例によって例のごとく茶をすすっていた昼下がり。
リルリィーアとティナだけではなく、リルリィーアの親友のノーラがいた。
ノーラは筆を走らせていた手を止めて、眼鏡を押し上げながら親友を見る。
「しかしこう、リルリィーアももっとこう優しく見せればとっとと旦那見つかると思うのに……もったいないというか資源の無駄遣いよ」
「いや、いきなりなによ」
「ぶっちゃけ結婚してもらったほうがネタになる。せめて恋人」
「親友を売るなこの吟遊詩人」
ノーラはもの書きでリルリィーアとティナをモデルにした小説を発表している。表向きだけでもすごい人気である。
ちょっと百合調だし。裏でなくても。
ティナはあんぱんを飲み込んで満足そうに口を開いた。
「でも、お姉ちゃんツンデレだし」
「は?」
リルリィーアはぽかんと口を開いた。
ツンデレ、と自分がさっぱり繋がらなかったらしい。
「ツンデレ違う」
ノーラはきっぱり言った。
「だってでれでれしねぇもんこいつ」
「でれでれって……」
リルリィーアが眉をひそめた。
「そんなはしたない」
「しかしこう……ミルの時は……」
「黙れ」
例によって赤い前髪に隠れてさっぱりわからない目でノーラを睨み付けた。
「わたしゃリルリィーアがあんなにらぶらぶ」
「黙れっていってるのにぃ」
リルリィーアは親友の首にするりと腕をかけて容赦なく絞った。
「うぐっ」
本気でやると10秒で落ちます。
「お姉ちゃん、まじ入っているよぅ……」
落ちるぎりぎりで止めて、音もなく椅子に戻った。
「げふげふ……ぐえ。天国見える」
ノーラは咳き込みながら紅茶を口に含んだ。
「うーん。結構ツンデレだと思うんだけどなぁ」
ティナはそう呟いた。
「お姉ちゃんはツンデレ、と」
ノーラはメモにその通り書いた。
「まて、何している」
「いやこうあれよ。私の中の枕たんがぴきーんと萌え回路始動ですよ」
「……何を言っている?」
「気にしない。今ようやく理解したのよ。なんでリルリィーアが結婚しないかと」
「ほう」
リルリィーアの声が露骨に冷たい。
返答いかんでは即座に落とす。意識。
「……いやそんなにマジにならんでも。あんたが結婚しないのはティナちゃんにツンデレだからよっ!」
リルリィーアは音もなく親友の背後に回り込むと首に腕をかけて頸動脈をきっちり絞った。
「へー。お姉ちゃんそうだったんだ」
「ティナ、ツンデレって意味本当にわかってる?」
「ほえ?」
リルリィーアの腕の中でノーラの身体から力が綺麗に抜けた。