◆学園ゴーストハンターリプレイ小説「廃病院に眠るもの」  この小説はカズヨシが学園ゴーストハンター(旧版ゴーストハンター+同人 サプリ『学園ゴーストハンター』)で実際に遊んだ記憶を元に、小説仕立てで 文章化したものです。基本的に「桐生あやめ」という女の子の視点を中心に記 述してあります。  ルール表記などは入っておりませんので、ホラー風味な短編小説として楽し むことも可能です。  著作権は放棄しておりません。(いないとは思いますが)転載等をご希望の方 はかならず"事前"にカズヨシ(kazuyohi@trpg.net)までご相談ください。  感想なども首をながーくしてお待ちしております。  なお、このファイルは構造化エディタ (http://www008.upp.so-net.ne.jp/momotan/sted.html)を使用して作成してあ ります。  テキストファイルなのでWindows付属のメモ帳やワードパットなどでも読め ますが、構造化エディタを使って開くとWindowsエクスプローラのような形で 閲覧することが可能です。  連絡先:カズヨシ(kazuyohi@trpg.net)      http://www.trpg.ne/user/orefo/ ■プロローグ 「町外れに病院があったこと、知ってます?」 常葉が話しかけてくる。 「え、うん。ちょっと前につぶれた古くておっきな総合病院でしょ?」 「あぁ…なんかでるってうわさがたってるとこか」 狼がつぶやく。 ここは白石学園高等部体育倉庫の裏手、狼がいつも時間をつぶしている場所で ある。 現在時刻は12:00をすぎ、お昼休みに入ったところ。 「え〜、おばけぇ?やだなぁ、怖いじゃん…」 あやめはなぜゴーストハンターになったのかわからないほどの怖がりである。 しかしあやめがごねるのはいつものことなので無視されてしまうのだった。 「そうです。あの病院、営業してたころから子供の幽霊だの、血まみれの看護 婦だの… いろいろなうわさがあったらしいです。で、つぶれた後もすすりなく声や唸り 声が聞こえるって…」 「そのぐらいのことなら俺も知ってるさ。これでも探偵やってるんだしな」 少し不服そうな表情の狼。 「…で、GH協会から依頼がきそうなのか?」 「えぇ、いずれくると思いますよ。あそこ、うわさ多すぎますから。それで…」 あやめがあわてて口をはさむ。 「ちょ、ちょっとまってよぉ!"まだ"依頼は来てないんでしょ?? まさか、あ の病院までいこうってゆうんじゃないよね!?」 一番年上のくせに、一番子供っぽいあやめ。ひっしに抵抗したが(したのか?) …やはり無駄だったようだ。いつものごとく 「別に中に入ろうっていってるわけじゃないですし。見にいってみようってだ けですよ?怖くない、怖くない(^-^;」 「でも、どうせいくなら夜だな。昼間にいってもつまらん(-_-)b"」 「そうですね。じゃ、ほかの3人にも連絡いれときますから。10:00ぐらいで (…?」 「あぁ。じゃ、またな」 勝手に話は進み…足早に立ち去る二人。 「やだあぁぁぁ〜!!」 あやめの叫びをかき消すように、チャイムが鳴り響いた…。 ■キャラクター紹介  登場人物たちの説明です。本文だけでも特に問題ないと思いますが、読んで おくとよりわかりやすくなると思います。  □桐生 あやめ  □葵 常葉  □白石 太郎  □伊集院 隼人  □華風 狼  □藤岡 裕太 □桐生 あやめ(きりゅう あやめ)  女 / 20才 / 白石学園幼等部の用務員  ・かなりの子供好きで、隼人(→伊集院隼人)にべったり  ・ショタ@ンではない(と主張)  ・元サルティンバンコ(笑)  ・主に肉体労働(戦闘)を役割とする。  ・怖がりのくせに心霊現象には首を突っ込む典型的な好奇心の塊  ・常に隼人の横に陣取り、いつでも袖をつかめるようにしている  ・なぜか"ちゃん"づけ必須  クラス:ディテクティブ □葵 常葉(あおい ときわ)  女 / 16才 / 高校生・突撃新聞部部長(ジャーナリスト志望)  ・冷静沈着・性別不詳の(怪しい)学生  ・拳銃(モデルガン)と霊能力を器用に使い分ける。  ・実は結構したたか  ・財産は富豪だが所持金が貧乏なせいで金銭がらみの交渉では   異様なほど張り切ってしまう  ・数少ない「エリアル理論」の信奉者   …というより、ただ単に怖いものを信じたくないから別のものを、   ということらしい  クラス:ジャーナリスト・ミスティック □白石 太郎(しろいし たろう)  男 / 年齢不詳 / 白石学園理事長の息子  ・学内に(個人)研究室有り  ・超科学に魂をうった親不孝者  ・自称・心霊工学博士  ・自分の機械を過信しているせいか、一人でやたらと突っ込むことを好む  ・最大の弱点はバックファイア(機械の誤作動によりMPに大量のダメージ)  ・「エリアル理論」といういかにも眉唾ものの理論にいれ上げて、   信者を獲得しようとしている。