天羅万象掛け合い所・暴走編番外

特別の相棒

〜トラブルスイーパー・咲也&刃夜〜

市立煌輝学園にはいわゆる「名物生徒」が多くいる。
スポーツでインターハイを期待されるもの。
たぐいまれなる情報収集能力で情報屋をやるもの。
広い人脈と冴えた頭脳のため「敵に回してはいけない」といわれるもの。
尋常ならざる物言いで恋心をぼろぼろに粉砕する少女。

小野花 咲也(コノハナ・サクヤ)と逆神 刃夜(サクガミ・ハヤ)のコンビもそういった「名物生徒」に含まれている。

何故彼らが名物生徒なのか。それは、彼らが自称「トラブル・スイーパー」だからだ。
「失せものから喧嘩まで、あらゆるトラブル解決いたします」
このキャッチフレーズの元、彼らは今日も学園を駆け回る。

時は四月も終わり頃。ゴールデンウィークを控えて、そろそろ生徒達の心がうわのそらになりがちな時期。
その日の授業も終わり、まだ部活の決まっていない一年生や元々部活に入っていない生徒達が帰る中、とある公園の入り口で1人の少女が学校近くの入り口で立っていた。
ショートカットに縁なし眼鏡。少し視線は鋭くボーイッシュと言うよりは中性的な印象を受ける。
彼女が件の片割れ、逆神刃夜だ。
キィ!
ブレーキ音をたてて、一台のバイクが刃夜の前に止まる。
「お疲れ。首尾はどうだった?」
刃夜の声を聞きながら、そのバイクのライダーはヘルメットをとる。
ふわり、とヘルメットから解き放たれたショート目の髪が舞う。
ヘルメットの下からは「可愛らしい」と言う形容詞がぴったりな少女の顔。
だが、発せられた言葉は顔に全くふさわしくない言葉遣いだった。
「上々!ヘルメットをとってにぃっこり微笑んでやったら泡食って走っていったぜ。」
彼女、いや彼こそがもう1人のトラブルスイーパー、小野花咲也だ。
この2人の外見の奇妙さも、2人の知名度を上げる要因であることは間違いない。
「そうか。これでもう2度とストーカーなどと言う馬鹿なまねはしないだろう。」
「依頼終了、だな。」
「そういうことだ。」
2人の顔に笑みが浮かぶ。
今回の依頼はストーカー退治。刃夜の調査の結果、撃退方法として「逆ストーキング」が選ばれた。
刃夜曰く、「実際の探偵もやっている効果的な方法」だそうだ。
一週間咲也がぴったり張り付いた上で、相手の学校前で待ち伏せてやったのである。
成果は十分出たと言えるであろう。
また、トラブルスイーパーとしての2人の有名もあがるというものだ。

この2人は幼なじみである。
いつから、とはわからないが一緒にいることが多かった。
確か、父子家庭の上父がめったに家におらずほとんど妹と2人暮らし状態の刃夜に同情した咲也が声をかけたのがきっかけだったように思う。
高校に入ってから、親から小遣いをもらっていない刃夜のためにトラブルスイーパーをはじめた。
卓抜した観察眼を持つ刃夜と見かけによらず腕っ節が強くバイクという機動性を持つ咲也。きっちりとした役割分担があり、トラブルシューター業もずいぶんうまくいっている。

所変わって咲也の家のガレージ。
咲也が「最近エンジンの掛かりが悪い」と言ったため刃夜に見てもらってるのだ。
刃夜はこういった機械いじりも得意だ。いつも、と言うわけではないがだいたい簡易工具セット、通称「七つ道具」を持ち歩いている。
「しっかしさぁ、何で俺ってこう女に見間違えられるわけ?」
今更ながらの疑問を咲也が吐く。
咲也の下駄箱に男からのラブレターが入っているのはよくある話。
今回の依頼も「一見女の子にしか見えない」咲也の外見をうまく利用したのは言うまでもない。
「はいはい、そう見て欲しかったらせめて着替えてきてくれ。頼む。」
「へいへい・・・・ってライダースーツのどこがまずい?」
「鏡見るか?」
刃夜が七つ道具の中から四角い鏡を取り出す。この鏡は決しておしゃれのためなどではなく、覗きにくい場所を見るために使うものだ。
「はっはっは。こりゃ髪切らんとまずいな。」
鏡の中の自分を見て苦笑する咲也。
「だから、ノーマルと思って欲しかったら普段の格好にももう少し気をつけてくれ。」
刃夜は咲也の苦笑を受けてため息をもらす。
「まったく・・・これで、胸パッド入れたら知らない人間がみたら十分女性だな。」
「やれと言われてもそれだけは絶対にやらねぇ。」
苦笑しながらの刃夜の言葉に憮然とした顔で応える咲也。
「期待していない。そんなことをやるのは咲也じゃないからな。」
今度は刃夜が笑みを浮かべながら咲也の言葉に応えた。
「よっと、終わったぞ。プラグに煤がかぶってただけだ。」
「あんがとさん。これから馴らしもかねてひとっ走り行くけど、来るか?」
「ああ。依頼料も出たことだし、帰りにどこかで食事でもするか?」
「いいね。」
そう言いながら、咲也はすでに刃夜専用となっているヘルメットを渡した。

咲也は少し走って、いったんバイクを街を見渡せる丘の上に止めた。
「ほら。」
近くの自販機で、刃夜がジュースを買ってきた。
「サンクス。」
受け取って、街を眺めながらジュースを飲む咲也。
刃夜はそんな咲也を眺めて、呟く。
「神様は不公平なものだな。」
「不公平?何がだ?」
「咲也はそんなに奇麗なのに、私はどんな格好をしても男に見えるらしいからな。それを.....痛感していただけさ。」
苦笑混じりの刃夜の独白。
「俺にとっちゃ悩みの種なんだがね。ま、自分らしく。それでOKなんじゃねぇの?」
「持っていないから憧れるんだ。それに、私のとって、おまえは....『特別』だしな。」
軽く、刃夜が微笑んだ。
「特別?・・・何が特別なんだ?」
「.......バカ........ この世に二人といない相棒だろう?」
苦笑の後、もう一度微笑む刃夜。
「ははははは。そうだったな。これからもよろしく頼むぜ、相棒。」
刃夜の言葉に咲也は軽くウィンクをして応える。
「もちろんさ。相棒。」
刃夜もウィンクで返す。
「さてと、いい加減行かないとどこで食うにしてもこんじまうなぁ。」
「そうだな、そろそろ行くか?」
「ああ。」
2人は再びバイクにまたがり、走り出す。
(相棒、か。今は....これでもいいか....)
微笑んで、刃夜は咲也の背を抱く腕に少しだけ、力を込めた。

Fin

あと(あ)がき

やってしまいました。天羅万象掛け合い所・暴走編のさらに番外編です(^^;
しかも冗談で始まったキャラチャを元に作っちゃいました(^^;
刃夜のPL、夜光さんごめんなさい(^^;(いちおー許可は取ったけどね)
最近めっきりラブコメづいてるなぁ、私(^^;


ご意見ご感想はRWAKまでどうぞ


本屋「霧弦堂」へ戻る