てきすと倉庫

◆夢幻奇談

登場人物

プロローグ

 時は黄昏、逢魔が刻。
 窓の外に夕闇がせまり、街灯がぽつり、ぽつりと光り始めた。窓からみえる景色の中に、人の気配はない。

 仄暗い部屋にはくすんだ銀の蜀台が無数におかれ、それぞれに細い蝋燭が備え付けられている。わたしは咲久良がそのひとつひとつに火を灯しながら友人たちとたわいもない会話をしているのを、ぼんやりと眺めていた。

 外はゆっくりと闇に包まれ、かすかに木々のざわめきが聞こえるのみ。
 こんな夜、綺子はいつも咲久良の"物語"をせがむ。きっと今夜も"物語"が紡がれるに違いない─。

 「ねぇ咲久良、また物語をきかせて?」
 綺子がかすかに微笑みながら、夢みるような眼差しを咲久良にむけた。

 「俺は、咲久良の話は気味が悪くて…あまり、ききたくないな」
 美夕希は眉をひそめ、しきりに腕をこすっている。
 だが、部屋を出ていく様子はない。

 「まぁ…どうしましょう?語ると語らぬとでは正反対ではありませんか。わたくしはどうしたらよいのでしょう、貴哉さん?」
 咲久良には少しも困った様子はなく、楽しげにわたしへと話を振る。

 咲久良は話をせがまれた時、いつもわたしにどうしたらよいか問いかけてくる。しかしわたしがなんと答えようと、一度たりとて物語るのを断ったことはない。ならば素直に「ききたい」と答えるのがよいだろう。

 わたしは咲久良の書棚から1冊の本─日記帳のようだが、その用途では使っていない─を取り出して小机に向かい、引出しにある万年筆をさがしながら言った。

 「気の進むままに。…わたしは咲久良さんの話は好きですよ」

第1話:黄昏の話

 ある日、目が覚めるとそこは黄昏に包まれていました。

 いえ、夕方起きるつもりでいたわけではありません。
 朝起きるつもりで、起きて。起きたら夕方のような様子だったのです。

 まさか寝過ごしたのかしら?と思い、時計を確認しましたが、やはり朝。
 でも外はこれから暗くなってゆく雰囲気で。

 えぇこれから明るくなる、という感じではなかったです。
 夕暮れの光が消えたばかり、という様子で、遠くの雲がほんのり明るくみえました。

 もちろん「なんだかおかしいな」と思いました。
 思いましたが、その日は金曜日。

 出勤しない、というわけにもいかないので支度をして出かけたのです。

 ***

 わたしは外に出ると、いつものコンビニエンスストアへむかいました。
 朝ごはんを買って、電車の中で食べるようにしているのです。

 朝はいつも人でごった返しているコンビニが、ひっそりと静まり返っていました。
 たくさん並んでいるはずのお弁当やパンもほとんどありません。
 仕方ないので残っていたパンと、紙パックの緑茶を持ってレジへ向かいました。

 レジにはいつもと同じ店員がいて。いつもと同じようにレジをうってもらいました。
 「210円になります」といわれてお金を取り出し、店員に渡そうとした瞬間、目が回る感じがして…

 ***

 …そこでわたしは目が覚めました。
 えぇ、もちろんわたしのベッドで。

 眠っていたはずなのに呼吸はひどく乱れ、じっとりと油汗をかいていました。
 なぜだかひどく怖い思いをしたような気分だったので、しばらく目を閉じていて…やっと呼吸が落ち着いてきた時、妙なことに気づいたのです。

 そう「普段なら目を閉じていてもまぶしい日差しが、まったく感じられない」ということに。

 まさか、また夕方…いや、そんなことはないはずだ、と自分にいいきかせて目をあけました。
 しかし、予感は的中してしまったのです。

 目を開けると、そこはやはり黄昏に包まれたわたしの部屋だったのです…。

 ***

 わたしは、仕方なく起きだして夢と同じように支度をしました。
 そしてやはり夢と同じようにいつものコンビニへ…。

 夢と、まったく同じ状況。

 お弁当やおにぎりがないこと。
 コンビニにひとけがないこと。
 そして手にとったのはパンと紙パックの緑茶。

 すべて夢を模倣するかのように同じ行動をとってしまっていました。
 そして体が動くままにレジへむかい、店員にお金を渡そうとしたとき。

 わたしは直感したのです…「この手に触れられたら、わたしも死ぬ」と。

 とっさに持っていた財布を投げつけ、あとずさりしました。
 店員はあっけにとられた表情になり、次の瞬間、ばちばちと音をたてながら火をふいたのです…。

 ぶすぶすと肉のこげるにおいがたちこめ、店員の口が「た す け て」と動いたように見えました。
 …店員は、そのままレジにたおれこみ、わたしはやっと動き始めたスプリンクラーの水にうたれ、ぼうぜんとしていました。

