馬に乗って三日進むと、オールデアからエイゲンに入る。
天気が崩れかけて、じめじめした曇り空。
今日もお尻を痛めながら日暮れ近くに街に近づくと、いつもとはかなり違った。街が騒がしい。
今までは街を歩く人もほとんどいなかった。、内乱かつ捜査局が機能していないという無法地帯状態であったからだ。それが普通にというかいつもどおりに人が歩いている。
「なんで、人がこんなに? 恐くないの?」
アルフィの胸に抱えられて馬に乗っているメルが尋ねる。
「エイゲンは王弟派だからな。戦乱が及んでないんだよ」
アルフィが背後から答えた。
「そうだ、メル。こう人が多いと、いつ気が付かれるかわからんよな」
「うん、そうだね」
「というわけで、正体を隠そう。いまから、俺のことは、『お兄ちゃん』と呼ぶように」
メルは黙っている。
「どうした?」
「なんで、おにいちゃんなのよぅ」
「ふむ、俺がお姉ちゃんと呼ぶのはさすがに無理があると思うが」
「そうじゃないよぅ。わざわざ兄妹になんでならないといけないのよぅ」
「偽装だ偽装。良く考えてみろ。どこに、姫を妹呼ばわりする奴がいると思うか?」
「普通はそんなこと考えないよぅ。アルフィぐらいだよ、そんな変な事思い付くの」
「そういうことだ。それにな、こんな状況で一緒に無関係な奴が旅をしているのは不自然なんだ。兄妹だったら普通だろう?」
「なんで?」
「両親が死んで親戚を頼りに逃げている」
「うう、洒落になってないよぅ」
まんまだ。メルは父を叔父に殺されて義母の実家に逃げている最中。
「そういうわけだ。ほら、練習だ、試しに呼んでみろ」
「なんでそんなことしなくちゃ」
「何事も練習」
あっさりアルフィは言う。
「うう。『アルフィお兄ちゃん』」
アルフィは手綱から左手を離して頭を撫で撫で。
「うう、個人的趣味入っているよぅ、絶対」
アルフィの顔を、雨粒が打った。
「降ってきちゃった」
メルが顔を上げた。
「雷とか鳴らないよね」
「雷、嫌いなのか」
「うう。そんなんじゃないけど、さ。雨強くなったらやだなぁ」
メルは暗い空を見上げていた。
マントを掴むと、メルの前にまで引っ張った。そして、メルを両腕で包み込んだ。
メルはマントの裾を手で押さえた。
アルフィは手綱を握りなおし、馬の速度を上げた。
町中に入り、宿の裏に馬を留めると、アルフィは雨で濡れた馬の体を拭いた。
メルは濡れた金髪をタオルで拭きながら、それを見ていた。
「すまんな。念のため一緒にいてくれ」
「あ、うん」
ブラシがけも終わると、アルフィは馬の尻をぽんと叩いた。
「ほら、おつかれさま」
メルを連れて中に入る。
セリスのところとは違い、ここは宿専門だ。カウンターにはひとりの親父さんがいる。
「やぁ。アルフィ、久しぶりだね」
「どうも、ご無沙汰してますです」
アルフィは頭を下げた。
彼の名はオード。ここの主人で二児の父でもある。
メルが、頭の上にタオルを乗っけたまま、アルフィを見ていた。
「そっちの娘は?」
オードが尋ねた後。ああ、なるほど。と言った具合に得心したように肯いた。
「ははーん。アルフィもすっかりロリコンに」
「……なんで会う奴みんなそう言うんだ?」
ぼやいてみたが聞いちゃいない。
「うう。ロリコンじゃないよぅ」
メルが呟いた。
「若いほとばしりが溢れるのもいいが、もうちょっと落ち着いてだな。大きくなってからしたほうが。なぁ、焦らずに」
「あんたが落ち着けや。えーいこのオヤジめ」
「とーさんもな。かーさんと出会ったときは」
「いいから休ませろ。頼むから」
オードは宿帳を取り出した。
「ええと。二人部屋と」
そこまで書き込んで手を止めた。
「どうしました?」
アルフィが尋ねると。
「いや、『別々にしろ!』とか言うかとおもって」
「一緒でいいです」
「……若いっていいよな」
そういうと再びペンを動かしはじめた。
「だーかーら。ちゃいますよ。客っすよ客」
「ごたごたしてるな。こんなご時勢だからねぇ」
アルフィ君もたいへんだねぇ、と言ってカウンターの下から部屋の鍵を取り出した。
「まさかあっさり国がひっくり返るとは」
「俺もびっくりした」
オードは宿帳をひっくり返してアルフィのほうに向けた。
アルフィは名前を書いた。そして羽根ペンをメルに渡した。
「ふぅん。メルちゃんって言うんだ」
オードはメルのサインを見ながらそう言った。
「姫様みたいな名前だなぁ」
まぁ本人だし。
「うう。本……」
アルフィはメルの頭を叩いた。
いい音がした。
「んー。まぁ、姫からいただいたんじゃないんですかね」
アルフィは白々しくほざいた。
「うう、痛いよ」
鍵を手に取ると、アルフィはこう付け加えた。
「ああ、そうだ。余計な事言わないでくださいね……」
「わかっとるから」
「わー。ひさびさのちゃんとした部屋だよ」
メルは気色満面な顔つきをして、広い部屋のなかをぱたぱた走る。
宿は高めのところを借りた。あまり人目に付きたくないので、大部屋は避けた。比較的安全な宿を選ぶことができた。
荷物の中にお金が入っていた。おそらくセリスが入れてくれたのであろう。ありがたく使う。
メルは奥のドアをぱたんと開け、首を突っ込んだ。
「うわっ。ちゃんと、お風呂もあるよっ」
……ほんとに姫様か、これ?
