朝日が広い裏庭を照らしている。
リルリィーアは箒で裏玄関を掃いていた。ここが神殿裏にある孤児院への入り口になる。
彼女はいつものように青い法衣の上にエプロンを身につけている。
子供たちはまだ中にいる。
裏庭には今は何もなかった。これが昼になると洗濯物が延々と翻り、子供たちがわいわい遊び、ボールを洗濯物に蹴りこんで説教食らうというのが日常茶飯事だがとりあえずいまは何もなかった。
裏庭の向こうには捜査局の建物が見える。
庭の端には子供たちが育てている花や野菜が葉っぱを伸ばして陽光を一身に受けている。
リルリィーアはそれを見て目を細めた。
もっとも、彼女の顔は、前髪に隠れてよく見えない。化粧っ気はろくにないが、唯一、唇に紅を差していた。
子供たちがわいわいいいながら種をまいたり水をやったり雑草を抜いたりしている姿を思い出した。
まったりとした日々はいいなぁ。と思ってみる。
ぼーっとして手を止めていたリルリィーアに、背後から声がかかった。
「じゃぁ、行って来るよ」
リルリィーアははっとして振り返った。
彼女の視線の先には一人の男がいた。
ミルだ。
髪を短く切りそろえて、ぴんと背筋を伸ばして微笑んでリルリィーアを見ていた。
腰に剣を帯びている。
「お待ちなさい」
「なにか?」
「ほら、襟が曲がっているわよ」
リルリィーアは彼を引き寄せると襟に手を回して整えた。
耳元に囁く。
「これでよし。ちゃんとしないとだめよ」
「はいはい。でもさ」
「なに?」
「こうやっていると、恋人みたいだね。っていわれそうだよ」
リルリィーアの顔が赤くなった。
ぜんぜんそんなこと思いもしなかった。
リルリィーアはぱっと離れた。
恥ずかしくてミルを見ていられなかった。が、そう言ったミル本人は平然とにこにこしていた。
なんか腹が立った。
「だれか見られて困るような人でもいるのかしら?」
言葉の端々がとげとげしくなってしまう。
「いいや」
リルリィーアは玄関脇においておいた弁当箱を取ってくると、そっぽを向きながらミルに押し付けた。
「あまり物だけど食べなさいよ。あなたお金ないんだから」
ミルはここミトフェムの町に来た初日に財布をすられてお金なし。泊まる金が無いのでとりあえず神殿に泊まっているのだった。
「うん、ありがとう」
ミルは一礼した。
「ちょっとうれしかったよ。恋人同士みたいで」
爆弾発言残してミルは捜査局に。
リルリィーアは声にならない声でうなって彼の背中を見ていた。
当時リルリィーアは孤児院で子供たちの世話をする傍ら、捜査局で事務の仕事をしていた。
もはや腐れ縁状態の元クラスメートのノーラと机を並べて伝票整理をしている。
「あの氷のリルリィーアに彼氏ができるなんてね」
仕事しろよノーラ。
リルリィーアは動揺して羽根ペンをずずーっと滑らしてしまって紙一枚無駄にしてしまった。
真っ黒け。
「そんなんじゃないわよ」
「そー。勘だけど、この機会逃したらあんた三十歳超えるまできっと結婚できないわよ」
「縁起でもないこというなぁっ!」
「……なんかネタで済まないこと言ったかしら?」
「……いやちょっとやな予感が」
「素は良いのにもったいない」
「ほっといてよ」
咳払いが聞こえる。
総務部長が戻ってきたので二人はあわてて仕事に戻った。
「雑談はほどほどにしろよ。廊下にまで聞こえているぞ」
「すみません」
「まぁいい。リルリィーア。支部長がお呼びだ」
「はいはい」
リルリィーアは立ち上がった。
「ねぇ、部長。リルの前髪注意しないの?」
「……いやなんか怖くてさ」
とりあえず背後の会話は無視。
……そんな怖いんですかわたし。
支部長室にお茶を持っていくと、机がでかくなっていた。
