刃なき剣持ちし法の王 イメージスケッチその1


 クリスがガーネットに勝ってしまって族長&婿状態で、
 さらにメイリアまで押しかけてきたと思いねぇ。

 夜になった。
 テントの中はクリスのほかにはガーネットとメイリアしかいない。
 一人増えてしまった。  二人が正面からにらみ合っているので非常に居心地が悪い。
 非常に心臓に来て良くない。たとえると藪の中に短剣持った犯罪者がいて隙を狙われているような。
「外の空気吸ってくる」
 クリスが立ち上がろうとしたら両側からバシッと手をつかまれた。
 お前ら示し合わせてないか?
「もうちょっと落ち着くがよかろう。汝がここの主であるからしてな」
「逃げる気?」
 逃げたいです。
 いったい俺が何をしたというんだ二人とも。なんで俺が挟まれなきゃいかんのだ。
 しぶしぶクリスは座った。
「さて、そろそろ眠ることにするかのぅ。いずこのどなたかのおかげですっかり疲れてしまったのじゃ」
「そういえば、どこで寝てるの?」
 メイリアが尋ねた。
 やばい。
 非常にやばい。
 答えた瞬間に拳が飛んできそうなぐらい危険な質問である。狙ったわけではなかろう。
 クリスが目をぱちくりさせていると、不思議そうにメイリアはクリスを見た。
「そういえば最近なんか中央ではやっているもの、ある?」
 クリスが露骨に話題を変えようとしたが。
「ほら、汝も一緒に寝るであろう。早く来るがよい」
 ガーネットがベッドの上に転がって手招きをした。
 クリスの背筋に寒気が走った。
 クリスの命が大ピンチ。
「……ほう、人が見てないうちにずいぶん手が早くなったものね」
 メイリアさん声が怖いです。
「いや、あれだ。彼女は妹みたいなものだから……」
 クリスは引きつった笑いをメイリアに見せたが。
「めおとが一緒に眠るのは当然である。もうすぐ子供もできようぞ」
「って話を被せるなっ。だいたい子供の作り方知らんだろうお前はっ!」
 あわててガーネットに突っ込む。
「……ちょっと話聞かせてもらおうかしら? 拳で」
 メイリアは指をぼきぼき鳴らした。それ聖女のすることと違うだろう。
「やめてー。まぁ落ち着け。頼むから落ち着け。いやマジで落ち着いてくれ頼むから。作り方わかってたらあんなあっけらかんとするか?普通」
「むー」
 なんとか拳は止まった。セーフ。メイリアは眉をひそめてクリスをじと目で見ていた。
「人相悪くなるぞ。聖女様が」
「ほっといてよ。誰のせいだと思っているのよ」
「ほれ、クリスも早く」
 ガーネットが手招きをした。
「じゃぁ、私はどこで寝ればいいのかな?」
 メイリアは言った。
「そのへんの地べたで寝るがよい」
「おい」
 メイリアの声が冷たくなる。拳を構えたのを、クリスは何とか押しとどめる。
「夫婦の仲を邪魔するものは犬に蹴られて死んでしまえと言うではないか」
「それ微妙にぜんぜん違う」
「くっ。やっぱり、あんたとはここで決着をつけないといけないようね」
「なるほど。わらわもそれには同感だ」
「ああもう、ガーネットまで煽るなよ」
 クリスはいきなりメイリアを担ぎ上げると、彼女を胸に抱いて歩いた。
「あっ」
 メイリアが赤くなった。
 メイリアの体は軽かった。あんな暴力的な打撃力なのにうそみたいだ。こういうところはちゃんと女の子している。
 お姫様のように、そっとベッドに横たわらせる。ガーネットの横に。
「じゃぁ、二人で寝ろよ。俺がこっちで寝るから」
 クリスは二人に告げた。 「は?」
「なんですと?」
 なんか毛布の変わりになるのを探して、テントの中を探す。
「いや待て。わらわな夫にそんなことをさせるわけには行かぬ」
「そうよ、なんでこんなつるぺたと一緒に寝ないといけないのよ」
「やかましい。もうじき貴様程度は超えてみせる。まだわらわには未来があるからな」
「将来性だけね」
「もうちょっと仲良くできんのかお前らは」
 クリスはため息をついた。
 とりあえず防寒具のコートを二つ見つけた。これでもかぶってかまどの前にでも転がってよう。
 ベッドの上では二人がひそひそ話をしていた。
 何を話しているのやら。
 クリスが火の前に座り込むと、ガーネットが声をかけた。
「わが夫よ、ちと来るがよい」
「んぁ? なんかしたのか?」
「そうよ」
 メイリアが肯定した。
 どうしたんだか。女というのはよくわからんものである。
 クリスは首をかしげながらベッドに近づいた。
 突然、二人に引っ張り込まれた。
 クリスはベッドの上に倒れこんだ。あっさりと仰向けにされて、ベッド中央に寝かされた。
「な、何のまねだ?」
 起き上がろうにも左右からがっしり押さえつけられて逃げられない。
「夫を床に寝せるわけにはいかぬのでな。そこで寝るがよい」
「不本意ながら折衷案ってわけよ」
「何だよそれ」
「やむを得ぬ。少々狭いが三人でもぎりぎり何とかはなるであろう」
「というわけで真ん中で寝るの。決定」
「そ、そんな無茶なっ」
「いままでガーネットを抱いて寝ていまさら何を言うのよっ!」
「……で、お前はいいのか?」
「……昔はいっしょに寝たじゃない。何をいまさら」
「拒否権なし」
「ないわ」
「だめじゃ」
 即答だった。
「というわけで寝るのだ」
 ガーネットが毛布をかけた。
「ごふっ」
 顔の上にかぶさった。
 クリスは首を振って顔を出す。
「腕を貸すがよい」
 ガーネットはいつものようにクリスの腕の上に頭をちょこんと乗っけた。
「ふわぁ。眠いのじゃ」
 頭をなでてやるとくすぐったそうに腕に頬ずりをする。
「くーりーす」
 反対側からメイリアに引っ張られた。
「こっちも見なさいよ。やけるじゃない」
 メイリアはクリスの腕を勝手に取って枕にした。
「お、おい」
 両側から腕をぴーんと引っ張られる形になってちょっと苦しい。
「へへ。何年ぶりかしらね」
「おいおい。法衣がしわになるぞ」
「まぁたまにはいいわ。予備あるし」
 メイリアはいたずらっ娘みたいに笑った。
 数年ぶりかもしれない。
「でもよかった。クリスが幸せそうで」
「そうか?」
 そんなことを言われるとは意外だった。
「ん。ちょっと悔しいかな」
「何が」
「秘密」
 そういうとメイリアも黙ってしまった。
 クリスは身動き取れない状態で、天井を見ていた。
 両腕に二人の女の子の体重を感じながら、木のはせる音を聞いていた。


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