ショートショート01

 ちょっと思い立てショートショートなんてものを書いてみました。ごく短いとは言え久方ぶりに小説なんて書きましたよ。


『愛する彼女』

 僕と彼女はとても仲が良い。つき合いも凄く長い。何時くらいから一緒にいたっけな。彼女は僕より一つ年上だけれどとても落ち着いている。
 「今日のご飯は何がいい? あなたの好きなトマトソースのパスタにしようか」
 ――うん、それがいいね。
 一緒に住んでいるから、彼女がご飯を作ってくれる。朝昼晩の三食全部手料理が食べられるなんて幸せかも。彼女は料理が好きだし上手、だから僕は何を出されても文句は言わないでちゃんと全部食べる。といっても僕の好き嫌いは全部知っているから、文句なんて出しようもない。会社の友達はみんなコンビニで買ってきたり、あまり美味しくない社員食堂ばかりだから、手製のお弁当を持ってくる僕は羨ましがられている。
 「どう? 美味しい? 今日はちょっと辛口にしてみたんだけれど」
 ――とっても美味しいよ。
 そういうと彼女はにっこり微笑む。ふふふ、やっぱり彼女の笑顔は可愛いな。

 *

 週末は彼女と二人でデート。今日は横浜で映画を見に行く。
 二人で町を歩いていると、すれ違う人が何度も振り向いたりする。彼女は小柄だけれど、楚々とした美人だしワンピースの肩からのぞく腕なんてびっくりするほど白くて綺麗だ。緑の黒髪は背中まで伸びていて、歩くたびにフワフワ上下する様はなんとも言えず清艶としてる。ほんと僕なんかには勿体ないかもしれないけれど、でも自慢の彼女。
 映画が終わってから、流行のダイニングカフェでアイスコーヒーを注文したときもウェイタはじーっと僕たちを見ていた。
 僕は時々彼女の手を握ったりしていたんだけれどそれが羨ましかったのかな。

 さっき観た映画の話をしているうちにあっという間に時間経って帰る時間になった。折角のデートなんだし、たまにはレストランで外食でもしようかって提案してみたけれど彼女は首を横に振る。
 「だってお料理するの楽しいんだもの。外食なんてしたら楽しみが半減しちゃうよ」
 もとよりそっちの方が僕も嬉しい。彼女の料理は美味しいし、料理をしている時の彼女は凄く楽しそうで、それを見ているだけで僕も幸せになれる。


 夕飯も食べて、お風呂にも入って夜の十一時。今日は出かけて疲れたし、もうお休み。一応僕にも彼女にもそれぞれ部屋があるけれど、週末は一緒に寝ることにしている。今日は彼女のベッドで寝る順番。
 別にセックスをするわけじゃないけれど、ただ抱き合っているだけでもう幸せ一杯。今日みたいに暑い日は、お互いシャツ一枚だしこうしていると彼女の鼓動が伝わってきてなんだかドキドキする。目の前にある彼女の髪はつやつやしていていい匂い。
 「おやすみ」
 彼女は上目遣いに僕を見てキスをしながら言った。僕も
 ――おやすみ。
 と言い返してキスをした。

 *

 僕たちはずっと長い間そうやって仲良く過ごしていた。僕も彼女も幸せだったし、これからもずっと続く筈だった。それなのに彼女は急に
 「私出ていくわ。もう一緒には暮らせないの。ごめんね」
 と寂しそうに言った。
 ――どうして? 僕のこと嫌いになったの?
 「ううん、そうじゃないの。ただ他に好きな人が出来ただけ」
 そんな、僕たちずっと仲良く暮らして幸せだったのになんで突然そんな事をいいだすんだろう。僕は訳が分からなくなって、涙がこぼれてきた。彼女の前でこんな顔したくないのに――。
 「本当にごめんね。でも今も好きよ。愛してるわ」
 彼女はそう言って背を向けて出て行っちゃった。一度も振り返らずに。
 ――なんで、なんで僕を置いて行っちゃうんだよ。一人にしないでよ。ねえ……姉さん。


 To Top