寝ぼけて召喚するなとゆーとるに


 コンビニから出たら、むんっ、と熱風が来た。
 アスファルトでもんじゃ焼きができるぐらい暑い。むしろ熱い。
 汗が噴き出してくる。
 少々みっともないけど胸元をばさばさする。そのまま最近大きくなってきた胸をちらりと見やる。
 ……むー。こんなにあっても邪魔なだけだよぅ。
 蒸れるし。
 ため息を一つ吐く。
 さっき買ったバニラのアイス二つを手に、融ける前にとっとと大樹の家へ向かった。

 大樹は私の幼馴染だ。小学校二年生のときに、私が引っ越してきてからの付き合いだ。
 私の母と大樹のお母さんは高校時代の同窓。その付き合いでいろいろ腐れている。
 私は表から入って庭へと回り込んだ。
 大樹は居間でテレビを見ているはず……
 と思ったら寝ていた。
 テレビはつけっぱなしで高校野球をやっていた。
 あんだけ一人で寝るなと言っているのに。
 舌打ちひとつ。
 大樹の胸の中に、見ず知らずの女の子がちょこんと抱かれていた。

 大樹は幸せそうに微笑みを浮かべて眠っていた。
 頬を女の子に擦りつけている。
 なんかかちんときた。
 私はコンビニの袋をちゃぶ台に叩き付けると、一つ取り出した。
 蓋を開けて木のへらも取り出す。
 女の子は金髪で、コスプレみたいな白い服を着ていた。ロングスカートで靴下らしきものがが覗いている。
 首筋に玉の汗が浮いている。こんな暑いところで大変だ。
 私はアイスにへらを突っ込んだ。
 半分融けかけて、みずっぽくなっていた。
 ひとすくいすると、そのまま大樹の首筋にぽとりと落とした。

「きゃっ」
 女の子みたいな悲鳴を上げ、大樹は慌てて跳ね起きた。
 いい気味だ。
「……なにやった」
 首元を押さえて睨み付けてくる大樹を無視して、アイスを一口食べる。冷たくて気持ちいい。
「すげーびっくりしたぞ」
「おはよう」
「……」
 ようやく察しやがったらしく、大樹は押し黙った。
 そして横目で傍らに眠っている女の子を見る。
「……寝ちゃった?」
「そらもう」
 大樹はちっちゃくなった。
 白い服の女の子はむくりと起き上がると、目をぱちくりさせた。
 うう、同性の私から見てもかわいいよぅ……うらやましい。
 こんなに愛される姿なんて……不公平だな

 なんでかしらないが、大樹にはへんな力がある。
 超能力とか魔法とか電波ゆんゆんといったところだ。
 一人で……となりにだれかいないで寝てしまうと、女の子を召喚してしまうと言うこまった異能だ。
 女の子ばっかりと言うのが大樹の性格を良く現している。
 つるんでぺったんこばっかり……
 そして送還する方法はただ一つ。
「さてと」
 私はソファーの下から、木刀を取り出した。
 油性ペンで、『斬鉄剣』と書いてある。
「いやまて」
 大樹が手を振る。
「もうちょっと温厚な方法が……」
「何がお望みかしら?」
 そう、送還するには、別の女の子がいた上で、もう一度大樹が眠る必要がある。
 もっともこう、人間ねようとして眠れるのはのびた君ぐらいなもので、無理矢理寝るなら道具の助けが要る。
 この『斬鉄剣』(とかかれた木刀)なら一撃必殺だ。
「喧嘩しちゃだめだよ」
 金髪の女の子は言った。
「お風呂場でまで……めーだよ」
 なんかねぼけているっぽいな。まぁあちーし。湿度あるし。今日は。
 まぁ、説明の手間が省けていいか……
「大丈夫だよ……ぼくたち仲がいいから」
 大樹は女の子に優しく微笑みながら、頭を撫で撫でしてやっていた。
 つい、木刀を握る手に力が篭る。このまま本当に一発で寝せてあげようかしら。
「一緒に寝ようよ」
 彼はにっこり笑ってそう告げた。
 その微笑みに逆らえないということでも知っているのだろうか。
「いいよ」
 木刀を一振り。
「一撃で楽にしてあげるから」
 そーすればぐじぐじ悩まなくてもいいのかねぇ……マジでやってみようか。
「いや……ちゃんと眠いし……大丈夫」
「ちゃんと寝とけといってるだろう!」
 尻拭うのっていつも私なんだぞ。
「ごめん」
「まぁいいわ……しょうがないから一緒に寝てあげる」
「いや、そこまで要求してない……」
 アイスをコンビニ袋の脇に置き、リモコンでテレビを消した。
 声を無視して、私は大樹の傍に横になった。
 大樹を挟んで女の子と川の字。
 普通は逆だよね。
 肩がくっつくぐらいの距離。
 暑いせいか大樹がそこにいるという感じがわかるようなきがする。
 私はソファーの上のクッションをとって枕にした。
 いつも大樹が使っている奴だ。
 なんか座りがわるいのか、体をもぞもぞ動かしていた大樹の肘が私の胸の側に当たった。
「あんまりくっつくなよ……」
 大樹は顔を背けたまま、わたしが悪いみたいにそう告げた。触ったのはあんたでしょうが!
「木刀がいい?」
 睨み付けながらそう聞いてやる。
「ううぅ」
 最近大樹は一緒に寝てくれない。
 嫌われてるのかな……そう思うとなんか。
 やめよう。
 でもこう、なんか大樹の傍にいると安心する……眠い。暑いからね今日は……

 気が付いたら寝ていたらしい。
 隣では大樹がすやすやと眠っていた……人の気も知らないで。
 女の子は消えていた。どこの世界のひとだったんだろう?
 テーブルの上を見ると、アイスがふたつ完全に融けていたが、気にしないことにしよう。
 後で一緒に買いにいけばいいや。


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