 そうしてどのくらいの時間がたったでしょうか。やがて消防車、救急車とパトカーがけたたましく音をならしながらやってきました……

 わたしは初めての事情聴取を受け、倒れそうになりながら帰宅したのです。

 ***

 倒れそうになったのは、事情聴取のためではありませんでした。

 わたしは思い出したのです、夢の続きを。
 それは身も凍るような恐ろしい出来事でした。

 あの時…わたしは、お金を渡そうとして店員の手に触れたのです。
 次の瞬間、わたしは店員と同じように発火しました。
 わたし自身の肉が焼け、焦げ…わたしは激しい苦痛に身を震わせながら、レジへと倒れこんだのです。

 「た す け て」といいながら……

第2話:蝸牛の話

 わたしは会社帰りの道でなにかを踏みました。
 「ぱきり」という軽い音が足から伝わってきたので、踏んだことに気が付いたのです。

 なにを踏んだのかはわかりません。
 その日は業務が非常に忙しくて帰路についたのは真夜中近くでした。
 街灯もほとんどない道でのことだったので、確認できなかったのです。

 その日から、奇妙なことが起こりはじめました。

 ***

 終電1本前の電車で帰宅したわたしは、まずお風呂に入ろうとしました。
 わたしは普段、風呂場を洗ってから寝るようにしています。

 ですので洗う手間はなく、お湯をためるだけで入れるので、熱めのお湯につかり今日の疲れを癒そうと思ったのです。

 。
 …疲れた体をひきずって浴室の扉を開けると、そこには生臭い腐臭のようなものがたちこめていました。

 昨夜も今朝トイレを使ったときも、こんなにおいはしていなかった。
 トイレもきちんと流れているし、配水管が詰まっている様子もない。

 …ねずみか何かまぎれこんで、死んで、腐ってしまっているのだろうか?
 そう思って風呂場をチェックしようと足を踏み入れたとき。

 はだしの足の裏にぬるりとした感触とじゃりっという感覚がしました。

 あわてて足の裏を見ると、透明な粘液にまじってこまかな石と砂、そして肌色をした薄い…何かの殻のようなものがついていました。
 そしてその粘液から「あの臭い」がしていたのです。

 ***

 わたしはあわててそれを洗い流しました。換気扇をつけ、他についているところがないかも入念にチェックして、少しでも怪しいところがあれば熱いお湯で洗い、消毒したのです。

 換気扇が勢いよくまわりはじめると、いくぶん異臭は薄れてきました。

 結局わたしは風呂に入る気力が尽きてしまい、ざっとシャワーを浴びただけで寝ることにしました…。

 ***

 翌日、寝不足の体を引きずり起こし顔を洗おうと浴室へ入りました。

 扉を開けた瞬間、またあの異臭が部屋にたちこめたのです。

 昨夜あんなに掃除も消毒もしたのに、どうしてまたこんな臭いがしているのか、わたしにはわかりませんでした。ただもう気持ち悪くて…浴室の扉を閉めて換気扇をまわし、部屋の換気扇もまわして仕事に出かけたのです。

 ***

 それからは毎日浴室から異臭がするようになりました。
 調べてみると、かならずあの粘液のようなものが床や壁についているのです。

 なにかが住み着いてしまったのかと思い、何度か引越しもしてみました。
 どこに越しても1日目は大丈夫だったのです。ですが2日目からはやはり浴室に異臭が充満するようになり…そしてわたしは自覚したのです。

 「これ」は「部屋に住み着いている」のではなく、「わたしについてきている」のだと。

 ***

 「わたしについてきている」と気づいた時から、わたしの周囲になにかの気配がまとわりつくようになりました。

 最初は気配だけでした。しかし徐々にですが、わたしのそばにあったものなどに粘液が…いえ、粘液をだしながら「なにか」が這っているような跡が、見受けられるようになってきたのです。

 這い跡は、日をおうごとに多くなっていきました。
 ふき取って消毒しても、わたしのそばにあるとすぐに這い跡がつくようになって…えぇ、いまでもずっとなんです。…ほら

 彼女が指差した先には、なにかが這ったような粘液の跡が、残っていた。

第3話:白い牡丹の話

 庭に、一輪の牡丹が咲いている。

 深い深い、とても深い朱(あか)色をした大輪の牡丹が。

 この花がもともと白い色をしていたなんて、だれも信じてはくれないだろう……。

 ***

 最初の生贄は、わたしのすぐ上の姉だった。

 彼女の18歳の誕生日。彼女は、庭に植えられていた牡丹の上に倒れていた。
 季節は冬。牡丹は雪よけに細い葦で囲まれていた。

 その葦に、首を預ける形で倒れていたのである。

 牡丹は、血塗れになっていた。

 ***

 血塗れになった牡丹を見て、みな息を呑んだ。
 …もちろん、わたしも。

 みなはその凄惨な情景に怖れを感じたのであろうが、わたしは違った。
 わたしが息を呑んだのは、そのあまりに美しい牡丹の色に驚いたからだったのだ。

 そして、わたしは牡丹の虜になった。
 もう1度あの朱い花が見たくて、生贄を捧げはじめたのだ。

 最初のうちはねずみや鳩。小動物ではあの色は再現できなかった。

 次はもう少し大きな犬や猫。小動物よりは近くなったような気がしたが、やはり違う。

 そして最終的に、あの色は「人間でなければでない」ということに気が付き…「人間を生贄にすること」を思いついた。しかし、さすがに人間を手にかけるのは気が引けたので、しかたなく犬や猫を生贄にし続けたのだった。