(現在信者は太郎を含めて2名)  クラス:サイエンティスト(マッドかも) □伊集院 隼人(いじゅういん はやと)  男 / 10歳 / 小等部4年・なんでもできちゃう器用貧乏なお子様  ・頭脳明晰  ・一言でいうとマセガキ。二言でいうとマセたガキ。  ・「あぶない@事」の、ゆうじのミニチュア版(PL談)  ・抵抗力が低く、いつも狂気に一番近い人。   なのに狂ったことがないのは…やはりマセガキだから??  ・どうも「回復役」の感が否めない。(魔術も白しかとらないし)  ・体力がないため、いつもあやめに引っぱりまわされている   たまにかつがれたりも  クラス:ジャーナリスト・ディレッタント □華風 狼(かふう ろう)  男 / 高校生 / (不良)私立探偵  ・自称ウルフ  ・裏事情通  ・クールな一匹狼(まんまやん)  ・母が行方不明のアメリカ人ハーフ  ・ミョーに冷めたとこがあって、仲間が怪奇現象に出会おうが、   別室で一人タバコをふかしていたりすることが多々有り。  ・そのくせ好奇心は人並み以上にある  クラス:ミスティック □藤岡 祐太(ふじおか ゆうた)  男 / 高校生 / 突撃新聞部平部員  ・怪奇現象をスクープしようと燃える突撃新聞部の部員  ・その実、一人で突っ込んで一人で自爆する破滅型のゴーストハンター  ・MPが減ってくると突如笑い出したり泣き出したり暴れ出したりする  ・金持ちぞろいの白石学園オカルト研究部内にて、唯一の貧乏人。  ・親への借金はかなり有り。  ・あやめからもらったモデルガンでがんばる…が、はずしまくる。  ・↑ので、戦闘ではまったく役にたたない人  クラス:ジャーナリスト ■第1章:廃病院の前で  □集合  □ずいぶん待って  □廃病院の前で  □正面玄関  □扉の外で □集合 時刻はpm10:00。ここは廃病院の正面玄関前である。よほどすっぽかしてしま おうか、引き返そうかと、ここにつくまでに何度思ったか…。 しかし、そうした(すっぽかした)あとのみんなの非難も怖かったし。ついでに 隼人くんにも会いたかったし、という理由でなんとか廃病院の前までたどり着 いたところだった。 「うぅぅ〜…やっぱりこわいよぉ」 …どうやらまだ誰も来ていないようだ。 「ときわちゃん、10時ってゆったよねぇ…おかしいなぁ誰も来てないなんて」 ふぅ…、っと生温い風が吹く。 木々がざわめき、影が揺れる。 猫や犬の鳴き声。暗い暗い、病院の窓… 今にも"なにか"が現われそうな、なんとも怖い雰囲気が醸し出されている。 「うあ〜ん、早く誰かきてよ〜!!」 病院に入る前から、すでに半泣き状態のあやめだった。 □ずいぶん待って 「ひどーい、ときわちゃん!学校だなんてわたしきいてないよぉ!!」 「すみません…わかってると思ったんですよ、学校で相談してたんだし」 必死に笑いをこらえ、眼のはしに涙を浮かべながらあやめをなだめる常葉。 「…誰も病院で待ち合わせなんていわなかったぞ」 ぼそっ、とつぶやく狼。 「…でもでも、学校ともいわなかったもん。ときわちゃんもうるるんも」 「うるるんじゃない!!ウルフだ!」 「ウルフじゃなくて、ろうでしょうが」 常葉のつっこみが冴える。 「ま、いいじゃんねぇ。こうして会えたわけだし」 口をはさんだのは太郎だ。理事長の息子でなにやら怪しげな理論を打ちたてて 心霊機械を開発し、"もち歩いて"いる。 「そうだよ、おねえちゃん。会えたんだからさ」 隼人も賛同する。 あやめは相変わらず隼人に甘いようで 「そうだよね!(隼人くんに)会えたんだし。ま、いっか!」 と、簡単に機嫌を直した。 「そうだ。今日は祐太はこれないとさ」 太郎が思い出したように言う。裕太とは藤岡裕太のことだ。常葉が部長を務め ている突撃新聞部の部員で、いつも常葉にしごかれている。 「彼もあやめちゃんに負けず劣らず怖がりだからねぇ」 彼は精神的に受けたダメージがもろに顔に出てしまうため、どうにも"怖がり" という印象が強い。…まぁ、本人は"怖がりではない"といっているが。 「なに?怖いからこないなんていったんですか?藤岡くん」 「いや?単純に今夜は用事があるから、っていってたけどねぇ」 「…まぁいいです…どうせ今日は下見だし。でもジャーナリストとしての自覚 がたりませんね」 常葉は裕太にきびしいところがある。たぶんおなじジャーナリストとしていっ ているのだろうけれど…常葉と太郎の会話を聞きながら、すっぽかさなくてよ かったのかよくわからなくなったあやめだった。 □廃病院の前で 「なんだか、いやな感じですね…」 常葉がつぶやきながらカメラのファインダーをのぞいている。 「中も見にいくのか?」誰にともなくたずねる狼。 「いってみるのもいいんじゃないか?」 「なぁんかここ、寒いよね」 みんなそれぞれに、廃虚の感想をつぶやいている。 「じゃ、いきましょう」 いともあっさりそういうと、常葉は建物に向かって歩き始めた。それに続いて みな動き始める…約1名を除いて。 「え〜っ、怖いし、はいるのやだよぉ!」 「だいじょーぶだよ、おねえちゃん」 隼人は立ち止まっているあやめをくるりと振り返り、手招きした。 「なんかでてきたら、逃げちゃえばいいんだからさ!」 「その"なにか"がでたらやなんでしょぉ…」 ぶつぶつといいながらも、隼人が促すと歩き出すあやめ。と、その瞬間! きいいいぃぃぃぃ… 耳障りな音を響かせて、正面の扉が開いたのだ! 2枚の引き戸…観音開きと いうタイプだろう。車椅子や担架なども入れるようにだろうか、かなり大きな 扉だ。ほぼいっぱいまで開ききると、何事もなかったかのようにその動きを止 めた。 □正面玄関 「な、なに…?」 暗くてよくわからないが、扉のなかにはなにもいないようだ。 「…せっかく開いたんだし、いってみましょうか」 相変わらずカシャカシャとシャッターを切りながら常葉が扉に近づいてゆく。 そしてためらうことなく病院へ…止めるまもなく太郎も病院内にはいる。常葉 は扉の近くでシャッターを切り続け、隼人も扉のそばにいき、中をのぞきこん だ。 「ちょ、ちょっとまってよぉ…中入るの、やだってばぁ!」 恐る恐る扉の近く(というより隼人の近く)までいき、そっと中をのぞき込むあ やめ。常葉がシャッターを切っているらしく、フラッシュが光っていた。反対 側では狼が中をじっと見つめている。 と、そのとき。 きいぃ… 扉が、動いた。 □扉の外で 扉によりかかるように中を見ていた狼は避けるまもなく病院の中へと押し入れ られてしまう。そして、扉のすぐそばにいた隼人や常葉も…。 しかし元サルティンバンコ(笑)だけあって、あやめの動きはすばやかった!  かなりの勢いで閉じた扉をよけ、たった一人、外に残ってしまったのだ! 「や、やだぁ!!なんでみんな中入っちゃうのぉ!?」 別に入ろうとして入ったわけではないのだが…あやめにとってはどちらでもお なじことだろう。あわてて扉にかけよる…が、鍵でも閉まってしまったのだろ うか?びくともしない。 「うそでしょぉ??なんで開かないのぉー!!」 がちゃがちゃと音を立て、扉をひっぱる。最後にはおもいきりけりつけた。 あやめは自分の反射神経をうらめしく思い、うっすらと涙をうかべた─が、基 本的に楽天家なのだろう。 「ん〜…とりあえず写真でもとっとこうかなぁ…」 カシャリ、と軽い音をたててシャッターが切られる。(もちろんあやめの撮り っきりコ○カで、である) 「ここのドア、開かないんだよね…しょうがない、裏口さがそ!」 裏口も鍵がかかっているかもなんて、微塵も考えていないあやめだった。 ■第2章:ひとりぼっちのあやめ  □扉の中で  □忘れ物  □ふたたび、外  □侵入  □途切れた電話  □暗闇を走り抜けて  □合流はロビーで □扉の中で 「うわっ!」 突然閉まった扉に押し込まれるように病院内へ足を踏み入れた狼たち。 ガッシャーン!! 派手な音をたてて扉が閉まり、押しこまれた3人(隼人常葉狼)は派手にころん でしまった。 「なんで急に…」 「あーぁ、ドア閉まっちゃったね」 「ありゃりゃ…しまっちゃいましたか?それは困りますねぇ」 先に入っていたために一人無事だった太郎がのんきに周囲を見回している。怪 我(軽くはあるが)をしたにもかかわらず、常葉は閉まった扉などを撮っていた。 しばらくすると眼が慣れてきたのか周りの様子がぼんやりと見えてきた。どう やらここは玄関ホールのようだ。長椅子や受付カウンターらしきものが見える。 「うーん、こんなに暗くちゃなにもわからないですね…どこかに明りのスイッ チないですか?」 常葉にうながされ、みな手探りで壁を探してゆく。 あった。 かちり、と音をたて明かりがつく。 いままで暗い中にいたせいか明かりはとてもまぶしく、目にしみた。廃院にな ってまだ間もないはずなのに、ホール内はかなりのほこりが積もっていた。み なころんだせいでほこりまみれである。 なにかないかと探してみる、がなにも見つからなかった。 「ドア、やっぱり開かないよ」 いつのまに調べたのか、隼人が扉の前で叫ぶ。 「…あれ?」 常葉がまわりをくるりと見回して、何か思い出したようにつぶやく… □忘れ物 「? どうしたんですかぁ??」 「どうしたの? ときわちゃん」 「…あやめちゃんは? 