄ちゃんは普段、ポールアーム・サイズという、大きな武器を持っているんだけど、今回は急襲で鎧を着ていなかったから、予備に持ち歩いている盾と剣を手に、さっそうと敵に向かって行ったわ。そういうところはさすがね。カッコ良かったわ!
 ふと気がついたんだけれど、その時わたしってば敵から丸見え状態だったのよ。慌ててミラーイメージを唱えたら、敵から「魔法使いを狙え!」っていう号令。矢が3本も飛んできて、わたしの分身はあっという間に消えちゃったの。
 逃げようかとも思ったけれど、もう少し戦況を見ようと思ったのね。とりあえず、敵にスリープの呪文。それと同時に激痛が走ったの。矢が2本当たったのよ。その後の記憶は、あまりないわ……。
 後から聞いたところによると、さらに3本の矢がささり、確かにわたしは命を落としたらしいの。ところが、奇跡的に息を吹き返したんですって! 神様なんて信じてなかったわたしだけど、今回ばかりは信じないわけにはいかないと思わない? 神よ、わたしは感謝します。

 わたしが目覚めた時、もうすでに戦いは一段落したところだったわ。さすが、頼り甲斐のある人たちね!
 襲ってきたやつらを捕まえてみると、敵国の傭兵と、なんと村の子供たちだったの。敵国の傭兵は残り1人。そいつはなかなか口を割らなかったけれど、キフドシュさんがヘビを身体に這わせたら脅えながら話しはじめたわ。
 ラスと名乗るそいつが言うには、こちらの国のとり残された傭兵は、手形を持っていないから国境を越えられなくて、仕方なくこの辺りをうろついていたらしいのね。そして、村に残された子供たちと、山賊まがいのことをして生き延びていたというの。
 敵兵に混じってわたしたちを襲った3人の子供たちのうち、2人はそっくりで、兄弟だというのは一目でわかったわ。彼らは大人を信用出来ず、わたしたちを村に入れることをずいぶんと拒んでいたけれど、無理もないわね。
 それでも根気よく説得を続け、わたしたちに敵意がなく、食料もたくさん持ってきたのを見て、やっと受け入れてくれたの。

 村にはほんの小さな子供たちもいて、食料を見て喜んでくれたのね。「ここまで来てよかった」って、やっと思ったわ。
 ただ、建物から出てきた子供たちの中には、矢で襲ってきた子供の中の1人とそっくりな弟妹もいたの。つまり、双子のようにそっくりなエドとエディ、三つ子のようにそっくりなクリス、クインシー、クラウディア。いくらなんでも出来すぎじゃない? ちょっと嫌な予感はしたのよね。
 村を探索すると、教会が徹底的に壊されていたことに気がついたけれど、宗教がらみの戦争では、よくあることなのかしら?
 その後、縛り上げてあるラスから、もう少し詳しく話を聞いたの。2回派遣された小隊を襲ったかどうかよ。ラスはそれについて「知らない」と答えたわ。みんな、そんな気はしていたのよ。そのラスという男、逃げ帰ってきた小隊の人の話とは違って、全然小柄じゃないんだもの。
 子供たちに聞いても、小隊が来た夜、ラスと残党は村の外に出なかったんだって。そのかわり、年長の子供たち5人が見当たらなかった、と言うの。その時、わたしは嫌な予感が当たりそうな気がしたわ。