 ***

 3年の月日がたった。

 牡丹は動物の血を与えるにつれ、だんだんと朱くなっていった。

 血がかかっているから、という一時的なものではなく、もとからその色だったかのように。

 牡丹朱くなっていくにつれ、わたしは「あの朱い花がみたい」と強く思うようになった。中途半端な朱では、がまんできなくなったのだ。

 そしてわたしは人間の血を、牡丹に捧げることにしたのだった。

 ***

 最初は自分の腕を傷つけて、あふれ出る血液を与えていた。
 わたしの血は暗い朱だった。血が流れ出るにつれてむせ返るような鉄錆の臭いが周囲にたちこめていく…。

 牡丹は、動物の血を与えていたときとは明らかに違う速さで朱く染まっていった。  しかしその朱はわたしがみたい朱とは違う、暗い薄汚い朱だった…。恐らく、わたしの血の色にそまってしまったのだろう。

 そしてわたしは、人間を生贄にするようになった。

 人の首を、この手で掻き切って牡丹に血を捧げる。それは奇妙にゆっくりとした時間だった。

 わたしは流れ出る血液をじっとみていた。そしてその中に美しい朱とどす黒い赤とが混じっていることに気がつき、なんとか美しい朱だけを牡丹に捧げられないものかと考えた。

 人の体の構造を勉強し…生贄を眠らせてから動脈だけを切ることを思いついた。

 そして、わたしは妹に薬を使った。
 医学部に通う友人からもらったクロロフォルムを。

 ***

 生贄に妹を選んだのは、最初の生贄だった姉と血のつながっているこの娘なら、牡丹もきっと美しい朱色に染まるだろうと考えてのことだった。

 そして、牡丹の前まで抱いていき、妹を抱きかかえたまま頚動脈に薄いナイフを差し込んだ。ゆっくりとナイフを抜くと、深い朱色をした鮮血が零れ落ちていき、牡丹が、染まっていく様子が見えた。

 だんだんと白くなっていく妹の体と、どんどん朱くなってゆく牡丹の花の対比がとても美しく、わたしはその様子を恍惚として見ていた。

 そして妹の体が真っ白く冷たくなり血が流れなくなったころ、牡丹は全ての朱を吸い込んで、深い深い朱になった。

 わたしが求めていた、朱色。

 これさえ見ていられるのなら、どんな罪も背負おうと思う…そんな朱色の牡丹を、わたしはやっと手に入れたのだった。

 ***

 あれから50年の月日がたった。
 幸いかどうかはわからないが、現在までわたしの罪は暴かれないままだ。

 朱色の牡丹はいまもなお、わたしの庭で咲いている。

◆tc-Files第1話:桜舞い散る夜

プロローグ

この桜の花びらは、なぜこんなに紅いのでしょう?
ひとひら、またひとひらと風に散り舞う様子は、まるで炎の海のよう。

この身を焼き尽くした、熱くて冷たい炎のよう──

1-1:お昼休み

 キーンコーンカーンコーン……
 チャイムがなって、生徒達がざわめきだす。午前の授業が終わり、昼休みが始まったのだ。

 「うぅ…まだ眠いよぅ……でもご飯食べなきゃ、死んじゃうし……」
 いまのいままで眠っていた様子のおかっぱっぽい髪型の女の子が、ぶつぶつとつぶやきながら隣の席を見ている。
 「あれぇ…どこいったんだろ麻弓」
 彼女はしょぼつく目をこすりながら教室を見渡し─後ろ側の入り口のあたりで誰かと話している「麻弓」を見つけたようだ。
 「まゆ……あぁ!?」
 声をかけようとしたのだろうか。体の向きを変えたところでなにかに驚いたように目を真ん丸くし…そのひょうしに椅子が「がたんっ」と派手な音をたて倒れた。いや、倒れたというより「倒した」といったほうが正しいだろう。
 教室には「がたーん」「どたーん」「いたーいっ」という音(と声)がこだまし…生徒たちは一瞬しんと静まり返り、次の瞬間大爆笑の渦となった。

 「あ、起きたのぉ? あーちゃん!」
 (はでな)物音をききつけて、「麻弓」が彼女の方へと向かい、床に張り付いている彼女のそばにしゃがんでため息をついた。
 「あーちゃんも相変わらずどじだねぇ。わたしも人のこといえないけど」
 「だ、だって……麻弓がすぐに起こしてくんなかったからじゃないよ〜。出観がきてるって!!」
 「あーちゃん」の言葉は後半ささやきのごとく小さな声になってしまったが、「麻弓」にはわかったようだ。
 「たったいま、きたとこだよぉ。起こしに行こうかな?って思ったらあーちゃんてばころんでるんだもの」
 「あーちゃん」にあわせてか、「麻弓」も小首をかしげつつひそひそと答えている。