とかアルフィが思っていると。
「入ろうよっ」
とか言いながら、メルはアルフィの袖を引っ張る。
「風邪引いちゃうよ」
「まぁちょっとまて、妹よ」
「ほえ?」
メルはアルフィの顔を見上げた。
「なぜ、俺の袖を引っ張る」
「んー」
メルは首を傾けると、アルフィの目を見て告げた。
「お風呂って、みんなで入るんじゃないの?」
アルフィは湯桶で、バスタブの中にお湯を注いだ。
浴場には桶が三つある。
バスタブと、水桶と、加熱桶である。
加熱桶というのは金属で補強した木桶で、中に加熱した石が入っている。
この熱で沸騰する。
このままでは熱くて煮物になってしまうので、別にバスタブに移し替え、水と混ぜて温度を調整する仕組みだ。
「はふぅ。生き返るよ」
で、バスタブの中で年齢不相応(何歳だお前)な台詞をはいているのがメル。
当然素っ裸である。
蒸気が篭っているので良く見えない(見る気も無いが)。
のぼせた頭を左右に振る。
タオルで濡れた髪を拭きながら、アルフィは風呂から出た。
ベッドの上にメルが座っている。
寝間着代わりに、アルフィのシャツを着ている。着替えが足りないのだ。
裾から細い太股を前に伸ばし、股のあいだに手を付いてアルフィを見ている。
濡れた奇麗な金髪を背中に流していた。
「ベッドの上にぬいぐるみが一体」
「ひどいよぅ」
つい本音が出てしまった。
とか最近好例になった漫才をしていると。
ノックの音がした。
「誰だ?」
首を傾げながら扉まで近寄る。
ノブに手を掛けて押しやった。
そこには、ひとりの黒髪の女の子が立っていた。
「アルフィ!」
その娘はアルフィめがけて抱き付いてきた。
よろけるアルフィ。
「うわっと」
なんとか抱きしめるようにして受け止める。
胸のあたりが柔らかくてメルと対称的で大きくなったんだなぁ色々と思う。
「もう。また会いに来るって言ったのに全然来ないんだから」
言ってない。
そんなこたぁ言ってませんよお嬢様。
少女はアルフィの胸板に鼻先を擦り付けるようにしていたが、ふとベッドの上で無防備に白い足を伸ばしているシャツ一枚の女の子を見ると、アルフィを見上げて睨んだ。
「誰、このガキ」
お前も餓鬼だろう。
「おにーちゃーん。だぁれ? かのじょー?」
メルも尋ねる。
というかお兄ちゃんって言わないで、って俺が言えって言ったっけかなんか墓穴掘り掘り。
「説明してもらってもいいよね?」
少女がアルフィの腰に回している手で、アルフィの腰をぎゅっとつねった。
なんで俺がこんな目に。なにもしてないのに。
少女はシャーナ。以前、にオードのオヤジさんの仕事を受けて、その時知り合ったのだ。
いい娘なんだけど行動力が無駄に有りすぎるのが珠に傷だ。
彼女は俺のベッドの上に腰掛けて足をぶらぶらさせている。
というかお前、客のベッドに座るな。
「つーわけでオーナーの娘だ。以上、説明終わり」
壁に寄りかかりながらアルフィは説明を切り上げた。
「終わってないよぅ」
自分のベッドの上に足を投げ出しているメルが口を尖らせる。
「彼女?」
直接的やな、おい。
「違う」「そうよ」
返答にシャーナが声をかぶせた。
「おい」
アルフィがジト目で見るがシャーナは涼しい顔をしている。
「『ずっと一緒にいてやる』と言ってくださいましたもの」
うう、メルの視線が痛い。
だから俺がいったい何をしたと。
「お兄ちゃんって、街ごとに彼女いそうだよね」
「いるかっ!」
「ところでアルフィ。そちらのちっこいのは?」
「ち、ちっこいの?」
メルは顔をしかめた。
「胸とかまだ子供じゃないですの」
「そんな本当のことを言ったら失礼だぞ」
そう言ったら頭に枕をぶつけられた。
「……実力行使はどうかと思うぞ」
メルはほっぺたをぷっくり膨らませた。
アルフィは落下して転がっている枕を手に取り、両手でゆっくり放り投げてメルに返した。
枕が放物線を描く。
枕が飛んでくるのに合わせて、メルは手を挙げて受け取ろうと。
ぺちょっ。
両腕の間をすり抜けた枕は、メルの顔に直撃した。
「うう、わざとだよぅ」
「いや、普通は取れるだろう」
メルは枕をぎゅーっと抱いてアルフィを涙目でにらんだ。
痛かったらしい。
「誤魔化してないで説明なさい!」
シャーナがぴしゃりと言った。
「いや、だからクライアント」
「『お兄ちゃん』って呼んでたけど?」
「変装だ変装。わけありなんだよ」
「どんな?」
「仕事の秘密言えるかい」