彼女、どうしたんですか?」 「あれ!?ほんとだ、おねえちゃんいないよ!」 「はいるのやだ〜、ってごねてたし。外にいるんじゃないですかねぇ?」 心配そうな隼人と、あっけらかんとした太郎。 「でも、彼女すごいこわがりなんですよ? ここにいるのと表に一人でいるの、 どっちが怖いと思います?」 「う〜ん…外ですかねぇ」 しごく真面目に答える太郎。 「そうですよね?」 「…あいつは俺と違って身が軽いからな。扉が閉まるとき、とっさに避けてた ぜ」 ぼそっとつぶやいた狼を無視して常葉と太郎は隼人も交えて相談しているよう だ。 「このドアをわたしの"パラボラくん"で破壊して…」 「そんなことして弁償や最悪不法侵入なんていわれたらどうするつもりなんで すか?」 「そのときはウチの財力で…」 どうも、論議の的がはずれているようだ。 「ねぇねぇ、ここって、携帯つながんないのかなぁ? 電話してあげれば安心 するんじゃない? おねえちゃん」 隼人が(一番まともに)提案する。 「そうですね…携帯」 取り出してアンテナを伸ばす。 「…大丈夫そうですね」 ピ、ピ、と静かな病院内に電子音を響かせて番号を押す。 やがてトゥルルルル…トゥルルルル、と呼出音が響き始めた。 □ふたたび、外 かさ、かさ、かさ、かさ… かなり伸びている雑草を踏み締めながら裏口を探して建物の壁つたいに歩いて ゆくあやめ。窓もあるがどれ一つとして開かない。 不安が募る。今にも背後から、建物の影から、木の影から…"なにか"が襲いか かってくるような、そんな気がして。最初はゆっくりと、しかし最後はかけ足 どころか全力疾走になっていた。 やっとのことで小さな通用口を見つけた時は心底ほっとした。『これで、みん なとあえる!』…そう、思って。しかし… 「…あれ? あれれ??」 ガチャガチャとノブを回す。木製の扉は開かなかった。 「手ごたえからして…カギじゃなさそうだけど、なんで開かないのぉ??」 押しても引いてもびくともしない。あやめは一瞬考えた末「もうっ! 蹴り開 けちゃえ!!」 バキィッッ! 扉は壊れた。 もともともろかったのか、単にあやめが怪力だったのかはわからないが、とも かく中には入れるようになったようだ。 □侵入 戸の間をすり抜け、院内へと進む。 「やだぁ、真っ暗…懐中電灯なんてもってないし。明かりつかないかなぁ?」 手探りでスイッチを探すが見つからない。かわりに案内板のようなものは見つ けた。が、色褪せてしまっていてほとんど読み取れなかった。 しばらくすると、暗闇に目が慣れてきたのかぼんやりとまわりが見えてきた。 どうやら左側は部屋が並んでいるようだ。どの部屋も戸は閉まっている。いま にも部屋の中からなにかが出てきそうな、そんな予感がしてあやめは走り出し た。 と、その時! 『ちゃ〜んちゃちゃ、ちゃ〜んちゃちゃ、ちゃちゃちゃ〜んちゃちゃん♪』 (↑ミュー@ックアワー…たぶん) 突然携帯が鳴り始めた! 鼓動が大きく、早くなる。いまにも泣き出しそうに なりながら恐る恐る携帯を取り出し、画面を確認すると… 「…あ、ときわちゃんだ!!」 通話ボタンを押すのももどかしくあわてて耳にあてる。 「もしもし!?」 『…あやめちゃん?』 常葉の声だ。 「ときわちゃ〜ん!! いまどこにいるのぉ??」 『そういうあやめちゃんこそどこにいるんですか? 入り口の前ですか?』 「ううん、裏口…表、開かなくなっちゃったから」 『裏、って…そっちは鍵かかってなかったんですか?』 「うーん、よくわかんない。でも開かなかったから蹴り開けちゃった」てへっ、 とでもいいそうな口調のあやめ。 『…どうせ蹴り開けるなら表のドアを開ければよかったんじゃ?』 ぽつりと常葉にいわれ、はっとする。 「う、う〜…そうゆうのはもっと早くいってよおぅ…」 『いまから表回ってきます?』 しかし、今更表に出るのもまた怖い。 「…いい! 中走ってく!!」 『え!?ちょ…』 一方的に通話を打ち切り、薄暗がりの中を走り出す。早く!早く!早くみんな のところへ! それだけを考えて… □途切れた通話 「え!? ちょっと、あやめちゃん??」 ツーッ、ツーッ… 通話は一方的に切られた。 「ときわちゃん!おねえちゃんは!?」 隼人が心配そうにたずねる。 「…なんか、裏口から入ったから、中通ってきます、って…」 「それ、外で待ってるのとどっちが怖いでしょうねぇ??」 太郎もあっけにとられたようにつぶやく。 「…じゃあ、俺たちも中に進んでみるか」 狼がぽつりとつぶやいた。 と、その時。 たったったったっ… "何者かが走る音"が近づいてくる! そこにいる全員がさっと身構える。どん どん近づく足音に、緊張感が高まっていく─ □暗闇を走り抜けて かたり、とモノが動く音がしたり、どこからかうめき声が聞こえてくる…そん ななかをあやめはひた走っていた。