 「おい、なにやってるんだよ?」
 そんな様子をみて「出観」も「あーちゃん」のそばに向かってきた。おかしそうに笑いながら。
 「え、あ、ぅぅ……えへ。またころんじゃった」
 うわーはずかしいとでもおもっているのだろうか。にまにまと照れ笑いしながら「あーちゃん」が答えると、「出観」は整った顔をほころばせながら手を差し出した。
 「あづみはあいかわらずだな。どうやったらそんなにころべるのか教えて欲しいよ」
 「あーちゃん」…いや「あづみ」はぷぅっとほほをふくらませて床に座りなおし、そっぽを向いた。
 「……ころびたくてころんでるんじゃないもんっ!」
 「わざわざ座り直さなくてもいいだろ?」
 「出観」はしょうがないなぁ、というような顔をして差しだした手を腰にあてた。
 「あーちゃんはぁ、なんにもないとこでもころべるんだもんねぇ。一種の特技だよね〜」
 にっこりと微笑みながら「麻弓」がひどいことをいう。
 「そんなこと…ないっ! ないんだからっ!」
 うっ、とつまったその一瞬が、「ある」と物語っていることに「あづみ」は気づいていない様子。

 「ほらたてよ、購買いくんだろ?デザート買いに。俺も今日は弁当買うから、一緒にいこうぜ」
 「出観」が再び手を差し伸べると「あづみ」も今度は憎まれ口をたたかず「出観」の手を握って立ち上がる。
 ぱんぱん、と少しほこりにまみれたスカートをはたき、今度は何かをさがし始めたようだ。
 「えーと、おさいふおさいふは……っと、どこにいれたっけ??」
 「しらないよぉ? 今日はコンビニとかもよってないじゃない?」
 「んー…てことはぁ、カバンのなかだっ!」ごそごそとカバンをあさり……「あ、あったあった。さぁ、購買へゴウゴウ!」
   苦笑しつつ顔を見合わせる「麻弓」と「出観」。
 「いきますか」
 「そだねぇ〜、あーちゃんだけいかせるわけにもいかないしぃ」
 「二人ともはやくはやく! キウイヨーグルトなくなっちゃうよぉ!」
 「あづみ」は照れ隠しのためか、走り出したのだった。

1-2:彼女たちのこと

 彼女たちが購買でわたわたしている間に、彼女たちのことを説明しよう。

 まず「あづみ」「あーちゃん」と呼ばれていた女の子。
 彼女は東雲あづみ(しののめあづみ)という。
 容姿はまぁ、かわいいほうだろう。サイドだけ長くしたおかっぱの黒髪がよく似合っている。性格も多少いじっぱりなところはあるが、基本的には素直で明るい。
 身長160cm弱、体重は標準程度。
 思ったことはすぐに口や態度に出してしまうほうで、言ってしまってから後悔することが多いようだ。

 次に「麻弓」と呼ばれていた女の子。
 彼女は御陵麻弓(ごりょうまゆみ)という。
 いくぶんたれ目気味だが整った顔に、ふんわりした天然パーマがかかった長い髪。おっとりした雰囲気の美少女である。性格も「みたまんま」おっとりしている。まぁ、ひとことでいってしまえば「お嬢様風」といえるだろう。
 しかし突如「ぐさっ」とつきささる一言をいうことがあるので、注意が必要である。
 身長160cm強、やせ気味だがでるとこはでているというなかなかのプロポーションだ。

 そして、「出観」と呼ばれていた男。
 彼は出観京介(いずみきょうすけ)という。
 かなりの「もてる水準」(すなわち、背が高くて顔が良くてやせ型で…)を保持している上に、フェミニストで成績も良いので、当然もてまくっている。はたからみれば、羨望のまとにもなるが嫉妬の渦中にもいるタイプだろう。
 もちろん、本人がどう思っているのかはともかくとして、だが。

 彼女たちは全員「ミステリーサークル」…通称MCに所属しているメンバー、それも「正メンバー」だ。

 ミステリーサークルは、超常現象や霊能力に興味を持っている人の集まり(というか同好会)で、現在正メンバーが5人、準メンバーが53人という構成だ。
 なぜ正メンバーが5人しかいないか、というと正メンバーになるには、とある「特技」を持っていなければならないからなのだが…。

 では「特技」とは何か。もちろん皿回しやバク転ができるのも特技だし、速読・速記なども特技といえるだろう。
 だが、ミステリーサークル正メンバーになる為の「特技」とは「超能力・霊能力に類する能力」をさしている。
 入会するときに、顧問である宮田(生物教師)が「能力」を持っているかどうかチェックし、持っている者は正メンバー、持っていない者は準メンバーにと振り分けるのだ。

 あづみはほんの少しだが霊能力を持っている。
 そのおかげで、中学時代はかなりかなり暗くおとなしい雰囲気だったが、高校で「ミステリーサークル」にはいったおかげで、本来の性格が表に出てきたようだ。