「うー。でもさぁ。二人っきりでいたら変なことになるかもしれないのに」
アルフィはメルを見た。
さっき顔面直撃した枕を抱えたまま、なぜか不安げにアルフィを見ていた。
鼻の先が枕でこすれたのか指先で撫でている。
「一つ、逆に聞きたいが」
「なに?」
「アレを見て、俺がそーいうこと考えると思うか?」
「……たしかに」
メルはピンと来ない様子で首を傾げていた。
風呂のこととか考えると本気でわかってないんじゃないのだろうか。
「わかったらとっとと帰れ」
「うわっ。昔の女にもう用はない、って感じだよ」
「ちと情報歪んでるぞ。成長に悪いな」
アルフィはシャーナに近寄ると、手を取ってたたせた。
そして引き寄せた後、肩を押してドアまで歩かせる。
「待ってよ。アルフィが変なことしない用に見張ってないと」
「客のプライバシー覗くんじゃないよ」
アルフィはシャーナを部屋から追い出した。
「子供は寝る時間だ」
「あの子だって子供じゃない」
「俺も寝るんだよ。疲れたから」
「そう。じゃぁ、おやすみなさい」
そういうとシャーナは目を閉じて顔を少し上に向けた。
「おやすみ」
アルフィは額にキス。
「……唇にはしてくれないのね」
「まぁあれだ。大人になってからの楽しみにとっておけ」
「うん、約束、だよ」
シャーナは笑うと階下に降りていった。
アルフィは微笑みながら部屋に戻ると。
メルが機嫌悪そうに突っ立っていた。
「仲いいねぇ」
棒読みで言われると恐いです。
「まぁ、妹みたいなもんだからな」
「お兄ちゃんって、世界中に妹がいるんだろうねぇ」
そこまで言いやがりますか。
「じゃぁランプ消すぞ〜」
アルフィが寝そべったまま、脇の机の上にあるランプに手を伸ばすと、メルが声を上げた。
「消すの?」
「消さないともったいないだろう」
メルを見ると、ぴんとこないのか首を傾げていた。
「……もしかして、付けっぱなし?」
こくんと肯かれてしまった。
「えーいこの無駄遣い娘め」
そう言い放つとアルフィはランプを消した。
「ああっ、ひどいよ」
抗議は無視。
毛布をひっかぶる。
雨はつよいのか天井を叩く。まわりが全く見えないので音だけが響いているように思える。
風呂でのぼせてからだが熱い。
ねむくなるまでぼーっと天井を見ていた。
くらい天井が、一瞬だけ明るく照らされた。
続けて雷鳴。
「うきゃっ」
隣がうるさい。
続けて三度、稲光があたりを照らした。
くるなーとおもっていたら、即座に天を貫くような轟音がした。
割りと至近か。むりに外にいなくて良かった。
ぽんぽんぽん、と肩を叩かれた。ちっちゃな熱い手だ。
首をひねると、誰か立っていた。
雷光に、メルの不安げな顔が浮かびあがった。
「どうした」
「雷駄目なの」
とりあえず俺は上体を起こした。毛布がばさりとずり落ちる。
「夜が恐いなんて、お子様だなぁ」
「うう。子供じゃないもん」
「じゃぁ黙って寝てろ」
「うう、ひどいよ」
反論すらしないのはよほど苦手なんだなあと感得するアルフィなのでした。
再び、大気を巨大な鞭で引っぱたいたような音が轟いた。
メルは、アルフィにぎゅっとしがみついた。
雷光に照らし出された金髪が白く輝いている。
風呂上がりでほてった身体が、シャツ二枚越しに感じられる。
彼女はぶるぶる震えていた。細い腕をアルフィの腰に回してすがり付いている。
「本当に子供だなぁ」
アルフィはメルの肩に手を当てた。小刻みに震えている。腕で強く抱きしめると、ぽんぽんぽんと軽く叩いてやった。
メルの腕の力が抜けた。
アルフィはメルの肩を押しやって少し離れさせた。
そして、脇の下に両手を突っ込むと、上半身の力だけでメルを担ぎ上げた。
「きゃっ」
悲鳴とともに足が暴れ、スリッパの片方が放物線を描いてメルのベッドまで飛んだ。
アルフィは、メルをベッドの上に持ち上げると、くるりと反対向きにさせた。
そして、後ろから抱きしめた。腕をちっちゃい胸の下あたりに通し、メルを抱え込むようにした。
シャツの肩甲骨のあたりが汗で湿っている。
耳元に唇を近づけると、囁いた。
「ほら、付いていてやるから。とりあえず落ちつけ」
「う、うん」
「雷、そんなに嫌いか?」
「恐いんだよぅ。音でっかいし」
「なぁ、おい……」
返事が無い。
ゆっくりと呼吸しながら、メルは眠っていた。
無垢な寝顔にアルフィの顔がほころぶ。
アルフィは背中をベッドに付け、抱きかかえているメルをベッドに横たえた。
