「すまない。君にはいろいろと迷惑をかけてしまったようだ。その上こんなことを頼まなければいけない。」
「かまわないよ。こっちもそろそろこの星を離れるつもりだったから。
それよりもいいのか? ラフィングドッグのメンテナンス用のパーツまでもらっちゃって。
一応軍の機密だろう?」
「君には大変世話になったからね。
易々と複製できる類の代物ではないし、それに……もうすぐ機密ではなくなる。」
「!! それじゃあ!」
「ああ、もうすぐ奴をしとめたいと思う。
そのときには、また頼む。」
「わかった。」
「青の騎士ベルゼルガ物語外伝」アフターストーリー
−宿業−
「隊長? どうしたんですか?」
戦地へと移動するトレーラーの中でノイスがシオンに聞いてきた。
「……ん? すまない、居眠りしてしまったらしい。」
「もうすぐ作戦領域ですよ? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ。目はさめた。心配はいらない。」
「……本当に大丈夫なんでしょうねぇ?」
「……ああ。」
−何で今ごろあんな夢を−
−今日、0405に20Km離れた旧市街で哨戒任務中の第7AT小隊が消息を絶った。
君達には第7AT小隊の安否を確かめるとともに敵勢力がいればそれを迎撃して欲しい。−
それが黒の一番に下った任務だった。
シオンは旧市街につくと小隊ごとにATを展開させ、捜索に移った。
「ノイス!そっちはどうだ!」
「熱源にもレーダーはにも反応はありません!」
「……他の小隊からも発見の報告はない。絶望的か?
しかし、敵の姿もないとは……」
予想外の抵抗に撤退せざるを得なかったのだろうか?
それならば、第7中隊にも生き残りがいてもおかしくなさそうだが……
「このビルを抜けると公園だ。
ノイス!チャック!おまえらは右から回れ。俺は左から行く。」
「了解!」
二手に分かれてゆっくりとビルを迂回する。
こうまで静かだとどうしてもATの駆動音が響いてしまうが、それは向こうとて同じ事だ。
「ノイス、チャック、配置につきました。」
「よし……
GO!」
3機のATがいっせいに公園に踊り出る。
「・・・これは?!」
そこで見たものは大破したATの群れだった。
シオンは状況を報告した後で1機を警戒にまわしてノイスと状況を見ていた。
「こいつはマシンガンの掃射らしいな。こいつは…引き抜いたような跡を見るからにパイルバンカーか。」
「こっちもパイルバンカーでやられてますね。」
「どうやら敵さんの武装はこの2つらしいな。
相手にもベルゼルガがいるのか?」
「そうかもしれませんね。…ここからローラーダッシュの跡があります。
マシンガンを掃射しながらダッシュで接敵してパイルバンカーを二発ってところでしょうか。」
カツゥン。
「ん? …そこに隠れてる奴、手を頭の後ろに回して出てこい。
俺達を倒してもATの掃射が待っていることを忘れるなよ。」
物音がした方に銃−遮蔽を取られてもぶち抜けるアーママグナムだ−を向けながらシオンがいった。
それをバックアップするようにノイスも銃を向ける。
木陰からおずおずと人影が出てくる。
「!? ……なんで、こんなところに?」
出てきたのは、まだ年端も行かぬ少女だったのだ。
「それじゃあ、敵じゃないんですか?」
「うん、そうだよ。」
「よかった。
……てっきりあの蒼いATの仲間かと思ったんです。」
シオンたちは少女を連れて一旦帰還していた。
少女が敵を目撃しているかもしれないからだ。
最初は怯えていた少女だが、年の近いノイスの必死の説得でなんとか誤解は解けたようだった。
「蒼いAT? どんなの?」
「えっと、……隊長さんのATに似てるんです、駆動音が特に。」
そばで聞いていたシオンの顔色が変わった。
「駆動音が似てるのか?
その蒼いAT、どんな形だった?」
「えっと……なにか、書くものはありますか?」
すかさずシオンが紙とボールペンを渡す。
必死に記憶を手繰り寄せながら、少女がその蒼いATを書く。
「!!
これは……完成していたのか。」
結局小隊の残骸と少女以外には何も見つけられず、黒の一番は帰還せざるを得なかった。
ただひとつの収穫は少女が見たという蒼いATのことだけ。
何か知っているかのようなシオンは黙ったままだった。
「……では、敵が新型機のテストのために小隊を襲ったのは間違いないわけだな。」
「おそらく。」
「それとな、あの少女のことだが。
難民の一部が旧市街にいたという話は聞いていた。だが……」
「ええ、彼女も言っていました。戦火の拡大に追われてどこか他の町に移動したようですね。
彼女はおそらくはぐれてしまったんでしょう。かわいそうですが、こういう時代には……」
「……よくある話だ。彼女はどうするね?
君の隊で面倒を見るとか?」
「まさか。ちょうど知り合いがこの街にいるのでそこで働いてもらいますよ。」
「それはよかった。」
「……と、言うわけなんだ。面倒見てもらえないかな?」
ストラックスでシオンがレイアに頭を下げている。
隣にはこぎれいになった少女が申し訳なさそうに立っていた。
あの後シャワーを浴びて、エリカの服から着れそうな物を借りてきたのだ。
「しょうがないわね。彼女の賃金が出るくらい稼がせてよね。
ところで、名前は?」
ん〜、とシオンが考え込む。
「……聞いてなかった。」
「またかぁ? 抜けすぎだぞ、隊長!」
即座にコールの突っ込みが入る。
「何でこんなのが隊長をやってるのかしら?
えっと、名前は?」
苦笑交じりに、今度は少女にレイアが聞く。
「あ。エレナ、です。よろしくお願いします。」
「え…?」
レイアとシオンが驚いた。
「? …どうかしたんですか?」
いぶかしげにエレナが聞いた。
「いや、昔の知り合いにそういう名前の子がいたんでね。
最近よく昔の知り合いとかが出てくるよなぁ。」
「ほんと、そうだわ。」
二人そろって苦笑している。
エレナはそんな様子を見て「そんなものかな?」と思った。
「さてと、今日はエレナの歓迎会って事で。
飲もうか?」
『おおー!』
シオンの提案に隊員全部が盛り上がる。
「ちゃんと代金は払ってね。」
「うわ、きつ! こういうめでたい日ぐらいいいんじゃない?」
「何言ってるの。エレナの給料にも関わってくる問題なんですからね。」
「……そでした。」
「隊長、弱ぇぞ!」という声が笑いとともに聞こえてきた。
宴が盛り上がってきた頃、シオンはそっとレイアのところへ行く。
「……これも業かな?」
「そうね。そうかもしれないわね。
運命とか、そういったものを信じる気はないけど。」
「……そうだよな。エレナは、彼女じゃない。」
「……そうよ。」
しかし、俺の過去がこの町に集まりつつあるのは事実。
そうシオンは考えていた。
(……ミーマ。あんたもここにいるのか?)
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