 麻弓はサイコキネシスが使える。といっても力自体はごく微量であり、ルーズリーフ1枚をふわりと浮かべられる程度。それだけでも半日ほどぐったりしてしまうぐらい疲れてしまうので、めったに使わないようだ。

 出観がどんな能力を持っているのかはよくわかっていない。

 ちなみに、この話は正メンバーしか知らない。そうでないと正メンバーがクラスでいじめられたりする原因になりかねないからだそうだ。まぁ、おかげで正メンバーは「宮田先生のお気に入り」とみられることが多い。

 ついでに補足すると、正メンバーになると週1回程度行われる「お茶会」に参加する資格を得られる。準メンバーがこんなに多いのは正メンバーに「出観」がいるからだ。「出観とお茶すること」を目当てに入会したものの正メンバーになれなかった、という人間がとても多い。
 かくいうあづみも最初の入会動機は「出観目当て」だったわけだが…そんな選別がなされているなんて知らずに入会し、みごと正メンバーになったわけだ。

 はじめのうちは妬みややっかみもあって一番「一般生徒」っぽい(しかも根暗に見える)あづみが女子生徒の攻撃にあったりもしたが、出観や麻弓のサポートもあり、いまではなりを潜めている。

1-3:購買帰り

 「も〜早くしないからキウイヨーグルトなくなっちゃってたじゃんー」
 あづみが凹んでいるようすをみせながら、買ってきたのであろう「あげあんぱん」をかじりつつ教室に戻ってきた。
 「しかたないじゃんか、だいたい一番遅かったのあづみだろー?」
 「そだよ〜、あーちゃんがころんだりぃ、お財布さがしたりしてたから遅かったんだよぉ?」
 二人から責められ、ちょっと悲しそうなあづみだが。
 「ううぅ、だって〜。あーあ、楽しみにしてたのにな〜、キウイヨーグルト」
 「だから、あーちゃんが遅かったんだってば!」
 「だから、あづみが遅かったんだろっ!」
 お約束通りに二人からつっこみをいれられた。

 「だってさ、あと一歩早ければ、わたしが買えたんだよ??どーしてわたしが買えないのに買える人がいるのぉ〜」
 ……それはいくらなんでも横暴だろう。言ってしまってから本人もそう思ったのかちょっとばつの悪そうな表情だ。
 「あーちゃん……それはいくらなんでもないでしょぉ」
 麻弓がおおげさにため息をついてあづみの頭をなでる。
 「そんなにくやしがるんなら財布はすぐだせるようにして、授業も4限目だけは寝ないようにしろよ」
 出観は苦笑しながらも打開策を提案した。
 「う〜。むぐ、あっえ〜、おあいうぽえっとにいえるとぱつんぱつんに……なっちゃうんだもん」
 口いっぱいに揚げアンパンをほおばって機嫌を直したあづみをみて、二人は微笑むのだった。

1-4へ続く

◆under the Rose

薔薇の樹の下で

「きゃあああああぁ…!!」
彼女の、声。
遠のいてゆく声をききながら、僕はその場を離れた。

紅く染まった彼女を、抱きしめる為に。
薔薇の褥で、眠らせる為に。

遠くで、何かが落ち潰れる音がした。

***

「……それで、彼女は?」
「いまは、薔薇の下で眠っています。彼女には薔薇がよく似合いますから」

数日後、彼は殺人容疑で逮捕された。
彼の庭─庭園といったほうがふさわしいが─は、何種類もの薔薇で埋めつくされており、その中央にひときわ大きな薔薇の樹が植えられていた。そしてその下に真紅の薔薇で飾られた彼女の骨が、安置されていたそうである。

桜は、散りぎわが一番美しい。

そのままでも美しい君が散る時。
君は、桜のように一際美しく輝いてくれるだろうか?

僕は一番美しい君を、撮りたいんだ……

***

「それで…写真は、撮れたのですか?」
「えぇ、これです。これ以上のものは無いと思います」

彼が見せてくれた写真には、天使のようにふうわりと微笑みながら波間へと消えて行く彼女が写っていた。彼女は、散りゆく桜のように儚く美しかった…。

彼女の瞳。
淡い茶色で、いつもきらきらと輝いている瞳。

その瞳に、僕は写っているのだろうか?

僕を、写してくれるだろうか?
僕だけを、写してくれるだろうか…?

***

「ほら、綺麗でしょう?」
そういって彼がとりだしたのは、白く丸いものが浮かんでいる透明な液体の入った小瓶。浮かんでいるものが「眼球」であるのに気づくには、そう時間はかからなかった。

「本当は2つ、ここに入る予定だったんですけど。片方は潰れてしまったんです」
彼は残念そうにいうと、そっと小瓶をしまいこんだ。

「…それで、彼女はいまどこに?」
「僕の家です。夾竹桃の根元に埋めました…身体は、必要無いので」

その日、彼は幼児略取及び殺害の容疑で逮捕された。
そして翌日。彼の自宅の夾竹桃の根元から、全身の血液を抜かれた上で目をくり貫かれた少女の遺体が発見された。

純白

骨は美しい。
生まれたばかりの骨は、一点の曇りもなく白く輝いている。

その光を目にすれば、誰でも虜になるだろう…
そう、ぼくのように。

***

「それは…本物、ですか?」
「えぇ、綺麗でしょう。世の中の汚いもの、何も知らない骨です」
そういって彼は小さな小さな人間の骨─骨格標本のように見えるが、どうやら本物らしい─に、人形用のマスク・手袋・洋服などを着せ、そっと抱き上げた。