何も心配してない安らかな表情だ。
「ああああふ」
あくびが出てきた。
俺もねむい。
「面倒だな……」
ちと狭いがこのまま寝てしまおう。
「ぐぅ」
ふわふわ宙に浮いている感触。
夢の中だけど外はあかるいでーな妙な感覚。眠りと目覚めの境界線に揺られて漂っている。
柔らかい枕に顔を埋めて
(いい匂いがする……)
あったかい。
だれかが俺の頭をゆっくり撫でている。
「猫じゃないんだから……」
でも、そう言いながら小猫が母猫にするように、顔を摩り付ける。
「ああ、平らでいいなぁ……」
頭を撫でていた手が止まった。
「にゃー」
鳴きまねなんかしてみる。
なんか、頭に触れている手が微妙に震えているというか痛いです髪掴まれると。
肩に手を掛けられてくるりと一回転。
腹に蹴り一発食らって。
「ぐえっ」
あたりは明るかった。
尻から堅い床の上に落下。背をしたたかに打ちつけた。
「い、いったー。なんだ?」
むくりと起き上がると。
「ひどいよっ」
顔面に白い塊が飛んで来て直撃。鼻先がじんじんする。
涙目になったメルが、物を投げた姿勢でアルフィを睨んでいるのが見えた。
「うう、これから大きくなるもん」
階下の食堂でアルフィとメルが飯を食べていた。
メルはフォークとナイフを器用に使って流れるようにゆっくり食べていた。
むぅ。珍しくお嬢様っぽいぞ、こいつ。
「おはよう。アルフィっ」
明るい声と同時に、背後からしなだれかかられた。
背中に胸が押し付けられる。
ここ一年で随分成長したもので……いやいや。
「お前。邪魔」
「なによぅ」
アルフィはフォークを置き、振り向いた。
「せっかくアルフィに会いに来てあげたのに」
シャーナは頬を膨らませていた。
「べつに頼んでないが」
ああ、そうだ。
「お願いがあるんだが」
「えっ。なに?」
「メル、見ててやってくれないか?」
とたんにシャーナは露骨に嫌そうな顔をした。
「なんで私が」
「頼むよ。シャーナしか頼める奴がいないんだ」
シャーナはしばらく「うーん」と考え込んでいた。
「だめか?」
「そうねぇ……じゃぁ、かわりに一つお願いを聞いてくれるならいいよ」
「うむ、聞いてやろう」
「本当? ありがとう」
シャーナは笑っていたが、いや、そんなに喜ばんでも……とか思わなくもない。
「約束だからね」
「……お兄ちゃんって、騙されるタイプだよね……」
メルがぼそりと告げた。
(メルとシャーナがなんかやるシーン)
前日より雨は弱まったがまだぱらついていた。
エイゲンの領主の城の最上階、領主の部屋には領主ムルズと、一人のメイドがいた。
「陛下はまだまだお忙しいようで。使いにメイドを寄越すとは」
ムルズはそう目の前に立っているメイドに告げた。
「使いが誰であろうが、貴方には関係の無いことです」
メイドはそう返答した。
紺のメイド服の上に白いエプロン。短く整えられた黒い髪のてっぺんにフリルの髪留めをしている。
目も黒い。東方出身に見える顔立ちをしている。
「それよりも、少女十人、集めましたか?」
「間違いなく。陛下への忠誠の証として、たしかに」
メイドは肯いた。
どうやら、このメイドのほうが領主より格上らしい。
「そう、この街に王女が入ったという話は聞いてますか?」
ムルズはぴくりと眉を動かした。
「初耳ですな」
「もうちょっとまともに諜報活動したほうがよろしいようで」
「耳が痛い」
「兵、お借りしますわよ」
もとより反対する権力はない。
メイドは満足げに肯くと、部屋から出た。
そして、首を部屋の中に突っ込んで告げた。
「お馬鹿なことは考えませんように」
足音が遠ざかる。
「……王家もメイドの質が落ちたな」
「おーい、シャーナ」
遠くからパパの声がする。
シャーナは呼ばれて厨房まで行った。
「すまんが、塩買って来てくれ」
「またぁ? ちゃんと量確保しないと駄目だよ」
とまぁ突っ込んではみたが、それはそれとしてシャーナはお金を預かって裏から出た。
よろずやさんはちと遠い。
「最近値上がりひどいからなぁ……足りるよね」
ぼやきながら傘を差して道を歩く。
石畳の上を歩くとぺちょぺちょ水が跳ねる。
「あれ?」
道の端に、メイドさんがひとり傘も差さずに突っ立っていた。
なんか冷たい目をしている。
脇を通りすぎようとしたら。
「待って」
声を掛けられた。
振り向くと、メイドはスカートをまくって中に手を突っ込んだ。
