読書感想文04

●ホシ計画/ショートショート作家/広済堂文庫
 星新一氏を偲んで、ショートショート出身作家が集まって作ったショートショート集。全五十四作品、二十七作家によるこの作品群ではいろいろなジャンルの方が書いているので、集まった作品はSF、ホラー、ファンタジィ、ユーモアなど幅広い物になっています。どれもショートショートらしい物語ばかりで、オチが秀逸なものや全編に不思議な雰囲気の漂うもの等どれも読ませてくれます。長いものでも精々五ページ程度の短編集ですから、いつでもどこでもパッと開いて読める手軽さはこういった作品集ならではでしょう。星新一氏の作品のオマージュ的なものも多く氏のファンならばより一層楽しめると思います。伝統的なショートショートの文法に則って書かれたものや、それまでの型を破ったような作品もありその点読者を選ばない短編集と言えるでしょう。珠玉のショートショート集というわけではありませんが、十二分に面白いので読んで損はありません。(三九三文字)

●サムライ・レンズマン/古橋秀之/徳間デュアル文庫
 『ブラックロッド』などの著作で有名な古橋秀之氏が描く、E.E.スミス氏のレンズマンシリーズの外伝。古橋氏はとても上手にドグ・スミス流レンズマンの特徴を捉えたのでしょう、原シリーズとの違和感が全然無くて驚きました。また外伝だけのユニークな設定も、矛盾がないように配慮してあり好感が持てます。しかし、単なるレンズマンの再生産には留まらず、古橋氏らしい豪快なキャラクタ、派手なアクションシーン、奇想天外な設定などが二つの銀河を縦横無尽に駆けめぐる様は痛快です。中でも今回の敵役ボスコーンのデインズは最高にイカれていて古橋節の健在を感じさせます。レンズマンシリーズのファン、古橋氏のファンどちらが読んでも楽しめることは請け合いで、両方好きな人にとっては「待っていました!」というところでしょう。イラストも、旧訳時代からのファンの方はともかくも、若い世代にとっては違和感無く物語と上手に絡まっていると言えます。(三九八文字)

●エンディミオンの覚醒(上)(下)/ダン・シモンズ/ハヤカワ文庫SF
 『ハイペリオン』から始まる一連のダン・シモンズ流バロック・オペラSFシリーズ完結編。今までの三作で、無数に張られてきた伏線を少しずつ解きほぐし、ハイペリオンワールドをより深く掘り下げていく流れはファンにはたまらない快感だ。何せ伏線の数が膨大なので、それらを一挙に解決する本書はそれに見合う分厚さがある。その為読めども読めども終わらないストーリはある種の麻薬と言えるかも知れない。折角凄まじい完成度を誇る一方で、最終的な結論が「愛は宇宙を救う」的な発想なのは正直頂けない気もする。しかしながら、そんなことは気にさせない圧倒的な物語の奔流は、パスクをテクノコアをそして虚空界を解体し読者の前に〈証明終了〉の文字を綺麗に打ち出してくれる。地球からすらも離れられない私達に広大な宇宙をひしひしと感じさせてくれる、シモンズ氏の筆致は素晴らしいとしか言いようが無い。どっぷりSFに浸かりたいならば読むべし。(三九五文字)

●眠りの牢獄/浦賀和宏/講談社ノベルズ
 少し怪奇な雰囲気を漂わせる語り口は、浦賀和宏氏の真骨頂を発揮といったところだろうか。何気ない日常から始まる物語は、徐々に狂気の色を帯びて最後に至っては読者の視点を完全に逆転さてしまう。物語としては比較的短いものの、それがかえって内容を凝縮する結果になり、結果とても密度の高いエンタテインメントになっている。あらゆる要素が伏線になっていて、書き方も上手い。浦賀氏の作品を読みこなしているファンであるからこそ、引っかかってしまうようなメタな部分のトリックもあり様々な部分で楽しませてくれている。少々、雑というか読者から見るとあっさりと流されている様に見え拍子抜けするような所もあるがそれを除けば完成度の高い作品といえよう。ミステリというよりは、サイコホラーやスリラといった趣の強い物語ではあるが、そういった雰囲気が特に嫌いという人以外は楽しめると思う。短い作品なので通勤・通学のお供にどうだろうか。(三九七文字)

●シュタイナー入門/西平直/講談社現代新書
 ルドルフ・シュタイナーといえば、教育と神秘学の分野に於いて名の通っている哲学者です。こと最近においてはシュタイナー学校などが巷間で話されることが多く名前を知っている人も多いのではないでしょうか。本書は、その哲学者シュタイナーの表の顔である教育学、裏の顔である神秘学(精神科学)の双方の面を取り扱い、彼の人智学者について何も知らない人でも労少なく理解できるようになっています。この手の書籍にありがちな、難解な専門用語やレトリックを多用した結果、入門と言いつつもさっぱり理解が進まないというようなものではなく、平易な言葉を使い要点を噛み砕いて辛抱強く説明しています。順序良く話が進むので、シュタイナーがどのような思想的道程を辿り、あの教育理論、人智学、精神科学を論じ語ったかがすんなりと知識として染みこんで来る感じがあり、とても好感の持てる内容になっています。ほんのさわりが知りたい人に特にお勧めです。(三九九文字)


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