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第1話

セリオが来た日

 とてとてとてとて・・・・・・
 人ごみを走っていく、小さな女の子。
 いや、あの耳飾は・・・・・違う、センサーだ。
 ああ、あれは来栖川のメイドロボだ。えっと、HM−12型のマルチ、だっけ?
 ・・・・・あ、こけた。
 あ〜あ、泣きそうな顔してるよ。あんな顔するなんて、廉価版とはいえ結構高性能に作ってあるんだなぁ。
 彼女は、泣きそうな顔のまま立ち上がると再び走り出した・・・・・

 この時、僕は大きな考え違いをしていたこと、そしてもう一度彼女に出会うことなんて考えもしなかった。

 僕の名前は梁瀬 和磨。高校一年生。
 僕は、この春から高校進学を機に親元を離れて、一人暮しをはじめた。
 理由は・・・・・・自分の足で立ってみたかったから。
 親父は代議士で、金持ち。小さい頃から僕の望むものは何でも与えられてきた。
 早くに母さんをなくして親父は再婚しなかったから、母さんはいなかったけどその分親父ががんばってくれた、と思う。
 で、僕も親父の期待にこたえようとしてきたんだけど・・・・・・
 なにか物足りなかった。
 で、それを見つけるために・・・・・親元を離れる決意をしたんだ。
 でも、しっかり生活費とか学費とかは親父が面倒見てくれてるんだから、見事に片手落ちだよね。

 あの後マンションへ帰ってしばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。
「すみません、宅急便でーす。」
「はーい。」
 ドアを開けると、カートにほぼ等身大の大きな荷物を引いた運送屋のお兄さんがいた。
「梁瀬 和磨さんですね。ここに判子をお願いします。」
 差出人を確認して、判を押す。
 差出人は・・・・・親父。
 一体何を送りつけてきたんだ?

 包装を破って箱を開けると、中から出てきたのは・・・・・メイドロボット。
 それもHM−13セリオ・・・・・・現行の代物の中で最高級品。
 一緒に親父の手紙も入っていた。
「一人暮しでは身の回りの整理も大変だろう。これを使え」だってさ。
 これ、一人暮しはじめた意味が何にもないじゃん。
 しかも、超高級品。
 過保護な気がするのは僕の気のせい?
 でも、ちゃっかり取説読みながら起動しようとしている僕って一体・・・・

「HM−13起動・・・・・・・マスター登録お願いします。」
「僕の名前は・・・・・梁瀬 和磨。」
「和磨様ですね。私のことは、なんと呼ばれますか?」
「・・・・・セリオ、でいいかな?」
「はい、かしこまりました。」
 ・・・・・・・我ながら安直。
 メイドロボの商品名をそのまま使ってるユーザーって、何人ぐらいいるのかな?
 ・・・・かなり多そう。

 それから、僕とセリオとの生活が始まった。

 なんて言っても、やってもらってるのはお手伝いさんと何ら変わりない。
 元々家にお手伝いさんがいたから、こういう生活にそんなに違和感感じなかったし。
 セリオは一般のものより高い学習機能とサテライトサービスのおかげで、下手なお手伝いさんより仕事は上手くこなしてくれる。
 ちょっと無愛想なのがたまに傷、かな?

 どう見ても人と変わらないセリオの外見も手伝ってか、2、3日もすると僕はセリオに対して普通の人と接するのと変わらないように接していた。
 僕の食事の好みを教えたり、学校での出来事をセリオに話したり。
 たわいもない雑談で、セリオはそれを黙って聞いてるだけだったけど。
 でも、僕はセリオに話すことをやめなかった。
 当たり前のことなんだけど、「代議士の息子」って色眼鏡で僕を見るようなことはセリオにはなかった。
 家にいたお手伝いさんには、それがあったから。
 ・・・・だから・・・・・僕はセリオにちょっとだけ母さんを見ていたのかもしれない。

 セリオが家に来て2週間ぐらいたったある日。
 夕食を食べているとセリオが聞いてきた。
「お味はどうですか?」
「うん、おいしいよ。すっごくよく出来てる♪」
「ありがとうございます。」
 そう言ってセリオはちょっとだけはにかんだ笑顔を見せた。
 セリオの笑顔を見るのは初めてだった。


次回予告

「『フラグシップモデルに重大な欠陥?!HM−13が次々に謎の機能停止!』って、まさかね・・・・」

「初期不良だとすると、多くの場合は製品交換となります。」
「絶対に嫌だ。それは今のセリオがいなくなることだろ?僕は今のセリオがいいんだ。」
「・・・・・・・ありがとうございます。」

「ああ、自己紹介が遅れましたね。私、こういうものです。」
「『来栖川重工第7研究室HM開発課主任 長瀬源五郎』?そんな人が、なぜ僕に?」

次回・「セリオが変わる日


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