抜き身の剣が現れ、それがシャーナの首筋にぴたりと当てられた。
「待たないと殺すわよ」
「え? な、なんで?」
「なんでもいいから、とりあえずお黙りなさい」
宿屋の主オードは来客を受けていた。
目の前にいるのはメイドだった。
彼女は開口一番。
「手伝って欲しいことがあるの」
「……はぁ。うちの仕事に関係がございますのならば」
「大有りよ。人探しをしているのよ。浮世離れした金髪の少女でロリっぽいひと」
「……存じ上げませんな」
「白を切らなくてもいいから。いいから手伝いなさいよ」
メイドはカウンターの上に片方の靴を放り投げた。
濡れている。
「娘さん、ドナドナされたくなかったらね」
「……」
「私が必要なのはそのロリだけだから。ちゃんと帰してあげるわよ」
霧雨ぐらいではあるがまだ降っていた。
宿屋から少し離れた広場。
そこへ、アルフィとオードは並んで歩いていた。
「で、どうしたんですか? シャーナが?」
オードは黙って遠くを見ていた。
雨で霞む風景のむこうに、領主の城がぼんやりと見えた。
曇っているせいか泣いているように見える。
「すまない。アルフィ」
「え?」
オードはあさっての方向を見たまま告げた。
「貴方が、アルフィですね?」
女の声がした。
振り向くとメイドさんがいた。
「……さいきんメイドばっかり」
もっともこっちは黒髪で前髪がちゃんと切ってあるが。
メイドさんはスカートをまくると裾に手を突っ込んだ。
そして、抜き身の剣を取り出した。
そのままぶんと一振り。
「いきなりかよ!」
アルフィは腰から鞘ごと剣を外すと、横薙ぎにされた剣を受け止めた。
「陛下に逆らう不届きものめ。その愚かさは自らの命で購うがよい」
そのころ宿屋。
メルはひとり部屋にいた。
「うう、みんな帰ってこないよ」
とかおもっていると扉が勢い良く開けられた。
兵士たちが入ってきた。
「姫様、動かずに。我々に付いて来て下さいませ」
口調は懇願だが強制である。
メルは無視して慌てて窓に駆け寄り、下も良く見ずに飛び出した。
メルの背に光が集まる。
それは双翼になり、落下速度をゆるめる。
……下を見ると兵士が四人、メルを見上げて待ち構えていた。
「うう。行動、読まれてるよ完全に」
アルフィは燃える剣を眼前のメイドめがけて叩き付ける。
鞘を被うように炎が吹き上げている。
メイドは剣を横にずらし、軽く受け流した。
剣の上を鞘が滑る。
メイドの剣は円を描くように下から回り、アルフィの脇腹めがけて横薙ぎに振る。
アルフィは剣に力を込めた。
鍛え上げた筋力で剣を無理矢理引き戻した。
メイドの剣を跳ね飛ばす。
そして、メイドの首を狙って突くように叩き込んだ。
メイドは体をずらして避けた。かすった肩のエプロンの布が千切れる。特殊な糸で編んだ対魔法対衝撃その他もろもろ、特注のエプロンであるが。
開いたアルフィの胴体にメイドの剣がかすった。耐性が不十分なので踏み込みきれない。だが、剣に魔力が篭っているのでかすれば十分。
傷の上に氷が集まって瞬間的に脇腹が凍結。
アルフィのからだが固まる。冷気で筋肉が引きつる。
そこに、上段からの一撃。
アルフィは軌道に剣を当ててそらしたが不十分だった。剣はアルフィの頭部から左肩へと軌道を変えて切り裂いた。
皮鎧の肩当てが千切れ飛ぶ。
アルフィは倒れた。
「この程度か。たわいもない」
メイドはアルフィを見下ろした。
「吸血鬼化したアルベルトと次期騎士団長と呼ばれていたケイン様を倒したというからもっと腕の立つものだと思っていたのに……期待外れな」
「悪かったな」
アルフィはメイドを睨み付けながら立ち上がった。
「まだやるというのか」
メイドの嘲笑を無視。柄を握り締める。剣を伝った魔力は鞘の上から燃え上がる。
左腕をだらりと垂れさせながら。
「当然」
アルフィは叩き付けるように燃え上がる剣を振った。
最初の一撃に比べて明らかに遅い。
「愚かな」
メイドは剣を上げて受け止める。
と、アルフィの剣が飛んだ。
柄を外側にしながら、くるくると円を描くように回転する。
アルフィは拳を握り締める。
先ほどまでだらりと下げていた左手を。
肘を曲げて体をひねる。拳が意志に反応して燃え上がる。
至近からメイドの腹めがけて拳をぶち込む。
メイド服とエプロン(対衝撃)の上からではあるが、メイドは体を折り曲げる。
掲げていた剣を離す。
開いた顔面に燃える右の拳が入る。