 その夜、メアリーとトムという子供が、わたしたちの元に来たの。年長の子供たちについて、気になることがあるんですって。どういう事だと思う? なんと「昔、大きいお兄ちゃんたちは、3人だったはず」って言うの。
 昔からいたのは双子のクインシーとクラウディアと、一人っ子のエドの3人だったのに、親たちがいなくなったあと、遠くの街から帰ってきたと言って、2人増えたんですって。
 それから、子供たちの親は健在だったらしいのだけど、ある日村全体を包んだ不審な深い霧を調べに行ったきり、いなくなってしまったらしいわ。しかも、昔は友達がもっといたんですって。つまり、だんだん子供たちの数が減っているということよ。
 わたしはその姉弟に「お兄ちゃんたちに呼ばれたとしても、絶対に行っちゃダメよ」と念を押したわ。そうしたらトムが泣きながら言ったの。「今晩、お姉ちゃんを迎えに来るって言うんだよ」って……。
 その時の感想を言うとね、正直トリハダが立ったわ。わたしには未だにその子供たちの正体が何なのかわからなかったし、これから何が起こるかもわからなかったから。
 とりあえず、わたしたちはその姉弟の家に泊まることにしたの。それならば、きっとメアリーが連れ去られるのを阻止できると思ったからね。

 その時、ふと気がついたのだけれど、わたしたちはラスを縛り上げたまま1人にしていたのよ。ラスもこの姉弟の家に連れてきたほうがいいと思って、リヴケイドさんに頼んだわ。
 だけど、時はすでに遅し。わたしはその後、メアリーの横について寝てしまったから知らなかったんだけれど、ラスはすでに殺された後だったの。後ろ手に縛り上げてあった、とはいっても、首の後ろからブスリと一撃。
 その場には特に手がかりは無かったものの、家の周りに小さな足あとが無数にあったのをキフドシュさんが見つけていたらしいわ。

 わたしが寝ている間、ドワーフのストルチオさんはクリスたちの家の前で、盗賊のリヴゲイドさんはクリスたちの家とメアリーの家が見渡せる小路に隠れて、キフドシュさんは村の中を歩きまわって見張りをしていたらしいわね。
 いつの間にか霧が出てきた夜中、クリスとクラウディアがメアリーを迎えにやってきたの。その時、わたしは魔法で姿を消してメアリーの横にいたのだけれど、実はクインシーまでもが姿を消せるマントを身にまとって傍にいたのよ!
 テレポートの指輪によって、メアリーはまんまと連れ去られてしまったわ。まさか魔法なんか使うと思わなかったのよね。不覚だったわ。お兄ちゃんとアルベルトさんも、魔法によって硬直してしまったの。

 ちょうどその頃、ドワーフのストルチオさんは夜目が効くので、クリスの家を覗いてみたんですって。そうしたら、家からは2人しか出て行っていないのに、家の中にも2人しかいないじゃない。
 しかも、突然子供が1人空中に現れ、ドスンと落ちたのを目撃したの。ストルチオさんは急遽、彼らの家に踏み込んだのね。そして見たのは……顔がグニュグニュと変形して、のっぺらぼうになった子供たち!
 リブケイドさんは、ストルチオさんの「なんじゃこりゃー!」という悲鳴(?)を聞き、そちらに駆けつけたらしいわ。もし、ストルチオさんだけで戦っていたら……と思うと、ぞっとするわね。

 わたしはその頃、鳥に変身して、逃げた子供たちを追いかけていたわ。彼らの前に変身を解いて現れ、クインシーをウェブという蜘蛛の糸の魔法で絡めとったの。
 ウェブは頑丈な糸で、子供なんかがそうそう切れる糸じゃないわ。それなのに、クインシーはすぐさま、その糸をブチブチとちぎりはじめたのよ!
 慌ててわたしはミラーイメージで分身を出して、様子を伺ったの。クリスとエディが偽者だと思っていたけれど、クインシーまでが偽者ということになれば、5人の子供たち全員が怪しいということよね。
 キフドシュさんの魔法で硬直を解かれたお兄ちゃんとアルベルトさんも走ってきて、アルベルトさんはクイックネスリングを使ってクリスの家のほうにすごいスピードで向かい、お兄ちゃんはクインシーを押さえるほうに回ったの。
 お兄ちゃんがクインシーを攻撃すると……そう、クインシーものっぺらぼうだったのよ。わたしはその顔を見ると、恐くて逃げ出してしまったわ。