「…いったい、どうやって手に入れたのですか?」
「それは…」
彼の目がぎらりと熱を帯びる。

「妊婦さんに、協力していただきまして。この子でちょうど10人目かな」
「…それで、妊婦さんはいま、どこに?」

「ぼくの家に。この子ほどではありませんが、みなさん美しく佇んでいますよ」
「いくつになっても身体を美しく保つ方法がある、と言ったら快く家まできてくれましたから。妊婦さんにも、処置をしてあげたんです」

その日、彼は逮捕された。
彼の自宅からは10人分の女性の骨と、10人分の真白い翼をつけられた胎児の骨が発見された。胎児の骨は、どこまでも白く眩しく見えたそうである。

◆過去の遺物群

日差

暖かく柔らかい太陽の光のもとで
君は 君の生命を終えた

君が一番愛した人と、
一番君を愛してくれている人と共に

春色の絨毯と初夏の爽やかな風の中で
「永遠」を手に入れた細く白い君の手

幸せそうな笑顔だけを残して
二度と醒めることのない安らぎに身を任せた天使は
白い花びらにゆっくりと埋もれて行く

青くくすんだ空を見上げたままに
白く溶けて逝く祈りを捧げ
紅く染まった両手をかざし
永遠の眠りに落ちて逝こうと瞼を下ろした……

瞼の裏には
白い日差しの中でさえずる天使の歌声

もう夢はいらない

絶え間なく続く静けさの中で
いま、永遠の微笑を………

夕闇

薄い雲に隠れて
冷たい月がひっそりと
見下ろしている

ほの白く揺らめく
硬質な光の螺旋は
幻想へといざなように
すべてを押し包みつつ
瞼の上に重くかさなり
永久の夕闇へと背中を押す

過ぎ行く夜を捕まえた
小さく白い流星が
二度と空を離さないようにと
圧し掛かる黒い雲を
呼び寄せたとき

冷たい月が
哀れみの涙をこぼした

もう二度と空は見えない

美しく散った花々も
実る果実のかぐわしき香りも
今は遠い過去の追憶の中………

真実

やっと見つけた「本当の貴方」

硬く縮こまる貴方を抱きしめて
白い唇にそっとくちづけをした

貴方がなにもいえなくなってから
いったいどのくらいの月日が流れただろう

冷たく凍えてゆく貴方を 誰が救えたのだろうか?

消えていった過去の残像も
今では美しく色褪せて
揺らめく灯火に照らし出されている

空虚な眼窩には蒼い石を

柔らかかった紅い唇には
白い芥子の花びらを

艶やかだった手足の爪は
鳳仙花で淡く染めて

豊かに流れていた黒髪は
梳いて美しく結い上げて……

細くなった指から抜け落ちた銀色の鎖
永遠を誓い合った絆の証

その輪が落ちたとき
僕は貴方から開放された

そして、いまは
白く美しい貴方の傍らで
悠久の時を紡いでいる

幾重にも薄いヴェールで
美しい貴方を誰の眼にも触れさせないよう
誰の瞳も奪わぬように

ひそやかに時の合間に身を埋めている

煌き

煌きながら舞い散る
白い雪が奏でだす空白の刻

運命よりも確実な
暖かいその手を夢見て
遥かな時間を眺めていた

千切れゆく刹那の刻に
開放される白い吐息は
ゆるゆると地下へと沈みゆく

澄んだ瞳に浮かぶのは
強く透明な想いを包んだ
ひとつぶの涙

こぼれて落ちた瞬間に
煌く結晶は儚く砕け散り
宙に溶けて消えた

砕け 消えるのが運命なら
誰がために消えるのか
見届けることもできるだろう

溶け消える最後の時に
重ねられた淡い夢が
幸せの祈りなら……

泡沫の夢(2003/10/03更新)

彼と、別れた。

「友達に戻るだけ」
「いままでより、それぞれの重荷が少し減るだけ」
「…なにも、かわらないから」

そういったのは、彼だった。

わたしは、彼を好きだった。
でもその時、わたしの心には別の人の影もあったし、やりたいこともあった。
彼は、あまり束縛しないでいてくれたと思う。
それでも、わたしには「束縛」になって、いた。

