第15章:エリネ光る
ミケロ「ほぉ。いやだというのか。ならば少々荒っぽい事をしなければなりません
なぁ」
ミケロ「カーム!やっておしまいなさい!」
カーム「………」
カームと呼ばれたもう1人の魔術士は言葉こそ発しなかったが、目を閉じ、魔法
を発動させるために深い精神統一状態に入ったようである。動きこそはしなかった
が、邪気が強まっていく様子は周囲を恐怖させるには充分であった。ミケロはカー
ムが襲われる事の無いように、目を光らせていた。
タップ「くっ。何か手は無いのか………」
キリ「今はまだ無理だ。魔法はそう立て続けに発動するものではない。チャンスが
あるとすれば、魔法が出た直後が狙い目なのだが………問題は、何の魔法が出てく
るのか、だ。」
タップとキリが小声で話している。弓を構えたフィラントの額には早くも汗がに
じみでてきている。それほどあたりの緊張感はすさまじいものであった。
イオン(くっ、この剣をどうしても使わねばならぬか………)
剣を使わないで済ませる方法をなんとかして考えようとするのだが、気ばかりはや
ってしまってどうしようもない。剣のツカに手を掛けていつでも抜ける所まできて
いるのだが、どうにも踏ん切りがつかないでいる。
突然、カームの目が開き、杖を持つ手が前に突き出された。と同時に杖の先から
人間の体1人を包む事が出来るほどの大きさの漆黒の球が出現した。その球はまっ
すぐエリネのいる方向へ飛んで行く。
球が出現すると同時に、ユノーとキリ、タップはカームに向かって走り出し、ミ
ケロはさせじと杖を構えた。イオン、メロゥスはとりあえずエリネを守ろうと動い
た。
また、フィラントはカームに向かって弓矢を放った。しかし、矢はカームに当た
る直前で横に逸れ、地面に付き刺さった。ミケロがカームに風の守りの術を施して
いたらしい。前に小声でぶつぶつ言っていたのがそれだったのだろう。
そして、漆黒の球がエリネの目の前に来た時、
エリネ「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
エリネの絶叫があたりに響き渡り、同時に強烈な白い光が周囲を包んだ。神官で
あるメロゥスは、かろうじてエリネ自身が強い光を発した事を認めたが、残りの人
には、突然周囲がまぶしくなった程度しか分からなかっただろう。まぶしい光に目
はほとんど見えない。
ミケロ「くっ………ぐぉぉっ、何だ、この光は………」
元盗賊であるタップは、暗闇などで目の見えない所での動きにたけており、カーム
のいるあたりに見当をつけて、蹴りを入れた。何かに当たり、手応えはあった。
カーム「ぐぉぉぉぉぉ………」
カームが狂ったように大声をあげているのが聞こえる。どうやら当たったらしい。
だが、直後にもう一度同じ場所に蹴りをいれてみたが空を切った。どうやら瞬間移
動の魔法でも使われてしまったようた。
ミケロ「ぐっ、仕方がない。今回は引いてやる。しかし次は無事でいられると思う
なよ………」
まだ視界が元にもどらないうちに、ミケロも瞬間移動の魔法で退却したようだ。
ユノー「奴の気配が消えたぞ。もう大丈夫だろう。みんな、大丈夫か?」
タップ「私は大丈夫だ。カームとかいうやつに蹴りをおみまいしたが、逃げられた
ようだな。」
キリ「タップったらよく出来たわね。」
フィラント「僕は大丈夫だよ。目が見えるようになるにはもうちょっと時間が掛か
るけど。」
メロゥス「私も大丈夫です。今の光、どうもエリネが出したものらしい」
イオン「そ、そうなのか?………そういや、エリネの声がしないね。」
タップ「ま、まさか連れ去られたのでは………」
ユノー「いや、エリネの気配はある。連れ去られた訳では無いようだ。」
タップ「そうか………」
あたりに安堵の空気が流れる。
しばらくして、視界がだんだん戻ってきた。一番早く立ち直ったのはメロゥスで
ある。エリネが前と同じ場所でうつぶせに倒れているのを見つけて、急いで駆け寄
る。メロゥスがエリネの体を起こし、癒しの魔法を掛けている間に、残りの皆が気
付いて集まってきた。
メロゥス「大丈夫です。気を失っているだけです。しばらく寝かしつけておけばい
いでしょう。」
ユノー「何にせよ、無事で何よりだ。」
サイバラ
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