そして机に頬ずりをしているへんな人がいた。
「へんな人っていうなぁ」
その人はむくっと起き上がって怒鳴った。
年季の入ったおじさんであった。仮にも支部長なので肉は締まって頑健ではあるが、残念ながら頭のほうが少々風通しがよくなっている。
『外見で人を判断してはいけない』という典型例みたいな人なのではあるが、逆に言うと外見は平凡である。少々詐欺くさい。
「……私、何もしゃべってませんが」
「いやそういう気配がしたし」
「妄想入ってませんか? わりと」
「いやだって部屋に入ってきたみんな俺のことをかわいそうな目で見ているよ」
「わかってるならやめなさいな」
リルリィーアはため息をついた。
とりあえず紅茶を入れてやる。
「黒檀でできた年代もんだよ」
さっきまでの愚痴は何なのか。支部長はうっとりとしながら顔を天板に擦り付けている。
無駄に切り替えが早い。
「おいくらとか絶対に聞いてやんねぇ」
「聞けよ。ちなみに給料三か月分だ」
「うわー。無駄遣い」
「地が出てるなぁ。ミル君の前ではあんなににゃーにゃーなのに」
「にゃー?」
何を言っているのかさっぱりなのでとりあえず聞き返してみた。
「猫かぶり」
かちんときた。
リルリィーアは茶器を叩きつけるようにしてテーブルの上に置いた。
「ああっ。傷付く」
リルリィーアは無視。
「あー。でもこんだけ無茶やって一滴もこぼしてねぇ。無駄にすごい」
「ほっといてください。用がそれだけなら戻りますよ」
仕事あるし。
「ミル君もそろそろ戻ってくるしねぇ」
「さて、この空になったお盆の打撃力のテストをしてもよろしいでしょうか。おじさま」
「頭はいやーっ」
「あら、こんなところにいい試し割の板が」
「だめー、俺の三か月分の労働の成果が」
支部長はリルリィーアのお盆から机を守るように、その上に身を投げ出した。
「骨董趣味もいい加減にしないと奥さん帰ってきませんよ」
「うん。まぁそうなんだが。いい加減本題に入っていいかな?」
「本題に入っていかないのはあんたでしょー」
「うむ」
支部長は身体を起こしてマジな顔になった。
「少々、きみの力を借りたいことがあってね」
「いや」
即答した。
「……いやもうちょっと聞いてよ最後まで」
「いやなの。私はただの神殿職員よ」
そういうとお盆を持って部屋から出ようと歩いた。
「ふむ。この件にミル君がかかわっているときいてもか?」
リルリィーアの足が扉の前で止まった。
「そ、そんなんじゃ釣られないんだから」
「まぁ聞きたまえ」
支部長は紅茶を一口飲んだ。
「冷めてる」
「いいから早く言いなさい」
「ホスケイト商会というところがある。んだが、どうもそこで非合法なものを扱ってるという噂があるんだ」
「どんなのですか?」
「人」
「……マジ?」
「噂って言ったでしょ。だからミル君に調査を命じたんだけど……手伝ってくれない?」
「……善処します」
「よろしく頼むよ」
リルリィーアは部屋を出てから扉を蹴っ飛ばした。
「あー。ひどい」
リルリィーアは仕事が終わったあと籠を持って買い物に出かけた。
日は傾いてみんな家路を急いでいる。歓楽街方面へ歩く男もいるが。
帰りにミルを見かけた。
乱雑に積んである木箱の陰から、ひとつのでっかい屋敷を伺っている。
ちょっといたずらを思いついた。朝の仕返しだ。
リルリィーアは後ろからこっそり足音を消して近づいた。
おまけに気配まで完全に消している。
背後にぴったりくっついたところで驚かせようと声をかけた。
「ねぇ、なにしているの?」
ミルの背がぴんと伸びた。
「うわっ」
叫び声とともにミルが振り向いた。腕が木箱に当たって上から傾いた。
