有名すぎる為に書名だけが一人歩きしている小説というのは沢山あります。この『吸血鬼ドラキュラ』もそんな小説の一つではないでしょうか。吸血鬼を題材にした小説の元祖と言える本書は、今から百年以上も前に書かれた怪奇小説ですが、その構成や筆致は今見ても古びることはなく読めば読むほどブラム・ストーカーの凄まじい筆力を思い知らされます。年代的に多少古くささを感じるところはあるものの、翻訳が良い所為か今読んでも大きな違和感を感じることはありません。ドラキュラ伯爵の悪虐な罠、そしてそれに立ち向かうヘルシング教授と友人達と全体の構成は至ってシンプルですが、視点を変え日記調で語られる恐怖に満ちた日々、めまぐるしく舞台を移し展開する物語はけして読者を飽きさせることはありません。吸血鬼に関する小説や映画は数多ありますが、その源泉であるこの小説には吸血鬼の全てがつまっていると言っても過言では無いでしょう。(三九四文字)