メイドのからだが宙に舞う。五歩ほど離れたところに背中から落ち、一度跳ねてから止まった。
メイドの剣が石畳に落ちた。続けてアルフィの剣も。
剣を受けたアルフィの肩は、皮鎧と下の服まで切れて下が露出している。
左肩は紺色の布に包まれているのが見える。
それはメイド服と同じ色合いをしている。
対衝撃、対魔法の糸で編まれたメイド服の布だ。
先日の戦いの後、エレナに治療してもらったあとに包帯の上から撒いてもらったものだ。
「な、なんでそんなのが」
「借り物だ」
アルフィはあっさり答えた。
「そういえば、あとでちゃんと帰さないとな」
「……まぁいい。もう十分だ。とっとと帰って己の愚かさを嘆くがよい」
メイドは起き上がると剣を拾わずに逃げていった。
アルフィは追わない。
「ちっ。やばいな」
アルフィは腰に剣を戻すと宿屋めがけて走り出した。
宿屋に戻るとざわついていた。城の兵隊が来て誰か捕まえていったとか客と従業員がおろおろしている。
「むー。いかん」
アルフィは壁を拳で思いっきり叩いた。
入り口から、息をきらせて走ってきた男が入ってきた。オードさんだ。アルフィを追いかけて走ってきた。
「うー。アルフィ君。すまん」
とりあえずアルフィはオードの首を締め上げた。
「あんたがあんたがあんたが〜っ」
「うーうーうー」
「とりあえず事情を話しやがれこのオヤジ」
「あーうーうーうー」
首が絞まっているので喋れません。
アルフィの剣幕に、周囲にいた店員も他の客も突っ込めずに黙っていた。
オードは必死になってアルフィの手首をぽんぽん叩く。
アルフィの手から力が緩んだ。
オードはぜーぜーと気管支を鳴らした。
「うう、死ぬかと」
「いいからとっとと話す」
オードは涙目になりながら娘がさらわれて脅迫されたことを話した。
「しょうがなかったんだよ」
「事情は良く分かったが、自分で言うんじゃないこのオヤジ」
「しかしこう、困ったことになったなアルフィくん」
「うわー、今度は何事もなかったかのようにかよ」
「ふっ。こんな事を言っている場合かね」
「……この腐れオヤジが」
アルフィはオードを睨み付けたが、軽く流された。
娘と客攫われたってのになんでこんなに軽いんだ、このオヤジは。
「事情は解ったが……どうしよう」
アルフィはあごに手を当てて一呼吸。
「……正面から行くしかないか」
シャーナは左右から兵隊に挟まれ、逃げられないように前後にも兵がいて、城へと連れまわされていた。
通りすがりの街の人がじろじろ見てくるが、兵士が睨むと視線を外してすごすご歩いていった。
「うう、一体なんでこんな目に」
「黙って歩け」
兵士のひとりは冷たく告げた。
しばらく歩くと城へと付いた。
正面から連れられて入る。入ってすぐの広間から右に連れられて廊下に沿ってしばらく進んだところで、ひとつの扉の前まで付いた。
「入れ」
兵に言われて中に入る。中には一人のメイドがいた。彼女はシャーナを見ると籠の中にある白い布を手に取った。
良く見るとワンピース状、袖の付いた膝まである白い服だった。
「とりあえず全部脱いで下さい」
「はぁ?」
つい奇声を上げる。
「そしてこれに着替えて下さい」
手に取った白い服を掲げる。
「……嫌だって言ったら?」
「死体見るの嫌ですからとっとと着替えて下さいませ」
いまさらながら背筋が寒くなった。
「……もしかして、生け贄?」
「私は存じ上げません」
エルフレア王国を今現在支配している(自称)国王ベルングスは、支配下に入った地方にひとつの命令を出した。
『若い女性10人を王都まで連れてこい』
ハーレムでも作ろうというのか。連れて行かれた娘はきっとあんなこととかあんなこととか。
うう、アルフィ助けてよ。
シャーナは白い布一枚の服に着替えた後、再び兵士に連れられていた。
下着まで脱がされたので下がすーすーする。
ぶかぶかの服で胸元が大きく開いている。最近ようやく大きく鳴り出した胸の上半分まで見えそうで、左腕を回して押さえている。
みないでよっ、とでも言おうと思って横を見ても、兵士達は黙って歩いていた。
階段を降りる。
空気がじめじめする。
ひんやりと冷たい石の壁の中を歩く。
見張りが立っていた。その脇を通る。左右に鉄格子が嵌まった部屋が連なる。
「入れ」
その、牢屋のひとつの前で止まり、兵士は告げた。
中には先客が五人いた。
「念のために言っておくが、逃げようなどと考えるんじゃないぞ」
それは逃げたら殺すって脅しですか?