派手な音があがった。
「あひゃ」
「あ、リルリィーアか。ってやばい。逃げるよっ」
リルリィーアが返事をする暇もなく、ミルは手を取って走り出す。
リルリィーアは引っ張られながら思った。
悪いことしたかもしれないけどこれはこれで良いかも。
しばらく走った。
狭い路地を抜けて井戸がある広場まで来た。
ミルは息を切らせてリルリィーアを振り向いた。
手を離されてちょっと寂しいかな。と考えてしまう。
「なにするんだよぅ」
ミルが睨んできた。
「あはは。ごめんなさい。でもね、こんな女の子に後ろ取られるようじゃ危ないよ」
彼女はそういうが隠密技能が一線級。他国の王城ぐらいだったら侵入できるほどなんでそんなに責められても無茶言うなとしかいえないだろう。
もっとも、ミルはそんなことは知らないわけだが。
「うっ。まぁそうなんだけど僕は仕事中だったんだよ」
「どんな?」
「ひみつ」
「けち」
「一流の捜査官は仕事の秘密をばらさないものなんだよ」
「同僚なのに?」
「リルリィーアは捜査とまったく関係ない部署じゃないか。大体ほかの捜査官にも教えるなって言われているのに」
当時リルリィーアはただの事務員で捜査官ではなかった。技量的には十分ではあったのだが。
ここがホスケイト商会で、つまりミルはここを見張っていたということだ。
買い物ついでに一度見ておこうと寄り道してみたらミルがいた。
「ふーん。あんなばればれに見張って秘密も何もあったもんじゃないの」
「うっ」
ミルの顔が歪んだ。
正直あまり係わり合いにはなりたくない。
しかしミルが関わっているといわれると知らないとはいえない。
……あの狸が。
「リル。どうしたんだい?」
「いえなにも」
リルリィーアは首を振った。
リルリィーアの耳に足音が聞こえた。複数。
ちょうどリルリィーアたちが来たところから柄の悪そうなのが三人、出てきた。
男たちは帯剣していた。
「女連れかよ。優男が」
男たちのうち一人が言った。
「最近俺たちホスケイト商会を探ってたのはお前だな」
「だとしたら何だっていうのかな?」
ミルが、リルリィーアをかばうように一歩前に出た。
なんかいつもより背中が大きく見える。
「こそこそできないようにしてやる」
男たちは剣を抜いた。
「来いっ。捜査官ミルが相手をしてやろう」
ミルも答えて剣を抜いたが。
「ミル。秘密捜査とか言ってなかった?」
「あ」
間が抜けた声が上がった。
「いいからやっちまえっ」
やけくそのような景気のいい声が男たちから上がった。
男たちが斬りつけてくるのを、ミルは体さばきと剣で受け流して無効化する。
だが三対一。避けるのがやっとで切り返す暇がない。
やばいなぁ。リルリィーアは思った。
自分が殴ればチンピラ程度あっさり倒すことはできる。だがミルにだけには見せたくなかった。
かといってミルが傷つくのを黙ってみているわけには行かないわけで。
「うぐっ」
ミルが受け損なって剣が右腿を切った。一瞬遅れて血が噴出す。
まずっ。
おば様ごめんっ。
リルリィーアは腕に提げていた籠に手を突っ込んだ。蜂蜜の瓶を手に取ると蓋を開け、いままさにミルに剣を振り下ろそうとしていた男の足元めがけてぶん投げた。
踏み込んだ男の足が蜂蜜と一度溶けてかちんこちんに凍った雪の上で滑った。
「のわっ」
バランスを崩した男の腕をミルが切り上げる。力が入らなくなって男の手から剣が落ちる。
切れた袖が赤く染まる。
「このっ」
一人が怒ってリルリィーアに向かってくる。
「リルっ」
「いいから前っ」
ミルがリルリィーアを助けに戻ろうとするが、正面にもう一人いるせいで動けない。いまは。