だから、別れようと思った。

一度離れて…友達に戻って。
それでもそばにいたいと思えば追いかければいい。

そう思って、別れたはずだった。

事実、わたし自身はほぼ彼を「友達」として、つきあっていた。
でも、「いままでと変わったか」と問われたら「変わってない」と答えただろう。

「かえって仲良くなったような気がする」と。

***

彼は、わたしを「友達だ」とは思っていなかった。
別れた後も「恋人」のフィルターを通してみていたのだ。

そして、わたしもそれに気づいていた。

「彼はわたしの事を友達だと思えていない」と。

でもその「中途半端」な位置が心地よくて。
わたし自身はなんの気負いもなくいられる立場を失いたくなくて…。

彼の気持ちを、利用した。

「利用している」という感覚がまったく無かったとはいえない。
でも「利用しよう」と思って行動したことはなかった。

それが他人の眼から見たら「利用している」に他ならないとしても。

***

彼は別れてからも「もう一度付き合いたい」「よりを戻したい」とよくいっていた。
わたしも彼もことを嫌いになったわけではないし、いまでも好きだ。
好きだからこそ電話での長時間の話もするし、彼に多少束縛じみた言葉をいうこともあった。

でも「もう一度付き合う」のには、抵抗があった。

それはわたしの中の「付き合う=SEXをする関係」というもの一種の公式だった。

わたしはSEXははっきりいって好きではない。

というより、おかしな言い方かもしれないが「粘膜の接触」が好きではない。
つまり、ディープキスもできればしたくない、というのが本音なのだ。

ただ、矛盾していると思われるかもしれないが、人肌はとても好きだ。
腕をくむ、手をつなぐ、抱きしめる…コミュニケーションは好きなのだ。

わたしの場合「コミュニケーション」は友達ともするものなので、彼にも同じように接してきた。
もしかしたら彼はそのせいで、わたしの事を「友達」と思えなかったのかもしれない。

***

わたしの中には「もっといろいろな人とつきあってみたい・もっといろいろな恋愛を経験したい」というひどく傲慢な気持ちもあった。
それは曲や詞を作る為でもあったが、なによりも自分自身の欲望であったことは否めない。

自分の中の醜い部分は周りには見せず、よい部分だけを強調して。
自分をより良く見せようと見栄をはって、うそもついて。
それが、自分をどんどん汚していくと、わかっていたのに…

***

そして、彼はパンクした。

「やっぱり、友達には思えない」と。
「別れると約束したけれど、恋人としてみて、接していた」と。
そして「[恋人]でいままでどおりか、[友達]でいままでとは違う接し方にするか…どちらかを選んでほしい」と。

「自分は、できることなら恋人としてつきあっていきたい」…と。

わたしは、選ぶことが、できなかった。

「中途半端なままでいること」が彼にとってどれだけ残酷なことなのか、わかっていた。
…それでも、「中途半端なままがいい」と思った。

わたしは、どちらかを選ぶことができなかったのだ。

……わたしは、子供だったのだ。

あれもこれも、とすべてを手にいれなければ気がすまない、大きな子供…。
自分では「結構社会を知っていて、しっかりしている」「甘えん坊」「案外わがまま」…そんな人間だと思っていたが、なんのことはない。