やばすぎて聞けなくて、そのまま中に入った。
先客を良く見る。
シャーナと同年代の成人したばかりの女性が四人。
そしてひとり、変な人がいた。
赤い髪で前髪で目元まで隠れている。頭を下げて床を見ている。
シャーナにはぶかぶかであるが、彼女にはきついのか胸回りがきつく盛り上がっている。
壁に寄りかかって、足を揃えて座っていた。
「先生?」
シャーナは声を上げた。
その声に、いままで眠っていたのか、赤毛の女性は顔を上げた。
「なんだ? シャーナじゃないか。どうしたこんなところで?」
「エレナ先生こそ! どうしたんですか?」
メルは兵士に連れられて城に付いた。
姫様ってより脱走兵みたいな扱いではある。
城に付いた後、まず連れられたのは奥にある風呂である。
そこにいたメイド達に剥かれて湯船に叩き込まれた後全身くまなく洗われた。
いままでろくに風呂に入ってないでしょう、といわんばかりのフルコース。
上がった後肌に乳液まで擦り込まれて(この年なら要らないんじゃないか?)そのあとドレスへ着替えさせられた。
久々に髪を結い上げられて、赤いドレスを着せられたメイのところに、頬を赤く腫らしたメイドがやってきた。
「……どうしたの? それ」
「そう言う事には触れないのが礼儀でございますわよ、姫。さぁ、とりあえず、領主様のところへ」
メイドはそう告げた。
「うう、行かないと駄目?」
「姫様の御尊顔を殴りたくはないので黙って付いていらしてくださいませ」
メイドはあっさりと答えた。
「ううぅ」
「そして王都までお帰りいただきますからね」
メルは廊下を歩いている。
彼女の前後にメイドが続く。かしずいているようにも見えなくも無いが、実際には『逃げたら死なす』と背後から殺気むんむんである。
なんか顔が腫れてるし。
また扉の前まで来た。先導するメイドがドアを開けた。
中は広く、天井も高い。
奥に二人いた。メルには覚えがある。たしかエイゲン領主のバイラと、その息子である騎士グリフだ。去年の舞踏会で挨拶された。
息子のほうの騎士グリフはエルフレア王国四騎士の一人に数えられる。エイゲンは王弟派に付いたので今回の内乱には直接参加していないはずだが。
「バイラ様。王女殿下をお連れいたしました」
頬を腫らしたほうのメイドが、そう告げた。
「リリアよ。姫を連れ行くのは汝の責務。なにもわしに報告せんでも」
バイラはそう言った。
「エイゲンの忠誠の証として、バイラ様の名前でお連れなさるのがよろしいかと愚考いたします」
「左様か」
バイラは肯き。
「お心づかい感謝する。姫様には、この城に留まられるあいだ礼を尽くすように皆のもの心得よ」
「その通りに」
リリアと呼ばれた黒髪のメイドは頭を下げた。
シャーナは廊下の奥、先ほど地上から入ってきたほうをちらりと見た。
見張りが立っている。
お互いに壁が妨害して、牢屋の奥から見張りまでは見えない。
兵士は暇そうにあくびをしながら突っ立っていた。
シャーナは牢屋の奥に進む。
そこには一人の赤毛の女性が、石壁に寄りかかって座っていた。
目元まで隠れて表情が良く見えない。
そもそも起きているんだかねてるんだか。
「寝てないぞ」
彼女はそう言った。
シャーナはその前に座った。
布一枚越しに石畳が尻に当たるので冷たい。
シャーナは眼前の盛り上がった胸を見た。
「うー。すごい攻撃的な」
「なにが言いたい?」
「世の中不公平だよ」
「……私の胸をあげつらいに来たのか?」
「捕まったんだよ!」
シャーはとりあえず怒鳴った。
「で、さ。なんでエレナ先生までこんなところに?」
エレナとは、弟が病気に罹り、それをたまたま通りすがりの自称医者に見てもらってからの仲だ。
内乱前は、王家付き医師になってからもときどき見に来てくれたものだ。
「うむ。生け贄候補の乙女の一人として捕まってな」
「うわー。うそっぽー」
シャーナは声を上げた。
「乙女って柄じゃ……」
エレナはシャーナの頭を引っぱたいた。
「痛い」
「諦めろ。痛くしたんだ」
「うう。げんろんとうせいだよ〜。おうぼうだよ〜」
「黙れ」
「……先生は逃げないの? 一人だったらあっさり逃げ……もぐっ」
エレナはシャーナの口を塞いだ。
分厚い手のひらが、口元に当てられて熱い。
そのままエレナは、脇から手を通してシャーナを引き寄せた。
「きゃっ」
シャーナは、エレナの胸に抱かれる形になる。
シャーナの最近大きくなりはじめた胸が、エレナの丸々としたそれに押し返される。
うわーっ。いいな。このくらいあったらお兄ちゃんにも……
