「じゃぁ、これでおわり〜」
クラス担任の絵里子先生は例によって例のごとく、やる気の無い口調でホームルームの終わりを告げた。
ホームルームの真っ最中からざわついていた教室は一気にうるささを増す。
「あ、そうそう。週が変わったので掃除当番変わるのでよろしく。優〜、聖に教えてあげてね」
「はえ? なんでぼくに?」
先生は露骨に肩を竦めるポーズを取った。
「あなた、聖の『ご主人様』じゃないの」
そう言われると、優に反論の余地はない。クラスメートがみな笑っている。
「お掃除、ですか」
教室に残っているのは、優達四班の生徒だけだ。残っていると掃除の邪魔になったり掃除役に邪魔されたりほこりっぽかったりするからだ。
「うん。……聖さんは掃除したこと無いの?」
自分のメイドをさん付けで呼ぶ男がいた。優はメイド服を着た聖が掃除をしているところは自宅でいくらでも見ているが。
「学校では普通しないの?」という疑問だ。
「はい。校舎の掃除は専門の業者さんがやってました」
「どんな学校だよ。それ」
「ええと。優様。この教室をぴかぴかにすればよろしいのですわね」
「うん。廊下もだけど」
「わかりました。この聖にお任せ下さいませ」
「うん、がんばろうね」
「それでは、さっそく準備しますか」
聖はカバンから紺色の布で包まれたものを取り出した。柔らかそうだ。もう一つ白い布を筒状にまとめたものも取り出した。
「じゃぁ、とっととやって部活行くよ〜」
両手に箒を持った香澄が来た。
「あ。香澄さん。お願いがあります」
「ん? なに」
「ちょっと来てもらえますか?」
聖は香澄を教室の隅に連れていった。
「これ、持っててもらえますか?」
聖は白い布を開いた。香澄は箒をおいてそれを持った。聖が肩の高さまで手を挙げさせる。
そして、もうひとつの紺色の布の包みがほどけた。
くるくると布が広がり、紺のメイド服と白いエプロンが現われた。
なんか体積合わないんですけど、さっきの包みの大きさでは。
「えっ、もしかしてここで着替えるの?」
「すぐ済みますから」
聖は白い布の陰に隠れると。
すぐ出てきた。
紺色のメイド服に白いエプロン。胸に抱くように畳まれた制服。完全に隠れてから二秒も掛かってない。
「うわっ、どうなってるの?」
「慣れれば、このくらいでできますよ」
女物の服はよくわかんないけど、それは無理だろう、普通。と優は思った。
聖は制服を鞄に仕舞うと、フリルのついたカチューシャを頭に嵌めて髪を留めた。
「お待たせしました」
「いまさらだけど、そこまでしなくても」
優は言った。