偽りの決着


 銃弾が、戦争を終わらせた。
 ハンドガンのカートリッジを交換すると、上羽霞晴は再び銃口を犠牲者に向けた。
 封鎖された港。破壊された船。横たわる死体。
 状況劣勢と見て、九州外へと脱出を試みたテロリストの総帥が、今霞晴の足元に横たわっている。
 なのに。
「なぜ、そんな顔をする?」
 せせら笑う声。全身に銃弾を浴びた女は、霞晴を哀れむように笑った。
「お前が、勝ったんだぞ」
 銃弾を全身に浴びて、なおも総帥は平然と笑っていた。
 魔人。ある日突然人外の能力に目覚めたミュータントたち。
 社会から排斥され、阻害された元人間たち。
 集団を作り、統率され、戦争を始めた軍団。
「……方法は、他にあったはずだ」
 搾り出すような霞晴の声に、総帥は笑うだけだった。
「なかった」
「なんども交渉した。譲歩もした。民衆と政治家達に理解があれば」
「テロリストに譲歩するほうが、愚かなんだよ」
 かはっ、と血を吐く。
「初歩の初歩だ。そんな考えは捨てろ」
「……」
 霞晴は反論できずに、銃を構えなおす。
「ずっとお前のことを考えていた。思考パターン。行動様式。信条。過去。家族構成。全て調べた」
「そして、感傷的になっているわけか。殺し屋としては、失格だな」
「俺は殺し屋じゃない。政府機関の構成員の、ただのひとりだ」
 ふん、と総帥は笑う。
「もう疲れた。殺せ。それがせめてもの、慈悲だ」
「そうだな。これで全てが終わる」
 カートリッジを空にするまで、撃ち続ける。
「ひとつ、いいことを教えてやる」
 銃声に混じって、嘲笑が響いた。
「わたしは、影武者だ」


クリエーターズネットワークテーマ『終戦』参加作品。
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