足の怪我があっても一対一なら勝てるだろう。時間があれば。
リルリィーアは剣の代わりになりそうなものを手に取った。
長いパンだ。
「そんなんで何をしようって言うんだ」
剣は手の延長。
手に魔力をこめる応用でパンの先端、ぱりぱりに焼きあがった表面からしっとりしている内部まですべてに魔力をこめて。
ぶんと振った。
「なにっ」
剣とパンが交錯して、鋼があっさりぶち折れて宙に舞った。
魔力を切ってから、パンを男の口の中に突っ込んだ。
「もぐっ」
口の中いっぱいでもごもごしている男の足を自分の足でひっかけて転がした。
ミルを見ると相手の肩に一撃食らわせて静めていたところだった。
「大丈夫……みたいだな」
「うん」
ミルがあわてて振り向いたが、リルリィーアが無事だったことに安堵したのか肩の力を抜いた。
「……なんで口にパンが?」
口からパンを生やした男を見てミルは言った。
「カウンターでうまく入っちゃったみたい」
リルリィーアはひざまずくと白いハンカチを取り出して傷口に当てた。
「とりあえず神殿に戻るまではこれでね」
ぎゅっとズボンの上から縛った。
「ありがと」
リルリィーアはミルを見上げると首を振った。
「ごめんなさい。私のために」
太股をなでさする。
「リルリィーアが無事でよかったよ」
それは自分が言いたいことだ。
心の中からあふれそうになって、ミルに抱きつきたくて仕方がなくなった。
ミルの手を取って引っ張り込もうとしたとき。
「うーん」
男のうめき声が聞こえた。
「……」
「……」
「……とりあえず縛っておこうかしら」
リルリィーアはしぶしぶミルから離れた。
どさくさにまぎれて頭を蹴って気絶させておけばよかったと公開しながら、法衣の腰のところからするするとロープを取り出した。
「……どこに用意してたの、そんなの」
「洗濯用よ」
リルリィーアは言い切った。
それでくるくると男たちを縛り上げると、最後にパンを男の口から抜いてやった。
「もごっ。死ぬかと思った」
「殺す気だったのになにをいまさら」
リルリィーアはミルを振り返ると微笑んだ。
「さて、一度神殿に帰りましょう。ちゃんと手当てしてあげるわ」
ところで、買い物どうしよう。あとで買いなおさないと。
ごろつきたちを捜査局に放り込んだあと、リルリィーアはミルを引っ張って神殿に戻った。
自分の部屋に突っ込む。
リルリィーアの部屋はさっぱりしていた。ベッドが二つに、窓の前にテーブルが一つ。二人用の部屋をリルリィーアひとりで使っている。
リルリィーアはミルをベッドの上に座らせると彼に命じた。
「さぁ。脱ぎなさいっ」
「え?」
「ズボン」
リルリィーアはベッドの下から木箱を引っ張り出した。
そこから布と包帯とアルコール入りの瓶を取り出した。
「早く」
「うっ。恥ずかしいって」
らちが明かないと見てリルリィーアはミルのベルトに手をかけた。
「脱がないと治療ができないじゃない」
ミルは嫌がったが、リルリィーアの頭をつかんで引っぺがすわけにも行かず、結局ズボンは奪い去られてしまった。
「痛いのは最初だけだからね」
傷口に酒をかけたらミルはうめいた。
「こんなになって。痛かったでしょう」
ミルの前にしゃがみこんで傷口の周りをふき取る。
布を換えて包帯を巻こうか、と手に取ったころでがたんと背後から物音がした。
振り向くと白髪交じりのおば様が入り口で倒れていた。
おばさまは法衣の裾を治しながら愛想笑いを浮かべる。
「ごめん、いいとこだったのに。私ここにいないから」
「いないからって何だよ神殿長〜〜〜〜」
ひょいっと廊下に戻っていった神殿長のマンマールおばさまはさておき、とりあえず治療を続けることにした。
夜。
