読書感想文02

 五冊毎にアップする予定でするんでいる読書感想文ですが、前回から結構時間が掛かってしまいました。実はここにある以外にも十五冊程度は読んだのですが、それら全て再読した本なのでなんとなく感想を書くモチベーションが得られず除外しました。再読したのは吉岡平氏のタイラーシリーズとか古橋秀之氏の〈ケイオス・ヘキサ〉シリーズです。

●クビシメロマンチスト/西尾維新/講談社ノベルス

 この本を買おうとしている諸君、一つ極めて重要且つ的確なアドバイスをしよう。本書『クビシメロマンチスト』の如何なるレビューも購入前に読んではいけない。物語を楽しみたいならば忠告に従うべきだ。皆さんはアガサ・クリスティ氏の『アクロイド殺し』というミステリをご存じだろうか。一大旋風と共に当時のミステリ界に大激論を発生させた問題作である。所謂叙述トリックの最先鋒的な作品であり先入観無しに読めば間違いなく「驚愕する」探偵小説だ。『クビシメロマンチスト』も多かれ少なかれその血が流れているのだ。であるが故に僕は冒頭にあるように「レビューを読むべからず」と吠えたのである。前書『クビキリサイクル』を読み、あの雰囲気が楽しめた人ならば大抵は本書も楽しく読むことが出来るだろう。寧ろ突飛さといった面で言えば前よりは大人しくなっているので、より幅広い読者に受け入れられる事は間違い無い。(三八五文字)


●密室に向かって撃て!/東川篤哉/光文社カッパ・ノベルス

 『密室の鍵貸します』に続く読者を喰ったような文体の推理小説。前作よりも本格らしさが増しているのは、探偵と助手という役割の人物が明確になり彼等を中心に物語を読み進めていくのが容易だからだろう。しかしながら、地の文にしろ登場人物の台詞にしろミステリを揶揄したものが多いので、オーソドックスなミステリ小説(或いは漫画)を読んだことがある人ならば失笑や苦笑或いは呵々大笑してしまうことは確実だ。衆人環境の密室を取り扱っているが、全体的に強引な部分は見えず分量が昨今の推理小説の平均と比べれば軽い事もあり淀みなくサクサクと読めるのが気持ち良い。登場人物も「こんな奴はいねぇ」という様なものではなく、寧ろ「人間臭く」て親しみを感じる。衒学的でも無く辞書のように分厚いという訳でも無いので、そういった意味ではミステリ初心者向けの小説なのかもしれない。一つ読んでみては如何だろうか。(三八三文字)


●クビツリハイスクール/西尾維新/講談社ノベルス

 前二作に次ぐ『戯言使い』シリーズの三作目となる本書。筆者曰く「テーマは無し、ただただ戯言があるのみ」とのことだが、果たして本当にテーマがあるかどうかは兎も角、戯言が渦を巻いているのは確かだ。前二作と比べればボリュームも減りまたミステリとしての側面も薄くなっている。しかしながらキャラクタは立ってきていーちゃんの暴走は見ていて飽きない。超人大集合の感は否めず今後どのように、このキャラクタ達を収束させていくかが楽しみであり不安も感じる。ミステリ度が減ったと言ってもも密室殺人、バラバラ死体、探偵による解決など推理小説としての要素は一通り揃っていると言えよう。純粋にミステリを求めて読むと期待が外れるかもしれないが、新進気鋭の作者によるキャラ小説として読むならば物語の雰囲気に良くマッチしたtake氏のイラストと相まって、極めて良質のエンタテインメントになっている。前二作を楽しく読めた人ならば迷わず買い。(三九九文字)


●笑殺魔/黒田研二/講談社ノベルス

 毎度々々、トリックに腐心した「本格」推理小説を書いている黒田研二氏による幼稚園を舞台にしたミステリ。どうやら作者初のシリーズ物になるようである。これまでの黒田氏のミステリといえば「本格ミステリ」の要素を極端なまでの高濃度で抽出した、ある意味でやりすぎな感すらあるものだった。しかしながら今回は推理小説としての濃度を本格ファンでない人にも受け入れやすい程度に下げている。今までの様に尖ったミステリでない分読み易くなっていることは確かだ。しかしながら「一般人」を極端にカリカチュアライズした登場人物やはたまた荒唐無稽な登場人物など、些かアンバランスな感が否めない。またお涙頂戴のテレビドラマめいたヒューマンドラマが鼻に付くと感じる人も多いのではないだろうか。逆に言えば「登場人物」ではなく「人間」がしっかりと描かれているので「人間が描かれていない」と言われるミステリに食傷気味の人にはお勧めだ。(三九五文字)


●第二段階レンズマン/E.E.スミス/創元SF文庫

 新訳レンズマンシリーズの三作目。グレー・レンズマンたるキニスンが主人公を務めるのは本書で最後というだけあって、今まで以上に凄まじい展開が否応無しにページをめくらせてくれる。アリシア人の《導師》による更なる修行で通常のレンズマンを超える第二段階レンズマンとなったキニスンが、ボスコーンの真の支配者を撃滅するために二つの銀河を縦横無尽に疾駆する様はスペオペの源流の面目躍如といったところだろうか。アリシア人対エッドア人という宇宙開闢以来の想像を絶する戦いも徐々に姿を現わしてきて、読者の期待は嫌がおうにも上昇させられる。ボスコーンの真なる拠点への単身潜入、銀河文明率いる《グランドフリート》とボスコニア一大艦隊との対決、よりパワーアップした超科学兵器、奇想天外な作戦などが“ドグ・スミス”の圧倒的な筆力をもって描かれているのを喜ばずにはいられない。シリーズに於ける天王山たる本書、間違いなくお勧めだ。(三九八文字)


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