途中に小さな木の階段があったりしたが、 きしむ音は怖いので飛び降りた。 こんなときは"やっててよかったサルティンバンコ"などと思ってしまう。が、 着地した時に音が響きわたってかなり怖かった、というのも事実だ。 きしむ音と着地音、どちらも怖い。しかし両方避けることはできないし、きし む音は階段を降りきるまで何度もするのだから、今回の選択は間違っていなか ったと思う。 しばらく直進すると、進む先にぼんやりと明るい部分がみえた。 「…あれ? なんか、むこうの方明るい。人の声もするみたい…」 一瞬びくっとするが、そこは生来の楽天的思考。『きっと隼人くんたちだ!』 …とは思ったものの、やはりいきなり明かりの下にでるのは危険かと思い、そ っと近づきのぞいてみる。 「…あ!」 □合流はロビーで 「隼人くん!」 「おねえちゃん!」 隼人に駆け寄り、だきつくあやめ。 「うあーん、怖かったよぉ〜」 うっすらと涙を浮かべ、しがみつくあやめを、隼人はよろけながらも支えてい た。 「みんないるからもう大丈夫だよ、おねえちゃん」 「うん…うん、だいじょおぶだよね!」 うなずきながらほほえむあやめ。…隼人のおかげで、なんとか落ち着いたよう だ。ほかの面々はそんな様子を苦笑しながら見つめていた。 ■第3章:探索  □情報交換  □調べる  □遭遇  □復活したりしないかな?  □部屋はまだあるんだよ □情報交換 「で、この先はどうなってたんだ?」 あやめにたずねる狼。 「え、えっとぉ…なんかずーっと部屋みたくなってた。戸はみんな閉まってた けど、怖いしあけてないよ」 「明かりはつかなかったのか?」 「う、うん…ってゆうか、スイッチみつかんなかったの」 「そうか…じゃあ、探索にいくか」 「え、ちょ、ちょっと待ってよ、なんでそうなるの〜」 あやめが泣きそうな顔で抗議する。 「そうですね。ここでこうしててもどうしようもないですし」 そんなあやめを無視し、常葉は早くも写真を撮り始めた。 「じゃあ、片っ端から開けてくぞ!」 言うが早いか狼はがらがらと音をたて、病室と思われるドアを開け始めた。 「開けるだけじゃなくて、調べなきゃ仕方ないでしょう」 苦笑しながら一番近い戸のなかをカメラにおさめている常葉。すでにいくつか のドアを開けていた狼だったが、常葉にたしなめられしぶしぶ戻ってくる。 「わたし、絶対のぞかないからね!!」 中すら見えないような位置でじっとまっているあやめ。 「おねえちゃん、なんにもいないみたいだからおいでよ!」 隼人が呼んでくれる。 「ほんとに…なんにもいない?」 のぞかない! といっていたにもかかわらず部屋に近づいてゆくあやめ。極端 な怖がりのくせに好奇心も人一倍高いという難儀な性格は、こんなところでも 反映されているようだ。 □調べる 一部屋目は薬品室のようだった。クレゾールなどの消毒液の臭いが立ち込めて いる。 「あ、救急セット見つけました…うん、きちんとそろってるみたいですね、中 身」「俺も見つけた」 大半の薬品はわれてしまっていたが、常葉と狼はなにか見つけたようだった。 「う〜ん、この部屋にはもうなにもないですかねぇ。次にいってみましょうか ぁ?」 太郎がうながす。 2部屋目は普通の病室だった。普通とはいってもベッドはシーツすらかけられ ておらず、カーテンもぼろぼろに破れている。 3部屋目も普通の病室だった。ベッドの上になにかがうずくまっているのを除 けば、だが。 「…なにか、いますね」 といいながらもシャッターを切り続ける常葉。 「先制攻撃、しましょーかぁ?」 「本物(の人間)だったらどうするんですか」 「そのときは"ごめんなさい"って…」 ぼそぼそと二人が相談している横をすり抜けて、狼が霊能力を放った。"バイ ロキネシス"可燃物を燃やすという霊能力だ。しかし、"それ"は燃えることな くそこに存在し続けていた。 「ちっ…失敗か」 「…いきなりなにしてるんですか」 と、いいながらも攻撃にうつる常葉。きっちりと狙いを定めて引き金をひいた。 たいしてダメージは与えられなかったようだが、"それ"はこちらに気がついた。 □遭遇 ゆらり、と身体をおこしこちらに向かって近づいてくるそれは、体中が腐敗し 異臭を放つゾンビだった。 「こんなじっとり湿ってちゃ火はつかないよなあ!」 いいながら少しづつ後ろに下がってゆく狼。 「物理攻撃も効きます! あやめちゃん!」 常葉の檄が飛ぶ。そのとき、あやめは恐怖に凍り付いていた。どうやら…動き 出したゾンビの顔から眼球が落ちるところをまともに見てしまったようだ。そ れでも常葉の声になんとか反応して銃を構え、ゆっくりと引き金をひく。 命中は、した。 