第26章:伍王
闇。
ただ、闇が広がる。
光は、ない。
唐突に、闇の中に明かりが灯る。
炎ではない、明かりだ。
その明かりに、五つの影が浮かぶ。
それぞれ、人にみえる。が、人には見えない。何処かが、違う。
またもや唐突に、一つが額から光を発する。音はない。しかし、これが彼等
の会話なのだ。
〈困った事態となってしまった〉
もう一つ、別の光が闇を走る。
〈ほう。貴殿が困ったなどと言うとは……。如何なる事態なのだ?〉
〈『剣』達が我等の招きを受けたまでは良い。予定通りであった〉
最初に光を発したものが言う。
〈エリネ=ライサか……。偶然に産み落とされし、予言された『呪われた一族』
の『生まれ出づる筈のない子』。『闇』もあれを手中に収めんとしておる。現に
その手の者を、『剣』の周辺に送り込んでおるぞ。如何するや?〉
また別のものが言った。
〈問題はそれよ……『剣』と『末裔』、共に我が『眼』を逃れてしまった〉
〈……ッ〉
〈何と……〉
〈…………〉
その言葉に、他の三つは各々違った反応をした。しかし、央は未だ沈黙を守っ
たままだ。
〈『剣』は『闇』の手の者に、そして『末裔』は……判らぬ。失踪したのみや
も知れぬ〉
また別のものが、額の宝玉を輝かせる。
〈ふむ。如何に『末裔』、あの方の血を受け継ぐ者といえど、やはり人間。貴
殿の『眼』から、自力で逃れられるとは思えぬが〉
〈やはり、何者かに連れ去られたと考えるのが、妥当でしょう〉
〈と言うからには、恐らく魔法ではなく人の手で連れ去られたか……〉
〈恐らくは。魔法であらば、我が『眼』にその跡が見える。しかし、それがな
い。しかし、『末裔』は正に末裔らしく、有能なる魔法剣士。恐らくは、更に
有能なる<影>辺りの仕業ではないかと思う〉
〈ふむ……。して、他の者達は? 特に剣の持ち主だが〉
5体の中で、最もその様相が美しいものが尋ねる。
〈『闇』の手の者にはめられたようだ。しかし、他の者達と共にある。居らぬ
のは『剣』と『末裔』、『末裔』と親しき者、そして『アメリア』だ〉
〈チィ。『闇』め。我等が狙いに気付きおったか……?〉
〈しかし『アメリア』とダナエが連れさらわれたのなら、貴方様の力にて何処
へと飛んだか判る筈。違いますか?〉
一見して簡素という印象を受けるものが問う。
〈……。それがよく解らんのだ。奴め、レクェサまでしか飛ばなんだ〉
〈はて……? 『闇』の手の者ならば、レーヴァテインまで行く筈……。醍蛇
よ、判るか?〉
しばらく間を置いて、
〈……恐らくは、我等を誘き出す罠かと〉
〈だが、我等が出るワケにはいかぬ……いや、出れぬな〉
苦笑するように言う。
〈どうやら、『闇』といえどレクェサにはぐれ狼のおる事までは気付いておら
ぬ様子。ヤツに色々とやらせる事としようか〉
〈『アメリア』とダナエが居るならば、どうとでもなるがの〉
〈さて、『末裔』だが……こちらの方が問題ではあるな〉
〈ふむ。今現在、我等の手元には何等手掛かりが無い。これでは捜しようがな
いのぉ〉
〈単なる偶発的なアクシデントとも思えません……。『剣』と引き離している
時点で、『闇』の仕業ではあり得ない……〉
〈成る程。そう言えば剣に取り憑きし意志、この上もなく残忍と聞く。もしか
すると血を欲し、再び争いを求めた故かも知れぬな……〉
〈むう、では如何するや?〉
問いかけ。
だがそれには、今まで沈黙していた央が応えた。
〈我等は『剣』のみを押さえればよい。余計な手を広げるは愚策。しかし、
『闇』に『末裔』を押さえられてはならぬ。ユノー=オルベリウスとか言った
か、『末裔』と親しき者の下へ狼を一匹遣わすのだ。それだけで十分であろう〉
〈では央よ、剣に近づいた塔の若造、これは如何致しましょうや?〉
〈愚者に構っていられる余裕はない。狼を遣わし、押さえよ〉
〈ははっ〉
中央のものが再び沈黙するとともに、他も又、沈黙した。
そして、明かりが消える。
会議は終わった。
結論が出たのだ。
ここは極寒の地、サン・ギュイン。
セレンの対岸、外れ島サン・ギュイン。
彼等伍王衆が地、伝説の生きし地也……。
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水上 利彦
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