月夜の二人:真相編


 神殿の用事で、南のオールドの町まで、聖女様にして神殿長のティナが出かけることになった。保護者役としてリルリィーアが例のごとく付いていくことに。
 旅装といってもいつもとあんまり変わらない。
 リルリィーアはいつものロングスカートの法服だ。さすがにエプロンはない。
 ティナはいつものエプロンドレス。純白の法衣はべつに持っていって向こうで着替える予定だ。無駄に目立つし。
 二人はミトフェムから丸一日歩いて、村に通りかかった。
「うにー。疲れたんだよ」
「我慢しなさい」
「うー。お姉ちゃん昼からそればっかり」
 空を見上げるとすっかり真っ赤になっていた。
 次の村に着くまでには暮れるな。と判断してリルリィーアは宿屋に入った。
 が、めちゃくちゃ混んでいた。
 一階の食堂が満席。
 裾を砂で汚した人たちがテーブルをそれぞれ囲み、がっついていた。
「もう少し歩く?」
「もう無理」
 即答だった。
「あら、あんたたち親子かい? ……にしてはあんまりというかぜんぜん似てないけど」
 頭に布を巻いて帽子代わりにした、おかみさんみたいな恰幅のいいおば様がカウンター越しに声をかけてきた。
「姉妹です」
 リルリィーアは答えた。
「……お父さん年取っても元気なのね」
「ほえ? どういう意味なのお姉ちゃん」
「知らなくていいわ」
 とりあえずおば様の勘違いは無視。
「泊まりたいんだけど部屋ある?」
「うーん。見てのとおり混んでるからねぇ。一部屋だけならあるけど」
「? それで問題ないですけど」
「ベッドひとつしかないのよ」

 おかみさんの言うとおり、ベッドはひとつしかなかった。広いが。夫婦用らしい。
 リルリィーアたちは疲れたし、お風呂にも入ったのでのでとっとと寝ることにした。
 これで男と女だと、
『あんた床で寝なさいよ』『何でだよ』
『着替えているんだからあっち向いてなさいよ』『へいへい』
 とかまぁうれしはずかしということが起こるかもしれないが女同士である。
 普通何も起こらない。
 リルリィーアは法衣を脱ぎ、シャツとパンツだけになってベッドに入った。
「早く寝るわよ」
 ティナを読んでふと思った。
 友人が書いたエロ小説を思い返す。
「……」
「お姉ちゃん、どうしたの」
「……いやちょっと、人間の想像力というものはすごいなぁと」
「?」
 ティナはエプロンドレスのスカートをまくって中から引っ張り出した。
 でっかい木箱である。いつもはベッドの下において服や下着や小物を入れる箱だ。
 相変わらず女性のスカートの中は魔空間である。
「よっ」
 箱を開けてパジャマを取り出す。しばらくすると睡眠準備完了したティナが出来上がった。
 ネコミミ形のヘッドキャップにねこ柄の厚手のパジャマである。
「……実際こんなんだからな」
「うに?」
 首を傾けるとねこみみがぱたんと前に倒れる。
 しょせん将来性が期待できるとは言え、まだ、ただの子供である。
 こんな娘とにゃんにゃんしたい人がいるとしたら変態というよりただの病気だろう。うん。
「いいから、とっとと寝るわよ。もう消すわよ、ランタン」
「はーい」

(続く)


お題もの書き:月(衛星)参加作品

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