しかしゾンビはなんのダメージも無かったかのようにゆらゆらとこちらにせま ってくる。 そこに太郎の"パラボラくん(対消滅ビーム。"エリアル理論"という眉唾理論に 基づいて作られている…が、原理不明)"が命中した! 電光がスパークして一 瞬なにも見えなくなる… ゆっくりと視力が戻ったとき、ゾンビは床へと倒れ伏していた。 □復活したりしないかな? 「は…はあぁぁぁ…こわかった…」 半ば呆然としながらつぶやくあやめ。 「さて、じゃあ次の部屋にいきましょうか」 さっさとみんなをうながす常葉、それにうなづいて廊下へ向かう狼と太郎… 「あ!! ねえねえこれ、また起きてきたりしないかなぁ??」 床に突っ伏したゾンビを直視しないように指さすあやめ。 「大丈夫だろ?」 「ほっとけばいいんです、そんなの」 「わからないけど…いいんじゃないっすかぁ? ほっといても」 …みんな無責任なことをいっている。 「でもでも!起きてきたらまたやっつけなきゃなんないんだよ?? せめて縛っ とくとか…」 「あやめちゃん。ロープとか持ってますか?」 眼をキラリと光らせ、常葉がいう。 「な、ない…けど」 「ないんじゃどっちにしろ縛れないですよ、ほっといて次にいきましょう」 「じゃ、じゃあ、手とか足とかだけでも切っとくとか…」 「…やるか?」 請け合う狼。 「それだときっと手だけ、足だけで動き出すよ。ってかその方が怖くないです かねぇ?」 これまたあっけらかんと怖いことをいいだす太郎。 あやめは思わず想像してしまったらしい。さっと青ざめた顔を、おもいっきり 横に振ったり… 「じゃあ! カーテン裂いて縛るぅ〜!!」 「ずたぼろだから、裂いたので縛っただけじゃ、すぐ切られちゃいますよ。無 駄なことしてないで、さっさといきましょう」 あくまで先にいくことを主張する常葉。 「裂いたので縄作ってから縛る!! そうする! ねっ、隼人くんも手伝ってくれ るもんね!?」 「え? あ…うん」 半ば強引に隼人をうなずかせ、あやめはカーテンを引き裂き始めたのだった。 「これ…で、大丈夫…かな??」 カーテン製の縄(あやめの手作り)で床に倒れているゾンビを縛り終えた隼人。 ふぅ、とかるくため息をついてあやめの方を振り向いた。 「お…終った?」 おずおずと隼人に声をかけるあやめ。 結局『縛るの〜!!』と騒いだ張本人は『怖いから』とゾンビに触ることを(見 ることも)拒否し、その役目は隼人にまわされてしまった、ということらしい。 「終ったよ、あやめおねえちゃん」 にっこりと微笑みながら答える隼人。 それを見てやっと安心したような表情をみせるあやめ。ほかのメンバーは苦笑 しながらその様子を眺めていた。 □部屋はまだあるんだよ 「さて、じゃあ次の部屋にいきましょうか」 いつも通り常葉がうながす。 なにもいわず一気に戸を開け放つ狼。パラボラくんのスイッチを握り、身構え ている太郎とカメラを構える常葉。そして相変わらずのぞこうとしないあやめ と袖をつかまれているためになかなか前にいけない隼人。 しかし、部屋にはほこりが積もっているだけでなにもなかった… …気がつくと、一番奥の部屋まで進んでいた。最初のうちこそ気合い充分、戸 を開けるたびに緊張し身を硬くしていた5人だったが…いままでで出てきたの は結局ゾンビが一体だけ。 うわさどおり「お化け屋敷」ではあったものの、だんだんと緊張はほぐれ、な ごやかなムードが漂い始めていた。気が抜けてしまいそうな程"怖いもの"はで てこない。まぁ、それでもあやめにとっては充分怖かったらしいが。 そして、最後の(といっても廊下の端の)部屋も調べ終り、 「じゃ、向かい側にいきましょうかねぇ?」 そういってくるりと後ろを振り向いた太郎が指差した先…そこには"手術室"と かかれていた。 ■第4章:最後の部屋 ─ 手術室  □手術室  □攻撃手段  □激突!  □恐怖  □攻撃  □冷たい手  □闘志を奮い立たせて □手術室 "手術室"…さすがの狼も開けるのをためらうほどの冷気が扉の隙間から漏れて きている。 「…とりあえず、写真でも」 カシャリ、と軽い音がしてフラッシュがたかれる。冷気なんてものともせず常 葉は写真をとっていた。 「ここは、さすがになにかいそうですねぇ…」 パラボラくんのスイッチを握りなおす太郎。たぶんエーテル回収!! などと思 っているんだろう、その表情はどこかうれしそうだ。 「ここ、寒い…」 あやめがぎゅっと隼人の袖を握り締めたそのとき。いままで暗かった扉の上の 『手術中』のランプがともった。全員がごくり、とのどをならす… 「…開けるぞ」 狼はだれにともなしにそういうと、一気に扉を開いた。 きいいぃぃぃぃぃ… なんともいやな音をたてて手術室の扉は開いた。中からは背筋を凍らせる冷た い空気が溢れ出している。