「主人公が襲撃される」というタイプのプロットについて考えてみる。
・主人公が襲われる
・死ぬ
あっさり終わってしまった。
これでは何がなんだかわからないので、事情を説明してみる。
・主人公が頭を殴られる
・血がだくだく
・襲撃者、襲った理由を延々と述べる
・気を失ってそのうち死ぬ
よくわからないがだめっぽい。
戦闘というのは手段であるのでそもそもの目的を考えてみよう。
いろいろドラマがあって殺意を抱かれて殺されるサスペンスドラマ状態とか。
「おい」
振り向いたらいきなり殴られた。
黒色のでかい塊が顔めがけて飛んできたのは見えたような気がする。肩からアスファルトに落ちて、顔がこすれる。
右頬が痛い。
手を突いて起き上がる。鼻が詰まって鉄のにおいがする。アスファルトの上の砂が手のひらに突き刺さる。
背中越しに後ろを見ると男が立っていた。
顔に見覚えはない。
身長が二メートル近くある大男で、黒い指貫グローブをはめている。
「立て」
男は言った。
いきなり殴りかかってきて、立て、もあったもんじゃないだろう。
俺は立ち上がって構えた。
「いきなりなにをしやがる」
右の親指で鼻を押さえてかんだ。赤いねっとりとした血が飛んだ。
「俺は大神剛(おおがみ、つよし)。貴様に泣かされたつぐみの兄貴だ」
……だれ、それ?
……
また孝明(たかあき)かよ!
「いやちょっとまて。お前勘違いしているぞ」
「なにがだ?」
「俺には双子の弟がいて、あの、そっちじゃないかと」
「世迷いごとを言うな! つぐみから貴様の名ははっきり聞いたぞ」
ぶん、とこぶしが飛んできた。
あのやろ、人の名前でナンパするなと何度言っても聞きやしない。
右の拳を受け流すと左の拳が顔面に来た。
弾く。
つぐみの兄貴とやらの足が上がった。
弧を描いて俺の頭を刈ろうとする。
俺は体ごと頭を下げた。
足を折り曲げ、尻がアスファルトに付きそうになる。
頭のあったところを兄貴の靴が通過する。
動かない相手にだったらいいダメージなんだろうけどな。
俺はくるりと一回転して、左足を軸に、ぴんと伸ばした右足で兄貴の軸足を刈った。
男が転ぶ。
俺は片足で立ち上がると、そのまま右足を天に向ける。
男が俺の脚を見て、顔をガードするように腕を掲げた。
そんなの無駄なのに。
逃げるように倒れていく兄貴の脳天めがけて振り下ろす。
掲げた腕と腕のあいだをすり抜ける。
靴越しに額を割った感触があった。
男は後頭部をアスファルトに叩きつけられて転がった。ごろごろ転がってわめくだけの元気があるってことは大丈夫だろう。
「なぁ、一応言っとくが。本当に弟だからな。そっち襲えよな」
聞こえてねーだろうなぁとはおもいつつも、俺は拳を男の胸めがけて振り下ろした。
弱いものいじめって嫌いなんだがな。
二メートルある巨体は無駄にでかくて重かった。俺はそれをビルの陰にぽいっとすてた。
時計を見ると三時二分。
「やばっ。遅刻だ……また怒られるんだろうなぁ」
俺は待ち合わせの駅前目指して走った。