ただ、単純に「精神的に子供」だっただけのことである。

それをはっきりと自覚した瞬間、悲しくなった。

そして「彼と付き合うのとはっきり別れるのとどっちが得か」という「損得勘定」で動こうとした意識にも気がついた。

自分が、情けなくなった。

こんなにも「よくばり」で「わがまま」で。
人を傷つけてでも、自分が傷つきたくなくて。
わたしは、どうしようもなく弱い人間なんだ、と。

堕落して、どこまでも落ちていってしまいそうな気がした。

もう、自分の気持ちすら、わからない。

彼のことを好きなのか。
付き合いたいと思っているのか。
それとも、もう二度と付き合えないかもしれなくても別れる方を選ぶのか。

…ニドト、アエナイト、シテモ、ワカ、レル、ノカ…

ワカラナイ……

***

「考える時間、ほしい?」

そうきいたのは彼のほうだった。

わたしは、自分に嫌悪感を感じていた。
そして、なによりも自分自身の気持ちがまったくわからなくなっていた。

だから、彼の問いに「イエス」と答えた。

「じゃあ、時間をおこう」
「きみが、どうしたいかきめるんだから」
「自分の気持ちは………決まってるから」

「それまでは、電話も…しないから」

そういって、電話は切れた。

切れたというより、わたしから切ったようなものだった。

彼が話している間。
話していない間もわたしは無言でいたのだから。

***

その夜は やはり眠れなかった。

自分への嫌悪感、彼への罪悪感…そして別れるか否かの選択。
幾度考えても、結局堂々巡りで結論などでない。

「彼と別れること」

それは今までの関係をすべて断ち切るという意味…本来なら、最初に「別れた」時になるはずだった状況に戻る、それだけだった。

でも別れてからいままで、付き合っていたときと変わらず…あのころよりもつきあっているような関係でいてしまったから。

いま、この関係が崩れるのが怖かった。

なんて自分勝手な考えだ、とわかっている。

でも…それでも。
付き合っているのではなくても、そばにいてほしかった。

…それが、本音、なんだと思う。

***

そして翌日。
朝はまるでいつものように「おはよう」のメール。

わたしは、返事を返さなかった。

どうするか。
どうしたいか。

結論などまったくでていない。

「あの時別れなければ」「あの時別れていれば」…という後悔はしたくない。

だから、返事は返さなかった。
「結論はでていない」という意味をこめて。

***

そして、昼。

彼から、電話がかかってきた。わたしは出るか否か迷った。
かなり長いことコールが響いていたが、結局わたしは電話をとった。

「もしもし」
「…はい」
「今日は仕事は?」
「新しいとこの面接いくから…」
「何時から」
「12:50…」

そんな、普段とほぼ同じ会話。

一瞬の沈黙があり、そして彼は言った。

「昨日のこと、落ち込むことないから」
「昨日はいいすぎたと、思って………」
「きみが、思うとおりで、それでいいから」

わたしは、本音をさらけ出した。

「わたしの思うとおり…それはいままでの中途半端なままでいる、ってことなんだよ」
「それで、いいの?」「本当に、それでいいの!?」

「…君が、そのほうがいいのなら、それでいい」
「また、近い未来で、結論がでるかもしれないし…」

「…いつもの、元気な君が、好きだから」
「君に落ち込まれると、自分もつらい…から」

…優しすぎる彼。

わたしのことを、一番に考えてくれる、彼。

わたしは、自分のわがままさや優柔不断なところを見せつけられたようで、苦しかった。

でもその反面、ほっとした。

まるっきり今まで通りにはいかない。
気持ち的に変わってくる部分もあるだろう。
それでも、「今まで通り」でいられることに安心感を覚えていた。

# この話はこれで終わりです。この二人がこれからどうなっていくのかは誰にもわかりません。でも、わたしはこの二人がそれぞれに幸せになれることを祈ってます。

Apres noir[MIDI]

初めて出会ったのは
夕霧に包まれた街
湿った空気の中
微笑んだ君を見つけた
幽かな記憶の破片から
切ない想いが甦る
close my eyes
君を薔薇の血統に加えよう
close my love できないなら
この想い凍らせて……
冷たい風になびく
夕闇色の長い髪
真白い首筋から
暖かい生命溢れる
冷たく凍った感情が
再び目覚める君の手で
close my eyes
君と薔薇に囲まれて眠りたい
close my love 叶わぬなら
この心凍らせて……
君の目に揺れる想いは
恐怖だろうか?
憐れみだろうか?
白い手が差し伸べられる
− 想う気持ちは、変わらずここに −
close my eyes
君を薔薇の血統に加えよう
close my love できないなら
この想い凍らせて……
close to me
君の瞳閉じ込めてしまいたい
stund by me 僕のそばで
永遠に微笑んで…

夜明けの刻[MIDI]

真紅の薔薇の 甘い誘い
青い唇 赤く染める
果てなく続く 黒い螺旋
僕を捕えて 離さない
「ぼくの隣で微笑んで」
僕は「人」でいる きみのために
「君のとなりで眠りたい」
いつか迎える
夜明けのときも
崩れ行く指 消える意識
冷たい君の 身体抱いて
僕を待つのは 夜明けのとき
焼尽くされて 白く溶ける
「愛しているよきみだけを」
甘い記憶だけ抱きしめて
「幸せな夢みていたい」
呪いがとける
この瞬間も……
僕が待つのは 夜明けの刻(とき)
呪われた生を 断ち切って
「愛しているよ、きみだけを……」
いま永遠の安息を……
君と…… 二人で…

Cool Down

冷たい雨に打たれて
震える胸に
尖ったナイフを突きたてる
押し込められた暗闇
疲れたココロ
置き去りにして立ち去るよ
あてがわれた役割こなして
全てがいつもと変わらない
ah- この手が血で汚れる前に
欠けてく月を眺めた
ah- 揺れてる青白い煙が
消えてく月を隠した
懐かしい夢みていた
取り戻すこと
できない二度と戻れない
うつろな瞳によぎる
全ては色褪せ
砕けて風に消えてゆく
欲望衝動に突き動かされ
絶望に向かい進んでく
ah- ココロを失ったままで
ah- いつまで彷徨い続ける?
ah- とどまることできぬままに
ah- 消えてく月を見つめて
この夜に……
きみだけを……
ah- 救いの天使を求めて
ah- ゆっくり闇を抜け出した
ah- 作り笑い 脱ぎ捨てて
ah- 満ちてく月を眺めた

Deep Fall

激しく悶え狂う
憐れな思考回路
この指で最後のとどめ
簡単に刺してあげる
開いた瞳孔の奥で
君は何を見つめていた?
崩れてゆく意識に響くのは
悪魔たちの嘲笑と囁き
さぁ! 意識を手放してしまいなよ
手を開けば全てを忘れられる
冷たい暗闇すらも
雪のように温かく感じられる だろう
憐れみ込めた視線
冷たく君を見てる
崩れ落ちてゆく身体
支えるものは何も ない
甘く怠惰な白い夢
暗く輝く絶望が
君の心臓握り締めたまま
だんだんきつく強く締め付ける
もう 騒がしい世界に戻れない
二度と目覚めない意識の底辺
揺れてた追憶だけが
君の生きてた傷跡 残し続ける だろう

since 2002.3.15‖管理人:カズヨシ(kazuyohi@trpg.net)
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