「外から聞かれているかもしれないから一応黙れ」
そう言うとぽいっと離された。
「しかしこー、困ったもんだ。明日あたり王都まで護送だそうで」
エレナは再び石壁に寄りかかった。
「どうしたものか」
そう言いながらエレナは両手で部屋中の皆に手招きをした。全員が来ると、口元に指を一本立ててくっ付けた。
なにを始める気だ? 先生。
アルフィは白亜の城からちょっと離れたところから遠目に様子を伺っていた。
エイゲンの城である。
正面の門は開いていたが、見張りが立っている。
「ふむ。堅い守りじゃのぅ」
アルフィの横には一人のオヤジが立っていた。
「……つーか付いてくるなよ。邪魔」
アルフィはオードをジト目で見た。
「いかんぞアルフィ。この、娘を守りたいという親心が分からんのか」
「わかったのでとっととお帰りください」
「愚かな。こういう時こそ、齢を重ねた燻し銀の男の知識というものが役に立つのじゃ」
「ほう? なにか策でも?」
「全く思い付かん」
「即答するな帰れこのオヤジ」
アルフィは諦めた。
もう一度城を見る。
兵士が二人立っている。見たところ魔術師ではない。
魔術師と一般兵では戦闘能力が小犬とライオンぐらい違う。
火球を叩き込まれたら普通のひとには対処できねぇよこのやろう、といえば理解しやすいだろう。
「さて。行くか」
「どうするんじゃ?」
「正面突破」
断言した。
アルフィはポケットに突っ込んでいた紙片をオードに投げた。
「なんじゃこら?」
「内部見取り図」
高かったんだぞ、と付け加えた。
「さすがに隠し部屋隠し通路のたぐいはないが、とりあえずは十分だろう?」
アルフィは地図の一点を指差した。
地下牢。
「俺が上に引きつけとくから、たのんまっせ。おやっさん」
と言い、アルフィはふと気が付いた。
オードは変なものを背負っている。
背負い袋がある。その上端から、棒状のものが四本、天に向けて突き出している。
「……なんだ? それ」
「うむ、今回のひみつ兵器と言う奴だ」
左様ですか。
「客の忘れ物なんだが」
「おい」
「まぁ、十年ぐらい放置だったから本当に忘れたんだろう。なにより非常時だ」
「……『非常時』って付けばなにやってもいいって思ってやがるな」
アルフィはため息を吐いた。
「覚悟決めろよ。ここまでやっちまったら俺達犯罪者だ」
アルフィは両腕を突き出して魔法の詠唱を始めた。
「我が手に集え。炎よ」
アルフィが合わせた左右の手のひらに炎が産まれ、一気に大きくなる。
両腕を広げたほどの大きさの火球が現れる。
それを抱えたままアルフィは走る。
「こんにちは〜。炎の宅急便で〜す。邪魔だ退いて〜」
城門前にいた二人の兵士は慌てた。炎の塊が正面から突っ込んでくる。
普通こんなことする馬鹿はいない。
しかし目の前まで来て慌てて左右に分かれるように避けた。
アルフィは火球を抱いたまま中に入る。
入ってすぐ、吹き抜けの高い天井の部屋になっている。
「誰だ。貴様っ。テロリストかっ」
怒鳴り声が聞こえたので、とりあえず声の方向にぽいっと火球をぶん投げた。
ぼよんぼよんと音はしないが、そんなノリでゴム毬のように跳ねながら罵声を上げた職員のいるカウンターめがけて弾んでいった。
≪受付≫とか書いていたようなきもしなくもない。
「うわわわわわあああ」
慌てて逃げ出した職員の背後で、カウンターに火球が当たった。
炸裂した。
中央から真っ二つに折れた机だったものが壁まで飛び、さらに砕け散った。
「姫様、受け取りに参りました」
奥から待機して板と思われる兵士達が出て来る。
アルフィは腰から鞘ごと剣を外すと。
「とりあえず一発撃っとくか」
火球の魔法を唱える。手のひらサイズの火球が飛んでいき二人吹っ飛んだ。
柄を握り締める。
テロ行為で煙やほこりが巻き上がって視界めちゃくちゃなところに走って兵士めがけて飛び掛かる。
「くらいやがれ!」
上段から兵士の肩をぶったたく。
兵士が剣を落として倒れる。
となりの兵士がアルフィめがけて剣を振る。それを躱して胴体を剣でぶん殴る。
「姫はどこだ!」
とりあえず聞いてみる。まぁ見当は付くが。
「貴様、正気か?」
兵士の一人がうめくように言う。
まぁ狂っているんだろう。正直。
アルフィは兵士達の剣を躱してそらしてなぎ払ってひたすら剣で叩く叩く叩く。
元々の実力が違う。
半分ぐらいを床にはいつくばらせた(全員息はしてますよ)ところで、ようやく兵士の動きが止まった。
「続ける?」
兵達は悲鳴を上げて背中見せて逃げ出した。
「さてと、上行きますか」