神殿付属学校を卒業する十五の春。
卒業生を見送ったあと、リルリィーアとティナは裏の孤児院に戻った。
今年は十五で成人して孤児院から出て行く子はいないので静かなものである。
「あー。疲れた。だれかお茶を入れて」
リルリィーアはのどを押さえながら広間にいた子供に告げた。アリスは元気よく返事をすると台所へと消えた。
リルリィーアは神殿長代理として式で立ちっぱなしだった。脇で座ってボーっとしているティナが神殿長で学校の責任者ではあるが、さすがに生徒に校長役をさせるわけも行かずにリルリィーアが代理をしている。
ティナも法衣を着て立ちっぱなしだった。
「大丈夫?」
額に手を当ててみる。
熱はない。
「眠いんだよぅ」
リルリィーアはじとーっと目を細めた。
「みんな話長くて」
「……悪かったわね」
リルリィーアが憮然としていると扉から女性が入ってきた。
「よっ」
「こんにちはー」
リルリィーアの腐れ縁で部下のノーラだった。
「息子はどうした?」
「帰ったよ。日が暮れたら飲み会だから寝ておくって」
「……いーのかそれ」
「まぁそれはさておき、はいティナちゃん。このあいだのお礼」
「ありがとうございます」
ティナは礼を言うと即座に包装を引っぺがした。
中身はクッキーだった。
「はむはむ」
早速食ってる。
「……」
「どうした、リィーア」
「……いやちょっと信仰に疑問を覚えてみただけ」
「あんたが言うなと」
アリスがお茶を運んできてくれた。
きっちり三人分。
アリスは一礼すると戻っていった。
「無事卒業か。まだ二人いるんだよね」
ノーラが言った。
「いいじゃないの。あなたは自分の子だけなんだから」
「リィーアも子供作ればいいのに」
「うるさい」
リルリィーアはクッキーを食べた。
バターの甘みが口に広がる。
「ティナちゃんも、あと五年もしたら卒業よね。ここ出てリィーアとかほかの子供たちと別れるのかな?」
「えっと。わたしはここの神殿長だからここに残るんだよ。お姉ちゃんと一緒に」
「そっか」
ノーラはリルリィーアの肩をぽんとたたいた。
「卒業するのはリィーアのほうね。いい加減結婚しないと」
「ほっとけといっている」
リルリィーアの手の中で、カップが震えて赤い液体が玉になって弾け落ちた。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんはわたしがもらってあげるから」
ティナが言った。
「……気持ちだけで結構です」
お題もの書き:別れ参加作品