カシャカシャと音をたて瞬いているのは常葉のカメ ラのようだ。暗くてよくわからないが、今にも倒れそうなほどに蒼ざめている のはあやめ。 しかしあやめだけでなく、全員が"パラボラくん"のライトに照らし出されたも のを見て目を見開いていた。 □攻撃手段 キラリと光を放ち、宙を飛び回る無数のメスとかんし。そしてその奥で2体の ゴーストがゆらゆらと踊っている。しかし幸いなことにまだこちらには気付い ていないようだ。 「…先制攻撃しましょうかねぇ?」 ぼそぼそと太郎が提案する。 「…そうですね。気付かれる前にしたほうがいいと…」 同じく小声で、蒼ざめた常葉がいう。 その言葉に反応していちはやく攻撃をしかけたのはほかならぬあやめだった。 奥にいるゴーストにむかって狙いをさだめ、銃を撃つ。 命中はした。しかし弾はゴーストの体をすり抜けて奥の壁へと当たってしまっ たのだ! 「やっぱり、物理攻撃じゃだめなんだ」 ぽつりと隼人がつぶやく。わかっていたことだがゴーストなどの意識体(霊体) には物理攻撃は効かない。肉体がないからだ。こういった敵には精神攻撃しか 効かないのである。 あやめには霊能力はも微量しかないので、攻撃手段がない。隼人は魔術を使え るが、得意分野は白魔術なので攻撃手段はやはりない。 つまりゴーストに対抗できるのは、霊能力を使える狼・常葉と精神攻撃可能な 『おはらいくん』を使える太郎だけ─ □激突! 「…くるぞ」 狼の声。 ゴーストはこちらに気がついたようでメスとかんし、2本づつをひき連れて部 屋の奥からでてこようとしていた。 露払いでもするかのように、メスとかんしが攻撃を開始した。ふわふわ、ゆら ゆらと飛んでいたのは最初のうちだけで、こちらに近づくにつれ動きは機敏に、 鋭角になってゆく。そして、明らかにこちらに向かって飛び始めた。 「ゴーストじゃなければ…これもきくはずだ!」 狼がそういいながらかんしにむかって日本刀を振り降ろす。キィンッ、と硬質 な音をさせて一本のかんしが二つに折れ、床へ落ちた。一度落ちたかんしはも う一度浮き上がってはこなかった。しかしまだメスもかんしも飛び回っている。 「パラボラくん、GO!」 太郎の声が上がる。パチッと軽い音がしたかと思うと、バッと眩しい閃光がフ ラッシュし、その場にいたものの目が眩む。それぞれの視界が戻ったとき、か んしとメス1本づつが消えていた。 常葉はメスに向かって銃をうっている。しかしメスは動きがすばやく、なかな かあたらない。 そして、ゴーストが…間近に、現われた。 □恐怖 背筋が、凍った。あやめにはなんの攻撃もできないのだ。ひっしにメスに向か って銃を放つがあせっているためかはずしてしまう。 「いやぁぁっ!!」 半狂乱になりながら銃を連発するあやめ。 「あやめちゃん!?」 「おねえちゃん!!」 あわててかけよる隼人。 一発の弾は運よくメスをおとした。しかし、あやめには見えるものすべてが化 け物と化していた。それは近づいてくる隼人をも化け物のように見せてしまい ── 引き金が、引かれた。 それと同時にあやめは恐怖のあまり気を失い床へと倒れてしまう。そして、銃 から送り出された一発の弾は、まっすぐに隼人を貫いた。 驚いた表情の隼人が、ゆっくりと床へと倒れこむ… 「おねぇ…ちゃん…信じてた、の、、に…」 苦しげに言葉をもらすと隼人も、気を失った。 □攻撃 あやめたちの様子見て常葉は蒼ざめていたが、それでも攻撃の手を緩めなかっ た。ここで自分たちまで倒れてしまったら、二人を助けることすらできなくな ってしまう。 「全滅なんて…遠慮したいですね!」 必死に霊力を振り絞りゴーストを狙う。"アストラルフィスト"─敵の精神にダ メージを与える攻撃である。 成功! …ゆらり、とゴーストは揺らめいた。が、まだ消えない。太郎はというと機械 が故障したらしく、がさごそと機械をいじっている。あやめたちを見てはいた らしく、辛そうな表情だ。狼はいまにも倒れそうなほど青い顔をして愛用の日 本刀をきつく握り締めている。 ゴーストが近づいてくる。 『…暖かい…光だ…』 『血…肉を…』 声帯のないようなしゃがれ声。しかしその声は人間を震え上がらせるには適し ていたらしい。3人ともその場に凍り付いたように動けないまま、ゴーストに しがみつかれそうになっていた。 □冷たい手 太郎に触れようとしたゴーストは目測を誤ったのか、太郎の横をすり抜けてい った。しかし常葉のほうは、半透明なゴーストに腕をつかまれてしまったのだ。 氷よりも冷たいゴーストの手。それが触れた瞬間、常葉はすぅっと血の気が引 いたのを自覚した。そして触れられた所から、生きているものへの妬み嫉み、 恨み、そして生への執着、生きていたときの夢や希望といった感情が常葉の中 に流れ込んできた。 