夕飯を食べた後、ミルがこっそり神殿から出て行った。
「ちょっと出かけてまいります」
リルリィーアは、マンマール神殿長に子供たちをお願いして追いかけようとした。
「あ、ちょっと待ちなさい」
「はい?」
神殿長が紙を差し出してきた。
なんだろうと思いつつ見てみると。
『外泊許可証』
の文字があった。
「……」
「ばっちり決めてくるのよ」
「何ですかーっ」
思わず叫ぶと破くと子供たちが皆リルリィーアを見ていた。
「……こういう気遣いは結構ですから」
「あらそう? まぁこっちのことは気にしないでごゆっくり」
「うー」
遊んでいる暇はないので、コートを羽織ってミルを追いかけた。
行く先は見当が付いている。
「……ってこれで外れだったら笑い話よね」
夜、人気がないのでできるだけ離れて歩く。
背中がちらちら見える程度だったが、行き先が見当付いていたので楽だった。
ホスケイト商会まで着いた。ただし裏口側である。
こっち側には馬小屋があった。
ミルはこっそり馬番の男に近寄るとひそひと話した。
事前に篭絡していたらしい。
もしくはこの男が密告したのか。
二人は裏口から中に入っていった。
「……うーん。大丈夫かなぁ」
心配なのでこっそり裏口に近づいた。
鍵がかかってた。
「うーん」
リルリィーアは持ってきていた『外泊許可証』に魔力をこめるとそれを扉の隙間に突っ込んだ。
一気に振り下ろす。
「よしっ」
ちょんと押すと扉が開き、壊れた鍵がぽろりと落ちてきた。
「役立つものね。ありがとう神殿長」
紙切れを胸元に戻すと、そっと中を覗き込む。
廊下は暗かった。
「さて、どこに言ったのやら」
耳を澄ますと声が聞こえた。
「奥かな」
地下へ降りると部屋があった。
扉が半開きで中を覗いていると男たちがたくさんいて。
中央にミルがいた。
「……だめやん」
ちょっとこう、くらりとしてみる。
「へっへっへ、旦那。こいつが例のかぎまわっていたやつでっせ」
馬番の男がそう告げた。
きっちり売られているっぽい。
「よくやった」
旦那と呼ばれた男が、ポケットから金貨を取り出して馬番に放り投げた。
「ありがとうごぜぇます」
その男はごろつきだらけの男とは違って、絹でできた服を着ていた。髪もさっぱりしていて、こんな男に口説かれたら女はあっさりなびいてしまうであろう甘いマスクだ。
私はミル一筋だけどね。
たぶんこの男がホスケイト商会の責任者、もしくは高い立場の男だろう。
「さて、ミル君とやら。申し訳ないが君には死んでもらおうかね」
むぅ、やばい。
全員ぶちのめすのは簡単でもミルに見られるからなぁ……かといってこのまま見ていたらミルのめった刺しが出来上がってしまう。
「……燻製かな」
リルリィーアは廊下を戻って階段を上がった。
再び急ぎ足で戻ってきたとき、彼女は両手いっぱいに藁を抱えてきた。
持ちやすいようにロープで縛ってある。
部屋の中はまだ静かなので生きている……といいな。
ちらりと中を見ると縛られていた。肩が赤く染まっている。斬られたらしい。
許せない。
とりあえずリーダーは隙があったらぶん殴ること決定。
時間がない。
リルリィーアは手のひらに魔力を集める。
「燃え上がれ」
リルリィーアは小型の火球を作って藁に打ち込んだ。
わざわざ水をかけて燃えにくくしてある。
くぐもった煙が出てきて廊下に充満する。
「げほっ。ああ。このままじゃ煙逃げるか」
リルリィーアは燃えている藁をつかむと扉を蹴り開けて部屋の中に放り込んだ。
リルリィーアは炎属性の魔法を使うので火と熱には耐性がある。
火あぶりにされても焼け死なない。煙で窒息はするが。
「もう一個〜」
もう片方をぶち込んで扉を閉める。