 正気を取り戻すと、クリスたちの家に近いところまで来ていたのね。お兄ちゃんとキフドシュさんがいれば、モンスター1匹くらい平気だと思ったし、メアリーが心配だったから、そちらのほうを覗いてみることにしたの。
 家の中からちょうど表に出てきたのっぺらぼうに、わたしはファイヤーボールをぶつけたけれど、その前に戦況は終結に向かっていたようだったわね。
 お兄ちゃんのことが気になって後ろを振り向くと、のっぺらぼうのクインシーがお兄ちゃんから逃げて来たところだったの。わたしはすかさずマジックミサイルを撃ったけれど、まだ向かってくるから、ダガーを力いっぱい投げつけてやったわ。そうしたら、プスって刺さって死んじゃった。やったね!

 どうやら、エドとクインシー、クラウディアの3人は、ずっと前にのっぺらぼうに取って代わられていたみたいだったわ。キフドシュさんが見つけたという無数の小さな足跡は、彼らのものだったのよ。
 あとで調べたところによると、このモンスターの名前はムジナ。小柄な体型だけど怪力の持ち主で、顔を自由に変える能力を持っていたようね。ムジナは霧と共に現れるアンデットと行動していることもあるらしく、霧の中に消えた人たちもいたことを思い出して、ぞっとしたわ。

 結局、司令官さんには敵国の残党ラスたちのことは伏せておいたの。それがきっかけでまた戦争がはじまったら嫌だものね。小隊を襲ったのは、すべてモンスターの仕業だったということにしたわ。国内の警備の重要さだって、きっとわかってもらえるでしょう。

◆プレイヤー談◆
 ひさしぶりのD&Dは、やはり楽しかったです。今回は「戦士のお兄ちゃんにお姉さんぶる魔法使いの妹」というプレイを楽しませていただきました。はて、お兄ちゃんは楽しかっただろうか(^_^;)。
 呪い除けのコガネ虫のアクセサリーをオデコにペシってつけた怪しい女の子。しかも、リムーブカースの巻き物も持たされてたりして。きっと、お母さんが呪いをすごく信じてる人なんでしょうね(笑)。
 それにしても、体質にマイナス修正があるので、16レベルなのに、ヒットポイントがたったの16! 死ぬか死なないか、ギリギリのスリル。たまらないですね……って、死んでるじゃん、わたし(笑)。
 実際のところ、リブケイドが敵の魔法使いが持っていたウィッシュリングを見つけ、彼の能力値低下と引き換えに生き返ったのですが、彼は何も言わない人なので、エレガードは単純に奇跡が起こったと思っていますね。いやはや、キャラクターに代わり、お礼を述べさせていただきます。

 それにしても……D&Dにはこんなモンスターもいたんですね。わたしはモンスター表記はあまり読まないようにしてるんですが、知らないモンスターが出てくると、やはりドキドキしますよね!
 見張っていたのがドワーフのストルチオだったから、こんなに良い方向に向かったのでしょう。インフラビジョンでメアリーが飛ばされてきたのを目撃して、数ターン1人でも耐えることが出来るHPで。おかげで、森の中に連れて行かれるのを阻止できたんですね。もし森まで入っていたら、大ボスのアンデットが出てきたかもしれないですよね。
 今回の見所としては、クイックネスリング(加速装置?)でクリスの家に駆けつけたアルベルトが、恐怖でさらに3倍の速度で逃げ去ったというところでしょうね。うーん、エレガード本人も高速ジジイを見たかったと思います(笑)。
 最後の戦闘は、途中で様子を見に来たTGCの面子にクリス家側の戦闘マスターをやってもらったのですね。それもあって、向こう側でどんな戦闘があったのかはわからないのですが、なかなか緊迫した戦闘になって、おもしろかったと思います。

 今回、とても嬉しかったのは、今まであまりD&Dになじめなかった人に「D&Dって結構自由度高くて、楽しいんだね」って言ってもらったことです。素晴らしいぞ、D&D!

play:'99.9.23(祝)
update:'99.10.24(日)


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