「あ…くぅ…っ!!」 いままで感じたことのない感情の渦。常葉の精神は破綻寸前だった。しかし、 "二人を助ける"こと、そして"ジャーナリストとしての使命"を思うことでなん とか狂気に陥らずにいたのだった。 □闘志を奮い立たせて 「うわぁっ!」 声を上げて狼が倒れた。どうやら一本だけ残っていたかんしに攻撃されたらし い。起き上がる気配がないということは気絶してしまったのだろうか? だが、 常葉も太郎も後ろを振り返っている余裕はなかった。 とにかく早くゴーストを倒すこと。でなければみんなここで息絶えてしまう。 「もう一度…!」 常葉が、再び霊力の拳をゴーストに向かって放つ。一体はうっすらと消えかか った、がもう一体は未だに健在だ。 「よし!直ったぁ!!おはらいくんGO!」 シャラシャラと涼やかな音を響かせ"おはらいくん"が発動した! 一瞬、柔らかな光に包まれたかと思うと次の瞬間にはゴーストは2体とも消え うせ、飛び回っていたメスなども騒がしい音をたて、床に落ちたのだった。 「だ…大成功…!!」 驚きと喜び、そして安堵が入り混じった太郎の声。 「や、やった…」 常葉もすでに疲労困憊で床に座り込み、そのまま倒れてしまいそうである。 しかしここから脱出するためには、倒れてしまった仲間たちを回復させなけれ ばならない。常葉はゆっくりとたちあがり、隼人たちの元へ向かったのだった。 ■終章:脱出 □戦い終わって 「三人…回復させなきゃ…」 そうつぶやくと常葉は怪我で倒れている隼人と狼のそばへ座った。さっき見つ けた救急セットで傷をしばり、気付け薬を飲ませる。狼は傷が浅かったせいか すぐに気がつき頭をふっている。 隼人の方は気はついたもののなかなか起き上がれずにいるようだ。それでも常 葉の肩を借り、起き上がるとあやめのそばに移動した。 □狂気からの帰還 「おねえちゃん…大丈夫…?」 声をかけると、すぐに目は覚ましたがどこをみているのかわからないようなう つろな表情…と思うと突然恐怖の表情になる。 「いや…いや…!こないで…いやあぁぁっ!」 どうやらそうとう精神状態が不安定になっているらしい。隼人は護符を取り出 すと心理療法をおこなった。最初は暴れていたあやめだったが、隼人が言葉を 進めるにつれてだんだんと落ち着きを取り戻し始めた。 「…はやと、くん…?」 すぐそばに隼人の顔を認めて抱きつくあやめ。 「あ…痛い!痛いよ、おねえちゃん」 「わたし、わたし…ごめんね!ごめんね、隼人くん…」 小さな声で"ごめんね"と繰り返しているあやめを痛みをがまんしながらなだめ る隼人。だいぶ、あやめのほうも落ち着いてきたところでそっと体を離した。 □脱出口は 「さて…そろそろいきましょうか。みなさんぼろぼろだし、ここでまたなにか でてきたら 全滅しちゃいますよ」 「そうですねぇ、もう電池も切れちゃいましたし…おはらいくんもパラボラく んもただのハコです」 一番気力も体力も残っている二人がうながす。 「そう、だな。全滅なんて…シャレにならん」 「さぁ、いこうよ。おねえちゃん」 「うん。隼人くん、歩ける?」 「…肩、かしてくれる?おねえちゃん」 「…おんぶしてったげる」 こうして5人は正面玄関ホールまで戻った。幸いなことにここまではなにも出 てはこなかった…が、扉は相変わらず開かない。 「どうしましょうか?ここは開かないようですけど…あやめちゃんが入ってき た裏口にまわりますか?」 常葉が提案する。 「そうですねぇ…」 相槌をうったのは太郎だ。 いつものごとく無言なのは狼。そしてあやめは… 「…壊すから、いいよ」 一言つぶやくとほかのメンバーが止める間もなく扉を蹴りつける。そして、か なりの音をたてて扉は開いた。 「うそ…こんなに頑丈そうな扉、壊しちゃった…」 驚いたまなざしであやめをみるメンバーたち。 「…だって、隼人くん早く病院につれていかないと」 隼人をおぶい直し、どこか照れ臭そうに舌をだすあやめにみんな苦笑しながら 扉をくぐり抜けたのだった。 ■エピローグ みんなが振り返りもせず立ち去ってゆくなか、常葉は一度だけ振り返り、シャ ッターを切った。─ゴーストを倒し、病院からは脱出できたが…なにかまだ、 不安感が残っているのだ。 しかし病院はシンと静まり返ったままだった。しばしの間病院を見つめていた 常葉だったが、首を振っていつもの表情に戻るとカメラをしまい、みんなの後 を追った。 *** あやめたちが廃病院をあとにして数分の後。開け放したままだった正面玄関の 重い扉は、まるでなにものかが閉めているかのようにゆっくり…ゆっくり、内 側へと閉じられた。 後日、常葉が現像した写真はすべて真っ暗で、廃病院の影すら写っていなかっ たという。